私は呪われている   作:ゼノアplus+

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とある少女の逆さ鱗

7話

 

 

「……ふむ」

 

 

彼女たちがアジトとしている豪華な屋敷の一部屋で、フィーネは考える。

 

 

(クリスの失敗は予想通り、でもあの子の戦闘力に関しては全くの予想外。……立花響、呪われし魔剣ダインスレイフをその身に宿した第1号融合症例であり、おそらく私の計画最大の壁)

 

 

フィーネは思い出す。櫻井了子として現場に向かっていたときにに見た映像の事を。

 

 

(二課の連中は立花響の暴走やネフシュタンにばかり関心が行っていたようだが、最も重要な事はただ一つ。自我を保ちながらの暴走。ガングニールの欠片程度には、完全に近い聖遺物に打ち勝って暴走させるほどの力はない。だとすれば……自らに暴走のための種……破壊衝動を植え付けたとみるのが妥当だろう)

 

 

フィーネはワインを飲み、装置に繋がれて気絶しているクリスの方をみる。

 

 

(クリスはなかなかの戦果だな。ダインスレイフを相手取るのは、たとえネフシュタンがあっても得策ではないことが分かっただけで僥倖。この前の検査で融合症例というデータも得ることが出来た。計画はスムーズにいっていると見ていいだろう。このままいけば、思っていたよりも早くカ・ディンギルも完成するだろうしな。……立花響に気づかれなければ)

 

 

フィーネはため息をつ、グラスをテーブルに置きクリスの方へ近づく。

 

 

(あそこまでのノイズへの執着、ソロモンの杖を前にした時の反応。そして、暴走しているが自我を保っているため歌えるはずの状況で歌わずにあの戦闘力。いや……シンフォギアの方が奏でられなかったのか?……どちらにせよ確実に私と敵対し大きな障害となる。デュランダルの奪取の時に出て来なければいいが……)

 

 

フィーネは装置の制御システムの方へ行き、起動させる。

 

 

「あああぁぁあぁああぁぁぁあぁ!!………はぁ………はぁ………フィー……ネ?」

 

「今のでネフシュタンの侵食は抑えられたわ。少し休んだら食事にしましょう」

 

「……ああ……フィーネ、なんか機嫌がいい?」

 

「そうかしら?……そう見えるのなら、そうかもしれないわね」

 

 

実際に口角が上がっているためクリスからはそう見えたが、実際は狂喜の笑みを浮かべているだけである。

 

 

(人と人は分かり合えない、みたいな目をしてるあの子が、バラルの呪詛から解放されて分かり合えるようになったらどんな感情を抱くのかしら。歓喜のあまり泣く?悲しんで泣く?怒り狂う?もしかしたら絶望して壊れるかもしれない。あぁ……見てみたい……見てみたいわッ)

 

 

ロクでもない事を考えているのを、クリスは悟る事はない。目的のためにフィーネに従う、ただそれだけである。

 

 

 

 

〜響side〜

 

 

 

 

物騒な女から物騒な想いを向けられている響は、現在自室にいた。

 

 

「響、それでどうなったの?」

 

「ん〜、何が〜?」

 

「昨日の事。少しは教えてくれてもいいんじゃない?それとも、私に知られたくない事?」

 

「……」

 

 

未来に膝枕されている響は、未来からの尋問にあっている。顔を固定されているため逃げ出すこともできない。

 

 

「……ノイズは殲滅したし、特に被害はないんじゃないかな〜。……どうでもいいけど」ボソッ

 

「そう……響も怪我はない?」

 

「うん。雑魚しかいなかったし」

 

 

暗に、翼やクリスの事も雑魚と言っているがもちろん分かっててのことなので響に悪気はない。響からすればそうなのだろうが。

 

 

「良かった……響が無事で」

 

「……ありがとう未来。でもなんで手を離してくれないのかな?」

 

「逃げちゃうかもしれないでしょ?」

 

「や、やだなー。未来から逃げるだなんてそんな……」

 

