10話
ビー!!ビー!!ビー!!フシュー……
「ッ!?櫻井女史ッ!!デュランダルが……」
「えッ……まさか……響ちゃんの歌で起動したというのッ!?」
了子のそばにあった長方形のケースが自動で開き、その中身が飛び出てきた。サクリストD、デュランダルと呼ばれる完全聖遺物は響の歌によって目覚め、響とダインスレイフの放つ砲撃のフォニックゲインによって完全に起動したのだ。
「はぁ……はぁ……ダイン……大丈夫?」
『アァ……にしても結構『呪い』を使ったじゃねェかァ……お前も消耗が激しいしなァ……』
「これくらい……問題ない……ここの施設は問題しかなさそうだけどね」
響が向いた先には、砲撃のよって削り取られてしまった無残な跡が。薬品工場の端が見えるレベルにまで、くっきりと大穴が空いてしまっている。
「……アレがデュランダル。完全聖遺物って割には折れてるし石っぽいなぁ……ダインよりカッコ良くない」
『アレはまだ基底状態だからなァ……ていうかお前……俺の刀身をカッコイイと思ってたのかァ……(最近の人間に詳しいわけじゃねェがァ……女としてはどうなんだろうなァ……?)』
ダインスレイフが一抹の不安を覚えている中で、響はデュランダルを眺めて呟く。
「アレも……私のチカラに……」
『ッ……ヒビキ、聖遺物を同時に使用するのは勧めれねェなァ……前の契約者が一度暴走を起こして国が一つ滅びかけたんだよォ……お前のガングニールは、俺の一部として調教してるから大丈夫だがなァ……』
「ふぅ〜ん……ダメ?」
『そんな物欲しそうな声で言われてもなァ……どうするのかはお前が決めればいい……だがお前は、ソロモンの杖を奪うって決めていただろう?』
「……確かに。取り敢えずダインが止めさせたいってことは分かったけど」
『お前なァ……』
ダインスレイフの忠告もあまり意味をなしていないようだ。そして……
「あのノイズを操る棒切れ、『ソロモンの杖』っていうのね。……後で説明してもらおうかダイン?」
『げッ……やらかしたなァ……俺の馬鹿野郎……』
「アレがデュランダルか……もらってくぜ……」
響によるダインスレイフへの尋問が決まった瞬間だが、その合間に目的のモノを見つけたクリスは、デュランダルに向かって飛びつく、しかし……
「デュランダルは渡さない!!」
「チッ……そういえばいたんだったなぁ!!」
了子の近く、つまりデュランダル付近にいた翼がそれを許すはずもなく、クリスに斬りかかる。クリスも気づき刃の鞭にて応戦。そのまま戦場を変えていった。
「あらら……翼ちゃん行っちゃったわね……それにしても、まさか響ちゃんの歌で起動するなんて。まだ基底状態のままだと言っても……もしかしたら」
デュランダルを見上げている了子は少しだけにやけると、その
「見つけた……響ちゃ〜ん、ちょっとい〜い?」
「……なんですか櫻井了子さん?」
「あらやだ他人行儀ねぇ……もうちょっとフランクでイイのよ♪裸も見た仲なんだし♪」
「ふざけたこと言ってると、その頭に乗ってる団子ぶち抜きますよ?それと裸になったのは検査のためであって、しかも貴女が剥いだんじゃないですか。それよりも要件を。私は早くアレに加わりたいんですよ」
響は早口で、吐き捨てるように了子に告げる。その頰には若干赤みが見えるが……
「辛辣ねぇ……まぁいいわ。あのサクリストD……デュランダルって言った方がわかりやすいわね。浮いちゃってて私じゃ届かないのよ〜。穴が空いちゃってるけど、納めないよりはましだからこのケースに収納したいの。取ってきてくれないかしら?」
「なんで私が……風鳴翼さんにやらせればいいじゃないですか……」
「戦闘中だし、戦ってる人が途中で変われば嫌でも何かあるって思われちゃうでしょ?」
「……一理はある」
了子のお願いをどうしても聞きたくはないらしいが、最もなその説得に響も聞く耳を持つ。時折デュランダルを取ろうと了子が必死にジャンプしてその豊満な胸が揺れ、また響が赤面するということがあったが……
「……仕方ない……貸し一つですよ」
「えぇ……お願いね」
すでにデュランダルに目線を向けていた響は、了子が狂喜に顔を歪ませていたことに気付くはずもない。しかし……響が持つダインスレイフの『目』は剣の柄にあり、それは了子の方を向いている。つまり……
「よッ……と」
『ッ!!ヒビキィ!!今すぐ触るのをやめr……チッ……間に合わなかったかァ……』
響が少しだけジャンプし、ダインスレイフが叫ぶ途中でデュランダルを左手で持ってしまった……
刹那、世界が止まる。
「えっ……」
「デュランダルがッ!?」
「チィ……やられた……」
「ウフフ……」
