とある科学の雄英高校   作:御餅勿々

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5話

 雄英高校教師陣が集まる監視ルームは現在、森閑としている。

 

 それもそのはず。会場Hの仮想敵ロボットが数秒も経たない内に全滅したのだ。息を飲む者。目を見開く者。二度見してしまう者。興奮を隠せず、席から立ち上がる者。反応は様々だが、当然と言わんばかりの態度を取っているのは一人もいない。

 

 そして、カランと音がなった。握っていたペンを落としてしまった者がいたらしい。それを皮切りに、抹消ヒーローイレイザー・ヘッドと呼ばれるヒーローが、驚愕と動揺を隠せない声色で呟く。

 

「今、一体何が起きたんですか」

 

 彼にしては珍しかったようで、18禁ヒーローミッドナイトはその姿を見て落ち着きを取り戻した。自分より激しく動揺をしている人間を見て、冷静になるアレだ。

 

「あら、イレイザーがそんなに言うなんて珍しいわね」

「それもそうですよ。今までこんなこと無かったですから。正直、こんなに抜きん出た学生がいるとは思いませんでした」

 

 んーしょ、んーしょと落としたペンを拾おうとするのは、スペースヒーロー13号。ヒーローコスチュームの指にあたる部分は太く、うまく手中に収められない。そんな彼の代わりに、オールマイトは「はい、13号」と細くゴツゴツとした手で掴み、手渡した。「ありがとうございます」と言いかけたその瞬間、オールマイトが冷や汗をかきつつ、画面の一角に映る彼を見つめながら、ゾクリとした笑顔で呟く。

 

「ここまでやるのか…!垣根少年…!」

「彼を知ってるんですか。オールマイト」

 

 そう質問をするのはスナイプ。そして、オールマイトは悲しそうに語り始めた。

 

「10ヵ月程前にあった事件なんだが、覚えているかな。戸有(とある)市の悲劇」

「あぁ。ヒーローネットワークと警察のネットワークが同時期に妨害されてた時のですか」

 

 顎(?)に指をかけながら相槌を打つセメントス。

 

「覚えてるう゛う゛。アレほど俺の嗅覚に(いか)った事はなかったあ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」

 

 猟犬ヒーローハウンドドッグは怒りの感情が肉体に現れ、ケモノの感情が怒りと共に昂ぶり、人語を忘れかけている。そんな彼を落ち着かせるように、美しい毛並みを持った灰白色の鼠…根津校長はオールマイトの話に助け舟を出す。

 

「そう!彼はその被害者であり、被害を最小限にした、被害者の片割れなのさ!」

「なるほどな。言っちゃ悪いが、あの(ヴィラン)どもと戦って生きられたな。片方は快楽殺人鬼だろ」

 

 赤いヒーロースーツを纏う、左頬に十字の傷がついたブラッドヒーロー・ブラドキングは、個人的に嫌な思い出が蘇ってしまったのか少し気まずそうにしている。

 

「俺はあの手にハメてる爪のほうが気になるね。ありゃ素材はなんだ。見たことも無ェ」

 

 そう口を溢すのはパワーローダー。雄英高校サポート科を受け持ち、コスチュームやアイテムを開発を自らする、所謂天才だ。そんな彼らを他所に、一人気づいた者がいた。

 

ナゼカレハコチラヲミツメラレル(何故彼はこちらを見つめられる)…?」

 

 

 

                                   

 

 

 

「見つけた見つけた見つけたっと。街ん中に見つからねぇと思ったら、そんなとこにいやがんのか」

 

 上空50mほどに鎮座している光学迷彩を施したステルスドローン。そのカメラを睨め付ける少年がそこにはいた。距離にしてざっと200mは離れているのに、そのギラついた双眸は完全にそれを捉えている。

 

しばらく見た後、不敵な笑いを浮かべ、挑発するようにカチャカチャと爪のような物を見せつけ、無機質なくせに神秘的な光を湛えた2対の白い翼を、瞬く暇さえ与えぬような一瞬で出して。

 

ザザザザ!!!!!とノイズを響かせたそのカメラの映像は、永久に映し出されることはなかった。

 

                                   

 

「人を助けた時になんかポイントあんだろ。そいつはいらねぇから会場Hの救済措置をよろしく」

 

 音もなく飛翔した少年は、高台にいる俺へ視線を合わせ、不愛想な表情で当然とばかりにその存在を言い当てる。

 

「え゛!?君救助ポイント知ってんの!?どっから漏れたァ!」

 

驚くぜ。今まで試験中に気づいた奴なんて、俺が監督した限り居なかったはずだ。テンッション上がるぜぇ!!

