【完結】習作断片=魔境現代奇譚   作:豚ゴリラ

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ズブの素人が思いつきで書いただけの練習作品。

それと最近男の娘もイケるようになりました。
このまま強くなっていって森羅万象でヌけるようになりたいです。
宇宙ってエロくない?


戦争奴隷エルフ

『お前は死んだ』

 

「えぇ……?」

 

白い部屋。

 

机も、椅子も、ドアも、花瓶も。

何もかもが純粋な白に染め上げられた空間に、二人の人間が向かい合って座っていた。

 

色素の抜けた長髪と、同色の切り揃えられた顎髭を蓄え、威厳に溢れた屈強な初老の男性。

 

対するは髪も肌も身に纏う貫頭衣も無垢な白に染められた、唯一青い瞳だけに色を宿す性別すら不明な十代半ばの子供。

 

その文言にさえ目を瞑れば、祖父と孫の心温まる交流にでも見えていただろう。

 

 

『お前という私好みの男は、つい先程自然死した』

 

「前半の情報いらないんですけど」

 

『そんないい男のお前に転生の権利を持ってきた』

 

「転生は嬉しいけど素直に喜べないのは何故か……」

 

しかし現実として、その男はどう見ても変態であった。

至極当然の感想をサラリと受け流し、何事もないように口を動かし続ける屈強爺さん。

子供は眉を顰めたまま男を睨みつけるが何処吹く風。

『生前』とは見た目も勝手も違う霊体を駆動し、それとなく右足で男性の足にちょっかいをかけようとするが――

 

 

『ふふ……お前からのアプローチは嬉しいが、今のお前に体はない故触れられんぞ』

 

「アッハイ、スミマセン」

 

『さあ、話を戻そう。お前は私の趣味によって転生する。当然……といえば語弊があるが、来世で有利に働く特典も付けておく』

 

 

ゴソゴソと懐をまさぐり、無駄に荘厳な装飾の輝くローブから質量保存の法則をまるっきり無視して一つのホワイトボードが取り出された。

 

えぇ……まじかよこいつ。と眼で語る子供を尻目に、同じく取り出した黒のマジックペンを大きく滑らせた。

白の中にある黒が描いたのは、ただ一言。

 

『さあ、ガチャれ。』

 

「―――――えっ」

 

『ガチャれ。』

 

「…………は、はは。ないすじょーく……」

 

『本気だ』

 

子供は激怒した。

必ず、かの邪智暴虐に見えるけど特典をくれる聖人になんとか取り入って、ガチャをSレア確定にして貰わねばならぬと決意した。

 

『レアリティとか特典毎によるメリットに大きな差はないから安心しろ』

 

「さっすが!いやぁ~神様分かってるぅ!」

 

それまでの戦慄は何処へやら。

安堵に包まれた声音でとりあえず神様を持て囃した。

神の視線が何処かギラついていることにも気づかず、ひとまず目の前に瞬間移動してきた白いガチャガチャマシンへ歩み寄る。

 

『ここは伝統に敬って一転生者三個までとしてもらおう。』

 

「そんな通販みたいに言わんでも……」

 

文言では呆れたように、しかし実際は踊りださんばかりに弾んだ調子で声にしつつ、唯一の黒色――レバーを捻り込んだ。

 

ガコン!と鈍い音を立てつつ、引き渡し口へと落下してきたのは金の玉。

手に握ってみれば何処か温かく、程よい重さだ。

 

コレはどうすればいいんだろうか?

……ガチャ、というからには、この玉の内部に特典が入っているということか。

 

「よっ」

 

ソレを握り込む。

生暖かく……なんかキモい!ナニコレ!キンタ●だ!

割らなきゃ(使命感)

 

「ふん!」

 

唸れ黄金の右手――!

バキリ!

 

「うおっ!眩し!」

 

割れ目から漏れ出た白い燐光が眼球を焼く!

イッタァイ!と悶える子供を他所にソレは急速に外界を侵食し、純白が一室を埋め尽くす。

 

『むっ―――……これは……!』

 

「むぅ!?あたりか!?」

 

『何となく言っただけだ。』

 

「………………。」

 

かくして、純白は五センチ四方の薄い平面体となり、子供の眼前へ収束する。

その表層に浮かび上がる文字とは――!

 

【戦争奴隷】

 

「…………うん?」

 

 

…………うん?

 

『―――あっ、忘れていたがマイナス要素が付いてくることもあるぞ』

 

「ちょっとまって」

 

『すまない、だがこのカードに設定されたメリットであればお前の肉体は著しく強化されるだろう』

 

「……なら、いい……のか?――……いや駄目だわ。なんだよコレ!ハードモードじゃん!?」

 

『お、次のカードが出たぞ』

 

「待って!!」

 

涙ながら叫んだ超極大音声での訴えを右から左に受け流し、何もしていないのにもかかわらず、勝手に排出されてきたカプセルが一人でに割れる。

 

【美少女エルフ化】

 

「………………………………。」

 

『そんなに筆舌に尽くし難い顔をせずともよいではないか。TSだぞ!性転換だぞ!素晴らしいじゃあないか』

 

「アッハイ」

 

次いでの日本文明性癖隙間攻め。

子供は困惑した。

神は歓喜した。

 

微妙に苦い感じの虫を噛み潰し、そこに安堵と若干の怒りと、そこそこあんまり笑えない失笑が入り混じった表情で立ち尽くす。

 

――pon!