着地した響の手に握られたデュランダルは、金色に輝き、完全聖遺物として覚醒した。しかし響は……
「ぐぅぅぅうぅぅぅぅぅっぅううぅっぅ!?!?!?(胸が……裂けそう……!!ダインの時とはまた違う……これは……)」
ーーコワセーー
謎の声が響に語りかける。
『ヒビキ?おい……ヒビキ!!』
ーーコワセ……コワセ……コワセッ!!!!ーー
響の抵抗は……なかった。
「……アハッ♪」
響の体は黒く染まり、誰が見ても明らかな形で暴走している。
『クソッ……コイツ、一回自分から破壊衝動を受け入れやがったからガードが緩くなったのかよォ……思いっきりやらせるしか……ッ!?このエネルギーはッ……』
突如としてデュランダルからあふれ出ていた金色に輝くエネルギー が響を包み込む。
『ハァ……ひさびさに使うか……何千年ぶりだァ?全く……デュランダルのエネルギー様様だなァ……』
「立花を止めなくては……しかし……」
「オイオイ……なんかこっち向いてねぇか?」
クリスと翼の方向を向いた響。その顔はどこかにやけている。
「ッ!?早く退避しないと……!!」
「クソッ……今回もここまでかよ!!おい人気者ッ、一旦お預けだッ!!」
クリスと翼が逃げる中、逃がさないと言わんばかりに表情を歪めた響はデュランダルとダインスレイフを
『響のヤツ……振り下ろすんじゃなくて振り切るつもりかよ……クソッ……術式どうだったか……?』
ダインスレイフが何か準備をしているが、今の響には聞こえていない。
「アアァァァァァァァアアアァァァアアァ!!!!!!!!」
『間に合ったァ!!術式展開……CODE:Mardurk……【ADVENT】!!』
ダインスレイフが叫ぶと同時に、響の動きが止まる。心なしかデュランダルの輝きも淡くなっているようだ。
「…………」
「……何も……起きない?」
「どうなってやがる……フィーネ……?」
クリスはある方向を向くと……すぐにその場から立ち去った。
「翼ちゃん……大丈夫だった!?」
「櫻井女史!!護衛の任をさし置き戦闘に入って申し訳ありません……」
「どっちも無事だったからいいのよ……それよりも今は……」
2人が響の方を向く。黒く染まった体は、いつものシンフォギアをまとった姿に戻っているのが確認できる。響は両腕と首が下がり、その場で立ち尽くしている。もちろんデュランダルとダインスレイフは手にしたままだ。
「…………」
「ッ……こちらを向いた」
「年貢の納め時ってやつかしらね……」
ゆっくりと響は、翼と了子の元へと歩く。俯いていてその顔は見えないが……暴走時の時の表情とはまるで違っている。響の歩みが2人から2メートルほど離れたところで止まった時……
『……ふむ』
「「ッ!?!?」」
「櫻井女史……聞き取れましたか?」
「……いえ、発声しているのは分かったけど……なんて言ったのかまでは……(まさか……いや……2年前までただの一般人だった少女がまさか……)」
響?が口を開いたが……2人には聞き取れていない。
『……聞き取れていない?術式に失敗したか……?久しぶりだからなぁ……まぁいいか。取り敢えず……』
「ッ!!櫻井女史、下がってください!!」
「いいえ……翼ちゃん見て……」
「えっ?」
響?がデュランダルを空に向ける。するとデュランダルが金色に輝き出し……
『取り敢えずこれで眠ってろ。コイツは
響?がつぶやいた言葉と同時に、デュランダルより空に向けてエネルギーが放出された。
「まさか……デュランダルのエネルギーを逃して……」
数十秒の後、デュランダルより放たれていたエネルギーは少しずつ消え去っていった。
『……後は任せた……風鳴翼、コイツの事よろしく頼む』
「その声は……ッ……立花ッ!!」
一瞬だけ、翼はその声を認識できたようだが突然倒れ込んだ響を支えることに意識が向き聞くことが出来なかった。
「……気絶してるだけみたい。取り敢えず、デュランダルも無事ですし弦十郎君に連絡して回収班を呼んでもらいましょうか」
『…………無事かッ2人ともッ!?』
「「きゃあッ!?」」
後に、通信機から流れるとてつもなく大きな音に驚いた2人の女性が、とある司令室で赤いシャツを着た大男を叱りつけるという現場をその組織に所属している大多数の人間が目撃したが……皆が温かい目で見ていたようだ。
『フゥ……今日は良い仕事したなァ……ヒビキもツバサもデュランダルも無事で万々歳だ。まァ……俺のナニカが吹っ飛んだけどなァ……フッハッハッハッハッ!!たまにはこういうのも悪くねェなァ!!……疲れた、寝るか』。
〜???〜
「……ここは?」
意識が戻った響は、その目を開くとよく分からない場所にいた。少し暗い……薄気味悪い雲がかかった荒れ果てた大地。所々に武器の残骸や人間の死体が見える。
