私は呪われている   作:ゼノアplus+

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呪槍・ガングニール

6話

 

 

 

『私は進んで地獄に落ちてやるッ!!』

 

『私は進んで悪魔にでもなってやる』

 

 

(似ても似つかないのに……あの2人がどうしても重なる……)

 

 

壮大な海の中で、沈み込んでいくのは天羽々斬を纏った姿の風鳴翼。その中で、翼は2人の少女の姿重なって見えていた。

 

 

『そんな剣捨てちまえよ。せいぜい『歌姫』が関の山だ』

 

 

(ッ!!……奏のいない私には、歌姫だってこなせる自信がない。私は、己を剣と鍛えた……それでも、奏のガングニールを纏うあの子には敵わない。それどころか……)

 

 

ツヴァイウイングのライブから始まった悲劇の連鎖。今までのことを思い出していく中で翼は己の醜態に目をそらす。

 

 

「……」

 

「ッ、奏!!」

 

 

突如として翼の目の前に現れたのは、かつての親友にして戦友である天羽奏。

 

 

「翼がもっと強ければ、あたしは助かったかもしれない」

 

「ッ!?!?奏……ぐぅ!?」

 

 

奏が言葉を発すると、奏の体から出た黒い靄が翼の首を絞め上げる。

 

 

「あたしはもっと翼と歌いたかった。翼……どうしてこうなったんだ?」

 

「がっ……そ、それは……ああぁぁああッ!!」

 

 

黒い靄はさらに翼の体を蝕む。少しでも気を抜けば、取り込まれてしまいそうになる。

 

 

「なあ翼、どうして何も言ってくれないんだ。翼はあたしと歌っていたくはなかったのか?」

 

「そん……な……こと……」

 

「翼、今のお前は片翼だけで飛べるのか?最近は、あたしが助けたあの子がノイズをぶち殺してる。まるで昔のあたしだ」

 

「ッ……それでも……奏は変わってくれたじゃな……ぐぅぅッ!!」

 

 

奏の体から出ていた黒い靄は全て出きった。そして少しずつ翼の体を侵食し始める。

 

 

「あっ……あぁ……(壊したい……今すぐにでも何か……そうだ、目の前にいるじゃない……)はッ!?……私は今何を……ぐッ!!」

 

 

翼の心に芽生えたのは、『破壊衝動』必死にそれに抵抗している翼に余裕はない。そんな時、奏がスッと翼から離れていく。

 

 

「奏ッ……いかッ……うぐッ!!……ないでッ!!」

 

「……」

 

「かなでぇぇぇぇ!!……」

 

 

翼は必死に奏に向かって手を伸ばすも、その手は届かない。ついで現れたのは、翼にとっては因縁とも言える少女。

 

 

「……あーあ、行っちゃった」

 

「立花……響……」

 

 

いつのまにか体を蝕んでいたはずの黒い靄が消えている。そしてあたりの風景はツヴァイウイングのライブ会場に変わっていた。

 

 

「覚えてます?ここでの出来事」

 

「忘れるわけがないでしょう!!だってここで……奏は……」

 

「そうですよね。忘れるわけないですよね、ここでどれだけの人が死んだのか……」

 

「……ええ」

 

響は普段からは想像もできないような大袈裟な動きをしながら言う。

 

 

「では、見てみましょう。お二人が戦っている間、観客がどんな事になっていたのかをね」

 

「どういう……こと?」

 

 

翼が問いかけると同時に、あたりの風景が変わる。

 

 

『ノイズだぁぁぁ!!』

 

「ッ!?」

 

 

翼の目に映るのは多くの人々が、大量発生したノイズ達から逃げる光景。

 

 

「これはッ!?」

 

「私が前にたまたま出会った生存者の記憶。公園でブツブツと何かを呪うように呟いてたからちょっと貰ってきたんです」

 

「貰った?……立花響、貴女は一体」

 

「ほら、みてくださいよ」

 

『邪魔だどけよ!!』『死にたくないんだぁ!!』『痛っ……ちょっとやめてッ!!』

 

 

