娘達が入学しました。私とタバネ博士は『IS学園直属整備士』として働くことになり、『打鉄』や『ラファール・リヴァイヴ』の不適切な整備を正しています。
最近では水色の髪の毛が特徴的な女の子が質問してくる事が多くあり、タバネ博士の開いている飛行ユニットの加速理論を真面目に聞いている。整備士を目指しているのかな?等と考えながら最新型の設計に取り掛かっていた。
クロエには『マッハドライバー』と『シグナルマッハ』を。ラウラには『ブレイクガンナー』と『マッハドライバー』と『シグナルチェイサー』を渡してある。並大抵の候補生でも対等に戦うことは出来るだろう。
「フーちゃん、ラーちゃん達が決闘するらしいよ?」
「待って、待ってください。入学初日ですよね?いきなりPTA会議を開くんですか?」
「違う違う。いっくんを馬鹿にしたパツキン相手に訂正しろと怒ったら、決闘に発展したんだってさ!」
「…いっくん?ああ、イチカ・オリムラですね」
織斑一夏、人の娘を危険なことに巻き込まないでくれませんかね?等と考えながら配線を繋げた瞬間、シグナルバイクが勝手に起動してしまった。レールを展開して廊下へと出ていった……。何処に行く気ですか!?
「……今のシグナルバイクに『十字手裏剣』みたいなマーク付いてたけど。あのシグナルバイクの能力って忍者なの?」
「…正式名称は未定ですけど」
「やっぱり、外国の人には忍者とか人気なんだねっ!いやぁ~ッ、参考になるよ!」
うぅ…っ。娘達よ、辱しめを受けているママを助けてください。そんなことを思いながらシグナルバイクを探すために整備校舎を徘徊しているとシグナルバイクを掴んだラウラが走ってきた。
「母上、このシグナルバイク…。もしかして、私のですか!?」
「え?ああ、うん。そうだよ?名前、付けたい?」
「良いのですか!?それでは…『アインハード』と名付けさせていただきます!」
ラウラの口に出した『アインハード』とはドイツ語で『剣を持つ強い者』という意味を持っている。名前を気に入ったのか。アインハードはラウラの周りを走りながら動いており、最後にはラウラの腰に在る『シグナルホルダー』に装着された。……自分で作ったけど。中々のスピードだったわね。右ポケットから『アインハード』とは色違いのシグナルバイクを取り出す。
「姉上のシグナルバイクですね!渡しに行きましょう!」
「あ、ちょ、仕事残ってるのよーっ!」
多分、全校舎に響き渡るほどの声で叫んだと思う。1年1組のドアを開けると文庫本を読みながら他者と話している。クロエの姿を見付けた。友達作れたのね…。ホロリと溢れる涙をハンカチで拭いつつ、クロエに向かって炎模様の刻まれたシグナルバイクを走らせる。
「ふぇ?なんで『バルドヴィーノ』が此処に!?」
今の「ふぇ?」は素で出してるんだよね。等と考えながら教室の出入口から手を振ると花を咲かせたような表情で駆け寄ってきた。うん、注目の的になるから止めてね?
「母さん!私の考えていたシグナルバイクを作ってくれたんですね!」
「それは姉上の考案したモノなのですか!?」
ラウラは驚くことが多すぎて頭が回っていないようだね。二人の頭を撫でつつ、教室を見渡すと『織斑一夏』と口論しているパツキンを見付けた。アイツのせいだな。
「クロエ、ラウラ。決闘するそうですね?」
「「うっ、はい…。そうです」」
「手加減は人を貶す行為です。素手の状態では幾ら鍛えようと女性でも負ける可能性があります。骨格や筋肉の性質からして別物なんです。それを理解した上で適切な行動を取りながら戦いなさい。良いですね?」
言い終えると感心したような表情で見てくるチフユとメロンが居ました。うん、私にも分けて欲しいですね。