大 誤 算   作:ジムリーダーのメモ

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人物紹介

だいごさん(漢字表記:大誤さん、大誤算)
ずかんNo.376
なまえ/ダイゴ
タイプ/てんせい
おや/ムクゲ
とくせい/てんせいしゃ
まえの じんせいの きおくを ひきつげる
へんなせいかく 4さいのとき
カナズミシティ で めざめた

ミクリ
ずかんNo.350
なまえ/ミクリ
タイプ/ゆうび
ししょう/アダン
とくせい/アーティスト
そだてた ポケモン が うつくしくなる
まじめなせいかく 7さいのとき
カナズミシティ で であった



第二話、若しくは離島での出会い。

 カナズミを出発して2日目、道草を食いすぎたせいでトウカの森を抜ける頃には日が落ちてしまっていた為、一度トウカシティで宿泊。それからムロタウン行きの船に乗っている途中で僕は気づいた。冷静に考えたら時系列的に知ってるジムリーダーがほとんど居ないという事に。僕自身はあくまでツワブキさんちのダイゴとして、まだ見ぬ主人公達の手助けをしたり全力でバトルの相手をしたりする立場なので、別に原作のジム戦が追体験できるぞー!ヤッフー!なんて意気込んでいたという訳では無い。なのでそこまでショックは受けていないといえばないのだが。……ごめんなさい嘘吐きました物凄い楽しみにしてたしなんならもう帰りたい。つらい。

 だがそれも仕方の無いことだと何とか割り切るしかない。原作に介入せざるを得ない立場の人間として生まれてきた以上は、なるべくこの世界の歴史を崩さないように、崩れないように立ち回っていく事が僕の使命なのだから。

 まあこれも僕が勝手に使命感を抱いているだけだが。そもそもポケモン世界を自分の目で見て、足で歩いて、思うがままに満喫できるというだけで、お釣りが際限なく返ってくるレベルの体験なのだ。ましてや自分が主人公の協力者にしていつか超えるべき壁という美味しい立ち位置に生まれるなんてもう贅沢とかそういう次元ではない。なのでそういう使命感でも持ってないと天罰でも下りそうで怖い。

 ちなみに今回の旅の中では、徒歩で行けるところはなるべく徒歩で行くことにした。理由はただ一つ、僕のメタグロスが移動手段としても優秀になり過ぎたせいであっさり旅が終わりかねないからだ。

 

 ミクリのヒンバスをミロカロスに進化させてから数日経って、僕のメタングも日課であるジイとのバトル中にメタグロスに進化した。しかし進化で高まった力を制御出来るようになるまでに3ヶ月程かかってしまった。

 

「ポケモンの中には機械のような姿をした子や、どう考えても無機物にしか見えない子もいますが、彼らもれっきとした生き物です。だからなのかは分かりませんが、成長に伴いその姿形はおろか能力まで急激に変化してしまう『進化』という生態を持っている彼らの中には、極稀に進化に身体が追いつかず、上手くコントロール出来なくなる……なんて子が現れることがあるんです。私自身、実際に今までに何度かそういった例を見てきました」

 

 これは原因究明の為に情報を集めたり聞いて回った時に、カナズミにあるポケモンセンターの職員、平たく言えばジョーイさんが話してくれた内容だ。

 簡単に言うと、「メタングからメタグロスになる過程で急激に強くなり過ぎた」という事らしい。メタグロスは進化の際にメタングの2つから更にその倍である4つに脳が増えるポケモンである。スーパーコンピューター並に高められた演算処理能力と知能によって超能力は更に増大し、体重も500kgを超え、その身体を優に浮かせられるように磁力操作能力も今まで以上に強力なものになる。ましてや僕のメタグロスは進化する前から厳しい鍛錬を積み重ねてきて、最初からは見違える程に高い能力を持っていたのだ。そして当然、その力を十全に使いこなす為の繊細なコントロールも培ってきた。

