白き龍を倒す旅   作:アイスラッガー

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ナグリ村へ

「頭が……いたい……」

もそもそとベッドから起き上がり座り込んで呟く女性。バルバレ集会所の上位受付嬢その人である。

昨日、我らの団の宴に団長殿からのお誘い途中からでギルドマスターと一緒に参加した結果がこの様だ。

我らの団ハンターとは仕事の付き合い。最初はそう思っていたが、気がついたら正直に言うと、受付嬢は我らの団ハンターに惹かれていた。

G級ハンターの実力。しかしクエストは選ばず依頼は何でもこなす。『下位の運搬クエストなんぞG級ハンターがやれるか!』などと良くあるクレームを一切言わない。たとえ薬草取りでも2つ返事でこなす優しさ。ベースキャンプの手入れなども率先して手伝ってくれる。

クエストの帰りの飛行船でよく仕事の愚痴を聞いてくれるし、集会所での他ハンター達の喧嘩や揉め事を仲裁してくれることもしばしば。

そんな憧れの彼と一緒に食事が出来る事に表情には出さずとも内心はしゃいでいた。

いざ宴に参加すると美味しい料理に美味しいお酒。

『いつもありがとう』とハンターからポッケ村のお酒を注がれ、あらあらうふふ何だか夫婦みたいですね。と1人で興奮していたりした。

そこまでは覚えている。その後が記憶が無い。ここまで飲んだのは人生でもあまりない。別に酒乱でも無いが、記憶を無くすのはマズい。我らの団ハンターの隣に座っていたのは覚えているが迷惑をかけていなかっただろうか?

痛む頭を使って記憶を振り絞ると昨晩の記憶が脳内にポツポツと浮かんでくる。

『ハンター様、あ~ん』

『えっ?いや、その……あぐ』

『ふふ、ちゃーんと食べないとダメなんですからね。次は野菜ですよ』

『んぐ、大丈夫。……ちゃんと1人で食えるから。皆も笑ってないでジョーイちゃんを止めてくれ』

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

叫んだら頭に響いて更に辛い。思いだすんじゃ無かった!

『あ~ん』ってなんだ。ハンター様引いていたし、上司や我らの団の皆さんにも思いっきり迷惑をかけているじゃないか!

受付嬢はベッドに再びダイブするとジタバタと暴れる。相変わらず頭痛が酷いが、苦い記憶を消してくれるなら悪化させた方が良いと思い暴れるが痛みとともに次々と自分のしたことが思い返される。

『はんたー様に言いたいことがあります!』

『お、おう』

『食事するくらい、兜を脱いだら良いと思います!はい、あ~ん』

『えっ、また?!……あむ。装備の重さに慣れるためにやっていることだから良いのさ別に』

 

 

「ううう……」

昨日の記憶を取り戻し、枕に顔を埋めて呻る受付嬢。昨日の醜態を同僚の闘技場受付嬢に知られたらのほほんとした口調でからかわれるに決まっている。集会所に来る我らの団ハンターを熱い視線で見つめている銅鑼ねえちゃんに殺意と嫉妬の籠もったハンマーで大砲の弾の如くぶっ飛ばされる。下位受付嬢の訳の分からない妄想のネタになる。いや、それよりも。

「ハンター様に嫌われたらどうしよう?」

死ねる。飛行船を操舵してそのまま火山の火口に突っ込むしか無い。

クールな振る舞いで評判の彼女も流石に今回の出来事は許容範囲を超えていた。

「ふふ、仕事行かないと」

休みたいと思いながらも、制服に着替えて身嗜みを整える。

荷物を纏めて、集会所に向かう。食事する気にはなれなかった。

ギルドマスターと挨拶を交わし、カウンター業務に入ろうとするとマスターに呼び止められた。

「ほっほほ、出発の挨拶に来たみたいだよ」

「えっ?」

集会所の玄関にはウエスタンな壮年の男性と銀リオレウスの装備のハンターが立っていた。

 

 

 

 

 

