私は呪われている   作:ゼノアplus+

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決戦までのカウントダウン

18話

 

 

自然豊かな山の多い場所。誰も来ないようなその場所には大きな屋敷が一軒建っていた。1人で住むにはもったいないくらいの屋敷や大きな湖。そこでは、長い金髪に金の瞳を持つ女性が水面を眺めていた。

 

 

(何故だ……何故ノイズの発生地点を探ることが出来る?大まかな地域ならばバビロニアの宝物庫による空間の歪みを察知することで分かるかもしれないが……まさか、個体全ての真上にエネルギーを待機させておくことなど……いや、実際に出来ているのだから解析するしかない)

 

 

整った顔をしかめながら思考する女性……フィーネは、先日の風鳴翼のライブで出現させたノイズが一瞬で全滅させられたことに対しての考察を行なっていた。犯人はもちろん響だ。

 

 

「さて……折角の客だ。目覚めたばかりで寝坊助なこの代物を試すとしよう」

 

 

フィーネは手元に掌サイズの卵のようなものを出現させると、天に掲げた。刹那、彼女を中心に宇宙のような、星々の輝きが想起されるような景色が広がっていった。一本だけ整備された道を通っていた一台のトラックはなす術もなく飲み込まれていく。ひとしきりその空間が広がると、一瞬にしてその全てが消える。残ったのは雄大な自然と、運転手を失い制御の効かなくなったトラックだけだった。

 

 

 

 

 

「で、どっちなの?」

 

「う、うるせぇ!!ちょっと黙ってろ!!舌噛むだろ!?」

 

「はぁ……?なに、怖いの?」

 

「そんなわけねえだろうが!!あたしが……この程度のことで怖いだと!!」

 

 

口論をしている2人、響とクリス。現在は昼前でまだまだ人通りの多いが、構うことなくクリスは大声で叫んでいる。それもそのはず、2人は今空中に居るからである。と言っても、響がいつもの羽を生成しクリスを片手で抱えて飛んでいるだけなのだが。

 

 

「じゃあ早く答えてよ。あのババァの屋敷はどっち?」

 

「コイツ……まあいい。えっと……あっちだ」

 

「了解」

 

『響お前……もう少し手加減してやれよォ……』

 

 

流石に片手だけで掴まれていると言うのも恐ろしいクリスは戦々恐々としながら響の指示に従う。ダインスレイフもそんな響の雑な扱いに流石に諌めようとしているが、効果は無いだろう。

 

余談だが、響が現在生成している羽は初期の頃に生成した模造品。ダインスレイフは響がラースと出会っている事を知らない為、そしてダインスレイフから錬金術による羽の生成を止められているためやむなく初期の物を使用している。そのため出力が低い。出力が低いとっても【呪い】を束ねた響印。高速で飛行する響とクリスは無言だ。響は話そうとしないため、クリスはこみ上げてくるアレを耐えるため。

 

そのまま飛行すること10分ほど、2人は目的地に到着した。優雅に着地して響はクリスを離した。すぐさまクリスが湖のほうに駆け寄ってナニカを口から放出していたが彼女のプライドの為に敢えて言及はしないでおこう。

 

 

「…………雰囲気が変」

 

『アァ……空間の歪みに血の香り……何かあったなァ……』

 

 

響は辺りを見渡す。融合によって強化された視力は、しっかりとソレを捉えた。

 

 

「死体……見た目的にアメリカ人?武装してるし、まさかババァを狙って……いや、そうなら倒れてるのはババァのはず。つまり……逃げたか」

 

『そう考えるのが妥当だろうなァ……それにしてもアイツ、一体なにが目的で…』

 

「何か言った?」

 

『いや、なんでもねぇよォ……』

 

 

アサルトライフルを持った何人もの外国人男性が出血多量で死んでいる。見た目的には何かで腹を貫かれたようだ。

 

 

「屋敷を調べ……いや、意味無いよね」

 

『恐らく、証拠を残すような真似はしないだろうなァ……』

 

「ハズレか……時間の無駄だったね。……ッ」

 

『響』

 

「うん。また面倒な……」

 

 

眉をピクッとさせた響が舗装された道路を見た。今はまだ何も見えないが、響とダインスレイフには分かっているようだ。

 

 