 それが突然、力だけが爆発的に強化されてしまったとなれば制御しきれなくなるのも当たり前だと言える。いくら高速道路を走り慣れているからといって、いきなりF1カーに乗せられても誰も運転出来ないのと同じ事だ。

 なので最初はとにかく慣らした。僕が上に乗った状態でツワブキ邸の中を誰にも、何処にも当たることなく駆け抜けることが出来れば、少なくとも磁力の操作に関しては問題ないだろうと考え、それを実行に起こす。結果、何度も何度も死にかけたし家の壁が吹き飛びまくった。使用人達も吹き飛びかけた。それでも毎日やり続けて、2ヶ月経つ頃にはなんとか壁を壊さなくて済む所までにはなった。だが相変わらず曲がり角なんかで使用人にぶつかりかけて非常に危ないので、今度は少し先の未来を予測させながら飛ばせることにした。

 そこから更に1ヶ月経つ頃にはサイコキネシスの応用で重い荷物を運ぶのを手伝ったり、部屋のドアを開けたり、なんなら僕が水の入ったコップを持ったままでも一滴も零すことなく全部屋回れるようになっていた。 最高速度も今までの比ではなくなり、僕が乗ってる間はひかりのかべやリフレクターを張ることでGや風から守ってくれる。技マシンで覚えたばかりにも関わらず、即座に使いこなすのは流石という他にない。

 制御はもう完璧だと思ったので、今度は更にその力を伸ばす方に切り替えることにした。やり方は先ずトレーニングで地力を鍛え、バトルで実戦経験を積んでモノにする。つまりは今まで繰り返しやってきたやり方と同じだ。バトルの相手はやはりと言うべきか、主にジイ。その他にも比較的トレーナーとしての実績の高い使用人や、カナズミに立ち寄った腕に覚えがある一般のトレーナー達にも声をかけるなどしてバトルに付き合ってもらった。

 様々なポケモン、様々なタイプとの戦いはいい経験になったが、やはりジイを超える強さのトレーナーが現れることは無かった。というかジイが強すぎる。昔はもっと強いトレーナーが沢山いるものだと思っていたが、最近はもう本気のジムリーダーでもなければ勝負にならないんじゃないかと思っている。

 実際、メタグロスに進化しても尚、あのキノガッサは強敵だった。タイプ相性的にはこちらが明らかに有利であり、更に以前よりも高まった超能力と加速から繰り出されるしねんのずつきが直撃したにも関わらず、それに耐えて反撃のマッハパンチを入れてきた、といえば少しは理解してくれるだろうか。あまり距離を取るとキノコのほうしをバラ撒かれて動きを制限され、かと言って近付き過ぎると一気に距離を詰めてのマッハパンチが飛んでくる。そこから繋げるようにしてスカイアッパーで打ち上げられ、ばくれつパンチを打ち込まれた時は流石に冷や汗をかいた。それでもギリギリで反応しててっぺきを使っていたお陰で威力を軽減して耐え切り、そのまま至近距離でコメットパンチとマッハパンチが数多に飛び交う怒涛の乱打戦にもつれ込む。不良vs吸血鬼の如き壮絶な殴り合いの末、遂にメタグロスが勝利した時には流石に僕も達成感と高揚感、そして感動の余り泣いてしまった。そしてその直後に現れたノクタスのミサイルばり弾幕にキレた。

 後はミクリにもバトルやトレーニングに付き合ってもらったり、近場に偶然落ちているなんていう極小の可能性に懸けた化石捜索に協力してもらったりと、色々と手伝ってもらった。その分彼らの新たな必殺技を考える手伝いもさせられた……というかその時間の方が長かったが。「いずれ君と戦って倒す為には、より完成度の高い必殺技が必要だと思ったからさ」とか言いながら僕にその技の考案を手伝わせるのはちょっと意味不明すぎると思う。

 

 色々と長くなってしまったが、つまるところはメタグロスタクシーで何処へでも行き放題なのは旅の風情がない。という話である。そらをとぶだって一度立ち寄った場所にしか行けないのだから、せめて一度は自分の力で足を運ぶべきだろう。

