私は呪われている   作:ゼノアplus+

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呪われた撃槍

2話

 

 

「んっ……んぅ?」

 

「おはよう、未来。熟睡だったね」

 

「響?……おはよう。……また、()()たでしょ?」

 

「うっ……やっぱり分かっちゃう?」

 

 

公園で寝てしまった響は、なんとか夜が明ける前に起きて私立リディアン音楽院の学生寮に帰ることができた。

 

同室の小日向未来が寝静まってから抜け出しているはずだが、いつもバレているのが響の謎でもある。

 

 

「何してるかは聞かないけど、危ないからあんまり行かないでね」

 

「起きて早々、お説教はきついよ未来〜」

 

「自業自得でしょ!」

 

『ククク、最近だともうおなじみの光景だなァ……ヒビキ?』

 

(言わないでよダイン、分かってるんだから)

 

 

声に出さなくても会話ができる念話を使って、響とダインスレイフはいつも会話をしている。リアルで話すのと、念話で話すのを両立することもあり、マルチタスクもできるようになったのは運が良かったのだろう。

 

 

「先に行ってるね。ちょっと、気分転換してくる」

 

「……うん。遅くなっちゃダメだよ」

 

「じゃあ、また後でね」

 

 

昨夜から着ていたジャージのまま、響は出て行く。

 

 

「……相談、してくれないのかな」

 

 

 

 

『出てきて良かったのかァ?あの調子だと嬢ちゃんは……』

 

(分かってるって……ダイン、本当に感情を読み取るのが得意よね)

 

『当たり前だ。何百年人の感情を食らってきたと思ってんだァ?』

 

(ごめんごめん。……でも、気分転換したかったのは本当だよ)

 

 

相変わらず無表情の響だが、心のうちではそこそこ和やかな会話が繰り広げられているなど、通り過ぎる人には知る由もない。

 

 

「……ッ、ダイン?」

 

『アァ……夕方ごろだろうなァ。ヒビキも()()()()()()きてるじゃねえかァ。上出来だ』

 

 

何かに気づいたヒビキとダインスレイフ。

 

 

(最近多くない?)

 

『前にも言っただろ?ノイズは、所詮人間が人間を殺すために作られた《《兵器》』だって』

 

(覚えてるよ。生物じゃないから、殺すっていう表現はおかしいって教えてくれたから。……どこぞのヤツが、操ってるんだよね?)

 

『まァ……それが妥当だろうなァ……』

 

 

先史文明期まで遡る出来事をなぜ知っているのか、ダインスレイフは響に何も言わないが、響が了承しているのでお互い特に気にしない。

 

 

(それがわかってるだけ十分だよ。だって今度は……ブチ殺す相手が見つかったんだから♪)

 

『……そうだなァ(教えない方が良かったかもしれん……)』

 

 

呪われた魔剣ですらちょっと引くほどの響の言葉。

 

「帰ろっ、ちゃんと英気を養わないとなぁ♪」

 

『おう……(嬢ちゃん……すまねぇなァ……)』

 

 

魔剣がただの人間に謝ったのは初めてだろう。

 

 

 

〜時は経ち夕方〜

 

 

 

 

「次のノイズはどこだァ!!」

 

 

サイレンが鳴り止まぬ街中で、またノイズが現れる。

 

 

「消えろ!!」

 

 

響はダインスレイフを振り抜き、そのエネルギー波でノイズを一網打尽にした。

 

 

「キャー!!」

 

「ッ……子供?ダイン、一旦収めるよ」

 

 

そう言って響はダインスレイフを消し、声の主の元へ向かう。

 

 

「……どこ……いた!!」

 

 

見つけた声の主は、今まさにノイズに炭にされそうになっていた。

 

 

「……ッ!!やっぱりお願い、ダイン!!」

 

『恨むなよォ』

 

 

もう一度ダインスレイフを呼び出し、エネルギー弾を放つ。

 

 

「……ふぇ?」

 

 

ノイズは消し飛び、女の子の生存を確認。よく見れば、黒い靄が少し女の子の腕にまとわりつこうとしている。

 

 

「マズイ……届けぇぇぇ!!」

 

 

響はその人間離れした跳躍力で女の子の下まで行き、その腕を掴む。

 

 

「痛っ!?」

 

「ッ……ごめん。でもちょっと我慢してね」

 

 

少しずつ……この黒い靄、『呪い』を自分の中に吸収して行く響。ただの一般人には、この『呪い』は劇薬だ。

 

 

「……うん、もういいよ。早くシェルターに……!?」

 

 

さらに現れるノイズの群衆……

 

 

「次から次へと……こんなタイミングで……クソッ、今はダインは呼べない」

 

『その子を見捨てるっていうのはァ……?』

 

