私は呪われている   作:ゼノアplus+

2 / 23
本編
プロローグ


1話

 

 

美しい夜の街並にカラフルな異形の姿が映る。周りには真っ黒の人間のような形をした……いや、()()()()()()炭化した物質が風にさらわれて消えていった。

 

ノイズ……認定特異災害と呼ばれる、人間専用の殺戮者達は今日も人間を炭化させるために街に現れる。人や、おたまじゃくしのような形だ。そんな中、1人のジャージ姿の少女がその右手に、体とは不釣り合いなほどの大きさの、歪すぎる形をした剣を持ちノイズ達の前に現れる。顔バレするのを防ぐためか、バイザーのようなものをつけている。

 

 

「……間に合わなかった」

 

 

少女は、可視化できるほどのドス黒い憎悪の感情をノイズに向ける。その感情に反応したその剣は喜んでいるかのように淡く刀身を光らせる。

 

 

「……消えろ」

 

 

刹那、地上にいたノイズ達は切り裂かれる。少女を見ると、その手に持った剣を振り切った後のようだ。

 

もっと奥の方にいたノイズは、その音に気づき少女へ向けて走り出す。……その少女を炭化するために。

 

 

「お前らなんかが存在するから……私は!!」

 

 

少女は、剣の切っ先を迫り来るノイズ達に向けそう言う。

 

 

「やって、ダイン」

 

 

切っ先にドス黒いエネルギーが溜まり、ノイズに向けて発射される。それは俗に言うレーザーのようなもので、少女に向かってきたノイズ達を一掃した。

 

静寂……この場を支配していたであろう、カラフルなノイズ達は残らず消滅した。

 

 

「ふふ……ハァ……」

 

 

少女はその整った顔を一瞬歪ませ笑ったが、すぐに戻しため息をつく。

 

 

「帰ろうかn……ッ!?」

 

 

少女が何か言おうとしたその時、不気味な鳴き声と共に新たなノイズが多数出現した。

 

 

「出てくるなら一気に出てきてよ……まあ、より多く潰せるからいいけど」

 

 

少女はまた切っ先をノイズに向け、先ほどのようなレーザーを放とうとエネルギーを溜める。すると……

 

 

「〜〜〜♪」

 

「チッ……もう来たの?」

 

 

この地獄のような戦場で、よく聞くこの歌。少女はエネルギーのチャージを止め、人間とは思えないジャンプ力でビルの上まで飛ぶ。そしてノイズ達を見下ろせば、青く光る無数の剣が広範囲にわたってノイズを殲滅していた。

 

 

『千ノ落涙』

 

 

「……私の獲物だったのに」

 

「そう思うなら、私について来てもらいましょうか?」

 

 

少女がつぶやくと、後ろの方から声がする。振り向けば、少々過激な装いに刀を持つ有名アーティストがいる。

 

 

「風鳴翼さん……いつも言っているでしょう。私は、自分でノイズを殲滅すると」

 

「残念だけれど、不確定要素しかない貴方を放っておくほど政府は暇じゃない。今日こそ、ここで捕らえさせてもらう!……ッ!?」

 

 

翼がそういい終わり刀を構えた瞬間、翼の顔スレスレを少女が放った黒い光弾が通る。その弾は背後から翼を炭化させようと近づいてきたノイズに当たり、ノイズと共に四散する。

 

 

「貴方がいつも私に向かって言ってるじゃないですか。私が隙を見せるたびに『常在戦場』って」

 

「くっ……」

 

 

顔を赤くした翼から、激しい敵意が向けられる。当たり前だろう、防人としての誇りを持ち、座右の銘とも言える『常在戦場』が出来ていなかったのを指摘されたのだから。

 

 

『翼、落ち着け!我々は彼女と戦いに来たのではない!』

 

「司令……申し訳ありません。少々取り乱してしまいました」

 

 

おそらく翼の頭についているヘッドフォンのような機械から聞こえてくる、OTONAの声。一度あの力を見てしまった少女は、少し震えた声で聞く。

 

 

「まさかとは思いますけど、あの筋肉すごい人いないですよね?」

 

「連れてきて欲しいなら、お願いしてみるけど?」

 

「いえ、結構です!!」

 

「なっ!?待て!!」

 

 

少女は翼に背を向け跳躍、全身を黒いエネルギーで包み込み、夜の闇に溶け込むように姿を消した。

 

 

