大 誤 算 作:ジムリーダーのメモ
トウキ
ずかんNo.297
なまえ/トウキ
タイプ/ねっけつ
ししょう/おじさん
とくせい/サーファー
ものごとの なみに のるのが うまい
やんちゃなせいかく 8さいのとき
ムロタウン で であった
テッセン
ずかんNo.310
なまえ/テッセン
タイプ/ごうかい
おや/ふめい
とくせい/メカニック
きかい に かんして むるいに つよい
わんぱくなせいかく 34さいのとき
キンセツシティ で であった
最初のバッジを手に入れ、ココドラを仲間にし、トウキと仲良くなって……そうしてムロタウンを発って、既に3日が経った。
あれから僕はハギ老人の船で海水浴場に連れてきてもらい、お礼を告げてカイナシティへ向かった。その間に海の家で焼きそば食べたり、道中のトレーナー全てと戦ってココドラを鍛えることが出来たので、二重の意味で美味しかった。
カイナシティでは特に話題になるようなことも無かったので、割愛しようと思う。ぶっちゃけ2泊3日で普通に観光してただけだし……。市場を見て回ったり、博物館を見学したり。
後は一応ミクリが来てないかと思ってコンテスト会場も覗いたが、やっぱり彼はいなかった。というかコンテストを見るのも割と楽しみにしていたのに、(あれ?なんかミクリの方が凄いな……)となってしまうせいで微妙だったのは、どうにも敗北感を感じさせられて仕方がなかった。おのれミクリ。
一通りカイナを堪能した後は、そのまま北に進路をとってキンセツシティを目指す。サイクリングロードは何となくこの年代でもあるだろうなとは思っていたが、道中にからくり屋敷を見つけた時は流石にちょっとびっくりした。ポケモン世界は奇人変人が多いが、主人公たちがやってくる遥か昔から、からくり大王はこんなことをやっていたのかと思うとなんかこう……言葉では言い表せない気分になったので、とりあえず触れないでおこうと思う。朧気でも仕掛けを覚えている以上はズルになってしまうのもあるので、仕方の無いことなのだ。
キンセツシティまでの道のりは実際に自分で歩いてみると相当長いのだが、その分バトルジャンキーなトレーナー達が沢山いるので、ココドラに経験を積ませるという意味では最適だった。
110番道路のトレーナーと一通り戦い終えたら、今度はサイクリングロードのトレーナー達とも戦うべく乗り込む。僕は自転車を持っていないので本来なら入ることは出来ないが、メタグロスに乗っかって途中から飛び乗り、マッハ自転車よりも早く突き抜けてしまえば誰にも文句は言えないだろう。別にタクシーとして使っている訳では無いので、個人的にはセーフということにしておく。地方によってはバイクも走ってるんだし、これくらいなら大目に見てくれるんじゃないかな。絶対見てくれる。
新幹線並みの速さで飛び回りながら、トレーナーを見つけた端から狩っていく。
ココドラはこの超短期間で鍛えられた結果著しく成長し、今ではアイアンテールで大岩を粉々に吹き飛ばす事すら可能となった。やや臆病なところはまだまだ治らないものの、バトルという行為にも慣れ、動きも格段に良くなってきている。そろそろ進化も近いかもしれない。
これは個人的な体感なので本当に正しいかはまだ定かではないが、日々強くなるココドラを見ていると、どうも複数のトレーナーと様々な状況で戦うことは強いトレーナーと何度も戦う事に匹敵するだけの経験になっているように思う。
ポケモンバトルというものは基本的に創意工夫が重要だ。これは元のゲームでの対人戦なんかでもそうだが、例えそれが伝説のポケモンであっても、単独のポケモンによるゴリ押しが通用する状況というのは少ない。或いはそういうものは例外なく対策される。その為、どんなトレーナーも少なからずそれぞれのポケモンや性格に合わせた戦い方をするもので、その中には真っ向からのぶつかり合いを好むトレーナーもいるし、逆に毒や麻痺などの状態異常を利用して優位に事を運ぶトレーナーもいる。自分のポケモンを積み技でひたすら強化して戦うトレーナーや、誰もが思いつかないような奇抜な戦い方で相手の裏をかくトレーナーだっているだろう。