 なのでムロタウンへ向かうのには、原作通りハギ老人に船を出してもらった。どうにも親父とハギ老人は古くからの仲らしく、かつて四天王のゲンジも含めた3人で古い海図に書き記されていたマボロシ島を見つける為、ホウエンの各地を小型船で回ったらしい。結局見つけることは出来なかったが、今度は世界各地に出ていこうという話になり、その旅路の中でハギ老人はピーコちゃんに出会い、ゲンジは幼い頃に自分を救ってくれた野生のボーマンダと再会し、親父は自分よりもかなり歳上の二人との旅で培った経験を仕事に活かして事業を拡大したとの事。

 そんな訳で強い信頼関係が築かれているようで、僕がダイゴだと名乗った途端に要件を伝えるまでもなくムロへの船を用意してくれた。どうも親父に「自分の息子がジム巡りの旅に出たから、何かあったら助けになってくれ」と言われていたらしい。展開が早い。

 

 船に揺られること約2時間弱。陸地が見えてきたので、そろそろ降りる準備を整える。いい加減に落ち込んだ気持ちも少しは回復してきたし、この鬱憤はジム戦で晴らすとしよう。

 

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 という訳で、気持ちを切り替えてやってきたのはムロタウン。小さな……とは言ってもそこそこのサイズはある離島の一部を開いて作られた町で、ゲームのこじんまりとした規模とは比べるまでもないものの、やはりカナズミシティと比べると、言い方は悪いが雲泥の差というか、田舎感が凄い。ジムに向かう前に少し探索してみようと色々見て回ったが、割と本気で何も無い。ゲーム内ですらフレンドリィショップがなかったので仕方が無いのかもしれない。一応小さなスーパーとかはあったから生活する分には問題なさそうではある。

 ざっくりと辺りを確認してからジムに突貫したのだが、なんというか、意外とあっさり勝ってしまった。リーグの規約上、ジムリーダーは自身の手持ちや戦法を対戦相手のポケモンの強さではなくバッジの所持数で変えなければならないらしく、珍しい事ではあるが、実力は高いがバッジ所持数が少ないトレーナーなんかと戦う時は結構歯がゆい思いをしているんだと、ムロのジムリーダーは僕に愚痴っていた。

 彼の使う搦手や奇策にはかなり手こずらされたが、それに対応して的確に返す僕とメタグロスの事をかなり気に入ってくれたらしく、もしまたジムに来ることがあれば、その時は本気で戦ってくれるとの事。先程の規約が適応されるのはジムにトレーナーが挑戦者として来た時だけで、個人的にバトルをする分にはその為の場所としてジムを使ったとしても大丈夫らしい。思ったより緩かった。

 

「お前どうやってあんなに強いポケモン育てたんだよ!俺にもやり方教えてくれよ!」

 

 で、そのジム戦を見て興奮しながら話しかけてきたのが彼。ムロの現ジムリーダーの甥っ子で、カントーから鍛えるためにやってきた少年。名前はトウキ。そう遠くない未来、パッと見地味過ぎてそうとは分からない服装のジムリーダーになる男である。カントー出身とかそんな設定あったっけ……。

 トウキって何となく印象が薄いんだけど、子供の頃は結構やんちゃな感じだったみたいだ。格闘タイプっぽくて僕は好きです。とりあえず感謝のとっしん一万回から始めたらいいよ、と返したらドン引きされた。かなしい。

 

「なあ、ダイゴ。俺とポケモンバトルしてくれないか?今の俺じゃ絶対勝てないことはわかってるけど、それでも自分より強い相手と戦えば見えることだってあると思うんだよ!」

 

「うん、別に構わないよ。僕にもそういう経験あるし」

 

「いっつも俺が修行してる石の洞窟ってとこがあるんだ、そこなら誰にも邪魔されないから早く行こうぜ!」

 

 石の洞窟かぁ。……石の洞窟?あっ……完璧に忘れてた。ここならココドラいるじゃん……。

 