人が溢れかえった通路では、他人を顧みず自分が助かろうと人を殴り、足蹴にし、我先にと進もうとしている。

 

 

「うそっ……そんなっ」

 

「嘘でもないんでもない、事実です。だって、人の大切な記憶ですよ?」

 

 

ノイズは来ていない。そのほとんどがステージの上で戦っている翼や奏に集中しているからだ。だと言うのに……

 

 

「なんで……人同士が……」

 

「どうでもいいからですよ」

 

「なにッ?」

 

「自分が助かるためには他のことを気にしてられない。たとえそれが、今まで接してきた人だとしても」

 

「立花響……?」

 

響は悲しそうな目で遠くを見つめる。その瞳に何を写しているのかは翼には分からない。

 

 

「分かりました?貴女が守った命は、同じ時に奪われていくんです。同じ人間にねぇ?」

 

 

ねっとりと翼の心に絡みつく言い方。認識して、理解してしまった翼は目を見開く。

 

 

「では……私たちが守った命は……」

 

 

また景色が変わる。

 

 

『人殺し!!』『お前のせいで会社の契約は打ち切られた、どうしてくれる!!』『あなた……私はもう……』

 

『なんで……俺は……生き残ったんだぞ……生きる事が、生き残る事が悪い事だってのか!!』

 

 

「守った命も否定されるの……ノイズの次は人に……」

 

「そう!貴女が守れなかった命を悔やんでも、貴女が守った命がどうなったかは知らないでしょう。あーあぁ、さぞ苦しいでしょうねぇ!だって、私も苦しかったのだから!!」

 

 

これまでにないほど顔を歪め叫ぶ響、思わず翼は一歩下がってしまう。

 

 

「なに引いちゃってるんですか?目を逸らさないでくださいよ。これは貴女が……貴女方が知るべき罪なんですから」

 

「罪……」

 

「なにかを手に入れるためにはなにかを手放す事が必要なんです。……よく考えろ、風鳴翼。お前が何を選び何を捨てるのか、私は見ている」

 

「何を選び……何を捨てるのか……」

 

 

そこまで言うと響の姿は少しずつ消えていった。

 

 

「……私に、何かを捨てる覚悟があるの?」

 

 

翼の問いに答えるものはいない、かもしれない……

 

 

 

〜響〜

 

 

 

「クフフッ♪足りないよぉ!!」

 

「だったら持ってけッ、出血大サービスだ!!」

 

 

『NIRVANA GEDON』

 

 

大量のノイズを切り裂いているとたまに飛んでくるネフシュタンのエネルギー弾。

 

 

「クフフッ、大サービスなんだったら、貴女の血を見せてッ!!」

 

 

それすらも、『呪い』を纏わせたダインスレイフの斬撃には及ばず切り裂かれ爆発した。

 

 

「狂ってやがるッ!!はぁッ!!」

 

「ノイズを操る奴に言われたくはないよッ!!」

 

 

さらに増えていくノイズに、それらを巻き込みながらも、ノイズとともに鞭状の刃で響に攻撃を仕掛けていくネフシュタンの女。響は刃を弾きながらも周りのノイズを切り裂き、エネルギーで潰している。

 

 

「そんなでかい得物じゃあ、近づかれたらどうすんだ!!」

 

「ッ!?」

 

 

響が近づいた時にはもうネフシュタンが懐まで迫り、エネルギーを溜めていた。

 

 

「チェックメイトだッ!!」

 

「……お前だよ♪」

 

 

 

ネフシュタンの『NIRVANA GEDON』が発射される直前、響の顔が狂喜に歪む。

 

 

「ごはッ!?」

 

「アハッ♪……弾けてぶっ飛べッ!!」

 

 

ネフシュタンが再生するのは先の戦闘で確認していた響は、意識を刈り取ることに集中しその腹を左腕で殴る。()()ガングニールとしての推進力を加えアームドギアを生成するはずのエネルギーをパイルバンカーの要領で射出しているため、響の予想以上にネフシュタンは吹っ飛んだ。

 

 

