ハンターは猫の料理人の依頼を解決するため再び遺跡平原にいた。
崖の段差のエリア7の辺りを見渡しながら様子を窺うハンターを狙う影が1つ。緑色をベースとした外殻と鎌のように発達した爪、そして一際目を引く巨大な角が特徴。
アルセルタスはハンターを仕留めようと崖の遙か上にある岩肌にへばりついていた。
羽を震わせ風に乗りハンターの後方へと移動し、重力に従い急降下、鋭い頭部の突起を向けて弾丸のように風を切り裂きハンターの後頭部に突き刺すべく突進した。
「ぐあっ!」
しかし突起はハンターの装備に弾かれ刺さることは無く、体制を崩すのみ。
再びアルセルタスは急上昇しハンターの視界から外れると再度、後方から鉄砲玉の如く突撃した。
ハンターは振り向きすぐさま回転回避で躱す。
2度目の突進も躱され、アルセルタスは1度壁に張り付いて様子を見る。
一方ハンターはすぐさま索敵をしてアルセルタスを見つける。しかし敵は目の前に迫っていた。
これも回転回避で辛くも回避する。
アルセルタスはハンターを通り過ぎると急上昇。エリアの中腹の段差の上に滞空して、オレンジ色の長い鎌のような爪を持つ前足をすりあわせ威嚇する。
「ボス!大丈夫かニャ!」
「ああ、それにしても中々のスピードだな」
アイルーが駆け寄り武器を構える。
ハンターも飛竜刀【銀】を鞘から抜き構える。
相手は上空。間合いの外にいるためどうしても近づいて斬らなければならないが、崖の多いこのエリア。崖を登っていては隙を作ってしまうだけ。地の利を活かしているのはアルセルタスの方だ。
「僕が突撃するニャ」
アイルーはそう言うと地面を掘り姿を眩ます。
地面を潜って敵の背後から奇襲をかけに行ったと判断したハンターはアイテムポーチからペイントボールを取り出し投げた。
ピンクの液体が緑の甲殻にベットリと着いた。
ブーーンと音を立てて突撃するアルセルタスをハンターは右の重心移動を活かした移動斬りをお見舞いする。
長い左前足にヒットするが浅い。
すぐさまハンターは振り向き剣先を敵に向ける。相手は太刀の間合いから一歩外れた場所に陣取っている。無闇に斬りかかっては体力をいたずらに消耗するだけ。鬼刃斬りのカウンターは練気が溜まってないので出来ない。ハンターはアイルーの奇襲を待つことにした。
今度は前足を使い、左に旋回しながら斬りつけてくる。ハンターは落ち着いてこれを回避。アルセルタスが先程いたエリアの中腹の崖の側に滞空したときだった。地中からアイルーが飛び出し、叩きつけた。
背中に攻撃が当たり、ひるんだアルセルタスはひっくり返って地に落ちた。ピクピクと痙攣している隙に猛攻を仕掛ける。しかしすぐさま体制を整え、宙に浮いてアルセルタスは逃げる。
前足をすりあわせ再び威嚇する。白い吐息がでている。たたき落とされて怒ったようだ。
ハンターも練気は溜まり鬼刃斬りを一通りぶちかませる事が出来る。が、下手に焦って大技を当てに行っても手応えは薄いだろうと判断。相手はプライドを傷付けられ怒っている。猛攻をさせて疲労が溜まり動きが鈍ったところに叩き込む。戦い方を決めたハンターはアイルーに短く伝える。
「奴を疲れさせた所を一気に叩く。良いな」
「了解ニャ!」
アイルーはハンターに答えると大きく回り込みアルセルタスの背後から角笛を吹いた。
アルセルタスは大きく腕を振り上げ羽音を鳴らしてアイルーに向かって低空突進を敢行。鋭い突起はアイルーの首元を狙うが、紙一重で躱す。
アルセルタスは減速して旋回。すぐさま再度突撃する。これもアイルーは躱すが、アルセルタスは逆に加速、ハンターを貫かんとそのまま勢いをつけて突っ込んだ。
「っらぁ!!」