同じ強さの相手や、自分より強い相手……ゲーム的にいえばライバルや四天王達と何度も、何度でも戦えるという状況は確かに非常に恵まれていると言える。だが同じ相手とのバトルは続ければ続けるほど、互いに互いの手を知り尽くしている状態になり、バトル自体の起伏は少なくなっていってしまう。ポケモン自身の戦闘力や技術を伸ばすことには繋がるが、それでは新たな発見や未知の体験を得ることは難しい。
主人公が使うポケモン達が短い旅の中でも急激に成長するのは、様々なトレーナー達とのバトルの他に、それぞれの悪の組織との戦いや、コンテストなどの中で様々な経験を積み重ねているからなのかもしれない。
なお、
サイクリングロードのトレーナーを全員薙ぎ倒したのは良いものの、そのままの勢いで普通にサイクリングロードの出口に入ってしまったせいでかなり怒られてしまった。僕は「これは最新のメタグロス型浮遊式自転車なんです」と弁明したが、メタグロス自身がそれを否定したので結局バレた。真面目なのが僕のメタグロスのいい所だけど、正直言うと庇って欲しかった。
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サイクリングロードを出るのにかなり時間を使ってしまったので、朝にカイナシティを出発したにも関わらず、キンセツシティに着く頃には夜の帳が降りていた。街自体は街灯が多く設けられているおかげでかなり明るく、夜になっても営業している店が多い。流石にお腹も空いてきていたので、ポケモンセンターに宿をとる前に適当な店に入って食事をする事にした。基本的にどこの飲食店もポケモン同伴が許可されているので、ボールからココドラとメタグロスを出し、彼等にはポケモンフードを、僕は適当な料理をいくらか見繕って注文する。
注文してから気づいたのだが、メニュー的にここは多分居酒屋だ。精神年齢はかなりのものとはいえ、体はまだ十代にもなっていない子供が一人で入ってきても何も言わずに注文をとる辺りはかなり衝撃的に感じる。まあ10歳が成人扱いの世界なので、意外とそんなものなのかもしれない。
ちなみに全世界のポケモンユーザー誰もが思っていたであろう「ポケモン世界の人間は何を食べているのか」という疑問についてだが、まあなんというか、普通に食用ポケモンというのが存在する。正直僕も最初はあまり受け入れられなかったが、冷静に考えるとゲームやアニメでもヤドンのしっぽとかコイキングとか色々あったので、もう割り切ることにしている。
後、何故かお米や麦なんかの穀物は普通に存在しており、この世界でも一般に広く食べられている。そしてポケモン世界最大の謎であるインドゾウについては、この世界に生を受けてから一度たりとも見たり聞いたりしていない。不思議。
「お前さん、珍しいポケモン連れとるな?」
注文した料理が来るのを待っていると、不意に後ろから声をかけられた。振り向くと、白髪混じりの髭を蓄えた男がビールを片手に立っていた。赤く染まった顔色からして、かなり酔っ払っているみたいだ。
「この辺じゃメタグロスなんて連れとるトレーナー滅多におらん。それにそのココドラも色違いのようだし……レアなポケモンが好きなのかのぅ?」
男はそう言いながら、ポケットからモンスターボールを取り出すと、そのスイッチを押し込む。中から姿を現したのはレアコイルだった。
「儂のポケモンもレアだぞ!なんせ『レア』コイルだからな!わっははははは!!」
言うや否や、その男のポケモンであるはずのレアコイルがでんきショックを浴びせる。気絶したのか、そのまま倒れ込んだ男をレアコイルが器用に持ち上げて店を出ていくが、店員は愚か他の客さえ誰一人として気にも止めていない。どうやら日常茶飯事らしい。
一先ず運ばれてきた料理を食べ、店を出て、ポケモンセンターに宿を借り、そこでやっと気づいた。
あの酔っ払いはもしかしてテッセンなのでは?
