サラシキさんは私達の立っている観客席へと飛び上がり、着地と同時にクロノギアを解除してクロエの隣に並ぼうとした。次の瞬間、サラシキさんは後ろから引っ張られるように振り返らされ、向こう側のサラシキさんと対面を果たしていた。
「今のスーツ、カッコイイ…!!」
「うん、貴女は私だね」
やはり、どの世界線でもサラシキさんは特撮ファンのようだ。等と思っていると隣から「簪ちゃん+簪ちゃん……ここは天国なの?」と呟く声が聞こえてきた。…生徒会長は実妹を溺愛していると聞いていたけど。
ここまでとは聞いていないんですけど。観戦席に座り、自身の持つ『専用機』の話で盛り上がっている。……今後の対策や作戦を考えようと思っていたんだけど。
仕方がないのかな?等と考えつつ、チフユ先生達の方へと振り返ると向こう側の生徒達の質問攻めを受けていた。まあ、私としては『ヘルプダイバーズ』の性能を調べる事が出来たから良いんだけどね?
『ヘルプダイバーズ』を中心点として半径3m程だけど絶対防御を展開する事が出来る…。変身機能は搭載されていないけど。『ゼアヒルド』から民間人を守るためには必要な装備の一つだと思う。と言うよりも民間人に渡せば良いのではないだろうか。
バリアを壁として展開する様に調整を加えて対象を吹き飛ばす。うん、使い方次第では『ゼアヒルド』を撃退することは出来そうだね。
そんなことを考えながらエルゼに渡そうと思っていた最新型『シグナルバイク』の性能や機能を思い付いてしまった。まあ、こっちでも機材があることを願うとしよう。
「……あ。タバネ博士、次元屈折の元凶を思い出しました」
「え?だれだれ?」
「臨海合宿の時に戦った巨大『ゼアヒルド』です」
「……あ、そっか」
「…すまん。私達の世界に原因が在ったようだ」
なんとも言えない雰囲気になりつつ、観戦席から学園内に在る会議室へと向かう。
教員用だからなのか。イチカ・オリムラ達は知らなかったらしい。…こちら側のイチカ・オリムラとは違いますね。向こう側のイチカ・オリムラはアホそうですしね。
「織斑、そちら側の
「彼氏?千冬姉と付き合ってる人はいないんじゃないかな?」
爽やかな笑顔で伝えることでは無いと思うんですけど。アホそう。という言葉は撤回して腹黒そうと表現しておきましょうか。
「フッ、そうか」
「ちーちゃん、自分を笑っても可哀想な人にしか見えないよ?」
「ぐふぅ…」
最早、この二人の日常会話には慣れたけど。向こう側の人々には新鮮なモノのようだ。イチカ・オリムラと篠ノ之箒は聞き逃さないように聞き耳を立てている。
「良いのか?お前の狙ってたヤツにチクるぞ?」
「えっ、それはヤダよ!?」
彼氏の存在を仄めかした瞬間、食らい付くように向こう側のイチカ・オリムラと篠ノ之箒は振り向いた。ちょっと怖かったのは内緒にしておこう。