「帰ろう。ついでだしクリスは保護してもらう。そろそろ寮長にバレそうだったし」

 

『それがいい。クリスに挨拶は?』

 

「一応していこっか」

 

 

響はいまだに湖に向かって俯いているクリスの元へ近づくと、話しかけた。

 

 

「大丈夫?」

 

「ああ?これが大丈夫に見えんのかよ……うっ」

 

「私、もう行くから」

 

「ああそうかよ……ってはあ!?」

 

 

急な言葉にクリスは叫ぶ。

 

 

「お前……いいのかよ」

 

「別に、もう終わってるし。後は適当に保護してもらいな」

 

 

ひらひらと手を振りながら響はまた羽を出し、飛ぶ。しかしクリスがそれを止めた。

 

 

「ちょっと待て!!」

 

「……なに?」

 

「いや、その……感謝してる。色々な……アイツにも言っておいてくれ!!」

 

「りょーかい。んじゃ、またね」

 

 

短い返事とともに響はクリスに背を向けてその場を去って行った。

 

 

「……なんだったんだ?それに保護って。まあいいか、とりあえずフィーネのところに行かねえと」

 

 

響を見送ったクリスは、 意を決して屋敷の中に踏み込む。道中にも男の死体がいくつもあってクリスは顔を顰めるが、それがフィーネのやったことと認識してさらに進む。やがて、いつも食事を取ったり電撃を浴びていた場所まで来るとクリスは立ち止まる。

 

 

「いねぇ……アイツ、まさかフィーネが居ないのを知ってたからとっとと帰ったのか?」

 

 

傷ひとつないテーブルを触りながら呟いていると、1人でに後ろのドアが開いた。いや、誰かに開けられた。

 

 

「ッ……誰だ!!」

 

 

クリスはすぐに戦闘態勢を取る。シンフォギアの赤いクリスタルを手に取りいつでも纏えるようにしている。

 

カツン…カツン…と少しずつ靴の音が聞こえ、明るい場所になってようやく認識できたその人間は……

 

 

「風鳴弦十郎……!!」

 

「道中、アメリカ人らしき死体が何人分もあったが……」

 

「ッ!!違う!!私じゃない!!」

 

 

弦十郎は硬い表情のままクリスに言う。クリスは感情のままに否定するが、弦十郎の背後から黒服にサングラスを付け、拳銃を手に持つ男たちが何人も入ってきた。

 

 

「安心しろ。誰もお前がやったとは思っていない」

 

 

弦十郎は肩の力を抜くと、黒服達と共に部屋を捜索し始めた。クリスは警戒を解かないままそれを眺めている。

 

 

「司令、こんなものが……」

 

「ん?」

 

 

1人の黒服が何か見つけたのか、弦十郎を呼び出した。弦十郎が近づいてみると『I love you』の文字。黒服はその紙を無造作に引き剥がすと、一本の線が反応した。

 

 

「チッ!!」

 

 

刹那、大爆発が空間を支配する。天井に仕掛けられた爆弾が爆発したのだ。瓦礫が降り注ぎ煙が充満する中で、弦十郎は颯爽とクリスの元まで駆けつけその身を守る。衝撃は発勁でかき消しているためなにも問題はない。

 

この後、クリスと弦十郎の間で一悶着あったが殆ど正史と変わらない。ただ一つ違うのは、クリスに渡した二課用の通信機の数は2つだったと言うことだろう。誰宛の物かは言うまでもない。

 

 

 

〜響〜

 

 

 

「ちょうど良い時に出てきてくれる」

 

 

現在、普段から利用している公園のベンチに座っている響は、また新しく出現しようとしているノイズを感知していた。

 

 

『鬱憤ばらしにはちょうど良いなァ……』

 

「うん。でも数が少ない」

 

『大体10体か。張り合いがねェ』

 

「ちょっと未来に連絡する」

 

 

響は携帯を取り出して授業中だろう未来にメールを打った。内容は『ノイズが出るからいざとなったら二課に逃げて』というような内容だ。必要な部分を切り取ってこれなので本文はもっと長い。響は例の如く先生に許可を貰っているので授業をサボっているが、授業に関してはもう熟知している範囲なので問題は無い。

 

 

「…………うん、行こっか」

 