という訳で翌日。僕は早々に支度を整えると、朝早くからキンセツジムへ向かった。だが肝心のテッセンがいない。
ジムのトレーナーから話を聞く限り、どうにも最近の彼は独自に開発しているとある発電システムの実験に夢中らしく、なかなかジムに姿を見せないらしい。一応挑戦者が来る度に言伝はしているものの、「この最終調整が終われば、まとめて相手をする」と言って取り合ってくれない。そんな状態がもう一ヶ月以上も続いているんだとか。
念の為テッセンの写真を見せてもらったところ、紛れもなく昨日の酔っ払いだったので、彼が昨日居酒屋で飲んだくれていた事を報告しておいた。それを聞いたジムトレーナーは一瞬で般若もかくやという形相になり、全速力で何処かへ走っていった。その速度はマッハ自転車より早く見える。
何はともあれ、これであと数日もすればちゃんと挑戦できるようになるだろう。その間もメタグロスとココドラを鍛えるのは当然として、何して時間潰そうかな。
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わーい、すろっとじゃらじゃらたのしいなー
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ゲームでも割と黙々とやっていたキンセツゲームコーナーのスロットだが、やっぱり楽しかった。日がな一日やっても止まらないというか止まれないレベルには。
置いてある筐体の数や種類もゲームで見るより更に豊富で、様々なポケモンがモチーフのスロットがあって飽きが来ない。ただ流石に大当たりでピカチュウの電撃が赤と青に光る台は色んな意味で不安になった。高速点滅じゃなかったし、店内も明るいので大丈夫そうだったが。
他にも昔の自分がやっていたのとかなり似たようなゲームが複数置いてあった。例えば横スクロールシューティングの設定がえぐいやつや、特殊なコマンドを入れると最強になるやつ。パズルだとカラフルなメタモンを上手く繋げて消すやつや、これまたカラフルなブロックで列を揃えて消すやつ。他にも格闘ポケモンたちがはどうだんとかスカイアッパーをコマンドで出して戦うゲーム、ポケジャンという麻雀みたいなゲーム、そして王道のピンボール……とにかく色々とあったので全部やり尽くした。
元々時代に応じてゲームキューブやwiiがある世界なので、アーケードゲームだって色々あるのも不自然な事では無い。僕が知らなかっただけで、ゲームコーナーなら本当はこれくらい充実しててもおかしくはないだろう。タマムシと違って悪の組織関与してないし。
トレーニングの時間以外ほぼ全てを捧げるくらいに夢中になっていたので、気がついたら一週間経っていた。自分でも割とどうかと思う。
兎にも角にも時間というか日数は潰せたので、朝になって再びジムを訪れる。やっと挑戦できるかと思いきや、中ではテッセンが倒れて大騒ぎになっていた。前と同じジムトレーナーに話を聞いたのだが、どうにも今度は「そこまで言うなら両立させてやる!」と言って不眠不休でジムと実験の両方をやり続けて倒れたらしい。ジムリーダーは人の話聞かない説が補強されてしまった。どうしよう。
流石にこれ以上ゲームセンターにへばりつくのも憚られるので、とりあえず昼にでもお見舞いに行ってみようと思う。一度しか会ったことがない、それもその一度すら酔っ払っていて記憶があるかどうか怪しい時なので、相手は覚えてないんじゃないかとかそういう部分は考えない。メタグロスを連れたトレーナーは珍しい、なんて言ってたんだから覚えてるはずだ。……十中八九忘れてるだろうな。
テッセンが運び込まれた病室を訪ねてキンセツの総合病院までやってきた。栄養失調と過労で今日一日は安静にしてないと駄目なのに、無理やりにでも動こうとしていて困っているらしい。普段は何かあっても手持ちのレアコイルやライボルトたちが止めるらしいのだが、今回ばっかりは体調のことも考慮してそれが出来ず、病室内でずっと騒いでいてどうにもならないので、職員の間ではもういっそ要求通りに解放すれば良いんじゃないかという意見すら出ているとの事。
「だぁあああから!儂はもう十分充電したと言っておる!離せぇええええええ!!」
とりあえずノックして病室に入ったのだが、中ではテッセンがポケモンたちによってベッドに押さえ付けられていた。本当に騒いでるよこの人。さっき倒れたばっかりだった筈なのにもう回復しているらしい。医療が凄いのか回復力が凄いのか、どっちなんだろう?
「ん?……おぉ、なんだお前さん。この間の居酒屋の坊主じゃないか。わざわざ儂の見舞いに来てくれたのか」
「僕のこと覚えてたんですか?」
覚えてないだろうと思っていたので、ちょっとびっくりしている。
「自慢じゃないが、儂は酒には強いんだ。酔ってたって何言ったか、誰と喋ったかくらいはちゃんと覚えとるぞ!」
大口を開けて笑うテッセンの背後では、いい加減に我慢の限界なのか、それともこれだけ回復したなら使っても大丈夫と判断したのか、レアコイルとライボルトがでんじはを放つ準備をしている。ここで使われると流石に巻き込まれかねないので、手でやんわりと静止しつつ、何故そこまでその実験にこだわるのかを聞くことにする。
「どうして実験にこだわるか?うむ、そうだのぅ……お前さん、発電所がどういう仕組みになってるかは知っとるか?」
「はい、一般的には電気ポケモンの力を借りて発電したのを、一度蓄電して供給してるんですよね?」
