切ったり貼ったりでここ数話、時系列が前後しています。
コレは……思わぬ収穫ですね。
一目見てすぐに和田幸が天人の呼ぶ『母』と解りました。この世界にもまれにまぎれている天人は、結構すぐに解ります。ですが、どうしてこの少女が『母』だと解ったのかは自分にも良く分かりません。
そして彼女は目を見開いてこちらを見ていた。触れた場所から直接『
どうやら当たりの様ですね……。マインドコントロールに少々違和感を感じますが。相手が相手ですから、マインドコントロールにかけれた事を喜びましょう。時間はまだありますし、戻ったら確認しましょうか。
完全に力の抜けた和田幸を横抱きにして、僕は機嫌良く黒曜ランドへ戻った。
「骸さん、その女が例の人質れすか?」
犬が覗き込んできた。
「それもありますが、彼女にはそれ以上の価値がありそうです」
計画の変更もあり得るかもしれませんが、それはまだ言わないでおきましょう。相手が相手だ。万が一の可能性がありますし、ぬか喜びさせるのも良く無いでしょう。
「少し探りたいので、部屋に誰も入れないでください」
「任せるら!!」
僕は部屋に入った後、ソファーに彼女を眠らせてから精神世界にに潜り込んだ。
……ここが、和田幸の精神世界ですか。
マインドコントロールの影響も有るのだろう。意外にもあっさりと入れた。そこはさっきの家と同じ様子だった。
「……」
「……!!」
何か声が聞こえます。僕は幻覚で自分を隠し、リビングの方へと向かった。
二人居る!?
そこには彼女と彼女に似た誰か。そちらは、身長がもう少し高く髪も長い。
「まぁ、本人に聞いてみようか」
そう言って正体不明の少女はこちらを見た。
「クフフ……気が付かれてましたか」
……誰か分からないが、それなら暴けば良いだけの事。和田幸の方は驚き、こちらを警戒しているようだ。
……それに対して彼女の方は何処か余裕が伺えます。
「それで、どこで『母』の存在を知ったの?」
その言葉は、明らかにこちらに選択肢を与え無い命令。全身を凍り付く様な『死』を思わせる風が纏わり付く。……冷や汗が背中を滑り落ちた。
「!?」
彼女の記憶を見る為にマインドコントロールを強めて、失敗した。これは……一体どういう?いや、何かに揺さぶられて行く事が出来る状態では無くならせれた?
「忘れたの?」
『なんで』
「ここは幸の中。つまり
『お願い、お願いだから……』
『お願いだから死なないで!!!!』
「貴方が見るのは私の記憶、私の思いだよ」
僕自身の意識はそこで途絶えた。
ただの記憶だと、見せられている最初から分かっていたはずだった。いや、ただの記憶と僕は侮っていました。
「ねぇ幸。今日は何所に遊びに行く?」
僕の目の前に映るのは何でも無い日常。目の前には『千沙』が。いや、全く同じな『和田幸』が居た。そんな日常を少し離れたところから、ただ温かく見守っていた。
僕は『千沙』(彼女)だった。
誰よりも優しい彼女(幸)が好きで。彼女が泣くと自分も悲しくて。全ての幸せを願った彼女が誇りで。彼女が笑っていたら自分も幸せで。
だから彼女の笑顔を絶対に失わせたくなくて。
それと同時に何度も何度も写る。彼女がバイクに引かれ、死んでいく……。どれだけ運命を動かしても、どれだけの犠牲を持って生かそうとしても。
激しく胸が痛む。
今、この瞬間にも命が助かっていく。動かされた運命は、彼女の願いは、命を助けていく。皆を幸せにしていく。
どうして…どうして幸だけが救われないの!?救うことが出来ないの!?
理解する。いかに彼女が強くて、真直ぐで、優しくて。どれだけ運命が理不尽を彼女に強いたのか。強い悲しみを。
深い、深い、深い愛情を。
その
「っ!!!!」
僕はものすごい量の汗を書きながら、現実世界へと戻った。まだ少し痛む頭を抑える。
千沙、貴方は全く恐ろしい事を考える……。
あんなものを見てしまったら、理解してしまったら。彼女を傷付けられるわけが無い。幸せを願わずには居られない。ただ笑って欲しいと…………。
誰にさえ、彼女の不幸を願う資格など存在しないのだから。
「……」
横を見ると、ソファーで眠ったまま彼女は泣いていた。そっと、涙を指で掬った。
バンッ!!
「君、何してるの?」
……さて、どうしましょうか。
彼女をこれ以上、こちらに巻き込むわけには行きません。ですが……ここを引く訳にも行かない。
次は千沙視点になりそうです。