 

「漏れてねーよヒーロー科受けるのにヒーローっぽいことしてなんでポイントにならねぇんだ」

「まー確かにそうだけど?なんでそんなに当たりが強いんだリスナー」

「俺は他の会場で怪我人助けてくるから。じゃあな」

 

 一方的に吐き捨てると、俺とは対称に余裕な笑みを浮かべ、他の会場へ飛び去った。

 

                                   

 

  この入試は敵の総数も配置も伝えていない。

 

  限られた時間と広大な敷地…そこから炙りだされるのさ。

 

  状況をいち早く把握するための情報力。

 

  遅れて登場じゃ話にならない。機動力。

 

  どんな状況でも冷静でいられるか。判断力。

 

  そして純然たる戦闘力…。

 

  市井(しせい)の平和を守るための基礎能力がP(ポイント)数という形でね。

 

「今年はなかなか豊作じゃない?」

「いやーまだわからんよ」

 

 真価が問われるのは…これからさ!

 

                                   

 

 

 どこの会場かはさっぱりわからないが、とにかく上空。プレゼント・マイクに吐き捨てて、幾つか会場を回った後。

 

「あん?」

 

 複数の崩れた仮想敵が不意にドサリと動く。物理的に断たれた回路が復活するわけもなく、しかし今度は隆起したり、沈下したり、ズレたりと、とにかく脈動していた。

 

 そんな動きをする理由など一つしかなく、人が下敷きになってるに決まってる。

 

「おいおいおいおい大丈夫かこれ」

 

 即座に空から降りて、それの中にいる人間へ声をかける。

 

「出れねぇんだな?今退かすからジッとしてろ」

「#$(%{*~~!!」

 

 1対の広い翼を展開し、器用に瓦礫を拾い上げ、人通りのない位置へ放り投げる。すると、足と腕が挟まっている黒髪で地味な雰囲気の少年が空を背にする体勢で現れた。個性は硬くなるものらしく、どこも怪我はない。

 

 瓦礫を飛ばすだけの力は無く、もがいている様だ。

 

「そのまま個性使っとけよ」

 

 下敷きになっている少年を翼で多少強引に引き摺り出すと、その少年はゲホゲホと少し咳き込んだ。反射的な行動を見届けると、確認を取るように声を掛ける。

 

「大丈夫そうだな」

「助かった。サンキュー!えーと、名前は?」

 

 服についた埃をはらいながら、朗らかに感謝を伝える。人当たりの良い感じの声色だ。

 

「垣根帝督」

「サンキュー垣根!俺は切島鋭児…」

 

 彼が名前を伝えようとした矢先、巨大な仮想敵(かそうヴィラン)がキュルキュルキュルとキャタピラの音を響かせる。

 そして、その影は彼らのいる区画を覆うように伸びていた。目の前にそれがあるわけではないが、もうそろそろ接敵することを予感できる道程を刻んでいた。

 

「お、おい逃げようぜ」

 

 そう言いかけた時、チンピラのような少年は、昏く妖艶とも言える笑顔で提案した。

 

「早速だが、お前はアレと戦えるか?」

「悪ぃ。俺の個性じゃどうしようもねぇ………俺の個性はさっき垣根が見てた通り、身体を硬くする『硬化』だ」

 

 先程まで挟まっていた事に気恥ずかしさがあるのか、すこし罰の悪そうな顔をしている。そんなの関係が無いと言わんばかりに、彼の立場も。

 

「オーケーオーケー。なら、飛んでくる破片から人を守れるか?」

「…?あぁ。破片くらいならなんて事無いぜ」

「任せた。あれの足元に怪我人がいる」

 

 親指を指して言うと、バッと翼を出して飛び立った。風に煽られながら地味目で黒髪の少年は見上げる。

 

「どうやって知ったんだ…?」

 