この世界における生活の基盤を支えているのは、やはりと言うべきかポケモンである。
有名なところではミルタンクの牛乳やヤドンのしっぽなどの畜産の他、格闘ポケモン達を使った引越し業者などの肉体労働などだろうか。一般トレーナーがそれぞれの仕事に合ったポケモンを連れていることが多いのはつまりそういう事なのだ。
電気タイプのポケモンの場合は彼らを発電所や研究所に集め、その能力を利用して発電・蓄電を行っている事が多い。法律によって定められた一定の範囲において一匹の電気ポケモンから生活に使うための電力が回収され、それぞれの町に供給されるようになっているらしい。
「よく知っとるの。まあ最近は電気ポケモンだけでは供給が追いつかない所も出てきて、火力や水力なんていう発電方法も使われとるが……それは一先ず置いとくか。儂は常々それがどうにかならんかと思っておってな」
「どうにか、ですか」
「うむ、確かに儂らにとって電気というものは、今や切っても切り離せんくらい生活に根付いたものだ。それを作る為にポケモン達には協力してもらっとる訳だが……。今はまだ、確かにそれでも何とか回っとる。だが今後人口が増え、大きな街が増えていけば必ず今のままでは供給が追いつかんくなる。現にそれが理由で他の発電方法を使っとる街もあるからな。だがどこもかしこもが新しく発電所を作れるわけではあるまい。となれば、ポケモン達にこれまで以上の負担を強いらなきゃならんくなると思わんか?儂はそれを何とか出来る発明がしたくてな」
テッセンの後ろのレアコイルとライボルトも、その言葉に深々と頷く。なるほど、確かに一理ある。実際これから15年くらい経ったら超過激派環境保全団体、別名大規模テロリスト集団が2つも同時に台頭してきてホウエン中を荒し回る事を知っているので、ポケモンを重視しながらも決して人の使う電気を否定しないスタンスには、言葉以上の重みがあった。
「儂が今研究しているのはポケモン達から供給された電気を増幅するシステムなんだが、それを使えば、いずれは電力不足に陥るなんて事態を未然に防ぐことが出来ると儂は考えておる。その事をツワブキに話したら、デボンコーポが快く協力してくれてな!後は重要なパーツを一つ取り付ければ稼働させられるって所までは来たんだが、そんな時にちょうど倒れてしまっての……」
どうにもそのパーツをつけての試運転がやりたいが為にさっさと病院から出ていきたいようだ。それよりデボンって言ったな今。また親父が関わってるのか。
「うーむ、そうだな。お前さん、このダイナモバッジが欲しくてこの街に来たんじゃろ?」
そう言って、テッセンは懐からキンセツジム制覇の証であるダイナモバッジを取り出す。
「儂の代わりにこれを取り付けて、装置を起動してみてくれんか?そのあとは一度電源を落として、儂の所にどうだったかを教えに来てくれれば良い。それでこのバッジはお前さんにくれてやる。あそこにはかなりの数の電気ポケモンがおるからの、それを突破できる腕があれば十分バッジを持つ権利があるわい」
ココドラの修行にもなりそうだし、そのくらいのことでバッジが貰えるならそれでも問題は無いといえば無い。が、やっぱりそれだけでバッジを貰うのは違う気がする。
「バッジはいいですよ。その代わり、僕がちゃんとその装置を試してこれたら、最優先で僕と戦ってください」
僕の返しが予想外だったのか、テッセンは再び笑い声を上げると、笑顔のまま言葉を返す。
「こりゃ面白い!若いポケモントレーナーはやっぱりこうでなくてはな!いいだろう、約束する!お前さんが戻ってきたら絶対に最初に相手をしてやろう!」
テッセンは懐から、今度は先程の装置のパーツと何処かの鍵、そしてある場所を指した地図を取り出した。この場所には見覚えがある。
「この実験が上手く行けば、儂はその地下発電施設をニューキンセツと名づけることにしようと思っとる。場所はその地図に書いてあるとおりだ。この鍵を使えば中に入れるぞ」
やっぱりニューキンセツだよね、うん。
展開が早い。
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ニューキンセツ。正直あんまり覚えてないのだが、スイッチみたいなのを押して、扉を開けながら奥まで入っていく場所だったはず……というか実際そうだった。地面にあるスイッチを踏み込むことで対応した壁を開き、奥へ奥へと進んでいく。道中に現れるコイルやビリリダマたちの殆どをココドラと対処しつつ、足を止めずに歩いていく。
ハッキリ言って、マルマインとビリリダマがゴロゴロ転がってるのはいくらなんでも危険すぎると思う。どう考えてもいつか事故が起きる。
後、コイルがかわいい。ダンバルと同じでクリクリとした目がね、かわいい。横についてるU字の磁石がフリフリと揺れる姿も可愛らしい。
これもトレーナーズスクールで学んだ事だが、ポケモントレーナーは基本的に7匹以上ポケモンを連れ歩いて『良い』。ただし、バトルの際にはその中から最大で6体までを選出して戦う形になっている。そもそもまだこの世界にはボックスにポケモンを預けるという概念がなく、7体以上手持ちがいる時は専用の預かり所に預けたり、バトルとは別で連れ歩いたりする以外に方法がないためにそういうことになっているのだが。
まあつまり、ちょっとくらい色々捕まえても許されるんじゃないかと思う。コイルって鋼だし、大丈夫だよね。ね?