バルバレを離れるときが来た。

我らの団のメンバーは慣れた手つきで荷物を纏めて行く。

ハンターはマイハウスに全ての荷物が積み込んであるので特にすることも無いので他のメンバーの荷造りを手伝おうと向かう。

団長はテーブルに地図を広げ椅子に座りタンブラーに入った酒を煽る。

「団長殿、何か手伝えることはありますか?」

「はっは!俺は大丈夫だ。皆旅支度は慣れているからな、お前さんが手伝えることは無いと思うぞ」

「そうですか?」

ハンターは各ブースを見てみる。加工場などは色々と片付ける物もありそうで、独りでは些か厳しいと思えるが。

ハンターは取り敢えず加工ブースに向かう。

「何か手伝いますか?」

「…………大丈夫だ」

ハンターは加工担当に声を掛ける。

加工担当は制作途中の片手剣や制作道具など、竈の中に押し込み纏めたのちに加工ブースの屋根側から垂れている太いチェーンを全身の力を込めて引くと、カラクリ仕掛けが機動。看板が勝手に畳み、四方から緑の板が竈を包み、下から四つの車輪が生えるように現れる。コンパクトに纏まると1つの荷車に変わった。

「凄いな……全自動ですか」

「…………各地を転々とするからな、キャラバンでは重宝される技術だ」

「知らなかった……」

「……あとは荷車を1列に連結させて移動するだけだから、お嬢の手伝いをすると良い」

加工担当が指差す方を見てみると、大きなクエストボードを折り畳もうとしている。ハンターはお嬢の下へと向かった。

「んっ、んっ!ていっ!」

上下折りたたみ式のクエストボードをお嬢は力任せに下側を持ち上げ叩きつけるように折り畳んだ。

「ふぅ。あっハンターさん」

「お嬢、何か手伝おうか?」

「そうですか。それじゃあ……ってあれ?」

何か引っかかる感触を感じお嬢が見てみるといつも肩から提げているお気に入りのカエルのポーチの足が、折り畳んだクエストボードに挟まっており抜けなくなっている。

「あらら。んっ、んん~!……キャア!!」

力任せに引き抜こうとするが中々抜けない。それでも引っ張ると、クエストボードの上の留め金が外れ折り畳んだクエストボードが勢いよく開き、貼り付けていたクエストの紙が舞い散った。お嬢は反動で尻餅をつく。

「大丈夫か?」

ハンターは手早く落ちたクエストを回収。お嬢に手を引っ張り立ち上がらせる。

「えへへ、やっちゃいました。ありがとうございます、ハンターさん」

「イッーヒッヒッヒ!」

しわがれた笑い声が響く。ハンターが振り返ると商人の爺さんが笑っていた。

「爺さん、笑うなっての。それより荷造りし無くて大丈夫か?」

「イヒヒ、すまんすまん。ホイッ」

商人は鍵の形をした杖をコンコンと自分が座布団を敷いて座っている箪笥のような巨大な品物入れを軽く叩くと、正面に展開している商品棚が勝手に纏まり、商人の座っている品物入れに収納。車輪が現れ日よけの傘まで自働に出てきて商人を日差しから守る。

「イヒッ。終わったわな」

「凄ぇな、その技術」

ポッケ村から出る時に荷造りに苦労したハンターはあっという間にコンパクトに纏まるシステムに感心せざるを得ない。

「年寄りには有り難いシステムだわな」

「羨ましいね」

ハンターはクエストボードをたたみ直すと、お嬢と一緒にマイハウスに詰め込む。

一方、料理長は竈の火を水で消し、器を重ねて食材倉庫に仕舞おうとする。脚で半開きになった倉庫の扉を開け中に入るが、倉庫の下に落ちていた魚を踏みつけ滑り転倒。その衝撃でカラクリ仕掛けが発動。食材倉庫を中心にして屋台が纏まり出発完了となった。

 

 

 

ハンターは団長と2人でバルバレギルドへと向かっていた。ギルドマスターへ挨拶のためである。

「……さて、と言うわけでこれよりナグリ村へ行くとする」

団長はギルドマスターへ挨拶している中、ハンターはジョーイちゃんと話をしていた。

 

 

 

「ハンター様、昨日はその……ご迷惑を」

「ああ、大丈夫だ。楽しめたか?」

「ええ、楽しかったです」

両手を胸の前に組みほんのり朱に染まりながら答える受付嬢。ハンターは頷きながら「そうか」と答える。

 

2人は雑談を交わすが、その様子を見た他の男性ハンターから殺意の籠もった視線を向けられているが、気にしていない。

ジョーイちゃんはそれに気付いてか、話題を変える。

「ちゃんと回復薬は持ちましたか?」

「そう言った物はアイテムボックスにストックしているから大丈夫」

「歯ブラシとか着替えとかもしっかり持ってますか?」

「ああ、大丈夫。というか子供の遠足じゃ無いんだから。急にどうした?」

ジョーイちゃんの質問攻めにたじろぐハンター。一体どうしたと言うのだろう?

