私はフランツェスカ・ボーデヴィッヒです。   作:SUN'S

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番外編
番外・第1頁目


 

 

 

私、織斑千冬は緊張している。

 

急造の痛覚麻痺薬と胃をコーティングしているとは言っても激しい行動や食事を制限しなければコーティングが破れる可能性が有ると言われたからだ。元々、大食ではないが。人との食事で残すような事は避けたい。そんなことを考えていると、目の前に茶色と黒色が適度に混ざり合ったダークブラウンの特徴的な跳ね髪とガッチリとした体格の男の人が駆け寄ってきた。

 

「すまない…遅くなったか?」

 

「い、いえ…。予定時刻10分前ですから、ダイジョブです」

 

約1ヶ月と20日振りに直接話すことが出来るほど仲良くなった男性と並び立ち、彼の手を握ろうと手を近付けては離す。それを繰り返しているとグイッと男性独特の力強さを感じさせる腕の筋肉と胸板に挟まれていた。

 

(……あ、うぇ?あ、あはぁ?もしかして、ギュッてされ…へうぅ…!?)

 

こんな急接近は望んでいなかったのか?と言われれば否である。顔を真っ赤に染めながらパクパクと口を開閉させていると彼も気恥ずかしそうに頬を染めており、ゆっくりと離してくれた。

 

「その、すまない…ぶつかりそうになっていたから咄嗟だったんだ」

 

「えぅ…っ、ああ、うん。ダイジョブですよ?」

 

「そ、そうか?だが、すまない。日本の古事記では女性の肌を軽々しく触るのは…ダメだと聞いていたんだが。本当にすまない」

 

女性扱いなど束やフランツェスカ達しかしてこなかったが。その、やはり、良いものだな。一瞬とは言えど守って貰うというのは…。

 

彼も勇気を出したのだ。私も勇気を出さないと不公平になってしまうからな。等と色々と無茶苦茶な理由を付けながら彼の手を握り締めた。

 

私よりも大きな手…彼は驚きつつも痛くないように優しく握り返してくれた。見上げて彼の顔を見ると耳が少しだけ赤くなっていた。……こういう事をキュン死と言うのか?等と思いつつ、跳ね上がりそうになる心臓を気合いで押さえ付ける。

 

「チフユさん…。甘い物は大丈夫か?」

 

「えっ、あ、はい…大丈夫です」

 

「それでは『パフェ』を…食べませんか?」

 

「……良いですね。一緒に『パフェ』を食べましょう」

 

パフェと言えば束やオルコットが持っていた少女漫画に出てくる定番のアーンシーンの物だな。ワクワクと期待しつつ、店員と話している彼の姿を見ていると爽やかに微笑まれてしまった。この人を見ていると今までの絶望的な「胃」へのダメージを忘れる事が出来そうだな。等と考えていると『パフェ』がテーブルの上に運ばれてきた。…想定していた物よりも大きなパフェがな。店員に顔を向けると「リア充、パフェ死ね」と言われた。

 

……フフッ、ついに私は『リア充』と呼ばれる存在へと到達したのか。

 

 

 

 


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