Oh……Magneton……コイルに投げたモンスターボールがレアコイルに当たってしまった。なんで?
しかもそのままボールに入っていき、あっさりと捕まえられてしまった。どうして?
……何だか知らんがとにかくよし!レアコイルもかっこいいのでセーフだ。三位一体のそのフォルムは、元のコイルのかわいさを損なうこと無くかっこよさに昇華している。何なら1匹でコイル3匹分だとも考えられるので、とてもお得である。詰まる所、レアコイルも好きです。
新しく仲間になったレアコイルの案内で、そこから先は迷うことなく発電所の中を進んで行くことが出来た。ニューキンセツの中はゲームのそれよりも複雑になっており、行き止まりや押しても反応のないスイッチがあったりで、かなり探り探りでなければ進めない状態だったのだが、やはりここに住み着いていただけあり、レアコイルは僕達を一直線に発電機まで案内してくれている。
そうしてたどり着いた先、大きな発電機の前には、これまたここにいるどのポケモンよりも大きなポケモンが浮いている。
その姿は、紛れもなくジバコイルだった。
いやまあ、うん。確かに特殊な発電機の近くだし、磁場がおかしくなったりしてるかもしれないっていうのは分かる。でも流石にホウエンにいるのは大丈夫なんだろうか。多分大丈夫ではない。こんなの絶対おかしいよ。
発電機を守るジバコイルに遭遇した後、レアコイルが電磁波で事情を説明したのか、ジバコイルはあっさりと退いてくれたので、持ってきたパーツを取りつけて動作を確認した。なんの問題もなく稼働するようだったので、電源を一度落とし、ジバコイルに別れを告げてテッセンの病室まで無事に戻ってきた。
「おぉ、その様子だと上手く行ったか!これで供給の改善に一歩繋がるぞ!」
「動作自体は問題なくしてたので、後はテッセンさんがもう一度確認すれば大丈夫だと思います。……それより、あそこにいたジバ……ポケモンはなんなんですか?」
未使用のモンスターボールを既に捕まえられているポケモンに向けた場合、ボールはエラーを発して捕獲待機状態にならないようになっている。その仕組みを利用して試しにボールを向けてみたが、どうもあのジバコイルは既に誰かの手持ちのようだった。
「あいつはここだけの話、儂のレアコイルが突然進化したせいであの姿になったものでな。人目に触れさせる訳にもいかんから、一先ずあそこの番人をして貰っとるんだ」
やはりあのジバコイルはテッセンの手持ちだったみたいだ。恐らくは発電機の至近距離で、特殊な磁場を浴びていたのが理由で進化したのだろう。
ただ、あのジバコイル以外に同種は他におらず、僕のレアコイルが発電機に近付いても特に進化の兆候を見せなかったので、他にもなにか要因があるのだろうと考えられる。いずれにせよテッセンの手持ちならば、こちらが干渉する事でもないだろう。
「よし、お前さん。約束通り早速儂とバトルするぞ!」
「今日は安静にして明日にしてください。全力で戦えないとお互いに不完全燃焼になりますから」
折角ゲームと同じジムリーダーと戦えるんだから、どうせなら万全の状態で戦いたい。それに、バトルに備えてレアコイルが現状使える技の把握と調整もしておかねばならない。もっと言うと、後ろのライボルト達が痺れを切らしそうなので、電撃に巻き込まれるのを避けるためにも明日の朝一番にしてもらう事にした。
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「お前さん、ニューキンセツのレアコイルを捕まえたのか!あやつらは野生が長いからか、そうそう捕まらん程プライドが高いのによくやるわい!」
僕の呼び出したレアコイルを見たテッセンは、高笑いしながら驚きを口にする。「この子僕が投げたボールにはすんなり入っちゃったんですよ」とか言えるわけもないので、そのままレアコイルに指示を出していく。
バトルは既に始まっている。病院を出た後、僕はレアコイルに磁力操作に関する指導をメタグロスから受けさせつつ、ココドラの最終調整を行って今日に備えた。
そして今まさに、バッジをかけたバトルの幕が切って落とされた所である。
僕のレアコイルに相対するは、同じくレアコイル。相性面でも技の面でも、互いに互いの強みを潰しあっている状態である。テッセンのレアコイルが放ったちょうおんぱを同じくちょうおんぱで相殺しつつ、互いに円を描くように動き回って隙を伺う。ソニックブームを打てば同じ技で返され、でんげきはは10まんボルトで無理矢理かき消す。拮抗した状態が長く続き、先に動いたのは僕の方だった。
「行け、レアコイル!あの技を使うんだ!」
