『IS学園』内部構造は違わなかったけど。最深部には『ドライブピット』は設立されていなかった。ちょっとしたショックを感じつつ、向こう側のラウラを見ると此方のラウラよりも小さくて眼帯を着けていた。…クロエとエルゼはいないようだ。
「しかし、瓜二つだよなぁ~っ。そっちの俺は来てないのか?」
向こう側のイチカ・オリムラの当然と言えば当然な質問を受けたチフユ先生は常備しているのか。小瓶の蓋を捻り開け、胃薬をバリボリと噛み砕いて呑み込んだ。
「ふぅ…っ。先に此方から質問させてくれ…」
「え?あ、うん。そんなに飲んで大丈夫なのか?」
「気にするな。では、そうだな。…そちらの篠ノ之箒とは。どんな存在だ?」
チフユ先生の質問を受けたイチカ・オリムラは数秒ほど悩んでいたが、言葉を思い付いたのか。普通に「ちょっと剣を振り回す事が多い女の子」と答えた。次の瞬間、凄まじい殺気を放つ向こう側の篠ノ之箒に苦笑いしつつも納得したように頷いている。
「ちーちゃん、私も質問して良い?」
「ん?ああ、構わないぞ」
「ありがと。う~ん、そうだなぁ~っ。そっちの箒ちゃんの持ってる『IS』の名前ってなに?」
「「「え?」」」
タバネ博士の質問を聞いた瞬間、本当に理解することが出来なかったのか。全員が困惑しながらも篠ノ之箒を庇うように立ち上がっていた。
「いやいや、取ったりしないからね?」
軽くジョークのように言葉を挟んでいるが。向こう側の生徒達はタバネ博士を信用していないようだ。等と考えていると向こう側のラウラが私の隣に立っていたラウラを見ていた。困惑というよりも疑問を浮かべたような表情だと思う。タバネ博士やチフユ先生も浮かべる時がある表情だからね。
「フーちゃんは、どう思う?」
タバネ博士の言葉を聞いて現実に戻り、向こう側のラウラから視線を外すとチフユ先生が心配そうな表情を浮かべながら私の事を見ていた。
「なあ、そのラウラに似てる人って誰なんだ?」
「織斑、なにを言ってるんだ?」
「そうだよ、向こう側のいっくん」
「「この人はラウラ達の母親の『フランツェスカ・ボーデヴィッヒ』博士だろ?」」
アリーナを静寂の空間に塗り替えたのは『世界最高』と『世界最強』の二人だった。この二人は、空気を読み取るとか出来ないんですかね。向こう側のラウラとこちら側のラウラを見比べてから発狂したように叫び出した生徒達は全校舎に轟いただろうな。
「この人が…私の母親…?」
向こう側のラウラはなんと言えば良いのか。分からずに困り果てていた。次の瞬間、向こう側の生徒会長の「この子、本当に簪ちゃん?」と呟きながら迷彩服姿のサラシキさんを見ていた。向こう側のラウラも私を見ており、睨み合いのような状況になっている。
「……そちらの私は『紅椿』を姉さんから貰ったのか?」
尋ねれば聞かれると思っていたけど。ホウキさんは、なんて答えるのかな。
「ふむ。そちらは貰ったのだな?」
「あ、ああ。誕生日プレゼントだと言われて貰った」
「そうか。私は姉さんと一緒に作った」
またしても驚きで発狂したように叫び出す生徒達の声を聞き流しつつ、現状整理を行っていると『渦の中』からオオカミを模したフォルムの『アルガ・ゼアヒルド』がアリーナのシールドバリアを落下しながら粉々に殴り砕いた。空を読んでほしい。