(無理、誰に監視されてるかわかんない。ついでに、見殺しは嫌)

 

『だよなァ……じゃあ、とにかく走れ』

 

「了解」

 

「死んじゃうの?」

 

「ッ……」

 

 

『生きるのを諦めるな!!』響の中で命の恩人からの言葉が響き渡る。今の自分に、命の恩人の言葉を借りる資格はあるのだろうか?響は、女の子を連れて走りながらも迷う。そして……

 

 

「死にたくなかったら、走り続けて!」

 

 

こんな言葉しか投げかけることができない自分自分自身を呪う。

 

 

『おいヒビキ、ここはァ……』

 

「何?……シェルターと逆方向じゃん。ていうか工場地帯。やらかしたかな」

 

 

目に見えるのは迫り来るノイズと工場。それでも響は女の子を連れて必死に逃げる。

 

 

「今からすることは内緒ね、約束できる?」

 

「え……う、うん」

 

「良い子だね。よッ……」

 

「うわぁ!!」

 

 

響は女の子を抱きかかえ跳躍、まだノイズの来ていない高台に逃げる。

 

 

「……すぐにノイズが来るよね。仕方ないか。ダイン、()()って使っても大丈夫なの?本当に『呪い』を撒き散らさないようにできる?」

 

『アァ?……それは問題ない。しっかり調()()したからなァ……だが確かな事は、色々バレるのと連中が本気を出して追ってくることがくらいかァ?』

 

「じゃあ、大丈夫だ」

 

「お姉ちゃん、誰とお話ししてるの?」

 

「なんでもないよ、ちょっと離れてて」

 

 

響は女の子を下ろし、ノイズが迫ってくる壁を見下ろす。

 

 

「私に応えて。……Balwisyall nescell gungnir tron」

 

 

胸から浮かぶそれを歌う。響の服が消え、胸と腰に黒いエネルギーのリングが生まれる。その後響の体に漆黒のアーマーが装着される。

 

 

「グッ……あんまり痛くないかな」

 

 

明らかに質量保存の法則を無視した量の機械が響の中に入って行ったりした気がしたが響自体にはなんの問題もなさそうだ。

 

最後に響の額の部分に、ダインスレイフが持つ悪魔のような赤い目と同じものが現れる。響はそれを無視して、いつものバイザーを装着。一瞬謎の音がし、なぜかバイザーとアーマーがつながった。

 

 

「……よし。これならいけそう」

 

「お姉ちゃん、カッコいい!!」

 

「……ふふ、じゃあ、ちょっと行ってくるね」

 

 

女の子に向けた穏やかな笑みの後、無表情に戻り屋上に上がってきたノイズを睨みつける。

 

正史と同じ場所、同じ状況で、その姿はまるで違う立花響が『ガングニール』を纏ったのはきっと、偶然ではないだろう。

 

 

「おまたせ、それじゃあやろっか。ダイン」

 

『おうよ、コイツもしっかり言うことを聞いてくれてるみたいだしなァ……』

 

 

響は先ほどまで手を繋いでいたその手に、ダインスレイフを出現させる。

 

 

「……消えろ」

 

 

響は、ノイズに向かって突撃する。

 

 

 

 

〜二課〜

 

 

「突如、ノイズとは異なる高出力エネルギーを検知!!位置特定……これは!?あの少女の反応と同じ場所です!!」

 

「波形を照合……これは、まさか!!アウフヴァッヘン波形!?……ちょっとズレてるところがあるけど、この波形はどう考えても」

 

 

【GUNGNIR】

 

 

「……ガングニールだとぉ!?」

 

「ッ!?……急行します!!」

 

「なッ……待て、翼!!……仕方あるまい、翼の援護だ!!」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

 

OTONAはいつも通りだった。

 

 

 

 

〜工場地帯〜

 

 

「〜〜〜〜♪」(撃槍・ガングニール verダインスレイフ)

 

 

戦場に歌が響く。正史よりも禍々しく、しかし、芯のブレないその歌は響の纏うギアの出力をさらに上げていく。

 

 

(歌詞が浮かんでくる……耳のヘッドフォンからも曲が聞こえる。風鳴翼さんは、いつもコレで戦っているんだ……)

 

 

「そこも!!〜〜〜〜♪」

 

 

『コイツ結構なんでも出来るみたいだぞ?何が欲しい?』

 

(じゃあ、ブースターかなんか)

 

『ほらよ、完成だ』

 

(はやっ!?)