その言葉だけで指示の内容を理解したレアコイルが、その場で回転しながら己の身体に電気と磁力を纏っていく。スパークの態勢に入った事を警戒して、テッセンのレアコイルがソニックブームで妨害しようとするが既に遅い。全身に電磁力を纏いながら回転するレアコイルは、強力な渦を巻く電磁気を盾として攻撃を防ぎながら加速し、敵に向かって突撃していく。
これが昨夜即興で思いついた技、別名未完成版超電磁スピンである。なぜ未完成なのかと言われれば、単純に某超電磁ロボほど上手くいかなかったからだ。
だがその一撃は強力である。まともにくらったテッセンのレアコイルは、吹き飛ばされながら全身から火花を飛び散らせ、錐もみ回転で落下してくる。そしてそのまま地面に倒れ、戦闘不能となっていた。やはり威力に関しては現状でも申し分ない。
「いいぞ、お前さんの熱意が見えるぞ!やはりデカい口を叩くだけのトレーナーとは違う!」
テンションが更に上がったテッセンは2つ目のモンスターボールを取り出し、ビリリダマを繰り出す。レアコイルは先程の勢いそのままに突貫していくが、その一撃はいとも簡単に避けられてしまった。
この技の最大の弱点にして、未完成たる所以。それは急激な加速と回転にレアコイル自身がついていけず、直線的にしか放つことが出来ないということだ。その速度は確かに僕のメタグロスが本気で放つコメットパンチにも匹敵するが、軌道があくまで直線でしか無いのであれば、進路を見極めて回避することも可能である。
初見ならば確実に仕留められるだろうし、大概の相手には二度目以降も通用するだろう。だが、流石はジムリーダーだ。たった一度食らっただけで技の特性を見極め、いとも容易く回避してのける。酔っ払ったり喚いたりであまり威厳を感じさせてこなかったテッセンだが、そのバトルの実力が相当なものであることを肌で感じさせられる。
「磨きの甘い技では儂には勝てんぞ!ほれ、ビリリダマ!ころがるんだ!」
球状の体を活かし、フィールドの中をボールのように転がる事で加速するビリリダマに対し、レアコイルも超電磁状態を解除してソニックブームを放つ。しかし緩急をつけながら縦横無尽に転がり回るビリリダマに、先程の攻撃で消耗したばかりのレアコイルでは狙いを定めて当てることが出来ない。
そうこうしている内に十分な加速を得たビリリダマが突撃を仕掛ける。レアコイルに一度激突しても尚、その速度が下がることはなく、むしろ先程よりも速度を増していく。レアコイルもそれを必死に捉えて回避しようとしても回避先を予測され、迎撃しようにも予備動作を見抜かれて技を潰されてしまう。
「くっ、レアコイル!」
あと僅かで限界という状態のレアコイルにトドメを刺すため、限界まで加速をつけたビリリダマが猛烈な速度で迫っていく。そんな中でレアコイルが不意に、こちらに目配せをした。
それとほぼ同時にビリリダマの一撃を食らったレアコイルは吹き飛ばされ……なかった。最後の気力で強烈な磁力を発し、ビリリダマを自身に縛り付けたレアコイルは、そのままスパークを発しながら、自分諸共高速で地面に叩きつける。その強烈な衝撃とそれを受けた焦りが引き金となったのか、ビリリダマはじばくしてしまった。
「レアコイル……!」
「ほぉ、まさか儂のビリリダマを自爆させて道連れにするとは!お前さん、余程信頼されてるようだな」
「……どうしてそこまでしてくれるのかは分からないけど……その気持ちには報いなきゃいけない。そうだろう、ココドラ!」
戦闘不能になったレアコイルを回収し、新たにココドラを繰り出す。普段は頼りなく煌めく赤い瞳も、今は真紅に燃え上がり、強い意志を示している。ボールの中からレアコイルの戦いを見ていて、なにか感じ入るものがあったようだ。
「これが儂の最後のポケモンだ、行けぃライボルト!」
現れたのはテッセンがこのバトルで使う中で最も強いポケモン、ライボルト。ライボルトは出てくると共にでんこうせっかを仕掛け、速度で翻弄しながらココドラの体力を削りに来る。てっぺきによって肉体を硬化させることでその連撃を難なく耐え、カウンターヒットを狙ってアイアンテールを振り回す。
しかしライボルトは突如としてその動きを止めた。アイアンテールが空を切るのと同時に、でんじはが放たれる。肉体を麻痺させられたココドラの動きが見るからに鈍くなり、悠々と近づいてきたライボルトに反撃しようにも、思うように体を動かせなくなってしまう。
でんこうせっかによる高速移動を利用した空気摩擦によって、鬣に大量の電気を蓄えたライボルトがでんげきはを放つ。本来よりも威力の高まったそれは眩い閃光と共にココドラを貫き、吹き飛ばしていく。