しかしアルセルタスの攻撃はカウンターを習得したハンターには好都合。練気を解放し瞬間だけ身体能力を爆発的に上げる。太刀を横に構え、アルセルタスの強い衝撃を持った突起をいなし、勢いを吸収し練気に還元する。一瞬で最高まで溜まった練気を暴走させて一閃。アルセルタスの下腹を斬りつけた。
強いカウンターを受けたことでアルセルタスはバランスを崩し、突進の慣性のまま壁に突き刺さった。
「ぜぁあああ!!」
ハンターはカウンターの衝撃で痺れる両腕を心の中で叱咤し追撃する。ここを逃す手はない!横に一文字の太刀を振るい、フィニッシュに上下に鬼刃斬りを叩き込む。
「師より受けし槍さばきを喰らうがいいニャ!」
アイルーは爆走し大きく跳躍。ランスの突進のように突っ込み斬りつける。
突然のカウンターに続き大ダメージをうけたアルセルタスは空高く飛びエリアから逃げる。
エリアは変わって段差の多い赤茶けたエリア4。ここでアルセルタスは驚く戦法でハンターを迎える。
羽を収め地上戦を持ち込んできた。
長い爪を振るい攻撃してくる。ハンター達が横に廻ろうとすれば旋回して寄せ付けない。
しかし、接近戦のエキスパートであるハンターに地上戦を持ち込むのは悪手である。
「潰す!!」
攻撃パターンを見極め攻撃を躱し後ろ足を狙ってダウンを取りに行く。
「ウニャニャニャ!!」
アイルーがハンターに負けじと猛攻を続ける。
ハンターがこのままダウンを取れると確信したところで強い警鐘がハンターの脳裏に過ぎった。
アルセルタスが得意なのは空中戦のはず。実際太刀は当たらないし、段差を利用しての攻撃しかハンターの選択肢は無かった。
有利だったのはアルセルタスの方である。それをわざわざ不利になる戦い方に変えたのか。まるで何か誘っているような--。
ハンターが気づいたときにはアルセルタスは腹部を持ち上げ激しく羽ばたいたと思うと勢いよく急発進。ハンターとアイルーを轢き飛ばし上空に飛翔した。
ハンターとアイルーは強く地面に叩きつけられる。
「ぐっ…!!」
「ニャッ!!」
何とか立ち上がりアルセルタスの攻撃に備える。
ハンターのダメージは思ったより大きかった。と言うのも両腕に力が入らない。最初のカウンターのダメージが響いていた。
自然回復するのに時間がかかる。しかしアルセルタスは攻撃は激しさを増してきた。
ふらふらと何とか回避するハンターを狙ってアルセルタスは激しく突進する。
ついにハンターは尻餅をついてしまった。
アルセルタスは喜ぶようにオレンジ色爪を振り回しとどめを刺さんと全速力で貫きに来た。
「ボスゥ!!」
アイルーが吠えるが、力が入らない。
「くそっ……くそっ……!!」
ふらふらと何とか立ち上がり太刀を構えるハンター。
ギチチチと口元をハンターを嘲笑うように鳴らして迫るアルセルタス。
「くそっ……!なんてわけねぇだろうがぁああ!」
鬼刃が輝く渾身のカウンター。銀火竜のブレスが着弾したような爆発が起き、自慢の角をたたき斬って破壊した。
「うらぁぁああ!!」
更に横一線から上下に切り捨て振り上げた。練気が火柱となってアルセルタスを焼き尽くす。炎が消え去ると緑の体液が噴水のように吹き上げアルセルタスは絶命した。
「やれやれ、てめーの敗因はたった1つ。たった1つだけだ」
フラフラとした足取りはすでに無く、太刀を右肩に担いでアルセルタスを見下ろす。
ひっくり返って足がピクピクと痙攣して死んでいるアルセルタスに語りかけるハンター。
「『勝ち誇った奴が負けるのさ』」
太刀に付着した血を振り払い鞘に納める。
ハンターの不意打ちを食らって弱ったような動きは演技。急発進をする瞬間僅かだが体を反らしダメージを軽減していた。
