「その羽を動かすな…」
「貴方が敵対するなら、戦う」
【オオムラサキ】
アゲハチョウに分類されるこの昆虫は、蝶の中で最も勇ましい生態をしている。
食性は他の蝶と同様、樹液、蜜などだが、この蝶は同じ場所に群がる他の種を羽の羽ばたきで吹き飛ばし、食料を独占する。
スズメバチですら、その場所を手放す程である。
そして、飛行能力も非常に優れている。
「勝てるとでも…?手を煩わせるなよ…」
【アギトアリ】
日本に生息するアリであり、最大級の全長。
クワガタのような大型のアゴを持ち、人間でもそのアゴに挟まれれば痛みを感じる程強力。
そしてこのアリの最大の特徴。
アゴを閉じる際の速度。最大で時速230km。
その閉じる時に発生する衝撃で後方に跳ぶ事ができる。
アゴも危険だが、毒針もついている。
男に腕を掴まれ、逃げ去ることが出来ない。
男はどう言うわけか攻撃をしてこない。
ならば
折出はそのまま羽を動かすために力を溜める
「……!おいおい…やめろって…死ぬぞ…」
今度は折出が男を逃がさないように、胴に手を巻く
羽を開き
閉じる
羽による衝撃で二人共に、炎が伝う壁に向かい吹き飛んでゆく
攻撃ではなく移動に利用した。
先に衝突するのは男の方。運が良ければ戦闘不能にできる。
ただし、自分もただでは済まない
「……ッ!この馬鹿が…ッ」
男は腕を掴んでいた手を離す
壁に激突する
瞬間
男は壁に向かって自分の腕と腕を叩き合わせた
「ッ!?」
折出の頭の中を襲う爆発音
手と手の間で発生した衝撃波が激突の勢いを和らげた。
崩れ落ちる壁
「……いつっ……この女……」
「あー、リーダー聴こえるか?」
東下の周りにかべは無い。外だった
野次馬で溢れかえっている道を、人を押しながら歩く
携帯の通話相手の返事は直ぐに返って来る。
『東下か、まだ帰ってきてないようだが…何があった?』
「ドイツの追っ手と……交戦した」
ため息が聴こえる
『そもそも今日は、下見だけだった筈だが……』
「……」
『…お前が焦る理由は分かるが、馬鹿な失敗をすれば俺達は終わる。分かってるな?』
「……」
『どうした?』
「捕虜を一人…捕獲したんで。それで…」
「折出との連絡が、とれない」
『……ふん、持ってかれたか。仕方ない…』
『言っておくがこの失態、責任はとってもらうぞ』
「分かってる…けど、折出を助けてやりたいんだが…」
『当然だ』
『主力メンバーは今"中国"だ。残りで済ませるぞ』
「はい!」
通話を終了し、携帯をポケットに放り込む
薄暗い部屋で、椅子に腰掛ける一人の男
「全く…全然言う事を聞かない二人だ……」
「"総理"には黙っとくか…」
「フゥー……」
黒の車を駐車場に停める
「ベンノさん……頭に血が上ると面倒な人だ……」
突然、車の窓をノックする音がする
「アンデル•ノートさんですよね?ベンノさん知りません?」
「…いや、すまん」
「おっかしぃなー、二人で出て行きませんでしたっけ……?」
「……用事があるとかで…何処かに……」
「そうですかあ。いや、失礼しました」
質問して来た男が去るのを確認すると、車外に出る
「一般職員にバレるわけにはいかない……この女……どうやって運ぶか……」
トランクの中で横たわる女性。折出だ。
「このUSBメモリ……盗ったデータか……」
「……………」
「それで、リーダーどうします」
ベンノを一人で引きずり、隠れ家まで歩いて帰ってきた東下
そして、向かいに立っているリーダーと呼ばれる男
"南左 豪(ミナミサ ゴウ)"
「…今縛ってる奴がドイツの奴だな?ずっと起きないんだが」
「一応本気では殴って無いんですが…」
「タコの全身筋肉は恐ろしいな……」
「とりあえず…折出救出隠密作戦は今夜だ、そう難しくは無いだろう。この面子でいける」
「…もしかして俺も入ってます?」
めんどくさいから嫌だ。という顔をしている小柄な男
名は、"樋渡 連(ヒワタリ レン)"
「あたりまえだろうが、働いてもらうぞ。お前らもな、内舘姉妹」
「当然 !仲間の危機だから!」
勢い良く椅子から立ち上がった女
"内舘 奈織(ウチダテ ナオ)"
と
喋らない女
"内舘 未來(ウチダテ ミキ)"
「東下以外、戦闘できないようなベースだが、使い手次第だ。作戦を練るぞ」