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 やって来ました石の洞窟。来るまでにトウキからココドラがいることは聞いておいたので、まず間違いなくここで捕まえることが出来るだろう。僕がどうしてもココドラを捕まえたいと言ったら、バトルする前に群れの中で一番硬くて強いのを探し出してみせると約束してくれた。優しい。

 

 洞窟の中は当然暗い。こういう時の為に持ってきた探検用の懐中電灯をバッグから取り出し、中を照らしながら先へ進む。トウキは普段からここで修行していると言っていたが、どうやら彼は夜目が利くらしく、この程度の暗闇ならわざわざ明かりを用意しなくても問題ないんだとか。夜中にトイレ行く時とかすごい便利そうなので羨ましい。

 ダイゴさんと石の洞窟にココドラといえば、思い浮かべるのはやはりアニポケのめっちゃ声が低い山男だろう。僕はあれも好きです。あの格好も洞窟を探索することを考えれば理に適っているし、ぶっちゃけチャンピオンやってる以外はただの石マニアみたいなところがあるのであの扱いも間違っていない気がする。

 そういえば僕はまだ石の良さに目覚めていないのだが、これはアイデンティティ的に大丈夫なんだろうか。ミクリには化石探しの件で石好きだと思われているみたいだけど。

 考えながら、先を行くトウキの案内で歩いていくうちに、分岐した洞窟の奥、ココドラ達が群れで生活している縄張りに差し掛かる。やばい、肉眼で見るとすごい可愛い。子犬みたいにちっちゃく丸まって寝てる彼等全てが、それぞれ60kgもあるとかちょっと信じられないくらいキュート。全部持って帰っちゃダメかな、ダメか。

 なるべく起こしたりしないように一匹一匹見て回ったものの、ピンと来る感じのココドラは見つからなかった。個人的にこういう勘はよく当たる方だと自負しているので、おそらくこの中に僕とやっていけるココドラはいないのだろう。

 

「ダイゴが連れて行けるくらい強そうなココドラっていうと……この奥まで行かないとダメかもな」

 

 そう言ってトウキが指を差したのは洞窟の更に奥、数匹のコドラが立ち塞がっている横穴だった。

 

「あそこの奥、俺もまだ行ったことないけどボスゴドラがいるみたいなんだ」

 

「もしかしなくても縄張りの長に喧嘩を売れって言ってるのかなそれは」

 

「よーしっ、行くぞ!」

 

 ジムリーダーってもしかして人の話聞かない人しかなれない仕事だったりする?

 

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 仕方が無いのでコドラ数匹をサイコキネシスでさっさと退かして、横穴の中に入っていく。穴自体はさほど長くはなく、3分も歩かぬ内に最深部まで辿り着く。そこに居たのは僕達が来る気配を察知していたのか警戒態勢を取っているボスゴドラと、その後ろに隠れている、他より一回り小さな、瞳の赤いココドラだった。

 恐らくこの石の洞窟の長であろうボスゴドラには全身の至る所に戦いで受けた傷があり、角は片方折れているものの極めて長く成長していて、そして鋭利である。そんな歴戦のボスゴドラが己の闘争心と怒りを剥き出しにして、こちらにその矛先を向けている。

 

「……もしかして俺、やっちゃったかな……」

 

「仕方ないよ、元はと言えば僕の我儘が引き起こした事態だからね。……君は下がっていてくれ」

 

 曲がりなりにも善意でやった結果なのだ。トウキを責めるのは可哀想なので、ここは僕が事態を収めるしかないだろう。メタグロスに臨戦態勢を取らせ、てっぺきとリフレクターを同時に発動する。

 ボスゴドラがほえる。洞窟全体を震わせるほどの咆哮に、その後ろにいたココドラは縮み上がり、岩陰に身を隠すようにして逃げ去っていった。本来ならばいかなるポケモンも萎縮して動きが鈍るところだが、メタグロスにそれは通用しない。それに気づいたのか、ボスゴドラはこちらに向かって全力で駆け出した。鋼鉄の尾を鞭の如くしならせ、凄まじい速度で叩きつけにかかるが、メタグロスはそのアイアンテールを片腕で受け止め、もう片方の腕でメタルクローを繰り出す。それに驚愕するような声を上げながらも、ボスゴドラは体を捻って尾を掴んだ腕を外すと、その勢いのまま自らもアイアンクローを放って相殺する。ボスゴドラがそのまま怯むことなく、間髪入れずにずつきを仕掛けてきたのを距離を取って回避し、力を溜めさせる。