長いハンター生活で一番有効な罠は弱ったふりだったりするのをハンターは経験則で知っていた。そこそこ互角な戦いをして弱ったふりをすれば格下はすぐに勝ち誇る。その隙にバッサリ切り捨てれば終わる話。これは人にも言えることだ。自分の戦績を誇示してる奴ほど早く死ぬし、ろくな仕事もしない。
「おい、大丈夫か?」
アイルーに回復薬を差し出して飲ませるハンター。
「ボスは大丈夫ですかニャ?」
フラフラと立ちあがるアイルーにハンターは言葉を返す。
「あの程度でやられるわけ無いだろ?演技だよ演技。この前もお前に教えただろ?『勝ち誇った奴は既に敗北している』と。まぁ、今回はそれを実演でお前に見せられたのは大きな収穫かな?さて分かったらとっとと帰るか」
「ニャ、にゃんて……人ニャ」
ハンターはアイルーを立たせアルセルタスを一瞥すると、ベースキャンプに向かって歩いて行った。
「おお、銀色のハンター。オマエサマこそが我が救世主ニャルよ。タル配便のアイツが喜んでたニャルよ。これもすべて、オマエのおかげさまニャル。いい奴ニャルね。私、オマエさまをいたく気にいったニャル。…でも飯代はいただくニャル。ニャハ」
アルセルタスを討伐して報告すると猫の料理人は、そう言った。
「ふっ、しっかりしてるな。それであんたはうちのキャラバンに来るのかい?」
「勿論約束は守るニャル。団長殿に挨拶に後で行くニャルから旦那からも言っておいて欲しいニャル」
「分かった、待ってるぜ。またな」
ハンターはそう言って報告のため集会所に向かった。
「おお、良いとこに来てくれたね。君に話しがあるんだよ」
「マスター、いかがなさいましたか?」
多くのハンターが出入りする集会所。飯を食べるはハンターや、狩りが成功したのだろう。モンスターの角やら尻尾を掲げて帰ってくるハンターもあれば、集会所に入ってきて落ち込むグループもある。その度に響めきだったり笑い声が響く。
その集会所を取り仕切るギルドマスターが話があるとハンターを呼び止めた。
「まずはクエストをクリアおめでとう。アルセルタスを討伐したんだってね」
「いえいえ、それ程のことでは」
「うんうん。君なら朝飯前だろう、それでね話なんだがね」
「ええ」
「君に『探索』を協力してもらえないだろうかと思い呼んだんだ」
「『探索』ですか?」
「うん。未知の樹海と言ってね、ギルドが未開拓だったフィールドを調査していてね、そこを君に調べてもらえないかなと」
「待って下さい、腕っ節に自信はあっても勉学はそこまで得意では無いのですが」
「ほっほほ。何も研究しろと言うわけでは無いんだよ。一定のフィールドを歩き回ってギルドが用意した拠点まで到達して貰えれば良いのさ。モンスターを討伐してもらえたらなお良いね。簡単に言えば毎回フィールドの形が変わる素材ツアーみたいなモノだね。やってもらえるかい?」
「良いですが。旅によっては出来なくなるかもしれないですよ」
「良いのさ。気楽にやってもらえれば。詳しくは君のキャラバンの団長殿に伝えたから聞いてもらえるかい?」
「分かりました、失礼します」
ハンターは集会所を後にしてキャラバンに向かう。
ハンターを迎えたのはやはり団長だった。
「無事で何より! メンバー募集!」
隙あればメンバー募集する団長につい笑うハンター。それを見てか、団長は続けた。
「おお、調子よさそうな顔だな」
「ええ、団長殿に朗報ですよ」
ハンターはそう切り出すと屋台の料理人が我らの団に入ることを伝えた。
「なんだって?屋台のネコがウチに入るって?はっは!お前さんもやるねぇ~!そいつはうれしい報告だな!おっとお前さんにも報告があるんだったな!
