未確認『IS』消滅を確認した『ゼアヒルド』は一瞬にして消えてしまった。これでは、私達を偵察するような行動を行っているようだった。
轡木理事長の元へと戻り、現状を報告すると「そうですか…。篠ノ之先生とボーデヴィッヒ先生を呼んできてください」と言われ、理由は知らないがショボくれている。束を掴み上げて理事長室へと連れていく途中、負傷した生徒の手当てに当たっていたフランツェスカの俵のように担ぎ上げる。
流石に二人は重たいが時間は少ないのだ。ノックしてから理事長室に入室すると世界各国の有力者達の座っていた。引き吊りそうになる表情筋を気合いで押さえつける。束とフランツェスカの二人を床に下ろすと姿勢を正して話を待つ。
「ボーデヴィッヒ先生、あの『ゼアヒルド』と呼ばれる機械の正体は何ですか?」
「…元々はドイツ軍で製作していた介護用ロボットです。しかし、ウィリアム…。夫の作っていた人工知能が反乱を起こしまして、そのまま開発用プログラムと元型は持ち出された。とのことです」
「我が国の失態だったとは…。すまない!」
「いや、それは気にするな。それよりも『IS』を取り込んでいたがアレは違うのか?」
「……まさか、イエルが改造を施した?」
人工知能『イエル』の底知れぬ存在に顔を真っ青に染めるフランツェスカを落ち着かせながら束に視線を移す。
「篠ノ之先生、貴女は…どう考えますか?」
「今回の襲撃は偵察。それと邪魔になる人間の判別が目的だね」
「…『IS』作成を競い合うのは終いだ。『ゼアヒルド』を倒すために全国同盟を結ぶべきだ」
アメリカの主張を各国の有力者達は受け入れ、轡木理事長に総隊長を願い出ていた。この人の過去を調べようとしたら死ぬんじゃないか?等と考えていると実動部隊の編制や『ゼアヒルド』の存在発表について話し合っていた。
「…あの、発言しても良いですか?」
「ボーデヴィッヒ先生、なんですか?」
轡木理事長は優しい声色で尋ねる。
「私とタバネ博士が合同で製作した『男女共有型IS』を発表してください」
そう告げた瞬間、轡木理事長を含めて有力者達の顔色が変わった。驚いたような表情や悲観したような表情が混ざり合っている。それも、そのはずだ。フランツェスカの発言は女尊男卑だった世界を塗り戻す事なのだからだ。
それなのに当事者である『
「轡木理事長、私が発表します。女性権利派も『世界最強』の発言では手を出してくる事は無い筈です」
「……分かりました。それでは発表の日取りを決めましょう」
「ちーちゃん、私も一緒に発表するよ。始めたからには終わりも教えないとね?」
「束…。すまないな」
フランツェスカだけに良い格好はさせん。私達も覚悟を決めさせてもらう。