「いえ、ハンター様は旅に慣れてないと思ったので」

バツが悪そうに答えるジョーイちゃんにハンターは苦笑する。

「大丈夫だよ。団長殿もいる、独りじゃない」

頼れる仲間も出来た。金や権力のために戦うのではない。大切な仲間を守るために今の自分はいる。

「それと……、ギルドで何かあったら遠慮無く連絡来れ。俺で良ければ力を貸す」

勿論、ギルドマスターや受付嬢たち集会所の皆も大切な仲間だ。バルバレでは色々と世話になった。そう思い、ハンターは発言したが、ジョーイちゃんの耳には自分に会う理由にしか聞こえない。

 

「ふふふ、遠慮無く頼りにさせて貰いますね。その時はちゃーんと私が安全操舵で送り迎えしますから」

確認するかのように一歩近づき人差し指をS・ソルZヘルムの口元に当てる。並みのハンターならこれでイチコロで恋に堕ちる物だが、狩場が居場所のG級ハンターには効果無し。

「ああ、また頼む」

彼はそう言って右手を差し出す。受付嬢も笑顔で彼の手を握り握手を交わすが、心の中では静かに泣いていた。

 

 

因みに余談だが2人の会話の後、その場にいたハンターたちはボマースキルの装備に変えて「爆発しろー!!」の言葉とともにギルドストアで大タル爆弾を大量に買っていく珍事が起こったという。

 

ジョーイちゃんと話を終えるとハンターは団長とギルドマスターの下へと向かう。

「ほっほほ、気を付けて。よき旅を」

「ああ!世話になったギルドマスター!」

「では、これで」

集会所から出ようとするハンターをギルドマスターが呼び止めた。

「おっと、君、ちょっと良いかい?」

「何でしょう?」

「君に1つ警告だ」

「警告?」

何か悪いことでもしただろうか?ハンターは首を傾げた。

「うん。ここ最近未知のモンスターが至るところで暴れている。それを筆頭ハンター達が追っていてね。」

「はぁ……」

「黒い飛竜だ。名前はゴア・マガラ。凶暴な性格で中々危険だからね、注意してくれたまえ」

「分かりました。警告感謝します。では失礼します」

ハンターは一礼すると集会所を後にする。ゴア・マガラか、出会わなければ良いが。ハンターの心が僅かばかり灰色の影を落とす。

 

 

 

集会所からキャラバンに戻ると荷車を1列に並べていた。加工担当が各荷車を連結器で固定してあるのを確認。

「……行けるぞー!」

「はっは!よし、行くか!」

「はい。出発進行~♪」

合図を出すと、団長はポポに鞭を打って歩かせる。

ナグリ村へ向かって進み始めた。

 

昼間にバルバレを出て、3日かけてナグリ村に到着する予定だ。

流通ルートを競歩程のスピードでキャラバンは進んでいく。

ハンターはマイハウスの中でお嬢とモンスター談義をしていた。

「なるほど、ナルガクルガは跳びかかりをする態勢に入ったときに音爆弾を投げると転倒するのですね」

「ああ、隙が出て攻撃できるけどその後は怒り状態になるから乱発するのは危険だな。ただ、怒ると落とし穴に嵌まるようになるから俺は落とし穴を仕掛けて怒った後にすぐはめて一気に攻めるようにしていたけどな」

「ふむふむ、メモメモ」

メモを取るお嬢の背で歓声が上がる。ハンター達が振り返ると商人と料理長が賭け事に興じていた。

「私の勝ちニャル」

「イヒヒ、もう一回勝負だわな」

「よしきた、また私が勝つニャル」

「それは分からんわな。ハンターさんもよく見とくわな」

「ふふ、イカサマするなよ」

「そんな事はするまでも無いニャルよっと!」

料理長は立ち上がり手の平に持ったサイコロをお椀の中に投げ入れる。コロコロと転がる2つのサイコロは動きを止める前に荷車が段差を乗り越えた衝撃でお椀から飛び出し、賭けは成立しなかった。

「ニャニャニャ~~!!!」

「ファファファ!」

悔しがる料理長と笑う商人。勝負は分からなくなってきた。

 

 