「ン?」

 

「いえ……すいません」

 

 

少し手に力が入ったのは気のせいだろうか?そして何故だか一瞬未来の目のハイライトも消えた気がする。……いやきっと気のせいだろう。

 

 

『……自業自得だから俺から何も言わねェ』

 

(くっ……正論者め……)

 

「はぁ……今日は何もないんでしょ?」

 

「う〜ん……ない!」

 

「だったら、この前行きそびれたふらわーに行かない?あそこのお好み焼き、すごく美味しかったんだよ!!」

 

「ほほぅ……それは楽しみだな〜 うん、行こう」

 

 

今、未来にできる響への最大限の労い……それは響とともにいる事。未来と一緒にいるときだけが、彼女にとって安らぐ時間だ。例え、未来が響に笑いかけようと怒ろうと、響にとってはその時間こそが至福の時である。未来はそれが分かっているからこそ、こうして響が戦っていない時には響を連れ回している。

 

ちなみに響はふらわーでお好み焼きを3枚食べた。全て自分で作って、である。

 

 

 

 

〜二課side〜

 

 

 

 

「響くんとの協力関係が切れた……か」

 

「司令、どうしました?」

 

 

翼から受け取った、響の端末を手にしながら弦十郎は呟く。オペレーターの1人である藤尭(未婚)は弦十郎にコーヒーを渡しながら尋ねた。

 

 

「ああ、ありがとう。いやな、我々が出来ることとは何だろうかと思ったんだ」

 

「司令が相談とは、なかなか切羽詰まっているようですね。……響ちゃんの事ですか」

 

「……少女1人救えずに、このざまさ。普段から我々の好き勝手を支えてくれている広木防衛大臣に顔向けできん。翼もまだ本調子ではないしな」

 

 

少し、下を向きながら源十郎はさらに呟く。

 

 

「もう、そんな辛気臭い顔で会わないでくださいよ?好き勝手している組織のトップがそんな顔でどうするんですか?」

 

 

現に今、広木防衛大臣は政府へ二課の信頼性を説明しに行っている。二課という組織がここまで来れたのも、ひとえに広木防衛大臣のおかげだろう。

 

 

「ふっ……そうだな。我々は、我々にしかできないことを為すのみだ。そうと決まれば早速、新作の映画でも……」

 

 

ブーブーブー

 

 

「ん?通信……政府からだと?はい、こちら得意災害対策機動部二課司令、風鳴弦十郎です」

 

「おう、挨拶は省略させてもらうぜ。早速本題だ」

 

「何かあったのですか?斯波田さん?」

 

 

斯波田と呼ばれたその男は、いつも食べている蕎麦を食べておらず、極めて真剣な表情だ。

 

 

「広木防衛大臣が暗殺された。帰る途中を狙われたらしい。護衛も含めて全員が殺されている」

 

「「「「「「なッ!?」」」」」」

 

 

全員……緒川と了子がいないが、その場にいた全員が事の重大さに驚き絶句した。

 

 

「これだけじゃねぇってんだから、驚くのはまだ早い」

 

「まさか……他の者も?」

 

「ああ、まあ重要人物では無いんだが……政府役人直属のエージェント共が8人が意識不明の重体だ」

 

「一体なぜ……?」

 

 

弦十郎からの問いに斯波田は一旦目を瞑ってから答える。

 

 

「広木防衛大臣の方はわからねぇが、エージェントの方はお前達もよく知っている人物の仕業だ」

 

「ッ……まさか、ネフシュタンの少女が!?」

 

「いや……立花響だ」

 

「響くん……だと!?斯波田さん……一体何があったんですか!!」

 

 

弦十郎は思わず声を荒げる。先ほどまで話題の中心にいた少女が、政府の人間を襲ったのだから当然だろう。

 

 

「落ち着け。こっちも大騒ぎなんだよ……その計画を考えたバカ野郎の処理や、情報操作、件の立花響への対策も考えなくてはならねぇんだ」

 