                                   

 

 圧倒的脅威。それを目の前にした人間の行動は正直さ…逃げたり、誰かに助けを求めたりすると思う。自分が犠牲になるという選択肢を選ぶのは難しいよ。

 

 あの仮想敵(かそうヴィラン)に挑んでも、表面上のメリットは一切ない。だからこそ、色濃く、眩く、浮かび上がる時がある。

 

 …そう。浮かび上がる。ヒーローの大前提。自己犠牲の精神って奴が。

 

                                   

 

 『ピンセット』のバッテリー残量は一本を使い切り、予備バッテリーも5%を切った。警告のアラームが鳴り、画面は赤く光っている。そんな事を認識する暇など無く、彼の往く空に()()()()()()()()()()()()()()()。反射的に目を閉じてしまい、腕で目を庇い、やっとのことで視界が確保できた。

 

「なんだこの風…ッ!?馬ッ鹿野郎!!」

 

 そこに仮想敵(かそうヴィラン)の前へ飛び上がったモサモサの緑っぽい髪色をした地味な少年を一目見た。両足はぶらりと垂れ下がり、まともな形を保っていない。

 

 あんな馬鹿力の出る個性を喰らったら、クソデカい仮想敵(かそうヴィラン)とはいえひとたまりもない。

 

 が、しかし、あの少年もひとたまりもないだろう。地に着くべき部分は砕け、倒せたとしてもこのまま落下あるのみだ。仮想敵(かそうヴィラン)に取っている構えはオールマイトのスマッシュさながら。つまり、()()()()()()()()()()()()

 

 見た感じはなよなよしい癖に、心と個性は肉体と理性に追いついてない。まるで、力加減を知らぬ赤子のように。

 

 しかし。

 

 しかし、だ。

 

 自分を犠牲にしてでも誰かを救おうとした狂気迫った表情は、少年の心を動かすのに十分だった。

 

 あの時、あの瞬間に見た表情と本質が変わらない、自分以外の誰かが傷つく結末を認めない、狂気(ヒーロー)の顔。

 

救われた時も最悪な時も見てきた表情に似ている物を見てしまった彼は、心が揺らぎ、『未元物質』(ダークマター)の制御が一瞬覚束なくなり、翼が消えかける。

 

 そして、彼は大きい鉄の塊に、叫びながら拳を振り抜いた。

 

「スマァァァァァッシュ!!」

 

ひしゃげる右腕を無視して、仮想敵(かそうヴィラン)を穿った轟音が響く。

 

「ッ!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を見てしまった。脳裏にこびり付いて離れないあの光景がフラッシュバックする。あまりの事に吐き気がし、再び翼が消えかけた。

 

 トラウマが彼を苛もうとも、もさもさ頭がこのまま落っこちる運命は、絶対に見届けたく無い。

 

 心臓をキュッと掴むような不安や寒気を乗り越え、飛べ!

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

                                   

 

「お、おぉおおおおおお!!?おぉ落ちっ!!落ちるぅ!!お茶の子さいさいさいさいさいさい」

 

 自分の足を見る。助けることに必死で、両足が折れていることに気づかなかった。

 

「砕?」

 

 ところで、β-エンドルフィンは痛みを感じる受容器を遮断する神経伝達物質だ。それが必要数分泌され、冷静になった後はどうなるか。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!っっっでえええええええええ!!!??ぅう゛う゛あ゛あ゛あ゛」

 

 絶望し、苦痛に耐えながらも思案し落下するその姿は、たった一人以外気づかない。自分に抱え込むしかない。誰かが気づいてくれるわけでもない。自分が落ちていることに必死で気づかない少年は、きっと苦痛を受け入れる。しかし、それは一向にやってこない。

 

 美しく輝く白い2対の翼を拡げ、けれど動揺が翼に出ている少年は上の両翼で飛び、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()『未元物質』(ダークマター)越しに伝わる生々しい感触を受けながら応急処置をする。

 

「ッ…!このまま動くんじゃねぇぞ。固定する」

 

 こいつ、説明の時のぼそぼそ陰キャじゃねぇか。あんなオタク気質があって、おどおどした態度でいるなら、きっと周りから疎まれて過ごしてきた時もあるんだろうな。

 

