コンコン
「失礼します」
…ねぇ、どうして私雲雀さんに目を付けられたのかな。
『『世界』から雲雀さんの記憶漁って来ようか?』
だからそれはいいって。
『神様』あるいは『世界の
……で、また私は応接室に来ていた。その原因はあの日、応接室で『物語』に巻き込まれた直後。
「き…君!」
「先生?どうかしましたか?」
咄嗟に雲雀さんから逃げてきた動揺を、
「さっき応接室から出てこなかったか?」
?
「出てきましたよ?」
「……」
なぜか唖然とする先生。
今さらどうにもならないけど、動揺を押し隠すために無理やり冷静を装ったのは失敗だった。どうやら、私に話しかけた先生は傷だらけの沢田君達が
応接室から出てくるのを見ていたらしい。そして、少ししてから『無傷』で出てくる私も。
「和田さん。このプリント持って言っておいてくれないか」
こうして『応接室』への手紙を持っていってくれ、と頼まれるようになってしまいました。表面上他に急ぐ用事があるのだと言われてしまうと、こちらに用事が無い限り断りにくい。もちろん、用事がある時はきっちり断らせてもらっていたりするが。
いや、途中で風紀委員の人に会ったらその人に渡せるんだけどね……。
『ダメだね。一定距離を保たれてる』
私の視界に入らないようにされてるんです。と言うか私、最近監視されてる!おかげさまで放課後にこっそり式をかけなくなった。
『それは200もあるんだから大丈夫、って言ったじゃん』
…それはそうなんだけどね……。
最近の日課を奪われてしまった『欲求不満』は中々解消されない。どうやら、力が外に出れずにグルグル回っているっぽい。こんど森夫さんに手合わせの相手してもらお。そして今日も、誰かに会うことなく無事(?)応接室まで到着してしまった。
コンコン
「失礼します」
ということなんです。
…にしても、やっぱり雲雀さんは一体何がしたいんだろうか?
「今日もプリントを届けに来ました」
今日は草壁さんも居る。もう常連になりつつあるので、顔見知りみたいなものです。雲雀さんはソファーでお茶を……
あ。
『あ。あれ
雲雀さんが食べている
…なんか知ってる人が
『だね』
「何?」
雲雀さんの方ををじっと見ているのに気がついたらしい。ちなみにおいしいのであの大福結構好きだったり。よく森夫さんの家で出してもらう。ついでに、森夫さんはお茶を入れるのがすごく上手だった。
「その大福、美味しいですか?」
「?」
雲雀先輩は私の質問の意図が分からないらしい。
「知り合いの店のやつなんです。私は結構好きだったりします」
どうやら納得したらしい。
「そう」
しかし雲雀さんはそんな事には興味はなさそうだ。答えてくれなかった。
「話があるから座ってよ」
「……え?」
「草壁」
その一言で草壁さんが私の分のお茶と大福を用意してくれた。どうやら私に拒否権は無いらしい。……にしても草壁さん、あれだけで通じるって貴方は長年付き添った奥さんですか。
風紀委員に調べさせているが特に怪しいところは無い……か。
群れの中にわざわざ行くとか嫌だし、何となく逃げられそうだから、あれからどうやって接触しようかと思ってたけど。君は都合良く、頻繁に応接室に来るようになった。幾度となく一回戦ってみたいとは思うのに、何故か君が来たのを感じると咬み殺す気が起きない……。……今までこんなことなかったのに。
応接室に来る君は、何時も仮面を被ってる。どれだけ調べても、そのどれもが当てはまっている気がしない。君の『本質』を言い当てているとは思えないんだよ。
最初は何とも思わなかったはずなのに、調べるほど積もり積もっていく違和感。
君は一体『何』?
僕の中で純粋な興味だけが募っていった。
絶対にその
誰かへの固執。それじたいがすでに自分らしく無いとも気が付かずに。
草壁さんは他の風紀委員に呼ばれて部屋から出て行った。なので雲雀さんと二人きり……。いや、プリントを届けに来た時は大体雲雀さん一人なんだけど、こうして正面で話すなんて最初以来かも。いや、まだ何も話して無かったりするけど。
「君、風紀委員に入りなよ。」
す……
突然。雲雀さんに話しかけられ、差し出されたのは『風紀委員』の腕章と『誓約書』。
え?
『マジ?』
ピラッ
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誓約書
私は風紀委員に所属し、責務を全うすることを誓います。
年 組(名前)
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ぇぇえええ!!!!
マジで!?いや、確かに最近応接室通いだったけども!!やっぱり目を付けられてた!何時?何所で?いや、一番最初に応接室行った時なんだろうけど!怪しく笑ってたし!けどなんで!?
私に肉食動物要素なんて無いです!!!!!!!
頭の中はパニックになりながらも、片隅では冷静に答えを出していた。
はじめから答えは一つしかないのだけれど。
私は雲雀さんの目を真直ぐ見た。それが誠意だと思うから。
す……
「お断りさせて頂きます」
そう言って誓約書を返した。雲雀さんは何も言わなかった。
「私は誰の下にもつきません」
これはこの世界に来てから決めた事。
「私を誇ってくれる人が沢山居ますから」
私の下についてくれる沢山の『子供達』が。
「だから私は」
『子供達』に恥じない『母親』になろうと決めた。
『子供達』に恥じない『母親』であろうと決めた。
「私自身を誇ってくれる人達のために誰の下にもつかないって決めたんです」
本当はその場しのぎの言葉で良かったとしても。たとえそれで余計に興味をもたれることになっても。誰の下にもつかない。つくと言わない。
コレだけは譲れない。譲らないと決めた。ちっぽけな『誇り』
「……」
雲雀さんは少し目を見開いてこっちをただ見ていた。
「それに」
そう言って私は雲雀さんから目をそらす
「私は皆さんみたいに強くありません。朝はあまり得意ではありませんし、放課後や休日は大概用事があります。ろくに仕事にも出られない人間に『委員』が務まるとも思えませんから。お話がこれだけでしたら、これで失礼します」
殆ど言い訳がましく(本当のことではあるのだか)そう付け加えて応接室を後にした。
幸せに変えたいのなら、不幸せを知らないといけない
貴方の願いに従って、貴方の意思にそむいて
どんどん引き寄せせられていく
久しぶり?にシリアス回想付きです。
幸の運命とそれが関わる事によって変わる『物語』が本格的に動き始めます。
それは坂を転がる石の様に、どんどん勢いを増して。