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(これまでのあらすじ)
ニンジャ達による研究所の放火、そしてデュプリケイターとのイクサの最中サーバルとキュルルが拐われてしまった!バックパックとサツバツナイトは敵ニンジャ一人を返り討ちにするが、満身創痍のバックパックは
そのまま失神してしまった。カラダニキヲツケテネ!
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「かばん=サン!」「ンアーッ……!」苦悶するバックパック。「博士!どうすれば!」「サンドスターが足りていないのです。このままではオタッシャしてしまうのです」コノハはあくまでも冷静に長として、この状況を打開するべくニューロンを回転させるが、その顔には焦りが見える。
「フジキド!なんとかできないの!アンタニンジャなんでしょ!」「……!」フジキドは歯を食い縛りニューロンを高速回転させる。とりうる手段があるとすれば……「スゥーッ……!ハァーッ……!」フジキドはカバンの傍らに正座し、深くチャドーした。彼はチャドーを維持しながら、フートンの上で苦しむカバンに手を当てた。
「スウーッ……ハアーッ……!」
フジキドは血中のカラテの流れを意識した。チャドー呼吸が自身の身体を完全にコントロール下に置いている。手の平を通し、触れているカバンの身体の血中のカラテをもコントロールするイメージを育てる。「チャドー……フーリンカザン……そしてチャドー……」
トランス状態に陥ったフジキドの口から、神聖なるインストラクションの言葉が復唱される。フレンズ達は息を呑んだ。それは神秘的な光景であった。
「バックパック=サン……!」
フジキドは名を呼んだ。
すると、おお、ナムアミダブツ。苦悶の表情は徐々に消え、やがて彼女は眠りについた。フジキドは呻き声をあげ、肩で息をした。
他者の身体に手を触れ、自身の体内のチャドーの流れを一時的に共有し、自然治癒力を強制的に高める高度な技術。カラテ効率は悪く、治療を行う者の心身の消耗が激しいワザ。チャドー・ヒーリング。フジキドがこの技を使うのはこれが二度目であった。
「慣れぬワザを使った」「かばん=サンは、もう大丈夫でしょうか」「峠は越えた。……薬草を砕き、チャを淹れよ」「ハイ!」イエイヌは部屋から駆け出していった。
「……後は、スシがあればいいのだが」ニンジャスレイヤーが言った。「スシ?」「スシだ」スシとは、ニンジャにとっての完全栄養食品であり、これを食べることでニンジャ回復力がブーストされ即座に傷を癒すことが出来るのだ。
「それはりょうりですね?」ワシミミズクが訊ねた。「ああ、コメと魚がいる」ニンジャスレイヤーは答えた。「それがあればかばんは治るのですね?」「……彼女のニンジャ回復力次第だ」コノハは暫し考え込み、口を開いた。「解りました、スシは我々が何とかするのです。じゃぱりまんの材料を保管する場所に"いけす"があったはずなのです。ちょいしに行くのですよ、助手、まだ動けますね?」「はい、博士」その時だ、『工場までのルートを表示するヨ』かばんの腕に巻かれたラッキービーストがホログラム映像でマップを投影した。『この先に冷凍コンテナがアルヨ、ソコナラ魚もあるはずだヨ』「ラッキー=サン」『ヒトの緊急事態ダカラネ、各地のラッキービーストにも同期して支援を求めるヨ』「……実際有りがたい。頼む」コノハ達がスシを確保しに飛び去った数分後、アグラを解き、玄関へ向かうサツバツナイトをカラカルが引き留める。「待ちなさい、モリタ。アンタは一体何者なのよ、キュルル達を助けに行くつもり?」「……無論、ニンジャを殺しに行く」
「それなら私達も!」「ならぬ」「どうして!」
「オヌシらはニンジャを甘く見すぎだ、二人は私が救出する。ニンジャも殺す。大人しくフートンで寝ておれ」ニンジャスレイヤーの憎悪に満ちた瞳に二人は一瞬怯んだ。これ以上引き留めようとすれば殺されかねないと……
当然、ニンジャスレイヤーにそのつもりは無い。彼の憎悪は悪しきニンジャにのみ向けられる。しかし、彼女らにそれを知るすべは無い。
ニンジャスレイヤーがドアに手を掛けようとしたその時、一枚のオリガミ・ヒコーキがふわりと彼の頬を掠めた。ニンジャスレイヤーは振り返った。かばんが昏睡状態から目覚めフートンから身を起こしていた。「……待って……ください……」ニンジャスレイヤーは無慈悲に言い放つ。「その身体で何が出来る。オヌシはフートンで寝ておれ」
かばんはよろめき膝をつく。数秒の沈黙があった。やがて彼は言った。「オヌシはオヌシ自身のソウルを制御出来ておらぬ。このままでいずれインガオホーを受けることになる。ニンジャは私が殺す。イクサから離れよ」
かばんは歯を食い縛った。やがて彼女は頭を下げた。「オネガイシマス……どうか私にインストラクションを……力を……」ナムサン、ドゲザである。彼女は震える拳を床に打ち付けた。ニンジャスレイヤーは言った。「私はセンセイではない。私に人に物を教える資格は無い」
「お願いします……!」かばんはもはや頭を上げなかった。「……かばん=サン。それがオヌシの望みか?違うだろう」とニンジャスレイヤー。かばんは顔を上げる。「モリタ=サン……」ニンジャスレイヤーはかばんの腕を掴み、立たせると言った。
「かばん=サン、カラテとは要はエゴだ。エゴの強い方が勝つ。オヌシの行いが正しいか?間違いか?そんなものは一片たりともカラテに、エゴに関係は無い。良心に媚びて聖人認定が欲しいか?イクサに勝つのか?オヌシの望みを言え」「二人を助ける……!」「そうだ」
「……ニンジャスレイヤー=サン、力を貸してください。二人を助ける為に……!」……暫しの沈黙。手負いのニンジャ二人がタタミ一枚の距離で向き合う。その神秘的アトモスフィアにフレンズ達は黙ってそれを見守る。
ごく短い状況判断の後、サツバツナイトは「忍」「殺」のメンポから蒸気を吐き出す。装束が消え、フジキド・ケンジの顔が露になる。彼はかばんに手を差し出した。「……よかろう、バックパック=サン」
フジキドが応えると、かばんもまた片手を差し出した。二人は無言のまま頷き、硬い握手を交わした。フジキドは彼女らに自らの真の名を名乗る。「ドーモ、フジキド・ケンジです」バックパックもまたカイデンネームを名乗る。「ドーモ、フジキド=サン。カバン・ニンジャです」
おお、ゴウランガ!
二人の復讐者はフレンズ達と視線を交わし、頷いた。そこへ重箱を抱えた博士と助手が部屋に戻ってきた。サツバツナイトは言った。「では、まずはスシだ」