「司令、逃してしまいました。申し訳ありません」

 

『いや、今のところは問題ない。二課と敵対するそぶりはないからな。それよりもノイズの殲滅、ご苦労だった。帰投してくれ』

 

「了解」

 

 

 

〜所変わって、とある公園〜

 

 

(しつこいなぁ……)

 

 

翼から逃げ切った少女は、ベンチに座ってため息をつく。その手にあった剣は、少女が手を離すと同時に消える。剣を離し、自由になったその手でバイザーを外し、またどこかへと消す。

 

 

「帰らないとなぁ……寮に」

 

 

同室の子が寝たのを確認して勝手に抜け出してきた学生寮を思い浮かべるが、少女に帰る様子はない。

 

 

「……今日も疲れた」

 

 

数分後、少女からは寝息が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

……

 

………

 

…………

 

……………

 

 

「なんで、お前が生き残ってるんだ!!」

 

「お前なんかよりも、生きるべき人が死んだんだぞ!!」

 

「私の兄さんが死んだのに……なんであんたなんかが!!」

 

「いっつもヘラヘラして……ふざけてるのか!!

 

「この……」

 

「「「「「「人殺し!!」」」」」」

 

 

違う!私はただ……助けられて……奏さんに……

 

 

「奏?……歌姫も殺したのか!?」

 

「お前が死んでいたら、ツヴァイウイングは欠けることがなかったのに!!」

 

 

やめてよ……みんなが被害者で……しかたがなかったんだよ!!

 

 

「自分のせいだとも思わないのか!!」

 

「人情なし!!」

 

 

なんで……誰も聞いてくれないの?話し合おうよ!!

 

 

「人殺しの話なんて誰が聞くか!!」

 

「この悪魔め!!」

 

 

……話し合うのは……無理なの?……そう、無理なんだ。

 

 

そんな風に、言われ……殴られ……イジメられ……私の精神は擦れていった。

 

……ある日、私は聞いてしまった。

 

 

「なんであんなやつの味方をするのよ!!人殺しよ!!」

 

「人殺しなんかじゃない!!運が悪かっただけだけ……被害者なのに……」

 

「ふざけないで!!」

 

「キャッ!?」

 

 

私のとっての陽だまりが……唯一無二の親友が私のせいであんな奴らにイジメられていた……私はその陽だまりを助けだし、その姿を見て思わず……逃げ出してしまった。

 

公園にたどり着き、そのベンチに座る。

 

 

「なんで……なんで……ナンデ……?あの日……奏さんは必死に戦っていた。みんなを助けるために……私を……逃がすために。なのに……

 

奏さん……貴方に助けてもらった命は……否定されてるよ……もう……どうすればいいの……」

 

 

お父さんは出ていった。世間からのバッシングに、お母さんも、おばあちゃんも限界……もちろん私も……

 

 

『生きるのを諦めるな!!』

 

 

命の恩人からかけられた言葉が……私の中で繰り返される。その言葉はもう、今となってはただの呪いにしか聞こえない。

 

 

「私……呪われてるかも……」

 

 

ああ……こんな風になったのはナンデだっけ?私が……ライブに行ったから?違う……あの日にあのあの場所でライブがあったから?違う……みんなが私を悪く言うから?ちがう……ツヴァイウイングが、ちゃんとみんなを助けなかったから?ちがう……私が……生きてるから?……チガウ!!

 

ノイズが現れたから?

 

…………そうだ。アレが悪い、たとえ自然災害に登録されていても……アレは明らかに人間を殺すと言う目的がある。ふざけるな!! あんなのがいなければ、たくさんの人が死ぬことも、奏さんが死ぬこともなかったのに

 

 

アンナノガイナケレバ……私も……未来もコンナコトニナラズニスンダノニ……

 

フザケルナ!!ノイズナンテキエテシマエバイイ!!

 

イヤ……ワタシニ……ノイズヲコロスチカラガアレバ!!アイツラヲ……ミナゴロシニ……!!