流通ルートの途中にある道の駅に寄り補給と休憩を挟み、モンスターに遭遇すること無く夜道を進んでいく。満点の星空を眺めながら加工担当は荷車の幌の上に横になり仲間の笑い声を聞きながら考えていた。今までの旅のこと。そしてこれからの旅のこと。

 

ハンターが来てから運命の歯車が噛み合い動き始めた気がしてならない。

加工担当の祖父は同じ職人で、鋼龍の装備を作るのが夢だった。

ハンターはかつて鋼龍を討伐したことのある猛者。このまま仲間と旅を続ければ祖父が叶えられなかった夢を自分が叶えることが出来るのでは無いか……と。ふとそんな事を考えると満点の星空を横切る流れ星が見える。

「…………幸先が良いな」

加工担当はフッと笑みを浮かべると、身を荷車の振動に身を任せ、眠りについた。

 

順調にキャラバンは進み、団長は手元の地図を見る。伝書鳥が鋭く鳴き団長の肩から飛び立った。その方向をみると大きな火山が見える。加工からは噴煙がモクモクと立っており、火山が活発なのが分かる。目的地がハッキリと見え、団長の心は溶岩のように熱くなる。東から日が昇り始めると同時に世界に明かりが満ちていく。

ナグリ村はもうすぐだ。

 

 

太陽が昇りきるころにはキャラバンは火山の麓から洞窟に入り地下へと向かっていく。

熱気に包まれた道を進むと集落が見えた。大きなクレーンや鉱石を運ぶためのトロッコがあちこちにあり、村と言うより鉄工場といった方がしっくりきそうな村だ。

村に入るとキャラバンを各地に配所したのちマイハウスへとメンバーは集合する。

 

 

「お疲れさん、我らの団ハンター!やっとナグリ村に着いたな!」

団長はハンターに笑顔で語った。

「長旅はどうだった?」

「最高。その一言に尽きます」

「ん? そうか、そりゃいい!はっは!よし、と!それじゃあ船だな!キャラバンの船作り開始といくか!」

「ええ」

「さて…どこかに村を取り仕切る村長がいるはずだ。探して、話をしよう。それにしても…。ふむ」

団長は腕を組み考え込む。この村に着てから感じていた違和感。それをハンターは言葉にした。

「静かすぎませんかね?」

そう、あまりにも静かすぎる。かれこれキャラバンが到着してクエストボードや加工場のブースを展開する際も村人には会っていない。

 

「ああ、活気のある村だと聞いていたんだが、様子がおかしいな。とりあえず、村長を探してみるか」

「ええ。そうしましょう」

キャラバンのメンバーは村の中心へと歩いて行く。

 

ナグリ村。噂によると土竜族の熱気で熱い村だと聞いていたが、その評判とは真逆の印象を覚えた。村人たちはその場に座りこんだり地べたに大の字になって寝ていたりと元気のげの字すら無い様子だった。

加工担当はその様子を見て呟いた。

「ナグリ村の皆が倒れている。……何があったんだ。」

 

 

お嬢がハンターに声を掛けた。

 

「ハンターさん、見つかりました?ナグリ村の村長さん。どこにいらっしゃるんでしょう?」

「いや、見当たらないが。それよりも村の様子がおかしいな」

「はい。それにハンターさん、ご覧になりました?

そこかしこにバタンと倒れている皆さんを。そんなに眠いのかしら?」

「眠いわけじゃ無いと思うぞ?」

料理長もハンターに言う。

「どうしたことニャルか、旦那。ナグリ村の皆が

グンニャリしてるニャル。村長もグンニャリしてるニャルか」

「グンニャリか。そうだな、病気が流行ってる訳でも無さそうだしな」

商人は呆れた顔で言った。

「ようやくのナグリ村…、楽しみにしていたんだが、皆、悪いモノでも食ったんかね?」

「食中毒?それならそれで騒いでいると思うがな」

「あんたさんも、拾い食いには注意よな。あんたさん、落ちてるもんでもなんでも口に入れそうな顔だわな」

「おいおい」

 

このままではらちがあかない。ハンターは雑貨屋を営んでいる。土竜族の男性に声を掛けた。

 