「ダイン…………来ない。『呪い』も……使えない」
荒廃した大地で立ち尽くす響は力も使えずダインスレイフも反応しない。少し不安になった響は警戒をしながら歩き出す。
「戦った後……血の匂いもするしそんなに時間も立ってないのかな……それよりも私はなんでこんな所に?確か……デュランダルを握って……ッ」
……また暴走したのか。口に出しそうになった言葉を飲み込み心の中で反芻する。その表情には少し嫌悪が見える。
「全く……あの厚化粧覚えてろよ……貸し一つで絞り取ってやる……」
了子の表情を見ていなかった響は、まだただ頼まれただけと思っている。ぶつくさ文句を言っていた時……
「ッ……誰!?」
ナニカの気配に気づいた響は、あたりを見回す。
「俺に気づけるってんなら多少は出来るじゃねえか」
「……上かッ」
聞こえてきた声の方向……空を見上げると、真っ白な翼を生やした男が空中にいた。ゆっくりと降下してきたその男は、響の前まで来ると……ドカッと胡座を書いて座った。
「まあ座れや。立ち話もなんだしな」
「はっ……ッ!?」
突如として景色が変わる。戦が終わった後の荒野のような場所から、あまり衛生面は良くなさそうな家の部屋の一室にいた響はさらに警戒の色を強めた。
「オイオイ人様の家でそんなに……いや、これが普通か?」
「普通でしょ」
そうか普通か……と笑いながら椅子を差し出してくる男に毒気を抜かれたのか、響も椅子を受け取り座った。
「おっと、自己紹介がまだだったな……俺はラース。魔剣ダインスレイフの契約者
「だった?……私は、響」
「ヒビキ?珍しい名前だなぁ……黒髪ってのもだ」
「逆に言うけど、私からすれば紅い髪に半裸で翼を生やしてる貴方の方がおかしい」
「ハッハッハッ!!違いねぇ!!ヒビキはなかなか良い所をついてくるじゃねえか!!」
そう……この男、半裸なのだ。かのZENRAよりはましだが、それでも上半身は丸出し。下はしっかりしているが、背中からは艶のある……というかテッカテカの翼が見える。邪魔なのか今は上半身に巻いているようだが。
「……私を呼んだのは貴方?」
「そうさ。今代のダインスレイフの契約者ってのが気になってな。あぁ……俺の意識があるのはダインスレイフ本人も知らないさ。アイツは割と良い加減でたまに抜けてやがるからな」
「ふぅーん(ダインって昔から変わってないのね)」
今の説明では大事な部分が何一つわかっていないのだが、響はダインの情報に少し呆れていた。
「で、大昔の人が、私に何の用?お前には相応しくないからダインとの契約を解除しろ……みたいな?」
「バカ言ってんじゃねえ。アイツが認めた人間が相応しくないわけがないだろ。逆だよ逆……見込みがあるから呼んだんだよ」
「……いやもっと意味がわからないんだけど」
はぁ……。と呆れるようにため息を吐きながら首を横に降るラース。その様子に響も少しイラっときたらしい。
「『呪い』には自我があるって言ったら、理解出来るか?」
「自我……?う〜ん……あぁ、今のラースさんみたいな事?」
「正解!!……と言っても、全部が全部自我を持ってるわけじゃねえ。特に強い意志の持つ主が、たまにこうやって死んだ後も『呪い』として生き続けるのさ。他にも何人かいるぞ」
「へぇ……」
お気楽な感じで、喋るラースは響の反応を見て少し不機嫌になる。
「もうちょっと反応しろよなぁ〜。つまんねぇし」
「そんな事私に求めないでよ……」
「まあいいか。本当のことを言えばな、お前俺の翼を再現しただろ?」
「俺の……かどうかは知らないけど、翼なら確かに作った」
「だろぉ?俺的に、仮にも『イカロスの翼』を再現して使ってんだ。あの程度の飛行で許せるかってんだ」
「はぁ……」
大げさに翼を動かして、いかにも気に入らん。と言った感じを出すラースに響は首をかしげる。
「だからな、今から空中戦で俺と戦ってもらうぜ」
「……は?」
オリジナル聖遺物で最もヤバイ能力は?
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自在に姿を隠す
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空気操作
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純粋な身体能力向上
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視界の共有
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空間作成