ギルドから…、《探索》の許可を取っておいたぞ!!」
「ええ、先ほどギルドマスターから聞きました」
「おお、知っていたのか」
「しかし詳しい話は団長殿に聞けと言うことで」
「では、さっそく説明するか!《探索》とは、ギルドの許可を得て未調査の地を調査することなんだ。発見したさまざまなモンスターをギルドに報告する、というのが大きな目標だな」
「採取クエストみたいな感じですかね?」
「いや、未調査の地だから、支給品などのギルドの設備は整っていない。頼りになるのは自分のみ!準備万端でのぞむのがいいだろう。…とまあ、いろいろあるが百聞よりも一見、くわしいことは実践で説明するか!」
「実践ですか?」
「ああ、早速俺とお前さんで探索に出かけよう!なにハンターさんなら出来る!出来る!」
こうして急遽団長とハンターの探索が始まった。
「準備はいいか、我らの団ハンター!気合いで調査を開始するぞ!」
「やりましょうか!」
ジョーイちゃんに送られたどり着いた場所は遺跡と森が広がる大自然。ベースキャンプのベットはあるのものの、当たりに回復薬や携帯食料の入った箱が投げ出されている。
「いや、こうして2人で狩場に立つと始めて会った時を思いだすな!」
「ええ、あの時も古龍相手に2人で立ち向かいましたね」
吹き付ける熱風と砂。始めて会った二人の男は巨大な古龍を前に共闘し結果的にバルバレを救った。
「フフ、そういやあの時ごちそうになった酒は旨かったな。またメンバー皆で飲みたいものだな。おっと、お嬢は飲ませるなよ。酒乱でな押さえるのに苦労するからな」
「前も言ってましたね。それにしても意外ですね」
「たったおちょこ一杯でも飲ませると酔っ払ってしまってな、モンスターのマネやら色々やって色々壊すからな。挙げ句の果てには自分でクエスト作るんだ。『乱入クエスト・ウケツケジョーの討伐』ってね」
「フッ、お嬢らしい」
「ほんとに飲ませてしまったことを後悔するくらい酷いからな。まぁ、弱いから飲めないと言ってたお嬢に一口進めた俺が悪いんだがな」
「貴方ですか元凶は」
酷いオチに肩を落とすハンター。それをいつもの如く笑い飛ばして探索の説明を団長は始めた。
「よし、それでは《探索》についてもう一度、簡単に説明しよう。探索とは、ギルド未調査の地域、この《未知の樹海》を調査することなんだ。目標は、生息するモンスターを発見してギルドに報告すること、だな。調査をしながらどんどん進んでいくと…。探索の終了地点に、ギルドの手配した《荷車》が待機している。この荷車に乗れば、調査を終了して帰還できるぞ!
何が起ころうと、調査終了地点までたどり着くことがカンジンだな!