 

そして再び勝手に出しゃばる特典カプセル。

最後の金玉を若干の恐怖が入り混じった視線で見守る(彼女)は、其処に現れた文字を視認して――思わず笑顔になった。

 

【テロリスト出身】

 

人とは、その人が想像しうる限界すらも無為に飛び越えられると、自分でもよくわからない心情になるものである。

TSエルフ戦争奴隷系テロリスト―――もはや闇鍋である。訳がわからない。

 

もう何も考えることのできない子供――少女となった青年は、霊体のくせに痙攣する声帯を駆使して言葉を紡ぐ。

 

「―――チェンジで。」

 

『駄目です。』

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――――――――――!!」

 

そうして、少女は生まれ落ちた。

 

 

――。

 

――――。

 

 

いつの間にか閉じられていた意識と瞼を大きく見開く。

 

生前暮らしたそこそこの作りのマンション、その自室はどこへやら。

周囲には赤錆に塗れた鉄の壁と、同じく劣化しきった鉄パイプのベッド。

 

なぜ、こうなったのか。

それは今の今まで脳内を駆け回った記録が全てを語っていた。

 

ひとつ、自分が死んだこと。

ふたつ、神に出会ったこと。

みっつ、特典とは名ばかりのしょっぱい品々を受け取ったこと。

 

そして―――

 

「おい!417番!出ろッ!!」

 

よっつ、申し訳程度の前情報のみ頭蓋に注ぎ込んで、本来あるべき居場所――戦争地帯の地下深くに建造された軍事基地へ生まれたこと。

 

加えて、転生に際して得られた知識で言えば、自分は8歳相当の女児でありつい先日この拠点へと拉致された――という設定になっていること。

 

ついさっきまでは二十代半ばの男の肉体で、死んだら無性の霊体になり、かと思えば8歳児の肉体。

本当に厄日だ。

 

「はぁー……きっつ……。」

 

養育施設に戻りたい……実際に経験した訳じゃないけど、作り物の記憶曰く、そこそこ充実した生活を送っていたと言うことになっている。

 

所詮それは偽物だが。そもそも昨日生まれたばっかりのこの体であることは果たして幸運なのか。

 

人間関係に悩むことのないことを喜べば良いのか、それとも最初からテロリストの道しか存在しないことを悲しめば良いのか。

 

おそらく後者だろう。

 

「おい!聞いているのか!?」

 

「は、はい!」

 

怒鳴りつける大声に体と喉を震わせる。

417番。

俺を表す記号。

名前は呼ばれることは無いのか。なにそれ奴隷っぽい。

 

まあそもそもこの身についた本名とて馴染みのない……言ってしまえば別人の名みたいなもの。どちらも己を指し示すものとは言えないのだから、結局同じことか。

 

ハァ。と2つ目のため息を小さく漏らしつつも、小汚い鉄扉を押し開けて声の持ち主に会いに行く。

 

「遅い!呼ばれたのならばどんな理由があろうともすぐに返事をしろッ!」

 

ビクッ、と撥ねた体を気合で抑えつつ了承の返事を返す。

何だこのゴリラ……ちょっと怖すぎだろ。

 

角刈りの黒髪と、顔の表皮を斜めに横断する大きな傷跡。

浅黒い肌が形作るその凶相も相まって実に恐ろしい。

 

「今日より戦闘訓練を始める!ついてこい!!」

 

「はい……」

 

カツン、と黒い革靴を打ち鳴らして踵を返す男の背中を慌てて追いかけ、どこか寂れた雰囲気の鉄の通路を踏みしめる。

 

「スケジュールの説明をする。一度しか言わない、よく覚えろ」

 

「はい」

 

「朝は4時起床。7時まで工作訓練、後に朝食。7時10分から15時まで格闘訓練、15時から20時まで銃器訓練、そして夕食を済ませて20時10分から24時まで座学、後に就寝。」

 

目を剝いた。

嘘だろう、という言葉が喉元まで迫り上がってくるのを必死に堪え、代わりにか細く震える吐息を漏らす。

 

自由時間は欠片もない。

食事睡眠時間も、幼子には限りなく不可能に近いほどに困難。

此れは正しく奴隷の身分として扱われているのだろう。

 

「そのまま3年だ。泣き言は許さん。甘えも禁ずる。ただ、俺達の駒となれ。」

 

地獄かな?