 

「行け、メタグロス!全力でコメットパンチ!」

 

 瞬間的に亜音速にまで加速されたメタグロスから放たれたコメットパンチがボスゴドラの体を捉える。しかしその一撃を野生の勘で察知していたのか、ボスゴドラも防御の姿勢を取ってまもることでダメージを抑え、反撃のアイアンテールを振り下ろす。メタグロスはそこにコメットパンチを合わせると、今度はその尾を押し返して弾き返した。

 

「手を緩めるな、そのまま畳み掛けるんだ!」

 

 自らの全体重を乗せた一撃を弾かれて怯んだボスゴドラに、おいうちを連続で叩き込む。てっぺきによって物理的な衝撃に強くなっているとはいえ、決して無傷で耐えられる訳では無い。着実にボスゴドラの体力は削られていく。防戦一方となったボスゴドラに、メタグロスは決着をつけるべく再びコメットパンチを叩きつけんとその拳を振り翳す。

 しかし2体の間に突如として何かが割って入り、メタグロスはその拳を止める。

 

 そこには先程逃げていったはずのココドラが、ボスゴドラを守るべく立ち塞がっていた。

 

────────────────────────

 

 場が静寂に包まれる。全身を震わせ、恐怖の表情を浮かべ、それでもメタグロスから赤い瞳も緑がかった身体も決して逸らす事無く立ち塞がるココドラと、その背後で完全に固まっているボスゴドラを前に、ダイゴもメタグロスも完全に毒気を抜かれてしまっていた。

 

「メタグロス、有難う。一度下がってくれ」

 

 メタグロスはゆっくりとココドラの前から後退し、代わりに僕がその立ち位置に入る。何らかの攻撃が来るものだと思っていたからなのか、目の前に立った僕が突然頭を下げたのを見て、ココドラとボスゴドラは困惑していた。

 

「ごめんね、僕達は新しい仲間になってくれる子を探していただけで、君と君の親を傷つけるつもりは無かったんだ」

 

 当然だが僕にはポケモンと会話する能力なんてないし、ポケモンの心が読めたり、声が聞こえたりするような能力なんて持っていない。メタグロスとは彼のテレパシーを通じて指示を出したりなんかも出来るし、会話する事も多分不可能じゃないが、僕自身がサイキッカーな訳では無いのでメタグロス以外とは喋れない。

 それでもこのココドラとボスゴドラに声を掛けたのは、僕のトレーナーとしての気持ちの問題だ。僕達にはポケモンの言葉は分からないが、ポケモン側は恐らく理解している。捕まえたばかりの野生のポケモンはおろか、捕まえてすらいない普通のポケモンさえ人の指示を聞くことがあるのだから、一度バトルをして落ち着かせた今ならきっと僕の言葉に少し耳を傾けるくらいはしてくれるだろう。

 だから、まずは謝らなければならない。

 最初は病気か何かで弱っていたのを長の近くに置いていたのだと思っていたが、ココドラが僕達の前に立ち塞がったのを見て思い出したのだ。この瞳と身体の色合いは色違いのそれであると。

 これはトレーナーズスクールにいた頃に授業で習った話なのだが、色違いのポケモンを目にする機会が少ない理由には複数あるという。ひとつは単純に出生率が低い事。ひとつは希少性故に非合法な組織などに狙われやすい事。そして最後のひとつは群れに居場所が無い事が多く、野生の中で淘汰されやすい事だ。色違いに産まれたポケモンはその外見故に群れなどの集団から弾き出されることが多く、酷い時には産みの親からすら捨てられてしまうことがあるらしい。産まれたてのポケモンが自力で生きていくことは難しく、そのまま死んでしまうことも決して少なくはない。群れに受け入れられたからといって普通に生きていける訳でもなく、その珍しさが祟って悪質なトレーナーに狙われるなどの被害に遭うことも絶えない。