「!!」

 

 こくこくと頷き、我慢したい痛みが口から出る。

 

 グチャグチャな腕というトラウマに足を掛けた垣根帝督は冷や汗を掻きながら、それでも少年を認める言の葉を紡ぐ。

 

 

 

「よく誰かが瓦礫に埋まってるのに気づけたな。お前はあそこにいた奴の誰よりもヒーローだ」

 

 

 

 

                                   

 

 人知れず落ちてくる少年を助けようとした少女は「おえぇ…」となんかこう色々やっちまってる。彼女に寄り添うように降り立った垣根帝督は、やはり安心させるような言葉を掛ける。

 

「お前が助けようとした奴だろ」

「良かった…!ぐぅうううう゛う゛う゛う゛!!降ろ…してください。1P(ポイント)だけでも!!」

 

 シンプルで強い増強型の個性を持っているくせに、1P(ポイント)も取れていないことなんて、思いもしない。仮想敵(かそうヴィラン)を倒そうと翼の中で必死に藻掻くが、大きすぎる怪我を負ってしまった。固定されてしまった身体を動かそうとするには、無茶がすぎる。

 

「ダメだ。二度と身体が動かせなくなっても知らねぇぞ」

「終~~~~~~~~~了~~~~~~~~~~!!」

「…嘘だろ。増強系の個性で0P(ポイント)なのかお前」

 

 無情にも試験終了の宣言がプレゼント・マイクの口から告げられると同時に、『ピンセット』のバッテリーも切れた。

 

 結局1P(ポイント)も稼げずに終わってしまった事にどうしようもなく絶望したもさもさ頭の少年は、涙が流れ、堪えようとして嗚咽し、しまいには吐いてしまった。

 

 すると、雄英高校の看護教諭である妙齢ヒーロー・リカバリーガールが、実技試験で怪我をした学生を治癒しに各会場を駆けているようで、ここにも到着したようだ。

 

「はい。お疲れ様~。お疲れ様~。お疲れ様~。ハイハイハリボーだよ。ハリボーをお食べ」

 

 他の受験生へハリボーを配っていると、こちらに気づく。

 

「おやまぁ、自分の個性をこうも傷付くかい。まるで身体と個性が馴染んでいないみたいじゃないか」

 

 もさもさ頭の地味な…怪我は最高に派手な少年を見つけると、個性『治癒の超活性化』を使い、チユ~~~~~~~~~~~と怪我をみるみる治してゆく。

 

 今まで介抱していた少年の方を向くと、怪我の対応にミスはなかったらしく、学生へ激励の意味も込めたのか褒めた。

 

「ありがとねアンタ。完璧な応急処置だよ」

「そりゃどーも」

「ちゃっちゃと行くよ。他に怪我した子は?」

 

 リカバリーガールがどこかへ行くのを見届けながら、個性で固定していた足と腕を解放した。

 

 そして、美しい顔をした少年は抱いた感情(トラウマ)を殺しながら発破をかける。

 

「何勝手に絶望してんだ。仮想敵(かそうヴィラン)を倒すだけが実技試験じゃねぇぞ」

「…ッ?ぁ?どういう?」

「なんでヒーローな行動をしてP(ポイント)にならないんだって話だよ。ここはヒーローを目指す上で最難関の場所だ」

「…!」

「お前の筆記がどうかは知らねぇが、希望を持てよ」

 

                                   

 

「垣根くん!?なぜ君がここにいるんだ!?」

 

 飯田天哉はこのもさもさ頭の少年と一緒の会場だったらしく、もさもさ頭の少年は少し怯えている。

 

「俺のいた会場の仮想敵(かそうヴィラン)が全部無くなって暇だった」

「結構な数がいたはずだが…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そういうことなのだろうか」

「それは雄英のみぞ知るって奴だな。ま、飯田には関係ねぇな」

 

 眼鏡をかけた真面目そうな少年は、かなり癖のある毛をした少年に向き直り、驚愕は隠さず疑問と賞賛が混同したことを言う。

 

「君はこの試験の構造に気づいていたのか!?」

()()()()()()()()()()()()()()()。そういやお前の名前はなんだ?」

 