『あァ』

 

 

『呪い』の羽を広げて一気に飛び立つ響。高度を上げれば地上にいる他人が見ても大きな鳥にしか見えないはずなのでそうしている。

 

 

響が現場に到着すると、すでにノイズは出現していた。まるで空を飛ぶ戦艦と言えるほど巨大なノイズ10体が東京スカイタワーを中心に円を描いて飛行している。位相差障壁によるこの世界への存在比率を変えて……つまり通常攻撃の効かない透明な状態になって。ただでさえ雲のない空色に透明なノイズが合わさると見えるかどうかも怪しい状態。一般大衆はまだノイズに気づいていない。

 

 

「私が近づいても何もしてこない……どうして?」

 

『さァな。デカすぎて雑魚どもみたいな突撃が出来ないとかだと笑っちまうけどなァ……』

 

「まあ飛んでるだけならただの的。とりあえず二体は潰すよ」

 

『任せとけェ』

 

 

響は空中でダインスレイフを呼び出すと天に掲げた。全身から溢れる『呪い』がダインスレイフの切っ先へと収束していきいつでも発射できる状態へとなった。

 

 

「消えろ……ッ!!」

 

 

一旦腕を引いた響はすぐにノイズに向かって切っ先を突き出す。ダインスレイフから放たれるレーザーの如きエネルギーはノイズを貫いて爆散させ、さらに貫通してもう一体消しとばした。

 

それを皮切りに動きを見せるのは8体となったノイズ達。奴らは自身の腹にあたる部分をスライドさせ中身を露出させると、大漁の小型ノイズを地上に向かってばら撒き始めた。

 

 

「なっ……アイツら、攻撃用じゃなくて雑魚を収容する母艦みたいなやつってこと?」

 

『どうやらそうらしいなァ。奴らを優先させれば地上の人間が炭素へと変えられ、地上のを優先すればさらなるノイズが地上へと降り注ぐ。八方塞がりと言っても過言じゃねェ』

 

「冷静に言わないでよ……どうにかならないの?」

 

 

会話をしながらも攻撃の手は緩めない。大混乱となった地上へと向けて羽から、ダインスレイフから、左手から『呪い』をひたすらに乱射して地上のノイズだけを器用に粉砕していく。

 

 

『俺達だけなら無理だなァ。人間の死を犠牲にデカいのを優先するしかねェ……』

 

「そんなのッ……認めてたまるか!!」

 

 

響はノイズへの憎悪をさらに募らせ全身から吹き出る『呪い』を増幅。これまで以上に熾烈な攻撃を仕掛ける。そんな時……

 

 

「よく言ったわ立花!!」

 

「ッ……風鳴翼さん」

 

『千ノ落涙』

 

 

 

響の周りから青く輝く剣が大量に地上のノイズへと降り注ぐ。アメノハバキリの技だ。地上を見ると、バイクの先端に刃を展開し、切り裂きながら走る翼の姿が見える。

 

 

「はぁッ!!」

 

『逆羅利』

 

 

そのままの勢いでバイクから飛び降りた翼は脚部の刃を展開し逆立ちで回転。周りのノイズを駆逐する。制御を失ったバイクもノイズの集団へと突っ込みノイズごと爆散した。それを見た響は翼の元へと降下した。

 

 

「珍しく早い到着で何よりです」

 

「司令がこうなることを予測して先に出撃を命じたの。それで立花、カ・ディンギルという言葉に聞き覚えは?」

 

「カ・ディンギル……?(ダイン?)」

 

『……知らないなァ。が、今の言葉に直訳すれば【塔】を意味する』

 

「何かの塔、ということだけです」

 

「そう……立花が知らないならそうなのね」

 

「謎に信頼度を上げないでください。ノイズの破壊が出来る以外は普通の高校生です」

 

「『…………』」

 

 

翼とダインスレイフがあり得ないものを見るような目で響を見る。直接は言わないが、どう見ても違うだろ、と言いたげな目だった。

 

 

「ま、まあ今は良いわ。それより立花。状況を教えて」

 

「空のデカいのが小型ノイズをばら撒いてます。アレを潰さないと恐らく無限に湧いてきますね」

 

 

響と翼は己に群がってくるノイズ達を吹き飛ばしながら会話する。

 