再びでんこうせっかを使い、高速で駆け抜けながら、宙に浮いたココドラを追撃せんとするライボルト。しかしその体はココドラとは真逆に吹き飛ばされていった。
吹き飛ばされる際の運動量を利用して放つアイアンテール。本来ならば自分が飛ばされた際に壁面や地面に叩きつけることで衝撃を殺す為に習得していた技術だったのだが、今回はそれを攻撃に利用する形で一撃を加えることが出来た。ライボルト自身が出していた速度も相まって、半ば自ら鉄塊にぶつかる形となっている。そのダメージは相当なもののはずだ。
だがそれでも、ライボルトは立つ。かなりのダメージを受けてこそいるものの、闘争心には微塵の衰えもなく、むしろ最初よりも増しているとさえ言える。
「あれでもまだ立つのか……!」
「これでも儂はジムリーダーだからの、ヤワな育て方はしておらんよ。ライボルト、駆け巡れィ!」
テッセンの声を受けたライボルトが、ビリリダマと同じようにフィールドを駆け巡り始める。だがその速度は先程のビリリダマが使っていたころがるの比ではない。常にでんこうせっかを維持しながら走り回るその姿は、帯電量の増加によって発生した雷光の残像も相まって、正しく地を駆ける稲妻であった。
いくら機転を利かせて深手を追わせることが出来たとはいえ、ココドラも消耗し、更には麻痺までしている。そんな状態では対応など到底ままならない。
恐らく相手の狙いは限界まで帯電した状態からのでんげきはだ。先程の貯めから放たれたそれも相応の威力があったが、恐らくその比では無いだろう一撃である事は想像に難くない。
完全に動きを止めたココドラは、ただライボルトの動きを目で追うだけで何もしない。辺りには猛獣もかくやと唸りを上げる電気の音が響き渡る。
遂にチャージを完了させ、その動きを止めたライボルトが、全身の電気を一つに集約させていく。依然として、ココドラは動かない。
そして放たれたでんげきはは強烈な電気の波濤となり、夥しい閃光を放ちながらココドラを飲み込んでいった。
「お前さんのココドラ、なかなか見所はあったが案外呆気なかったのぅ。もう少し鍛え直して……」
「それはどうかな?」
「何っ!?」
電気が拡散し、光が消える。否、消えていない。ココドラの肉体が眩い雷光を放ちながら、少しずつ大きくなっていく。ココドラがほえると同時に、全身を覆っていた鉄の鎧が弾け飛び、中から新たな姿を現す。
「このタイミングで進化か……!」
「僕は狙ってたんです。ココドラの進化をね」
カッコつけました。半分嘘です、ごめんなさい。このバトルで進化するかなとは直感で思っていたものの、まさかこんなにいいタイミングで進化するとは思ってませんでした。だが結果オーライなので良しとする。
ちなみにそれはどうかな、などと大口を叩いたのは、地面にアイアンテールを突き立てた状態で電撃を受けることで、電気をある程度地面に受け流すという技術をココドラに教えていたからである。というか最初の時も実はバレないようにやらせていた。そうじゃなきゃいくら等倍でもあの威力は耐えられなかっただろう。
弱点を対策するのは当然として、等倍や自分が有利な属性に対しても確実に勝てるような鍛え方をしておかないと、油断を理由に足元を掬われていては立派な
「コドラ、どろかけだ!」
古い鎧と共に体を覆っていた電気を脱ぎ捨て、麻痺を解除したコドラは辺りの地面を掘り返し、手当たり次第に泥を投げつける。ライボルトも流石に消耗しているらしく、最初は機敏に避けていたものの、だんだんと動きが鈍っていき、幾らかの泥がライボルトの体を捉えた。それと同時に指示を出し、コドラにメタルクローを繰り出させる。先程のでんげきはで蓄積していた電気を全て使ってしまったことによる疲労と、フィールドにもバラ撒かれた泥に足を取られたことで体勢を崩したライボルトの身体にメタルクローが突き刺さる。泥で覆われた箇所に攻撃を当てることで静電気による麻痺も防ぎつつ、一気に畳みかけていく。
だがライボルトもこの程度の事で心折れたりはしない。必死の抵抗を試み、でんこうせっかを放つも、てっぺきに加えて進化によって先程よりも硬度の増したコドラを相手に、消耗した体力では傷をつけることも難しく、むしろ高速で走りながら泥に足を取られたことで、余計に隙を作ってしまった。
「トドメだ、コドラ!アイアンテール!」
その隙を、コドラは決して逃がさない。放たれたアイアンテールがライボルトの急所を捉える。強烈な一撃を食らい、身体を壁にたたきつけられたライボルトは、そのまま戦闘不能となった。
テッセンには既にこのバトルで使う用に登録されたポケモンはいない。
