ただの人間やってました   作:書人

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脳内通信には色々な呼び方があります。



問33私は謝る

 

『幸、連絡来てるよ』

 

<幸?>

 

疲れて眠っていたのだけど、突然雛から脳内通信(でんわ)が来た。

 

<どうしたの?雛>

 

<リスト作りが終わった。後は風紀の人に引き渡して帰るね>

 

<うん。そうしておいて>

 

<あとね。今そっちに沢田君達が向かってる。……その中にリボーンも居る>

 

『思ってたより、来るのが早い……』

 

<…………>

 

<どうする?そっち行って、私が出て追い返そうか?>

 

<いや、良い>

 

<……そっか、分かった。ただ、一つだけ良い?>

 

<うん>

 

<沢田君はね、雲雀さんの事を本気で心配してる。幸ちゃんが来る少し前にあの中に助けに行こうとしてたの>

 

<そっか。お礼言わないとね>

 

<何かあったら呼んでね。絶対だよ?>

 

<うん>

 

『リボーンはどうする?』

 

自分で対処するから大丈夫。

 

『……無理はしないで』

 

 

 

 

唯一雛は並森の中でここだけを把握することが出来なくなっている。

ここは完全に千沙の領域であり、ここにあってここでないところに在るからだ。それこそ何処かのマンガみたいな話だけど。

 

ピンポーン。

 

千沙、先輩をお願い。

 

『了解。ちゃんと両方(そっちも)見てるから必要なら呼んで?』

 

うん。大丈夫。

 

 

 

 

私は沢田君達をリビングへ招きいれ、お茶を出した。沈黙で間が空く。

 

「あの……ヒバリさんは?」

 

沢田君がそう聞いてきた。

 

「ほぼ直したよ。全身の打撲、かすり傷は。ただ、左腕の骨折と右足の複雑骨折はあと三日居ると思う」

 

!?

 

沢田君達は明らかに動揺している。思いもよらない怪我のひどさに。いや、リボーンだけは動揺している意味が違った。

 

「どういう事だ、あの怪我はどんなに医者が良くても一ヶ月以上はかかるはずだ」

 

リボーンがそう言った。その頬には少し冷汗がうかがえる。

 

「それは貴方達の技術で、でしょ?」

 

「和田幸……お前は一体何者だ?」

 

そう言ってリボーンが銃を突きつけてきた。

 

「ねぇ?貴方達は、私の、一体何のつもりなの?」

 

私は銃を気にもせず、そう語り始める。少し威圧を掛けながら。

 

「家族?恋人?親友?友達?クラスメイト?違うよね。私からしてみれば、貴方達はただの顔見知り。同じ教室で挨拶すら交わしたことの無い、ただの他人。私が貴方達を入れたのは、沢田君に用があったから。まだ二回しか会ってない君に、不躾にそこまで踏み込まれる筋合いは無い」

 

「……答えろ」

 

リボーンは殺気を出し、引き金に指を掛ける。

 

「リボーン!!!」

 

沢田君がリボーンを非難する声をあげた。

 

カタン

 

「「「!?」」」

 

私はさっきまでリボーンが持っていたはずの銃を、軽く音を立てながら机に置いた。

 

「やめといたほうが良い」

 

「!?」

 

リボーンが確認するがその手に銃は握られていなかった。

 

「私ね。さっき、ただの人間を完全に卒業しちゃったらしいから」

 

少し、自分で言いながら空しさか悲しさの様な物を感じる。

 

「沢田君」

 

ビクッ

 

沢田君は明らかに私に怯えていた。圧倒的力を持った和田幸(わたし)と言う正体不明の何かに。

 

「ありがとう」

 

私は頭を下げた。

 

「うえっ!?」

 

本人は訳が分かっていないようだ。まあ仕方が無いけど。

 

「教えてもらったの。沢田君が先輩を助けようとしてたって」

 

「けどっ。俺、何も……」

 

「あの時、誰も手を出そうとしなかった。そんな中、危険を顧みずに先輩のために動こうとしてくれた。だから、ありがとう」

 

私は出来るだけ優しく沢田君に笑いかけた。

 

「で、どうする?先輩は今上で寝てる。大人数で見舞いに行って、喜ぶとも思えないけど」

 

表情を少し苦笑いに変えて問い掛ける。

 

「邪魔したな。雲雀が大丈夫なら、俺たちはコレで出て行くぞ」

 

以外にもリボーンはあっさりと引いた。

 

(お前にまだ聞きたい事はあるが、それはまた今度だ)

 

そんな副音声が視線から届いていた。

 

「ちょ!!?リボーン!?」

 

「リボーンさん!?」

 

「小僧!!」

 

そんなリボーンに沢田君達が付いていく。

 

「和田さんまた!」

 

沢田君は一度振り返るとそう私に叫んだ。

 

「!……またね沢田君」

 

 

 

 

部屋に戻ってそう立たないうちに先輩は目を覚ました。

 

「おはようございます」

 

先輩がこっちを見る。表面的なものは、ほぼ直したとは言え完全では無いから、絆創膏がまだ一つ顔に付いていた。

 

「すみません。私のせいで……」

 

「別に………あの後、どうなったの」

 

「不良達なら、私が全員押さえました」

 

私は先輩の方をもう見れなかった。俯き、膝の上で強く握った手を見つめる。

 

「大丈夫です。私実は強いので、誰がどれだけ来ようとも一瞬で倒せますから。今まで嘘をついていてすみませんでした」

 

「全然……」

 

「?」

 

先輩が今何か言った?

 

「全然大丈夫そうに見えないけど」

 

「無傷ですよ?」

 

そう明るい声を声を出しながら言う。でもやっぱり先輩を見れない。

 

なんだか……。

 

「身体の方じゃない」

 

無事な右腕で無理やり肩をつかまれた。思わず先輩に目をあわせる。先輩が、きっと誰も見たことが無いような……悲しそうな顔をしていた。

 

……そう。気が付かれたくなかった。

 

「……ダメですね。やっぱり私は『弱い』。先輩にあんな酷いことした人相手でも怖かったんです。……傷つけてしまったらどうしようって……」

 

身体じゃない。心の震えが止まらなかった。

 

「ごめんなさい先輩。ごめんなさい。ごめんなさい……」

 

繰り返す。私の色々な人への謝る言葉(ごめんなさい)は、段々声がかすれてもう聞こえないくらいになっても続いた。

 

 

 

 

和田さん。ずっと傷みをこらえるような表情をしてた……?

 

けど、彼女が最後に笑いかけてくれた顔はすごく奇麗だった。笹川さんと話すのは何度か見ていたけど、和田さんのあんな表情見たのは初めてだった。

 




ここから一気に時間が飛びます。
問はそのまま続いた数字で、間は登校する際に補充問題として入れようと思います。

次話やっと『黒曜編』です。
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