「バカ野郎……?では、襲ったのは響くんではなく……」

 

「先に手を出したのは政府の一部の人間だ。二課と協力関係が切れた今ならチャンスだと思ったらしい。彼女の事は政府全体が知っているはずだったんだがなぁ……手を出すべきでは無いとも忠告していたんだがな」

 

「なるほど……こちらでも、急ぎ対応に当たります。彼女の現在地は?」

 

「さっき言ったバカ野郎の屋敷だ。ご丁寧に……倒した奴らのうち1人を引っ張ってきてな。しかもソイツは四肢欠損と来たもんだ」

 

「……もう少し、詳しく説明していただきたい(この事は翼に伝えるべきではないな)」

 

「勿論だ。そもそもの発端は……」

 

 

 

遡る事、約3時間前。お好み焼き屋ふらわーで昼食を食べた響と未来が街を歩いていると、柄の悪そうな大人数人に絡まれた。これが悲劇の始まりだった。その大人達にとって……

 

 

「そこのお嬢ちゃん達可愛いねぇ……金は俺ら持ちでいいから遊ぼうぜぇ?」

 

「……ひ、響?」

 

 

1人の男が響達に声をかけた。響は即座に未来の前に立ち、守るような姿勢をとる。

 

 

「……ナンパなら別の人にしてくれません?生憎私たちは忙しいので」

 

「連れねぇこというなよなぁ?良いところ知ってるからさ」

 

「そうそう!今時こんなことなかなか無いぜ?」

 

 

ケラケラと笑いながら話す男達を前に、響は言った。

 

 

「そうですね。こんなご時世に、乙女2人を誘うために4人も待ち伏せさせてる大人なんていないですね」

 

「……何?」

 

「……なんのこと?俺らはただ嬢ちゃん達と遊びたくて……」

 

「私に触れるなッ!!」

 

「ッ!?……いってぇ」

 

 

手を伸ばした男の手を叩く響。ダインスレイフと契約して体の隅々をダインスレイフと融合し強化した力は、男の手を腫れさせるには十分だった。

 

 

「おい嬢ちゃん……これは少しおいたがすぎるんじゃねえか?」

 

「ヒッ……」

 

「……(ダイン、この場合は?)」

 

『逃げることをお勧めするぜェ……流石に、嬢ちゃんがいる状況じゃ何もできん』

 

(了解)

 

「未来、ちょっと我慢してね」

 

「えっ?ひび……きゃっ!?」

 

 

響は、未来をお姫様抱っこの要領で抱き思いっきり走った。

 

 

「なっ!?待てやこのアマ!!」

 

「人様に怪我させておいて、良い度胸じゃねぇか!!」

 

「ひ、響!!あの人たち追ってきてる!!」

 

「黙ってて。舌噛むよ?」

 

 

未来に対して珍しく厳しい口調で話す響。それほど余裕がない事の表れだ。

 

 

(アイツら、ただのチンピラじゃ無いよね?)

 

『だろうなァ…… 乱雑な口調だが、どこか警戒していて何よりも隙が無かった。お前に叩かれることも考慮してたんじゃねェのかァ?』

 

「クソッ、早すぎんだろ!!」

 

「第1フェーズに失敗した。第2フェーズへ移行する。至急準備に取りかかれ」

 

「いや……丸聞こえだし……とりあえず部屋に戻ればなんとかなるかな」

 

 

そこから鬼ごっこが始まった。単純な走力では、未来を抱えているはずの響にも勝てない男達は、隠れていた黒服達と共に奇襲を仕掛けてくる。響は難なく躱しているのでそのたびに男達の焦りは募っていく。何よりも、両陣営、一般人に危害が及ばないように配慮しているのか接触事故も何もない。その分……通報もされないので警官が駆けつけることもないのだが。そして、約10ほど続けた後、響は寮の敷地に到着した。

 

 

「ふぅ……未来大丈夫?」

 