調査の途中で力尽きてもスタート地点に戻されるが、クエスト失敗になることはない。だからといって、油断は禁物だがな」
そこまで説明をして団長は荷物を持つ。
「はっは!さて、と。こんな所だな。よし! では、途中でモンスターに会うかもしれないが、ひとまず、荷車までたどり着いてみよう!」
「行きましょう。モンスターは任せて下さい」
「ああ、ハンターさんの戦いをまた見れると思うと興奮してきたな!はっは!」
2人はギルドが持ち込んだ大雑把な地図を参考に道なりに進んでいく。小型モンスターのランポスがいたので討伐して団長の安全を確保していく。ついでに倒したモンスターのメモを取る。
暫く進むと開けた場所に遺跡平原のような二重底のエリアにたどり着いた。
すると向こう側からランポスが2頭こちらに走ってくる。太刀を引き抜き手早く仕留める。
団長がハンターの側に駆け寄ると2人を包む大きな影が。
蔦の上にはランポスのリーダー、ドスランポスが立っていた。ドスランポスはハンター達の前に飛び降りると一際大きく鳴いて号令を放つ。
ランポスが集まり2人を囲むように立ち並ぶ。
「おっと、めずらしいな!この地方ではめったに見ない《ドスランポス》じゃないか!ちょうどいい、ここでギルドに調査結果を報告する方法を教えておこう!」
団長は左手で帽子を押さえ不敵に笑うとハンターに目を配る。ハンターは頷き、閃光玉と煙玉を取り出すと地面に叩きつけた。
閃光と白煙がドスランポス達を包み込む。これで時間が稼げるだろう。
2人は走り柱のかげに隠れた。そして団長が口早に説明をする。、
「ギルドに対し、モンスターを発見した!…という報告をするには、当然のことだが、その証が必要になるんだ。証となるのは、主に次の2つだ。
●出会った大型モンスターを狩猟する
●大型モンスターの落し物を入手する▼
これらの証は、常にギルドに報告されている。こうした報告が評価されれば、そのエリアでのモンスター生息が認められることがあるんだ。もちろん、より多くの調査をしたハンターが高く評価されることになるぞ!」
「分かりました」
「それと、注意を1つ!通常のフィールドと違い、探索で出会ったモンスターは完全に逃げて姿を消すことがある。出会ったモンスターを狩猟するなら、スマートな狩りが必要になるぞ!」
そこまで説明すると煙も晴れてきている。そろそろ時間のようだ。
「と、こんな感じだな。ドスランポスを狩るか否かはお前さん次第だ。今のお前さんの手に負えないと思ったら、迷わず探索終了地点の荷車を目指すんだぞ!」
「団長殿、誰にモノを言っているんですか?何度も狩り慣れた敵ですよ。」
「はっは!いや失敬!そうだな、ハンターさんなら出来る!出来る!」
「そこで見てて下さい。すぐ終わらせます。」
飛竜刀【銀】を抜刀してドスランポスに向かっていくハンター。
青藍の狩人と白銀のハンターの戦いが始まった。
ドスランポスの群れと言っても小さなモノで、ドスランポス自体も成り立ての若い個体だ。
群れの連携は基本的なもので新人ハンターなら苦戦するが、G級の我らの団ハンターの前では試し斬りの相手にしかならない。
雑魚で練気を溜め、すぐさま鬼刃斬りをドスランポスにぶつけ、鬼刃大回転斬りで下っ端もろとも巻き込み切り捨てた。ものの数分で倒してしまった。
団長が笑顔で再び駆け寄る。
「よし、見事だ!と言うか流石だな!ギルドに調査結果が報告されたぞ!しかも、ドスランポス討伐で高い評価を得たようだ!ギルドは、調査に貢献したハンターに、特殊なボーナスを用意していると聞く。これからもたくさん調査して高い評価を得たい所だな!」
「しかし良かったのでしょうか?あっさり終わりすぎて少し怖いくらいですが」
「はっは!そのうちお前さんも唸る奴がでてくるさ!さてゴールまで進むか」
2人はその後大型モンスターに会うこと無く、どんどん進みゴールの2台まで到着した。
「よし! 着いたな!ここが探索終了地点だ!そこに荷車があるだろう?それに乗り込めば、帰還することができるぞ。お疲れさまだったな、我らの団ハンター!」
「ええ。戻りましょうバルバレに」
こうして団長が荷台をアプトノスに牽かせ、バルバレへと戻っていった。
翌日、ハンターが目覚めマイハウスの荷台から出ると良い匂いと団長達の笑い声が聞こえる。
するとすぐ側に屋台の猫の料理長が現れてメンバーに料理を振る舞っていた。
ハンターは団長に声を掛ける。
「おはようございます。団長殿」
「おお、ハンターさん。昨日はお疲れ様だな!お前さんに報告が2つある!報告その1!我らの団・メシ部門が見つかった!紹介しよう。お前さんも知っている屋台の料理長だ!世界をまわろうと誘ったら、大喜びで承知してくれたぞ!お前さんも挨拶しておいてくれ。ノリのイイヤツなんだ」
世界を廻ろうと誘う団長も凄いが、それを喜ぶ料理長もなかなか肝の据わった猫だ。
「報告その2!探索での調査が評価されたぞ!ギルドから書状を預かっている。読んでみようか?