 

「そう……生憎私は遠距離攻撃に向かない。空を飛べる貴女に任せるしかないわ。頼める?」

 

「はっ……私を誰だと思ってるんですか?ノイズの駆逐は専門ですからねッ!!」

 

 

ダインスレイフを振り切り刃状の『呪い』をばら撒く響。翼からの問いかけに不敵に笑う。

 

 

「それならガングニールは纏ないさい。万が一があるわ」

 

「嫌ですよ。アレだって遠距離には向かないじゃないですか。武器出ませんし」

 

 

実際には響がガングニール本来の槍を必要としてないだけなのだが……そんなこと響の知ったことではない。飛行している小型ノイズの突撃を躱して殲滅している響は、少し面倒そうな顔をしてから飛び立った。

 

 

「いいから聖詠を詠う!!」

 

「うへぇ……仕方ないですね。Balwisyall nescell gungnir tron」(呪槍・ガングニール )

 

 

 

空へと駆けながら響はガングニールを展開。バイザーを装着し、いつも通り悪魔の如き瞳を額から露出させた。ちなみにこの場合のバイザーは太陽光が直接目に入るのを遮断する役目があって便利だ。

 

 

「しゃらくさいッ!!」

 

 

両腕を広げて放つ全方位攻撃。響の周りを飛び回る小型飛行ノイズは逃げても逃げても広がり続ける『呪い』から逃げきれず、侵食されて消えていく。そのまま左腕のハンマーパーツを開いた響は黒いエネルギーを貯めて母艦型ノイズへと腕を突き出す。ダインスレイフのレーザーのようなスピードで飛び出したガングニールの一撃はたやすく一体の母艦型ノイズを砕いた。

 

 

「あー……意外と使える?」

 

『ガングニールが泣くぞ響』

 

 

「切り捨て御免ッ!!」(絶刀・アメノハバキリ)

 

 

地上の翼も、範囲攻撃を巧みに利用して地上のノイズを切り捨てていく。母艦型ノイズから降ってくるノイズを確認するたびにその落下地点へと駆け抜けていち早く処理。動きっぱなしの翼は少しづつ体力を切らしている。

 

 

「はぁ……はぁ……キリが無いッ!!」

 

「私もちょっと消費がキツいです」

 

 

息を切らし始めた翼の元にゆっくり降下してきた響。よく見れば額に汗を掻いている。

 

 

「とりあえず3体までは減らします……おらァ!!」

 

 

両手でダインスレイフを持った響がありったけの『呪い』を詰め込んだ一撃を放つ。2体のノイズが直列に並んだ瞬間を狙っていたため纏めて消滅させた。そのまま響はダインスレイフを天に掲げ色んな方向に向けて『呪い』を撃ち出した。

 

 

『BLOOMED METEOR』

 

 

今回は前日のように時間差で落とすようなことはせずに直ぐに地上へ向けて降り注がせた。しかも1発1発全てが弾けさらに多くの流星となってノイズを広範囲に殲滅していった。

 

 

「ちょっとあの、私を本気でキレさせてくれません?そしたらもうちょっとは戦えるんで」

 

「無茶言わないで!?貴女を怒らせるとか……死んでしまうわ」

 

 

響の突飛な発言に翼は両腕を掴みながら体を震わせる。憎悪による『呪い』の増幅をしたいだけなのだが、翼はそれを分からないのでただただ響が変なことを言っているだけだ。

 

 

「はっ!!お前らしくねえな!!」

 

「誰だ!!」

 

「……やっと来た」

 

『流石に……遅いなァ……』

 

 

2人では無い声が聞こえたと同時に響く銃声。翼は姿が見えないことに警戒し、響は誰か分かっているため疲れた声で言う。

 

 

「あたし様だッ!!」

 

 

ビルの上で、赤い装甲を纏い両腕に大きなガトリングを二丁持ちながら不敵に笑う少女、雪音クリスが満を持して現れた。

 

 

「遅いんだよクリス!!もっと早く来れただろうがッ!!」

 

 

響の『呪い』が少し回復した。

オリジナル聖遺物で最もヤバイ能力は?

  • 自在に姿を隠す
  • 空気操作
  • 純粋な身体能力向上
  • 視界の共有
  • 空間作成
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