 

 

心の中で驚きながらも展開されたと同時に使用、ダインスレイフの力と、推進力でノイズをなぎ倒す。

 

 

ちなみに女の子には薄い『呪い』の膜を張ってある。生半可なノイズの攻撃では破壊されないだろう。『呪い』は万能だ。

 

 

「〜〜〜〜♪〜〜ッ、いつも思うけど来るのが遅いよね」

 

『やめて差し上げろ。俺たちと違って奴は純粋な人間なんだからなァ……』

 

 

ドォーン!!

 

 

一際大きめの緑色のノイズの左足に何かがぶつかる。

 

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

 

声が聞こえてきた方を見れば、巨大な剣が空中にあった。

 

 

『蒼ノ一閃』

 

 

翼さんの放った斬撃がノイズの後ろの建物ごと破壊する。

 

 

「……せっかく、地形に気をつけながら戦ってたのに」

 

「その禍々しいギアでそんな余裕があるのね?」

 

「風鳴翼さん……貴方だってノイズ退治のベテランでしょう?もうちょっとなんとかならなかったんです?」

 

 

着地してきた翼と向かい合う響。お互いの手にはそれぞれの獲物が握られている。お互い見つめあってはいるが、響の目はバイザーで覆われていて翼からは見えない。

 

 

「「………」」

 

「とりあえず子供の救助をしてくるんで、殲滅任せますよ?……本当は私が潰したかったのに」

 

「……分かったわ。どこにいるの?」

 

「あそこです」

 

 

響が指をさした先には、黒いドーム状の膜が張られていてその中が見えない。

 

 

「あの中に……?あんなことまで……汎用性が高すぎる……」

 

「出来るんだからいいでしょう?……さてと、行きますよッ!!」

 

「なッ……待ちなさい!!」

 

 

響が先行し、『呪い』の膜を解除して女の子を抱きかかえて飛ぶ。

 

 

「お姉ちゃん!?」

 

「ちゃんと捕まっててね。すぐに安全なところn……ッ!?」

 

 

響が言い終わる前に大型の人型ノイズが迫ってくる。

 

 

(この子を抱えたままじゃ……)

 

「はあッ!!」

 

 

『天ノ逆鱗』

 

 

「早く行きなさい!!」

 

「……ありがとう」

 

 

もどかしい気持ちになりながらも響は後退していく。

 

 

(どこか、人の密集している場所は……)

 

『ヒビキ、10時の方向』

 

「ん?……光?……装甲車!」

 

 

おそらくどこかの部隊だろう。風鳴翼の援護かどうかは知らないがちょうどいい。響は再度跳躍し、そこに向かう。

 

 

ドォン!!

 

 

「なんだッ!?隊長、空から女の子がッ!!」

 

「なに?……ッ!?『ルサンチマン』……」

 

 

『ルサンチマン』……主に弱者が強者に対して恨みや憎悪などの感情を持つことを言うその言葉は、隊長と呼ばれた男から響に向けて言われた。

 

 

「ルサンチマン?……全く、私にぴったりじゃん。この子の救助を!!ほら、助かったよ?」

 

「お姉ちゃん……行っちゃうの?」

 

「……私のこと、あんまり人に言っちゃダメだよ?」

 

「……うん。……またね、お姉ちゃん!!」

 

「……またね。生きるのを諦めちゃダメだよ」

 

(あの日、私にかけられた呪いの言葉を貴方にもあげる。だから、生きてよね)

 

 

女の子が大人に連れられるのを見届けて、響は先ほどの場所を見る。

 

 

「……行くか」

 

「止まれ!!貴様には捕縛命令が出ている!!」

 

 

声の方を向けば、銃を構えた戦闘員が大量にいた。

 

 

「……はぁ。……邪魔」

 

(ダイン)

 

『あいよォ……』

 

 

響の声とともに、響の体から黒い霧状のもやが出てくる。

 

 

「ッ!?各員警戒!!」

 

「……どいて」

 

『ヒビキ、歌ってねェから出力が下がっていってるぞ?』

 

(別に……風鳴翼さんとか、筋肉の人とか、あの忍者じゃなかったら問題ない)

 

 

「やめなさい!!」

 

「……終わったんですか?」

 

 

少しずつ下がっていく戦闘員を見ていると、今度は背後から翼がスラスターで空から降りてきた。

 

 

「ええ、あとは貴方の確保のみよ」

 

「……ここで戦る気なんですか?ぱっと見、民間人もいますよね」

 

「貴方がおとなしくしてくれたら、そんな必要もないわ」

 

「チッ……もう帰りたいんですけど」

 

「無理ね。さあ、武装を解除しなさい。貴方には、聞きたいことが沢山ある!!」

 

 

 

翼は先ほどよりも鋭い目つきでこちらを見てくる。

 

 

「……」

 

(どうするべきだと思う?)