 石の洞窟の長であるボスゴドラは恐らくこのココドラの親であり、群れの中では生きられないと判断したのだろうか。せめて彼が成長して、自分で縄張りを探せるようになるまでは傍において育てるつもりだったのだろう。だからわざわざ入り口に護衛までつけていたのに、突然それを突破して僕達が現れたのだ。攻撃を仕掛けてくるのも無理もない事だった。

 

「俺も……ごめんなさい!元はと言えば俺がダイゴの話も聞かないでここまで来たんだ!だから悪いのは俺なんだ!」

 

 少し遠巻きにバトルを見ていたトウキも、駆け寄ってきて頭を下げた。僕達に対してボスゴドラは、何処か溜息のような声を上げると、ココドラ共々その場にへたりこんだ。どうやらひとまずは理解してくれたらしい。

 

「……それで、ボスゴドラ。このココドラは君の子供ってことでいいのかな」

 

 ボスゴドラは鳴き声を上げながら首を縦に振る。どうやら正解だったらしい。

 

「無茶なことは分かってて聞きたいんだけど、僕の旅にココドラを連れていかせてはくれないか?」

 

「ちょっ、ダイゴ!?」

 

「僕はココドラに可能性を感じたんだ。体も小さいし色も違う、ずっと親に守られてきて自分より強い相手と対峙した経験なんてないだろう彼が、自分の大切な親を守る為なら例え死ぬかもしれないと思っていても立ち塞がってみせた。その勇気はこの洞窟のどのココドラよりも、一番強くて硬いと思ったんだよ」

 

 カバンの中からモンスターボールを取り出して手に持ちながら、言葉を続ける。

 

「無理にとは言わないよ。でも、もし君が僕の旅に付いてきてくれるのなら……今度は僕のメタグロスからでも君の親……いや、ここの皆を守れるようになるくらい強くしてみせる。君にならそれが出来る」

 

 その発言にボスゴドラが傷ついた体を無理やり起こし、吼える。僕に向かって頭の角を突きつけて睨み付けながら、ココドラを抱え上げようとするが……ココドラはそれを拒否した。ボスゴドラはそれに困惑し唸りを上げ、ココドラはそんなボスゴドラに向き合うと、身体を震えさせながらも何度も何度も鳴き声を発した。それに対してボスゴドラも反論するように声を荒らげる。親子喧嘩のようなものなのだろうか。

 そんな光景がしばらく繰り広げられて、先に折れたのはボスゴドラの方だった。この日一番の怒りの叫声を上げると、そのままそっぽを向いて座り込んでしまう。だがココドラに迷いはなく、その背中をじっと見つめた後、僕の方に向き直って頭をモンスターボールに押し付けた。スイッチが押し込まれたことでボールが開閉し、中にココドラが吸い込まれていくと、光と音を発しながら揺れ、すぐにそれが収まる。再びスイッチを押すと、ちゃんと中からココドラがでてきた。これで僕にも2人目の仲間が出来たわけだ。

 

「ボスゴドラ。君はもう僕の話なんて聞いてくれないかもしれないけど、どうしても言っておく。このココドラは必ず、どのボスゴドラよりも強くなる。強くしてみせる。そしていつかこの洞窟に来て、今度こそ君を倒してみせるよ。その時を待っていて欲しい」

 

 そう言い残して、僕達は石の洞窟の最深部を後にした。僕と共に立ち去っていくココドラの顔はやや不安げではあるものの、決意を持ったものだった。

 

────────────────────────

 

 そんなこんなでココドラを伴って石の洞窟の入口付近まで戻ってきた。ちゃんと一番強くて硬いココドラを見つけて仲間にしたので、トウキとの約束を果たさなければならない。

 