「……これ、意外と使えるかも。いい拾い物をしちゃったなぁ♪……あの女も寝てるし、クフフッ♪ノイズ……ノイズノイズノイズゥゥゥゥ!!」

 

 

そこからは瞬く間にノイズを殲滅した響。ガングニールの力も合わせたため瞬殺である。

 

 

「クフフッ♪それじゃあその棒ッ切れを貰っちゃおうかな♪」

 

「ぐッ……バケモノめ……ぐあッ!?(ネフシュタンの再生が体にも……)」

 

「まだ意識があったの?……風鳴翼といい貴女といい、しぶといなぁ……」

 

 

木に寄りかかって苦しんでいるネフシュタンに近づいた響は、笑いながら話しかける。

 

 

「だてに……完全聖遺物なんて纏っちゃいねえんだよ。……クソッ、どうしてこんなキチガイなんかに……うぐっ」

 

「苦しそうだねぇ♪さあ、早く頂戴?」

 

「チッ……お前なんかに渡すくらいなr……ッ!?体がッ、動かない!?」

 

「ッ……私も……どうなって……ッ!!」

 

 

突如体が動かなくなった2人、ネフシュタンが辺りを見回すと……

 

 

「……ッ、剣!?」

 

「……しつこいなぁ」

 

「……」

 

 

『影縫い』

 

 

いつのまにか目が覚め、響達に近づいてきていた翼は真剣な表情で響達を見つめる。

 

 

「立花響……貴女は私が止めるわ。ネフシュタンの鎧も返してもらう」

 

「何を言いだすかと思いきや、随分と欲張るじゃねえか。さっきポッキリ折れたように見えたんだけどなぁ?」

 

「止めるって言われても、私はいつも通りですよぉ?クフフッ♪」

 

「私が守れなかった命と目をそらしてきた命に報いる為にも、月が出ている間に終わらせましょうッ!!」

 

「何をッ……まさかッ、唄うのか!?」

 

「唄う……?……ッ、アレか」

 

 

響の脳裏に浮かんだのは2年前のライブで天羽奏が歌った命がけの歌。

 

 

『ヒビキ!!流石のお前でもアレはヤバい!!今すぐに『呪い』を上に広げろ!!』

 

「ダイン……?」

 

「防人の歌、聴きなさいッ!!……Gatrandis babel ziggurat edenal 」

 

 

ダインスレイフの謎の忠告に戸惑っている間に翼は歌い始める。

 

 

『いいから早くしろ!!死ぬぞッ!!』

 

「ッ……分かったよ」

 

「Emustolronzen fine el baral zizzl……」

 

 

響は渋々、動かすことのできず握りしめたままの手から『呪い』を出し、響の上に展開することで月の光を遮り影を無くす。影がなくなったことで剣が抜け、響が動けるようになる。

 

 

「……動ける。ありがとダイン♪」

 

『アァ……それよりも早く離脱しろ』

 

「え、嫌だ」

 

『ハァ!?』

 

 

せっかく自由になったのに素っ頓狂なことを言いだす響。

 

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal……」

 

「……ふざけるなよッ!!」

 

「Emustolronzen fine el……ぐうッ!?」

 

 

響は叫びながら翼の喉にエネルギー弾を放つ。

 

 

『……お前の破壊衝動は取り除いてやったから、好きにしなァ』

 

 

この魔剣、優秀である。

 

 

「……思い出すと恥ずかしい。まあ、今は関係ない。風鳴翼さん、何馬鹿なことやってんの?」

 

「ゲホッ……ゲホッ……馬鹿……ですって?」

 

「守れなかった命?目をそらした命?そんなの関係ないでしょ、何を理由つけて死のうとしてんの?」

 

 

響の心底馬鹿にするような目に翼も唖然とする。

 

 

「私が……死のうとしている?」

 

「崇高な考えで自分を犠牲に、あの趣味が悪いのを倒そうとしてるんだろうけど私が……いや、被害者である()()がそんなの許さないッ!!生きるのを諦めるなッ!!」

 

「ッ!!その言葉は……奏の……」

 