 急に話を振られた少年はそりゃあもうとんでもなくビビってるしなんならずっと眼鏡の人に目を付けられてたから今すぐ消えたいけど助けてくれた人がいるからどうしようどうしようとおどおどしている。

 

「落ち着け落ち着け」

 

 背中をとんとんと優しく叩きながら、「深呼吸もしとけ」とアドバイスされた少年は、素直に従い深呼吸をする。しばらくすると、少し不安そうな声と緊張と会話が成り立つ状況に困惑している彼は「みっみみど緑みど緑谷出ずい出久です!!」と答えた。

 

「お前テンパりの天才かよ。もしかしなくても飯田になんか言われてたろ」

 

 目が泳ぎ、当人の前で言って良いものかどうか天秤をかけて、結局無言の時間ができてしまう。

 

「皆まで言うな。そういうことだな?」

「すまない緑谷くん。俺としたことが緊張のあまり人に当たってしまった。許してほしいとは言わないが、謝罪を受け取ってくれると嬉しい」

「こいつ筆記試験の時もそんなんだったんだぜ?」

「えっあっえっ大丈夫です!!それでは!!」

 

 逃げ帰ろうとする緑谷出久は垣根帝督に首根っこを掴まれた!逃げられない!

 

「バーカ緑谷、連絡先交換しようぜ」

 

 半ば強制的にスマートフォンを出させられた彼は困惑(でもみどりやいずくはすごくうれしい!!)しながらもその端末を振る。垣根帝督・飯田天哉の名前と写真が表示され、友達リストに追加する。すると、いつのまにか近づいていた黒髪の地味目な少年が、垣根に声を掛けてきた。

 

「あっ垣根!やっと見つけた!」

「おー切島お疲れさん」

「おうお疲れ!思わず破片壊すのも忘れるくらい見とれちまって、落ちてきた破片にまた埋もれるところだったぜ」

「あれをやった奴がここにいる」

 

 パシパシと緑谷の背中を叩いて切島の前に誘導する。えっえっと虚空を喘ぎ緊張しぃな緑谷を他所に、切島はひと懐っこい表情を向けた。

 

「マジ!?すげーな!俺の名前は切島鋭児郎!よろしく!そうだ連絡先交換しようぜ!」

 

 少年のような目で緑谷を見る切島…実際に少年なのだが、尊敬と少しばかり憧れの表情が混じっている。

 

「かっ、垣根くんはみんなと学校が同じな…んですか?」

「いや?全員今日知り合った」

 

 

 

 イケメンはコミュ力が高い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!連絡先交換しちゃった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

                                   

 

 わいのわいのと学生がしているところを、カメラ越しに見つめる女がいた。「あら~青いわ~」と入試なのに自分の趣味に走るミッドナイト。そんな彼女を他所に、垣根帝督の映る画面を端末に映しながらイレイザーヘッドは珍しく意見する。

 

「あいつ合格にしませんか」

「やだイレイザーヘッド。あの翼の子にもうご執心?」

「応急処置、怪我人の誘導、情報収集能力や判断力、戦闘力や機動力もトップヒーロー級で、並のプロヒーローで勝てる奴がいるかどうか。あいつだけは入学させないのが合理的でないと判断したまでです」

「どうしたイレイザー。ベタ褒めじゃないか。除籍しまくる人間の意見とは思えんな」

 

 ブラドキングは茶々を入れる。がしかし、イレイザーが珍しいことをしているのは事実だ。そんな彼らを無視して、言葉を続ける。

 

「俺も推薦とは別の特別枠を否定していましたが、確かにここまでレベルが違うと頷けます」

 

 そして、雄英高校の長である根津は、自分の意見と学校の意見を総括する。

 

「僕もオールマイトと塚内くんから提案された時は少し耳を疑ったけど、一応の了承は出したよ。もし僕たちの想定を下回るなら特別枠なんて作らなかったけど、百聞は一見に如かずだね。確かに彼は頭が飛び抜けた上で、さらに逸材だ」

 

 誰の想定も上回るその実力を見せつけられ、納得するしかない。イレイザーの言った事が全てだ。…正直、自分では勝てないかもしれないと思ってしまっている教師もいる。

 

 

 

「僕が認めよう。彼を特別枠として雄英高校に入学することを許可する」

 

 

 

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