「トウキ、僕とポケモンバトルしようか。約束だったよね」

 

「でもさっきあのボスゴドラとバトルしたばっかりだろ?疲れたりしてないか?」

 

「一度や二度の戦いで疲れるほど、僕のメタグロスはヤワじゃないよ。そもそも君と最初に戦うのはメタグロスじゃないしね」

 

 足下のココドラが「まさか」と言わんばかりの顔で僕の方を見ているが、その通り。最初に出ていくのはココドラだ。控えめに言ってココドラは弱い。いずれ強くなる原石なのは確かだが、今はまだルースにすらなっていない状態だ。だからまず、相性の悪い相手というものがどれだけ恐ろしいものなのかを知ってもらう。

 ある漫画の中でも「「勇気」とは「怖さ」を知ることッ!恐怖を我がものとすることじゃあッ!」というセリフを、カエルにパンチしてメメタァする人が言っていた。つまりはそういう事だ。恐れを知り、実際に体験するからこそ、それにどう対処すればいいのか。どう立ち向かうべきかを真剣に考えるようになるのだ。

 それに一度実戦を経験させておいた方がいいんじゃないかという気持ちもある。この旅にはジイもいなければミクリもいない。確かに一般のトレーナーはそこら中にいて、その大半が目が合えばバトルをしかけてくるようなジャンキーではあるが、彼らが必ずしも強い訳では無い。いつでも強いトレーナーと恒常的に戦える状況が用意されていたメタグロスと違って、ココドラはこの旅の中で、色んなトレーナーと戦いながら強くなっていかなければならないのだ。そんな状況でバトルの度に気後れされるような事があってはしっかりとした経験を積ませることが出来ないので、ここで少し慣らしてもらおうという所存である。

 

「良いかいココドラ。まだ難しいかもしれないけど、まずは君の親の動きを思い出して戦うんだ。順当に進化していけば、君もいずれボスゴドラになる。その時に恥ずかしい姿は見せたくないだろう?」

 

 そう言うと、ココドラはすこし気持ちを切り替えられたのか、さっきよりはやる気になる。が、トウキの出したマクノシタを見てやっぱり逃げ腰になった。本能的に自分がどのタイプに弱いかを何となく理解しているらしい。

 

「相性的にはこっちが有利だけど油断はしない……全力で行くよ!」

 

 はい、逃げようとしないの。ここで立ち向かわないと立派なボスゴドラになれないぞ。

 

────────────────────────

 

 ココドラはダイゴの的確な指示と共に飛んで、跳ねて、反撃してくる。負けじとこちらも指示を出してマクノシタに攻撃させるが、そのつっぱりをギリギリで避けて、メタルクローで着実にダメージを与えてくる。先程まで野生だったはずのココドラがここまで動けるなんて、と心の底からワクワクが湧きあがる。

 

(すっげぇ……!最初はメタグロスが強いんだと思ってた、でもやっぱり違う!ダイゴ自身のトレーナーとしてのレベルも、俺なんかじゃ比較にならないくらい高いんだ……!)

 

 自分とそう変わらない、下手をすれば自分の方が少し上だろう年齢のダイゴが、自分よりも遥か先を行っている。それが驚きだし、悔しい。でも何よりも凄いと感じる。いつか自分も彼のように強くなりたい。いや、彼を超えたい。そう思わせてくれる。

 それまで上手く避け続けていたココドラだったが、遂にマクノシタのつっぱりを食らって弾き飛ばされる。こちらもかなり削られたが、ココドラはもう動けないようだ。

 

「有難う、ココドラ。初めてなのによく頑張ってくれたね。……さあ、トウキ。僕はこれで君の勝ちでもいいんだけど……どうする?」

 

「当然、やるさ!本気のお前と戦わなきゃ意味が無い!」

 

「そうだね、君はそういう性格だ。だから僕も……出し惜しみはしないよ……!」

 

 ダイゴの心からの笑みと共に、後ろに控えていたメタグロスがゆっくりと近付き、眼前に立ち塞がる。ダイゴとメタグロスの放つ気迫はその身体を何倍も大きく感じさせ、圧倒的な力の差に全身が痺れるような感覚に襲われる。だが、それが心地良い。