「……うっ……うん。ちょっと不味いかな〜」

 

 

どうやら男達の奇襲を躱す時の響の動きで酔ってしまったらしい。その顔は青ざめていて今にも決壊しそうだ。

 

 

「未来ごめん……」

 

「仕方なかったから大丈夫……うっ」

 

 

説得力がないが、追っ手から逃れるためには仕方がない事なのを未来も理解している。

 

 

「見つけたッ!!手間かけさせやがって!!」

 

「チッ……もう来たの……未来、出来るだけ早く安藤さん達の部屋に行って。私はこいつらと少しオハナシがあるから」

 

「で、でも……」

 

「大丈夫、私はノイズを倒せるんだから、今更人間程度に遅れはとらないし。何よりも……」

 

「何よりも……?」

 

「未来を巻き込んだんだ……この世で最も残酷な地獄を見せてやる……」

 

「……気をつけてね」

 

「ありがとう未来」

 

「……(私はまた……何もできないの?)」

 

 

未来は寮の建物の方へ走っていった。響はそれを見届けると、息を整えながら歩いてきた男達の方を向く。

 

 

「オイオイ嬢ちゃん。鬼ごっこは終わりか?」

 

「……足りないんだったらまだやってあげるよ」

 

「なッ!?クソッ……ターゲットがそっちへ向かった。先回りしろッ!!」

 

 

響はまた走り出し、山の方へ向かった。男達も通信機のようなもので連絡を取りながら響を追いかけて行った。

 

 

 

 

〜少し経って〜

 

 

「……ここら辺でいいか」

 

「はぁ……はぁ……お前……何がしたい?」

 

「何って……遊びたいんでしょ?遊んであげるよ」

 

「このクソガキッ、なめやがって!!」

 

「そういうのもういいから、いつも通りやればいい」

 

「……フッ、バレていたか。ならば仕方ない」

 

 

その場にいた2人に続いて、6名ほど男が増えた。手にはアサルトライフルや拳銃、ナイフなど、明らかに一般人が持っていない得物を持っている。

 

 

「狙いは私。大方、二課と手を切った私を捉えて子飼いにしたいんだろうけど……」

 

「そこまでわかっているのなら、大人しく来てもらおう。悪いようにはしない」

 

 

口調が変わった男もポケットから拳銃を取り出し構えている。

 

 

「……誰が行くかッ」

 

「そうか……ならば……無理矢理にでも連れて行かせてもらう!!」

 

 

銃を構えていた者が一斉に射撃を始める。しかし響は……

 

 

「この程度……」

 

「なにッ!?」

 

 

両手を左右に広げ、手のひらから『呪い』を放出し弾を地面に落とす。

 

 

「たとえ人間でも……私の邪魔をし、未来を傷つけようと言うのなら……お前らは私にとってただの雑音だッ!!」

 

「がっ!?」

 

「ウソだろ……」

 

 

響の叫びと共に、地面から飛び出してきたのは黒い靄で形取られた腕。それは1人の黒服の首元を掴み……全身へと侵食を始めた。

 

 

「あぁ………ああ……あぅ」

 

「一体何がッ!?」

 

 

倒れこむ黒服。その目はまるで廃人のようだ。一度に大量の呪いを浴びたストレスなのか髪も白くなり、顔も真っ青だ。

 

 

「次はお前……」

 

「ヒィ!?やめ……」

 

 

倒れた男から比較的近くにいた黒服に向けて『呪い』のエネルギー弾を放つ。その弾は黒服の頭に当たり、先ほどの黒服と同じように倒れた。

 

 

「貴様……我々に手を出してただで済むと……うっ……」

 

「逆に聞くけど……私に手を出してタダで済むと思ったの?」

 

 

また1人、『呪い』によってその意識は奪われた。

 

 

「このガキッ!!」

 

「多少欠損があっても問題ない!!行くぞッ!!」

 

「……うるさいッ」

 

「「「がぁ……!?」」」

 

 