「これは『呪い』だ。私からお前に向けての……だから生き続けろ。……今のお前はもう、簡単に死んではいけないのだから」

 

「……もちろん。もとよりそのつもりだわ」

 

 

翼に向けて怒鳴りあげる響に対して、翼は至極冷静に響に言葉を発する。そして、響から黒い靄が出てきて翼の中に入り込む。これにより、翼は呪われた。響の言ったことを守らなければ、その『呪い』が体を蝕んでいくだろう。

 

 

「チッ……興が削がれた。あとはあの棒っ切れを回収さえすれば……ッ!!……いない。逃げられた……」

 

 

響が翼に詰め寄っている間に、ネフシュタンの女は逃げたようだ。『影縫い』に使われた剣も木の近くに転がっている。

 

 

「……これを返しておいて。もう、二課にはなんの協力もしないし興味もない。二課でなくとも政府や国が無理矢理来ても叩き潰すし、続くようなら命は保証しないし私は米国や欧州に行く。そう伝えて。それじゃあ、さっき言ったことちゃんと守ってよね」

 

 

響は以前に二課から貰った端末を翼に渡す。

 

 

「立花響……私は、貴女に謝りたい……」

 

「……謝って何になるの?そして、私は謝罪を受け入れない。受け入れても、受け入れなくてもどうにもならない。その程度で私の激情をどうにかできると思わないで」

 

「……それでも……私h……ッ」

 

「ッ……お迎えかな。また戦場で。会いたくないけど」

 

「……ええ。また戦場で会いましょう」

 

 

車の音が聞こえた響は、翼に一言告げ去って行った。

 

 

「……あの時聞こえた低い声は誰だったのかしら。……いつかお礼が言いたいわ」

 

 

“低い声”それが誰のことを言うのか、それは本人にしか分からない。

 

 

「翼ッ、大丈夫かッ!!」

 

「……はい、叔父様(今は休もう、罪深き私たちの居場所で……)」

 

 

 

〜響side〜

 

 

『良かったのかァ?あんな優しい言葉をかけてよォ……お前のストレス、マッハじゃねえの?』

 

「さっき、羞恥心で死にたくなるほど暴れたからもういいよ。ノイズもあんなに始末できたし、殺したくなる相手も誰かわかったし」

 

『……ヒビキ、溜め込んだ分は今のうちに吐き出しとけよォ。嬢ちゃんはそういうのはすぐに気付くからなァ……』

 

 

ダインスレイフの言葉に、響は立ち止まった。よく見ればその体を震わせている。

 

 

「………………」

 

『周りにゃ誰もいねェよォ……さっき、過剰に増幅した『呪い』もあるからなァ……さァ遠慮すんなァ?』

 

「…………クソがぁぁぁぁぁぁ!!!!ふざけんなッ!!何が防人の歌だ、なんだよ防人ってッ!!技術的なこと雑魚の私にボロッカスにやられてたくせに。全然守れてないじゃん!!目覚めてきたと思いきや突然変なこと言い出すし!!」

 

 

突然感情のままに叫び出す響。ダインスレイフの優しさが振り切れている。呪われた魔剣とはなんだったのか?

 

『……それはヒビキのせいだぞ』

 

「え?」

 

『あの青いの蹴り飛ばした時に無意識に『呪い』が付与してあったんだよ。多分それで、夢の中でその『呪い』に勝ったんじゃねェかァ?(……確実に折れてたから夢ヒビキがどっか行った後手伝ったけどなァ。俺最近、人間のフォローしかしてねェ……)』

 

「………私、無駄に他人の精神強化しちゃった?」

 

『そういうことだなァ……まァ、悪いことはねェしいいんじゃねェのかァ?』

 

「……未来まだ起きてるかなぁ(遠い目)」

 

 

その後、速攻で部屋に帰り同居人に甘えてみっくみくになった少女がいたとかいないとか。

オリジナル聖遺物で最もヤバイ能力は?

  • 自在に姿を隠す
  • 空気操作
  • 純粋な身体能力向上
  • 視界の共有
  • 空間作成
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