『貴殿の調査結果を評価し、《ギルドクエスト》の受注を許可する。また、近日大型モンスターの目撃事例あり。引き続き、調査されたし。』ほう…!《ギルドクエスト》の受注許可が下りたか!」
「ギルドクエストとは?」
ハンターが聞き慣れない単語に疑問を覚え聞いてみた。
「ギルドでは、調査に貢献したハンターに対して、《ギルドクエスト》という特殊なクエストの受注を許可しているんだ。さっきの調査結果は、特別に
俺がギルドに申請しておいたぞ!ギルドクエストのことならお嬢に聞いてみてくれ。喜んで教えてくれるはずだ」
そこまで言って団長は話を変えた。
「さて、と。よし、ここでお前さんに、次の目的地の話をしておこう。仲間がそろったら、バルバレを出発しようと思ってな。で、どこを目指すかなんだが…、船を作りに行こうと思う!デカくて丈夫な船をな!」
「船ですか?」
いきなりスケールのデカイ話が出てきた。ハンターの口角が自然と上がっていく。団長の話はスケールが大きくて面白い。やはりこのキャラバンに入って正解だった。
「船があれば、遠くに行ける!”コイツ”の正体を探してどこまでも進めるぞ!」
そう言うと、帽子から白く輝くアイテムを取り出した。
「それは何ですか?」
何だかんだ疑問に思っていた事を、今更だが聞いてみた。
「おっと…そうか。お前さんには、まだ教えてなかったか。……これだ。見てくれ。」
光の角度によって白かったり金色だったり変化する。何かの鱗のようだが、ハンターやってて見たことが無い素材だった。
「”コイツ”は偶然手に入れたシロモノでな。………不思議でキレイだろう?こんな不思議なモノ、見たことも聞いたこともなくてな。そりゃもう、うずいたよ!”コイツ”のことが知りたくて、いても立ってもいられなかった!で、相棒と一緒にキャラバンを作って飛び出した、ってワケだ。それ以来、いろんな場所でいろんなモノを見てきたが、未だに”コイツ”の正体のシッポさえつかめていない。だが、あきらめはしない!世界をくまなく回ればいつか真実に行き当たるだろう!そのためなら、俺は海だって渡るし、空だって飛ぶつもりだ!…とまあ、これが俺達の旅だ。そんなわけで、次の目的地はデカい船を作ってくれそうなもの作りに長けた村だな!」
「そうだったんですね。どんどん楽しくなっていきますね」
明らかになった我らの団のルーツ。それと団長のアイテム。もしかしたらハンターが追い求める龍の素材なのかもしれない。アイツも白かったから……。
「我らの団の船か…実に楽しみだ!はっは!」
そこまで考えると思考を辞めた。団長の言うとおり世界を回れば真実にたどり着くだろうから今ここで答えを出す必要は無い。
「さて、と。お前さんは探索で大物の調査をしてみてくれ!その間に俺は商人を捜すとするさ。準備を十分にしていけよ!」
「了解!」
「さても変わらずメンバー募集!残る募集メンバーは商人のみか。なんかこうなァ、身軽でたくましくて顔が広くて、物知りでヘンなものをあつかっていて、陽気で愉快で洒落のわかる商人がいいなァ。ぜいたく言い過ぎか?こりゃ失敬。はっは!」
団長の笑い声がバルバレに響く。
残るメンバーはあと一人。商人だけ。メンバーが揃えば大きく運命の歯車が動き出す。
我らの団に旅立ちの風が吹こうとしていた。