「こんにちは。やっているかい?」

「ふう…。ようこそ…。ここは雑貨屋だ…。ああ、スマン、今ちょっと、やる気ってやつが出なくてな。うん」

大地に座り込みながら顔だけ上げて話す様子にハンターは片膝就いて目線を合わせて尋ねた。

「やる気?何が不幸なことでもあったのかい?」

「ん、ああ。でもいいの。あんた、ほしいモンがあるのか?なら、ちょうどいいや。最近、品ぞろえを増やしたんだ。《LV3 通常弾》、《LV2 貫通弾》

《火炎弾》に《氷結弾》…。いろいろあるけど、もういいの。なんか買ってくれたら、それでいいの」

「あ、ああ。また買いに来るよ」

あまりの落ち込みっぷりにハンターは引いてしまう。

 

「あのー。そこで横になられてどうしたんですか?」

お嬢は道のど真ん中で大の字になってる土竜族に声を掛けた。しかしお嬢の声は聞こえてないのかブツブツと呟くばかり。

「ふう。地面が冷たくて気持ちいい。やる気も出ないし、それでいい。あーあ。採掘所のモンスター、

どっか行ってくんないかなー」

「モンスター?ッ!ハンターさん!」

お嬢はハンターの元へと駆けだした。これは病気でも食中毒でも無い。モンスターの被害にあって落ち込んでいる。

ハンター目差して走ると彼の目の前には1人の人間の娘がハンターに泣きついていた。

 

「大変!どうしよ!村の危機ーっ!お願い、ハンターさん!おとうちゃんの話を聞いてーっ!うわーーーん!」

「わかった、泣くな泣くな」

娘は袖で涙を拭うとキッと睨み付けて叫んだ。

「泣いてない!」

 

「ハンターさん!」

「お嬢。大体話しが見えてきたな」

「ええ。村長さんの元に行きましょう」

ハンターとお嬢は白い大きなヒゲを蓄えた大柄な男性の元に行く。

男性は涙をボロボロと零し泣き叫んでいた。

「ううぅ…。なんてこった…。もうだめだぁ。溶岩が止まっちまった…。鉱石も掘りに行けねぇ…。このままじゃ、オレっちみんなひからびちまう…!でも、どうにもなんねぇ…!オーイオイ、オーイオイ!オレっち《土竜族》は終わりだぁ!ここで朽ち果てるんだぁあああ!」

「失礼。あんたがナグリ村の村長さんかい?」

ハンターが声を掛けると涙を拭い返事をする。

「…ん?なんだ?アンタ、客か?いかにも…。オレっちが、ナグリ村の村長だぁ」

「そうかい。俺たちは旅をしている者でな、船を造ってもらいたくてこの村に来たんだ。」

そうハンターが話すと村長の目に光が灯る。

「ほう、船を作りてぇ、と?だがスマねぇ…!ごらんの通り、今は無理だぁ!」

「……皆さん倒れています。どうかしましたか?」

お嬢の質問に村長は答えた。

 

「火山から流れてくる溶岩突然、止まっちまった上に、採掘所に《テツカブラ》が現れて、鉱石を掘りに行けねぇんだ。オレっち土竜族は作るのダイスキだからよう。この通り、グッタリのありさまよ」

「なる程、そうだったんですね」

「オーイオイ、オーイオイ!もうだめだぁ!ムスメよ…すまねえ!ここで朽ち果てるおとうちゃんを

許してくれぃ!ムスメよ…!オレっちのカワイイ

ムスメよおおおおおぉぉぉおおお!」

大声を上げて泣き叫ぶ村長。その様子を見てお嬢は言った。

「村長さんは私が相手しますので、ハンターさんはさっきの女の子の元へ向かって下さい。それからテツカブラを討伐する準備をしましょう」

「わかった」

ハンターは男の泣き叫ぶ声を背にさっきの少女の元へと向かう。

「大変!どうしよ!村の危機ーっ!おとうちゃんとあんちゃん達が一歩も動けなくなっちゃった!あ、ハンターさん!おとうちゃんの話を聞いてくれたんでしょ!ありがとう!」

「ああ、モンスターが出て仕事が出来なくて落ち込んでいたんだな」

「そうなの、ここ最近、ず~っとこんな感じなの。ここナグリ村では、土竜族のみんなが、ず~っと昔から武具を作ってるんだけど、最近、地底洞窟の奥に《テツカブラ》が住みついちゃった!だから、採掘に行けなくなって…、素材がゼロ!お仕事ストップ!みんなグッタリ!おとうちゃんも、あんちゃん達もとたんに、これなんだもの!もうーっ! だらしないったらー!」