 決して勝てないと分かっているからこそ、この戦いの中で自分なりに何かを見つけようと必死になれる。限界のバトルの中でぶつかり合うからこそ、もっと強くなることが出来る。

 

「行け、マクノシタ!」

 

 勝てないからと言って必ず負ける訳じゃない。99%勝ち目がなくても、1%の可能性にかけて立ち向かう。

 きあいだめを終えたマクノシタが、浮いているメタグロスをはたきおとす為の一撃を振るう。その一撃がメタグロスのメタルクローとぶつかい合い、そして──

 

────────────────────────

 

「いっちゃったなぁ……ダイゴ」

 

 あの長いようで短い戦いの後、ダイゴは次の街をめざしてここを去っていった。結局俺は負けてしまったけど、それでもあの戦いの中で覚えた事や気持ちは決して忘れない。

 

「なぁ、おじさん」

 

「どうしたトウキ、珍しく真剣な顔して」

 

「俺さ、ジムリーダーになるよ。ちゃんとスクールに通って、資格とって……それでおじさんよりも強いジムリーダーになる!」

 

 俺は今までずっと悩んでいた。普通のトレーナーやアスリートの道を選ぶか、おじさんのようにジムリーダーになる道を選ぶか。だからわざわざカントーからこのムロタウンまで、ジムリーダーという仕事がどんなものなのかを知る為にやってきていた。実際におじさんの仕事を見ていて、町の顔としての役割や他の書類仕事なんかも強制されるジムリーダーという仕事はしんどそうだな、なんて思う気持ちもあったし、挑戦者に負けなきゃいけないなんて嫌だな、とも思っていた。

 でもダイゴとの戦いの中で、おじさんが本当は凄いトレーナーなんだって、やっとわかった。俺とマクノシタはメタグロスと真正面から打ち合おうとするばかりで、上手く戦うことが出来なかった。確かに俺は真っ向から力をぶつけ合うのが好きだし、心の底から楽しんではいたが、それは楽しいだけで勝てる戦いをしていたとは言えないのかもしれないと、後々になって気付いた。

 だがおじさんは俺のマクノシタとそこまで変わらないレベルのポケモンを使って、色んな手段でダイゴとメタグロスを翻弄していた。確かに全て破られてはいたけど、それでも色々と手を尽くして、ダイゴがバッジを得るに相応しいトレーナーなのかを「挑戦を受ける側」として見極めていた。

 それはココドラが俺のマクノシタの攻撃を上手く躱したり、タイミングを見て反撃したりしていたのと変わらない。サーフィンと同じようにただ力で押すだけではなく、テクニックを磨いて乗りこなすも重要。それが本当の意味でのバトルなのだと、知ることが出来た。

 俺はダイゴを同じトレーナーとして尊敬している。でもそれ以上に、まず尊敬するべき相手が身近にいた事に気づけたんだ。

 

「……そうか。だがトウキ、ジムリーダーへの道のりは長く険しいぞ。資格を取るのは勿論、トレーナーとしての実績も積まなきゃならないし、その中で沢山辛いことが待っている。それでもやるんだな?」

 

「ああ!俺は絶対にジムリーダーになって、この世界にビッグウェーブを巻き起こしてやるんだ!」

 

 もう、迷いはない。俺はトレーナーとして、ジムリーダーとして。立派に自分を誇れる男になってみせるんだ!

 

────────────────────────

 

 ムロタウンを出航してから一時間。

折角だから壁画見ていけばよかった……。

 

 




暴力、それは止む事の無い蹂躙
大地はプラスパワーを吸わされ、大気は急所ストーンエッジにむせかえる
大修練、それは忌まわしき記憶
次回、鋼の携帯獣使 FULLMETAL DAIGOSAN
第3話 『ベリーハード殲滅戦』
真実を語る、例え一人になっても

要約:ライチ強過ぎ問題。
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