妖怪専門探偵日誌   作:インドレント

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この作品に出てくる場所や年号、建築物の名前、歴史などは全てフィクションです。ただし、出てくる妖怪が全てフィクションであるとは言い切りませんのであしからず…。


第壱-2話 古い資料と過去の封印

岳川は連夜の案内で資料館へと赴いた。扉には小さな鈴がついており、開けるとチリンと鳴った。資料館内へ入ると中には人がほとんどおらず、受付の老爺が一人だけいる状況であった。この資料館は小規模ながらこの地域の歴史資料はもちろん、周囲から掘り出された物も展示されていた。岳川はあの樹木が一体何処から移されてきたのか、何のために移されてきたのかが知りたかった。少し見渡すと「この地域の歴史」というコーナーを見つけた。そこで岳川は

1896年 和歌山県より松の木を贈呈される。以後、海南神社の管理下に置かれる。

という記述を目にした。

「連夜君、この海南神社っていうのは何処にあるのかな?」

「申し訳ないですが、自分も聞いたことがなくて…」

そうか…、と岳川が悩んでいると

「何かありましたかな?」

と受付の老爺が話しかけてきた。そこで岳川は

「すみませんが、この海南神社という場所は何処にあるのですかね?少し見てみたくて。」

「海南神社…。あぁ、それは松の木がある通りにあった神社の名前です」

「あったとは?もう今は無くなったのですか?」

「ええ、確か十年ほど前に最後の神主が老衰で亡くなって、子供もおらずそのまま神社は廃れてしまいまして。だからといって神社を壊して良いものかと悩んでいたのです。ですが二年ほど前に町長がもし何かが起こったら新しく神社を建てる事にしようと決意して取り壊して住居を建てました。まぁ、結局何も起きませんでしたがね。」

岳川は小さくなるほど、と呟くと続けて老爺に質問しました。

「神社にあった資料などはこちらにあるのですか?」

「ええ、もちろん取ってあります。こちらです。」

そう言って老爺は案内を始めた。受付は大丈夫なのかと聞いたが、人が来る事もほとんど無いし、だれかくれば扉の鈴が鳴るから大丈夫だと答えた。

話している内に資料の前に着いた。その中の神主の記録の資料を手にとってみても良いかと尋ねた。老爺は汚したり、破いたりしないようにと言った上で岳川に渡した。その資料は仕事をするためのメモの様なものでその中の1896年の欄に達筆な文字でこう書かれていた。

 

1896年 和歌山から松の木の贈呈。次のことを守るべし。一つ、この年から封印の札を貼り、半年から一年に一回、貼り替えること。注:札が崩れ始める、札に黒い焦げが出てきた場合は半年に満たなくとも貼り替えるべし。二つ、現在、札は一枚であるが樹木から音が聞こえ始め、それが三日連続で続く場合、札を貼り替え、数を一枚増やすべし。三つ、樹木の根元に何か置いてあっても絶対に近づくべからず。

 

「これは…。」

何か異様なモノがいるのは確かなようだ。岳川は正体に近づきながら、このモノは説得に応じることすらないかもしれないと、気を引き締め直した。

「あの…、そろそろ資料館を閉めなければならないのですが。」

どうやら、岳川が資料を読んでいる内に夕方、それも日が大分落ちてきていたようだ。今日はこれにて失礼しようと資料館を出る。

資料館から出ると連夜が聞いてきてた。

「探偵さん。どんな奴がやったか分かりましたか?」

「予想しているものはいくつかある。ただはっきり分かってからの方が良い。」

「何故ですか?」

「封印の術式をするにもはっきり分かった後の方が曖昧な時より封印出来る時間が長くなるからね。それに滅した後のためにもね。」

「滅した後…ですか?」

「君は妖怪が何かの要因で滅した後どうなると思う?」

「幽霊みたいに成仏するとかですか?」

「もちろんそういう奴もいる。でもね、大概の妖怪は細かい粒子みたいになってその場に残るんだよ。死ぬっていうのとは違うんだ。」

「そうなんですか!?知らなかったです。」

「あぁ、君も聞いたことがあるだろうあの言葉。あれは本当に良く妖怪のことを表してると思うよ。」

「言葉?それって…?」

「聞いたことないかい。『お化けは死なない』ってやつ。その言葉の通り、死なずに残るのさ。そして時間が経つとまたその粒子が集まって妖怪が生まれるって訳だよ。そしてね、封印の術式を施す際にどんな妖怪か詳しく知ってから札を作ると粒子が集まるまでの時間を長くしたり、集まりを遅くしたりできるってことさ。」

何か凄い話を聞いている気がすると思いながら帰路につく。岳川はこの町のビジネスホテルにでも泊まるという。そして連夜と岳川が別れる際に岳川は少し連夜を引き留めた。

「すまないが、髪の毛を一本貰えるかな。」

「か、髪の毛ですか。分かりました。」

そういうと連夜は自分の髪の毛を一本抜き、岳川に渡した。

「ありがとう。安心してくれ。悪用する訳ではないから。…よし、出来た。じゃあ、これをあげよう。自分のそばに置きなさい。」

そういうと岳川は連夜の髪の毛を入れた粘土の人形のようなものを渡した。

「これは?」

「ヒトガタさ。君の身代わりってとこかな。今回の妖怪はあの松の木に近づかない限り襲わないと思うけど。念のためにね。じゃあまた明日。」

そういうと岳川はビジネスホテルの方へ行った。連夜もヒトガタを落とさないように、帰路に着いた。

 

 

ビジネスホテルに着いた岳川は(この様子だと、明日には解決出来るな。…まぁ今回は初めから説得が出来そうにないから滅する方向で行くけど。さて…。)

一通り情報を整理してから岳川は窓の方へ向かい、少し窓を開けた。手には一枚の紙。印を結ぶとその紙は鳥の形になって飛んでいった。同じものを後二体飛ばすと窓を閉めた。(鳥型の式神。あの樹木の見張り番だ。もし誰かが襲われても逃げれる位には時間稼ぎが出来る…筈だ。ただ神社の資料を読んだ限りでは普通のモノよりたちが悪いかもしれない。そうなったらあの式神では時間稼ぎすら…。祈るしかないか。)

こうして岳川は式神数体を木の見張りにつかせ、明日の調査、解決のための力を溜めるために風呂で身体を清め、祈りの経を読んでから寝床についた。…自分の考えたような悪いことが起こらないように願いながら。

 

 

しかし、その願いは叶わなかった。次の日、松の木の下で女性の遺体が見つかった。今度は全身があったがこの事件も奇妙であった。被害者は頭に傷跡があったことから殴られたのではと思われていたが、調べると首の骨も折れている事が分かり、どうやら高い所から落ちたらしい。松の木の上の方には被害者の靴が片方だけ引っかかっていた。なのでこの木の上から自殺したのかと考えられるが妙なことがある。被害者が木に登った形跡がない。指紋はもちろん、爪の中からも木の繊維は出てこなかった。前の事件のように説明するなら「被害者の身体が突然木の上まで上がり頭から落ちた」ということになる。警察が捜査したが、結局自殺という事になった。

ちなみにこれは死因には関係はないがその遺体の近くには何故か細かくビリビリになった「紙」が散らばっていたという。

 

 

 

現在までの犠牲者: 二人

 

 




読んでいただきありがとうございます。さて二人目の犠牲者が出ましたね。どんな妖怪の仕業なのでしょう。では読者の中の妖怪好きな方にヒントでも。ヒントは「和歌山県」と「松の木」です。分かっちゃうかな。それではまた。
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