僕とレアコイル、そしてコドラの勝利だ。
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「ふぅ……いやぁ、いい試合だったぞ。お前さんは儂の想像以上だ!さあ、このダイナモバッジを持っていけ!」
改めてテッセンは懐からバッジを取り出し、僕に差し出す。今度はそれを拒否することなく受け取り、トレーナーズカードにしっかりと装着した。
「とりあえず儂は充電のし直しだな……熱い戦いだったがかなり疲れちまったからの」
「今日は本当にいいバトルをさせてもらえました。僕のコドラも進化出来ましたし、ニューキンセツに行けたおかげでレアコイルも捕まえることが出来た。本当にありがとうございました」
キンセツシティは本当にいい場所だった。ゲームコーナーも楽しかったし、ココドラもコドラに進化したし、思わぬメンバーも手に入れられた。想像よりも遥かに大きな収穫だったと言える。
「そこまで言われちまうと流石に儂も照れるわい……。まあ、なんだ。またキンセツシティに来るといい。お前さんが強くなった時には、今度は儂ももっと強くなってバトルしてやるぞ!」
ムロの時といい、やはりジムリーダーはバトルが好きらしい。僕も本気のバトルは望む所なので、いつかまた必ず来ようと思う。
「ところで、お前さん。名前を聞いてなかったな。教えて貰えるか?」
ハギ老人の件があったからてっきり知っているものだと思ってたけど、もしかして気付かれてなかったのか。道理でお前さんとしか呼ばれないわけだ。
「お前さんがツワブキん所の息子だったのか!?何となくどこかで見たような気がしてたが、気づかんかったわい!わっはははは!!!」
僕の名前を聞いて、驚きながらもいつものように高笑いするテッセンを前に、僕は思った。
この人が街のトップをやってるキンセツの人達は、大変だろうなぁ……、と。
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キンセツシティを出発して丸一日。シダケタウンに一度行き、軽く見て回ってから再びジム巡りの順路に戻る。その途中でシダケのコンテスト会場を見てみたら、ミクリの優勝写真が飾られていた。どうもキンセツで時間を潰している間に入れ違いになったようだ。おのれミクリ。
今更になって気付いたが、コンテスト会場が分かれているという事はこの世界はエメラルドではなくルビサファなのだろうか。でもテッセンの手持ちにはライボルトがいたので、やはり一概には言い切れない。もうちょっと様子を見ないと分からないな、これは。或いは実際に本編が始まらなければ分からないかもしれない。それだと困るので、出来ればそれまでに判別を済ませておきたいところだ。
メタグロスに乗って来た道を戻り、キンセツシティから今度は北に向かって歩いていく。そろそろ111番道路に入る頃だが、ここの砂漠にはどうしても捕まえなければならないポケモンがいる。
そう、ヤジロンである。鋼のエキスパートでありながら、思いっきり鋼タイプではないポケモンも使っているダイゴさんであるが、鋼以外の手持ちは基本的に古代の何かに関連したポケモンである。ユレイドルとアーマルドのような化石ポケモンも古代からのポケモンだと言えるが、やはり一番古代らしさがあるのはネンドールだろう。土偶とか埴輪とかそういう系統の古代感であるが、あれはあれで神秘的な中に独特の愛嬌があって好きだ。よって仲間にしない道理はない。
いずれ砂漠を通ることを考え、カナズミ出発前に予めゴーグルは用意してある。わざわざ都合良くゴーグルをくれるタイプのライバルは僕にはいないので、事前準備はやはり大事。
万が一遭難しても何とかなるように大量のおいしい水も買い込んできた。更に今回はメタグロスに乗って突入するので危険なこともあんまりないだろう。冒険はちゃんと帰ってこその冒険なので、安全策を取るのは重要なのだ。ただこれだけ準備をしても、やっぱり普通に危ない場所に入っていくのは怖い。危険な場所にもガンガン首を突っ込んでいける主人公達は凄い。どうしても勇気が出ないので、無理にでもテンションを上げようと思う。
「ゴーグルとおいしいみずは持ったな、行くぞ!」
自分で言っておいてなんだが、この台詞はなんか違う気がした。
生き残った者たちが行く所はどこだ。
その予測も立たないままに、スマホゲーは、人の時間を吸う。
少なすぎる交換アイテムのせせら笑いは、最後の足掻きとは思えなかった。
メモが呼ぶ最後の力。呼び起こすのはいつだ。
次回、機鋼戦士Zダンバル「マルチ駆ける」
君は、刻の涙を見る。
要約:育成イベントとは何だったのか。