私はフランツェスカ・ボーデヴィッヒです。   作:SUN'S

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第34話『現れた奴らはだれなのか』

 

 

 

この仮面少女は、素の戦闘技術を徹底的に強化された個体なのか。タバネの高速乱打を手のひらで捌き続け、一つの打撃の中から選んだように中段打突を放った。

 

「ぐっ、うぅ!?」

 

「タバネ・シノノノ。その程度では倒せんぞ?」

 

殴った手の感触を確かめる素振りを見せながら、そんなことを言ってくる。少女に言い返すことなく近付いては高速乱打を放ち続ける。

 

少女は「悪足掻きだな」と言いながら乱打を『弾き上げて』『弾き落とす』『払い除ける』を繰り返していた。二度目、三度目、四度目と高速乱打を続けていた。

 

だが、ほんの一瞬だった。少女の目線が揺らぐように動いた瞬間だった。タバネの放った高速乱打は停止していた少女の身体を軽々と吹き飛ばしたのだ。

 

「やっぱり、薬物強化(ドーピング)だったね。肌艶の悪さ、その体型だと有り得ない膂力、箒ちゃんやちーちゃん並みの反応速度…。維持するために定期的に摂取しないとダメなんじゃない?」

 

数度の戦いで見破ってみせたタバネの言葉に動揺したのか、立ち上がろうとしている身体をブルブルと震わせていた。

 

「これって『触診』って言うお医者さんの使ってる技術なんだよね。そうだな、名付けらなら『打撃式触診』とかだね」

 

「…ああ、ああ、そうでなくてはなッ!!強大な相手を倒すことでしか私という存在を誇張することは出来ないッ!!」

 

少女はアーミーナイフを取り出すと篠ノ之流に酷似した正眼の構えから中段刺突と薙ぎ払いで攻めてきた。しかし、先程のような超人的なスピードとパワーは無くなっており、剣身を受けたとしても軽く装甲を削る程度だ。

 

『やはり、出来損ないでは役に立たないのか』

 

映し出されていた映像が切り替わり、見知らぬ黒い人の影と三人の付き人のような奴らが映し出された。

 

「イエル、イエル、イエルウゥゥ!!先程の言葉を撤回しろ!!私は『出来損ない』等ではない!貴様のような残虐非道な仕打ちを行うことは有り得ない!!」

 

仮面少女の本音を聞けたような気がした。次の瞬間、予想していなかった事態が起こってしまった。

 

『君では動かない。ならば別の者を用意すれば良い。そうだろう?オリムラ・イチカ君』

 

『ああ、そうだ。タバネさんも此方に来れば良いんだ!千冬姉やフランツェスカさんも頼めば分かってくれる筈なんだよ!』

 

ブッツン!と切れた映像と共に付き人のような奴らの一人が転送されてきた。『アルガ・ゼアヒルド』を倒したタイムレンジャーとちーちゃん達に脱出するように通信を送り付け、仮面少女の隣に立ちながら丈の長いオレンジ色の人造皮革で作られた悪趣味な外套を纏う青年へと拳を握り締めて構える。

 

「シノノノ・タバネ。お前の事はイエルから聞いているよ。なんでも世界を揺るがす程の天才らしいな」

 

「そーだよ。だからさ、帰ってくんない?」

 

「おっと。自己紹介を忘れていた。俺の名前は『アドラー』と言ってな…。ドイツ語で『鷲』という意味なんだ」

 

だからなんだよ。等と考えていたが、一つの結論へと至った。まさか、コイツの吸収した『コア』って言うのは…。

 

「吸収した『コア』の識別名称『テンペスタ』だったか?あの女には苦戦させられたが、中々の進化を遂げることが出来たよ」

 

ちーちゃん並みの戦闘力を誇っていた『アリーシャ・ジョセスターフ』を倒したって言うのか!?等と想定していなかった事態の更に最悪な結果を連想してしまい。

 

放心状態になっていると仮面少女は悔しそうに唇を噛みながら『アドラー』を睨んでいた。すると、ちーちゃんから救出任務成功の報告と箒ちゃんが重傷だと聞かされた。次から次へと問題が押し寄せてくる。

 

「まあ、今回は挨拶だけだ。シノノノ・タバネ。織斑千冬に伝えておけ、お前とは本気の戦いを望んでいる」

 

その言葉は『アドラー』のモノなのか。それとも『アリーシャ・ジョセスターフ』と共に戦ってきた『テンペスタ』の言葉なのか。調べることは出来なかったけど。危機は去ったらしい。

 

安堵によって気を抜いた仮面少女に『シグナルスパーク』の電撃を浴びせてから巨大『ゼアヒルド』の強化皮膚膜を引き裂いて外部へと脱出する。目の前にはブイレックスと空飛ぶ『ラビットカー』が見てた。流石、私の愛車はナイスタイミングで現れるぜ。

 

 

 

 


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