手に拳銃と刃物を持って襲いかかってきた3人。別々の方向からの包囲攻撃だ。しかし、響には通用しない。響は右足を少し上げ、地面を思いっきり踏みつける。すると、響が踏みつけた地面を中心に『呪い』が360度に広がっていった。その『呪い』が黒服達の足に触れた瞬間、全身に『呪い』が侵食した。

 

 

「ちょっと強めにやっちゃったから、もしかしたら戻ってこれないかもね。……まあ、どうでもいいけど」

 

 

この一撃で3人の脳はほぼ使い物にならなくった。死んではいないが、植物状態のようになるだろう。人間としては死んだも同然の状況だ。

 

 

「ひぃぃ!!お、俺は逃げるからなッ!!」

 

「なっ……おい待てッ!!」

 

 

私服姿の男が1人逃げ出した。政府所属というエリート達がこうもあっさり、少女1人にやられしかもその力が未知のものだというのだから当たり前だろう。

 

 

「逃がさないッ!!」

 

 

響はダインスレイフを右手に出し、その切っ先に『呪い』のエネルギーを貯める。

 

 

「ッ!!おいッ、避けろ!!」

 

「えっ?」

 

 

逃げていた男が振り返った時にはもう遅い。響はいつもノイズを倒しているように、ダインスレイフを男に向けて突き出しレーザーを放出した。

 

 

「ぎゃあああっぁぁあああ!!!!!!俺の足がぁぁ!!」

 

 

ダインスレイフから打ち出されたレーザーは、逃げていた男の両足を打ち抜き消滅させた。足がなくなった男は血だまりに身を沈め激痛に悶えている。

 

 

「……未来を……未来を巻き込んだんだから、まともに生きて帰れるとは思わないでよね」

 

「このッ……悪魔がッ!!」

 

「……んっ?」

 

 

響は、何かが入り込む感覚に襲われた。

 

 

「貴様のような悪魔が……ノイズを殺す力があるだと……当たり前だろうなぁ!!なぜその力を国のために使わない!!その力があれば我が国は何者からも侵略されず、なんなら侵略することだってできる。何体も何体も、どれだけ出現するのか分からないノイズよりも、70億程度の人々を支配できるだろうがッ!!」

 

「……」

 

 

男は叫ぶ。この集団は、所謂風鳴機関からの恩恵を受けていた者達の集まりだ。風鳴訃堂の考えに賛同する者は多い。しかし、この者達はただの風鳴機関の人間とは違う。夷狄から祖国を守るだけでなくあわよくば他国を侵略しようという、過激派とも言うべき思想を持った者達の集まりだ。

 

 

「侮るなよ小娘!!その力はお前なんぞにあっていいものじゃない!!我等こそが、持つにふさわしい力だ!!」

 

「……」

 

 

血だまりに沈み、激痛に耐えながらもひたすらに叫ぶ男の声を響は聞いていない。響は今、未知の感覚に浸っている。

 

 

『ヒビキ……それが憎悪だァ……人間から直接摂取するのはどうだァ?なかなか悪い感覚じゃねェだろ?』

 

「……(いや、不味い。こんな人の感情なんてゴミにも等しい。()()()()がこんな味だなんて……ダインの中の人達の方が純粋で濃くて良かった。しかも共感できるし)」

 

『マァ、そうだろうなァ……(不味い、ねェ……ヒビキは憎悪を味覚で感じるタイプかァ。マシな方だなァ……少なくとも快楽じゃなくて良かったぜェ)』

 

 

憎悪を直接人間から得る。普段は自分で増幅するか、ダインに溜め込まれたものを使うしかなかった響にとって、この行為は未知の物。初めての摂取は悪いものだったようだが、ある意味、感情を取り込むこの行為は決していいものじゃない。精神異常者などの憎悪を取り込むと脳が壊れるかもしれないからだ。

 

 

「……興味ない」

 

「……いま……なんと……?」

 