 

『いいんじゃねェかァ?あの化け物男でも、『呪い』さえ浴びせてしまえば無力化は出来るしなァ……』

 

 

ダインスレイフの呪いにも種類がある。正史では、破壊衝動が増すと言うものだが、今言った無力化するための『呪い』は脳組織を侵し精神を破壊するためのものだ。無論、響は人間で実証済み。

 

 

「……分かった。但し条件がある」

 

「なに?」

 

「お互い暴力は無しにしましょう。私はコレがなくても力を使える。その事を十分理解してください」

 

「ッ……分かったわ」

 

「私たちは対等な関係、手錠は無しです。()()()ますよ」

 

 

響がそう言うと、目に見えてスーツの男の数が減った。

 

 

「じゃあ、先に解除しますね」

 

 

響はギアを解除する。それに対して翼は……

 

 

「リディアンの……制服ッ!?」

 

「……それも把握してなかったの?」

 

 

正史で立花響の鞄から情報を得ていたあたりでこうなのはお察しだろう。いつもジャージでバイザーをしていたのだから。

 

 

「……早く行きましょうよ。時間は有限です」

 

「え……ええ……」

 

 

 

〜リディアン〜

 

 

「……中央棟。気づかなかった」

 

「こっちよ。緒川さん」

 

「お二人とも、どうぞこちらへ」

 

(いや、こちらへって……壁じゃん)

 

 

響がいつも忍者と呼ぶ、緒川がある端末をかざすと壁……扉が開きエレベーターが姿をあらわす。

 

3人はエレベーターに乗り込み地下へと降りていく。もちろんバイザーは被ったままだ。

 

 

「別に、身バレしてないとは思ってないんで外せと言われたら外しますよ。人と目を合わせるのが嫌いだからこのバイザーを付けてるだけなんで」

 

「別に良いわ。聖遺物由来の波形も検出されていないし」

 

(……波形?)

 

『俺たち、聖遺物が起動すると特殊なエネルギーが出る。大方、それを感知するものでも作ってるんだろうなァ……』

 

(へぇ……)

 

「へんな模様ですね。まるで大昔の壁画みたい」

 

「「……」」

 

(無視……いや、自分も思ってるけど口には出せないってところかな)

 

 

微妙な空気が流れていると、エレベーターが止まる。どうやら目的の階層に着いたようだ。……扉が開く。

 

 

(さてと……どうしようかな。人間相手は面倒くさい。これなら丸一日ノイズの相手をしていた方がマシだよ)

 

 

心の中で身構える響。しかし……

 

 

パーン!パパーン!パチパチパチパチ……

 

 

「……は?」

 

『ククッ……ハッハッハッハッ!!これだから人間は面白い。最近はこう言うのも好みだァ。実にバカらしい』

 

 

ダインスレイフが何か言っているが響はガン無視。

 

 

「ようこそ!!人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へ!!」

 

「……はぁ」

 

「あはは……」

 

 

どうやらこの2人はなんとなく予想できたらしい。響が筋肉の人と呼ぶ、風鳴弦十郎もいる。

 

 

「さあさあ、お近づきの印にツーショット写真でも……」

 

「ッ!!」パチン……

 

(ダイン!!この人……)

 

『アァ……油断するなよヒビキ……コイツは良くねェ……』

 

「あら……お気に召さなかったかしら?」

 

「……突然触れられたら流石に警戒します。弾いたことは……すいません」

 

 

色々凄い女の人にそう言いながら上を見ると、『熱烈歓迎!立花響さま☆』の文字。用意がよすぎる。

 

 

「……プライバシーもあったもんじゃない」

 

「ハッハッハッ、我々二課は調査程度お手の物なのさ」

 

 

杖から花を出しながら、弦十郎は言う。見た目と行動のギャップがおかしい。

 

 

「んふふ……♪」

 

 

櫻井了子が響の鞄を持ってくる。

 

 

「……いつのまに」

 

(しかも、他の職員はもうそれぞれ楽しんでるし……)

 

『この嬉々とした感情たちには腹がたつがァ……なかなか面白そうな連中じゃねえかァ』

 

「さて、落ち着いたところで自己紹介をしよう。俺は風鳴弦十郎、ここの責任者だ!」

 

 

ニカッと笑う巨漢。

 

 

「そして私は、できる女と評判の櫻井了子。よろしくね♪」

 

 

ウインクをするセクハラ魔人(仮認定)

 

 

「……よろしくする気はないですが、どうも」

 

 

私が嫌いな、無駄に責任感の強そうなタイプの人たちだ。




『ルサンチマン』がわかる響。まさか学があるのか!?

オリジナル聖遺物で最もヤバイ能力は?

  • 自在に姿を隠す
  • 空気操作
  • 純粋な身体能力向上
  • 視界の共有
  • 空間作成
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