大の大人が揃いも揃ってダラダラしたら女の子からすればシャキッとしろよと言いたくなるのも無理は無い。

「ここで会ったがひゃくねんめ!お願い、ハンターさん!力を貸して!テツカブラを追い出して、おとうちゃんやあんちゃん達を元通り、元気にしたいの!」

「ああ、俺たちも村の技術が必要でね。俺たちの依頼をこなして欲しいから、テツカブラは俺が何とかしよう」

「うん!ありがと!このままじゃ、みんな朽ち果てちゃうよーっ!うわーん!」

涙もろいのは父親の村長譲りなのだろうか。涙を零して泣き始めた。

「おいおい泣くなって」

少女は涙を拭ってキッパリと言った。

「泣いてない!」

「そうかい」

 

とりあえずハンターと少女は2人歩いて我らの団のクエストボードへと向かう。その道すがら少女はポツリと呟いた。

 

「よかった…ハンターさん達が来てくれて。本当は、どうしたらいいかわからなくって、すっごく心細かったんだ…。テツカブラがいなくなって、鉱石を掘りに行けるようになったら、おとうちゃんも、あんちゃん達元気になると思う!」

元気な口調で話しかける姿を見て本来の性格なんだなとハンターは思った。

「ああ、俺もそう思う」

少女はハンターに顔を向けて話しかけた。

「ねえねえ、ハンターさん達は、船をつくりに来たんでしょ?ごめんね…。今はおとうちゃんも、あんちゃん達もぜんぜん動けなくって…。ううう…みじゅくものだあ…。私だけじゃ、どうにもなんないよーっ!」

「良いんだよ、それで。俺だって最初はちっぽけなガキだったんだ。大人になってハンターになっても周りに助けて貰ってばかりだからな。1人で何でもやろうとすると失敗する物さ」

「そっか、そうなんだね」

「ああ。だから気にすんな」

そうこうしているうちにお嬢の元へとたどり着いた。

 

「あ、ハンターさん。探してみましたよ。ナグリ村の皆さんのぐったり解消クエストです」

そう言って1枚のクエストをハンターに渡す。

「《テツカブラ》の狩猟、ですね。鬼蛙とも呼ばれる獰猛なモンスターで、狩猟例も少ないんですよ」

「ほう?腕が鳴るな」

「さて、行き先ですが…、まあ、《地底洞窟》」

「地底洞窟?」

聞き慣れない単語をハンターは繰り返して尋ねた。

「地底洞窟は、大自然が生んだ火山地帯のフィールドなんだ」

少女はハンターに教える。

「地上にぽっかりと口を開けた大穴…。地中深くへと伸びる洞窟…。テツカブラは、そんな地底洞窟の深くに巣食うモンスターだと聞きます」

「ふむ」

 

「とにもかくにも、ナグリ村の皆さんの元気を取り戻さないとですね。テツカブラを狩猟すれば、ナグリ村も助かる、評価も上がるの一石二ガーグァ、三ガーグァ」

「そうだな。さっさと討伐してくるか」

 

ハンターは少女に向かって言った。

「娘ッ子、お前さんは村長さんの側にいてやってくれ」

「うん!」

少女は元気に返事をすると駆けだしていった。

 

ハンターはクエスト受注のサインを書くと団長の元へと向かう。

 

「なるほど、採掘所にテツカブラか。そういうワケで、ナグリ村の皆がグッタリだったのか。こりゃ一大事だぞ、我らの団ハンター。このままじゃ、ナグリ村も船もペシャンコだ」

「ええ、俺は今すぐ討伐に向かいます」

「ああ。頼んだぞ、ハンターさん。しかし、ナグリ村のムスメっこの心配も無理はない。村人全員が、倒れるとはな。それにつけても、武具が作れなくなった途端にぶっ倒れるとは、土竜族ってのはずいぶんと仕事熱心なんだな」

「そうですねぇ」

「俺も見習うか?はっは!」

その言葉を聞いてハンターは仕事真面目な団長を思い描こうとして、辞めた。想像できない。

「今のままで十分ですよ」

団長は朗らかに笑った。

 

ハンターは装備を調えるとオトモを連れて狩りへと向かう。

武器は最古の水中遺跡で発見された文献の記述を土台にして作られた太刀のアトランティカ。ハンターの持つ水属性の太刀だ。

防具も替え、リオレウス亜種の装備。リオソウルZシリーズに身を固めた。

愛用のSソルZシリーズは加工担当に預けメンテナンスをして貰い出発する。

 

「さて、行くか」

低い声で呟くとハンターは村を出て行った。

 

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