「だから、興味ないって言ってんの。あと、うるさい」

 

「がぁッ!?」

 

 

響が伸ばした腕から、『呪い』が伸びて男を侵食した。

 

 

「自分の憎悪を浴びた気分はどう?……聞こえてないや」

 

「……」

 

 

響は、今摂取した男の憎悪を『呪い』へと変換して男に返した。もっとも、ただの憎悪ではなく『呪い』として強化されているのでタダではすまなかったようだが。

 

 

「さてと……残るはお前1人だけ……でも安心して。他のやつらのようになったりはしないから」

 

「な……にをさせるつもりだ……?」

 

「……簡単だよ。お前のご主人様の居場所へ案内してもらう。ただの雑音ごときに拒否権なんかないから素直に案内した方が身のためなんじゃない?……お前がどうなろうと知ったことじゃないけど」

 

 

響は最後の1人の方向へと向き、告げる。男は少しだけ迷うが……

 

 

「たとえ無様を晒そうとも……我々は政府の精鋭……決して漏らすことはしない!!」

 

「ふぅーん……そんなこと言うんだ。……えいッ」

 

「ぐぅぅッ!?」

 

 

男の言葉に目を細めた響はダインスレイフを振るい、『呪い』ではなくただの斬撃で男の左腕を切り落とした。男は激痛に悶えるが、他の者とは違って叫び声を上げずに耐えている。

 

 

「……別にいいんだよ?日本政府が血の海に沈んでも。貴方が喋らなかったせいで、この襲撃に全く関わりのない官僚達がコイツらと同じ目に合うことになるだけだから(……コイツ、自分から政府所属だって言った。バカなの?)」

 

『止めてやれヒビキ。人間らしい誇りを備えた奴じゃねェかァ……お前を標的にした事は運が悪かったと思うぜェ……』

 

(ふん……知らないよそんな事。未来を巻き込んだんだ。それだけで万死に値する)

 

「ぐぅ……はぁ……はぁ……クソッ……(正直、あの豚の下っ端だから従ってきたが……もともとその思想も気に食わなかった……コイツを利用すれば祖国の害悪を取り除けるか?)……少し考えさせてくれ。武器も捨ておこう」

 

 

激痛はまだ続いている、それでも冷静に物事を考える胆力はさすが政府のエリートだろう。配属先がおかしいだけだ。

 

 

「ダメに決まってるじゃん。時間稼ぎのつもり?」

 

「……分かった。案内しよう」

 

「……止血だけしてあげる。道中で騒ぎになっても困るし」

 

「はっ?一体何を……ぁがッ!?」

 

 

男には何が起こったか分からなかった。突然目の前に響が現れたと思ったら、残った肩の部分に何かをされた。さらなる激痛が走るが……

 

 

「嘘だろ……本当に止血を……」

 

「さぁ……早く案内して」

 

「……あぁ(最悪刺し違えてでも……いや、無理か)」

 

 

男は諦めたのか、響の言う通りに襲撃を命じた主犯格の元へと向かった。止血したとしても激痛な事には変わりはない。男は、いっそ気絶したいと思いながらも歩みを止めなかった。

 

 

(……帰ったら未来になんて説明しよう。ストレートに全員半殺しにしましたって言う?……ないなぁ)

 

(よくよく考えれば立花響は、私たちを全滅させるまで一歩も動かなかった……逆さ鱗に触れてしまった、という事か。あぁ……生きて帰れたら辞職して農家になろう……)

 

 

脅した少女、脅された男、2人とも心の中でため息をつきこれからの事を考えるのだった。もちろん、そんな状況ではないのだが……




あくまで、二次創作なので日本政府が悪い人だけではありません。そして作者は別に反日でもありません。今話の目的はあくまで響の、未来に対する思いのレベルを表現しました。

オリジナル聖遺物で最もヤバイ能力は?

  • 自在に姿を隠す
  • 空気操作
  • 純粋な身体能力向上
  • 視界の共有
  • 空間作成
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