無事、病院を退院した。私は入院中に届いた手紙の持ち主の元へと挨拶してくると真耶達に伝えると事情を知っている束と共に『彼女』の待っている海岸沿いの防波堤へと向かう。オープンカー型特殊四輪車両『ラビットカー』直列前後席の後部座席に座り、運転している束の流す自作ソングを聴いていたが『ラビラビ』と頭の中を汚染するような物だった。
危うく精神を崩壊させるところだったぞ。等と考えていると赫灼と燃え盛るような紅い髪をツインテールで纏めた女と見知らぬオレンジ色の外套を纏った男が立っていた。
片側の名前は旧知の仲である『アリーシャ・ジョセスターフ』だと分かるが、あの男は誰だ?
「チフユよ、久し振りだな」
「ああ、久し振りだな。束から専用機を奪われたと聞いた。知っていると思うが、ソイツは『ゼアヒルド』と呼ばれる機械生命体だ。並大抵の攻撃では傷一つ付かない」
「知ってるさ。アタシから『テンペスタ』を奪い取ったのは『この男』だからね」
……今、なんと言った。隣の男に向かってテンペスタを奪った男と言ったのか?機械生命体は『IS』の『コア』から戦闘データを奪い取り、変化すると聞かされたぞ。人に化けるなど聞かされていない…。
「アリーシャ、私を呼び寄せた理由はコレか?」
男は喋ろうとしたアリーシャの前に手を突き出して発言を止めた。ゆっくりと歩み寄ってきた男は見下ろすような形で話し掛けてきた。
「いや、アリーシャではなく。俺が呼ばせたんだ。織斑千冬…お前を倒すためにな」
男はそう告げるとオレンジ色のエネルギーを放出させ、機械的なフォルムと鳥を模したフェイスパーツを装着していた。報告書に書かれていた進化体『アルガ・ゼアヒルド』とか言う奴だな。
応戦するために右腰のホルスターに手を伸ばしたが『ルパンガンナー』が無い。昨晩、調整も兼ねて修理に出したんだった。
仕方無いな、隣で男を睨んでいた束の服の中に手を突っ込むと「やん!」とか可愛い悲鳴を上げていたが、無視して『マッハドライバー』と『シグナルラビット』を掴み取り、ドライバーを腰に押し当てる。
レバーを押し上げ、スロットに『シグナルラビット』を装填して押し戻すことが…出来なかった。なぜだ?
「ちーちゃん、減速しようねぇ~っ!」
束の言葉と共に取り外されたドライバーと『シグナルラビット』を眺めつつ、使えなかった理由を思い出そうとしていると「アリーシャ、帰るぞ」と言って『アルガ・ゼアヒルド』は突風を巻き起こして消えた。
「ちーちゃん、ごめんなさい。束さんね……あの『アルガ・ゼアヒルド』のこと知ってたんだ」
「…待て、待ってくれ。どういうことだ?」
「巨大『ゼアヒルド』脳髄でね?『織斑千冬とは本気の戦いを望んでる』って言われたんだ…。ごめんね。束さん、昔みたいなちーちゃんを見たくなくて…黙ってて」
「あぁ~っ、そのことは気にするな。あの頃はグレていただけなんだよ」
ポロポロと涙を流す束を慰めつつ、防波堤の上に座って昔の話を思い出すように語り合う。…出来ることなら一夏がマトモになって戻って来てくれるといいな。