 

 

シャリン………

 

 

「ふぇ?」

 

 

……その時だった。

 

 

 

『ヨォ……アンタが俺のご主人様か?』

 

 

とても大きくて、真っ黒なのに、ところどころ血のように赤い模様が入っている剣が空から飛んできて、そのつかにある大きな赤い目でこちらを見ながら語りかけてきた。

 

 

「なに……これ……?」

 

()()呼ばわりとは失礼な人間だなァ……』

 

「剣が……喋ってる!?」

 

『おう、ダインスレイフって呼ばれてるんだ。よろしくなァ……』

 

「あっ、はい!よろしくお願いします!!」

 

 

剣に向かってしっかりと挨拶をする光景は、さぞかしシュールなんだろう。

 

 

『ハッハッハ!!俺に挨拶してくる人間は久しぶりだなァ!一体何百年ぶりだァ?』

 

「えっ……え〜と」

 

『真面目に答えてくれなくていい。ただの独り言だ。……さて人間、お前は今なにを望む?』

 

「ッ……」

 

 

突然投げかけられたその言葉に、一瞬忘れかけていたこの激情が再び体を熱くする。そして、私は答える。

 

 

「力……」

 

『あァ?』

 

 

今までの事が、さらに鮮明にフラッシュバックする。そして、ノイズを倒していたあの2人の事も。

 

 

「ノイズを倒せる力が欲しい!!あんな奴らが存在するから、私は、未来は、家族は!!」

 

『……その力のために、生涯にわたって呪われる覚悟はあるかァ?』

 

 

呪われる?……呪われる、か。……そんなの、

 

 

「そんなの今更だ!!()()じゃない。私は、とっくの昔から……()()()()()から!!」

 

 

叫ぶ。喉が痛いほど大きな声で叫んだけど、なぜか人の姿が見えない。たまたま近くに人がいなかったんだろうか?

 

 

『いい覚悟だなァ……ククク……人間、お前に力を与えてやる。コレは契約だァ』

 

「けい……やく?」

 

「そうだ。お前は俺を、俺はお前を。その身朽ち果てるまで互いに()()。そして、その呪われた剣と人間の体は一つになり本当の意味でチカラが生まれる。どうだァ、簡単だろ?』

 

 

正直、よく分からない。一つになるってこととか、力が生まれる?って事も。……でも、それでも、だとしても、私は!!

 

 

「……うん、その契約をするにはどうすればいいの?」

 

『それも簡単だァ』

 

 

ダインスレイフさんがそう言うと、少し上昇してその剣の先を私に向けた。

 

 

「……え?」

 

『頑張って耐えてくれよォ、新たなご主人様ァ?』

 

 

刹那、私の胸に、ダインスレイフさんが刺さった。

 

 

「ガァァァアアァァァァアアァァァァァア!?!?!?!?」

 

 

苦しい!!痛いけど、そんなのが比べ物にならないくらいに苦しい!!……コレは、

 

 

『俺と契約した今までの人間の憎悪の感情だァ。数百年にわたって蓄積された契約者の呪い、その未熟な体で受け止めて耐えてみせろ』

 

 

体がはちきれそうだ……みんなの痛み、悲しみ、苦しみ、憎しみが、私の中に入ってくる。

 

……でも、どこか知っている。この感情は?

 

 

【化け物が!!お前らのせいで村が!!】

 

【出て行け!!せめて神の生贄にでもなってこい】

 

 

……ああ、同じだなぁ、私と。……この人も、この人もだ。

 

 

『……やるじゃねえかァ』

 

 

そうなんだ……昔から人と人は話し合う事も出来なかったんだね。

 

ダインスレイフさんは、耐えろって言った。……でも、この感情たちは耐えてばかりじゃ報われない。

 

だから私は……受け入れよう。だから、皆さんの想いを……呪いを……私に!!

 

 

『ハハッ……受け入れやがった……アイツらの呪い全て……』

 

 

とても晴れやかな気分だ。清々しくて、新しい世界が開けた感じがする。……それでも、この内に秘めた感情はとても熱い。

 

 

「……どこに行ったの、ダインスレイフさん?」

 

『お前が出てこいって念じれば出てくる。やってみろ』

 

 

じゃあ、出てきて。

 

 

『おう、出来てるじゃねえかァ』

 

「……契約出来たの?」

 

『ああ、バッチリだ。これからよろしく頼むぜ。……そういや、ご主人様の名前を聞いてなかったなァ』

 

「……言ってなかったっけ?……私は」

 

 

そう、この時から始まったんだ。

 

 

「立花響。よろしくね、ダイン」

 

『ああ、ヒビキ』

 

 

私たちの、呪われた日常が。

オリジナル聖遺物で最もヤバイ能力は?

  • 自在に姿を隠す
  • 空気操作
  • 純粋な身体能力向上
  • 視界の共有
  • 空間作成
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。