これは中々クソ指数が高い。

こんな第二の人生求めてない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

『8月10日 天気、不明』

 

今日から記録帳を付けることを教官に命じられたので、ひとまずソレらしく第1ページを使用する。

しかし昨日始まった訓練がとてもつらいので、もう寝ようと思う。

 

 

『8月11日 天気、不明』

 

教官は賢いゴリラである。

 

 

『8月13日 天気、不明』

 

同郷の少年から脱走計画の話を聞いた

 

 

『8月14日 天気、ゴリラ』

 

第13練兵所にて集会

 

 

『8月16日 天気、チンパンジー』

 

どうやら、この日記帳は誰にも閲覧されていないらしい。

少しばかり命をかけた実験を行ったが、教官含め周りの大人達にはなんの変化も見られない。

大人から渡された日記帳だったがために、少年少女の人心を把握するための道具かと思っていたが……違ったようだ。

ちょっと……いや、かなり考えなしに試したけど結果オーライ。

偽りの集会(一人)にも事実確認の人員も機械類も一切無かったので、一先ずは安心しておこう。

 

『8月17日 天気、オランウータン』

 

大人たちに気付かれないようにそれとなく施設を観察してみたが、脱走はまず不可能と思われる。

どこへ行っても死角が無いように監視カメラが配置され、警備員は皆重装備。

部屋を区切る門にはそれぞれに電子ロックで施錠されており、壁や床、天井に至るまで合金で作られている。

自室は鉄錆塗れなのにソレ以外が堅固過ぎる。

これは逃げられんなぁ……

 

『8月18日 天気、サル』

 

とりあえず普通の日記帳として活用しようと思う。

毎日格闘、銃器、工作とクソみたいにイベントがてんこ盛りだが、印象に残った事や良かった事などをここに記す。

 

『8月19日 天気、拳の雨』

 

今日は387番――おそらくフランス系の少年とタッグを組んでの格闘訓練があった。

彼は今年で11歳になり、ここでの訓練は二年目らしい。

短いクールタイムで聞いた事だが、ちょうど二年間ピッタリの訓練を完了すると戦地への配属――『出荷』が行われるそうだ。

彼も4ヶ月後にはロシアに向かうらしい。

せっかく仲良くなった――言うなればはじめての友達が、出会った瞬間には別れが決まっている。

なんだか、ちょっと寂しい。

 

『8月22日 天気、工作日和』

 

今日の工作訓練で218番と387番、110番と一緒にグループを組んで電気式ワイヤートラップを作成した。

途中で起きた些細なミスで電気バリバリの配線に触れてしまったが、エルフボディのおかげか何のダメージも受けなかった。すごい。

110番曰く、前の417番も同じことをしたらしい。すごい。

今も世界の何処かで戦っているのだろうか……。でもテロリストだし寿命短いだろしなあ。

いつか、会ってみたい。

 

『9月5日 天気、くそゴリラ』

 

今日は教官がくそゴリラだった。

お前……いくらなんでも耐久訓練とか言って電気流すのはおかしいよ……

エルフじゃなかったら死んでたぞゴリラ。

 

『9月6日 天気、くそくそゴリラ』

 

精鋭兵士育成組に加入させられた。

我ながら人間離れした戦闘能力を持ってると思っていたが、昨日見せた耐久力が決め手になったらしい。

訓練増えるのやだぁ!働きたくない!

だめ?だめですよねぇうんち!

 

『11月12日 天気、たぶん雨』

 

気付けばかなりの日数が経過していた。それも無駄にハードな訓練が悪い。

それはそうと今日、387番が『出荷』された。

この施設にいる時点で、近い将来に別れが来ることは覚悟していたが、やっぱり寂しい。

 

 

■■

 

『a月b日 天気不明』

 

今日、教官から鉄造りの短槍を支給された。

時代錯誤に過ぎるソレに思わず唖然としていると、俺の身体能力と白兵戦の技術を活かすために特別に作られたものだと教えられた。

人外クラスの俺が十全に扱うためにかなりの額を掛けて製造された短槍。確かにつよそうである。

しかし何故そんなにも手間を掛けるのか疑問に思っていると、俺には現段階でも他の子供たちとは違う、キチンとした戦術的運用が可能な『兵器』らしい。

これは武器強化的なサムシングなのだろうか。

とりあえず明日からはエルフ戦士ムーヴを鍛えたい。

 

■■

 

『x月y日 天気ナイフ』

 

どんどんケルティック(マジキチ)風に育っていく俺を見てどう思ったのか、今度はナイフで銃弾を切り落とせと言われた。頭おかしい。

いくらケルト魂を掲げるエルフでもソレは無理だと言ったら、やるだけやれと言われて拳銃で撃たれた。頭おかしい。

しかし意外となんとかなるもので、普通に目で見てから対処余裕だった。頭おかしいの俺では?

ちなみにこんな感じの人間は戦場にちょくちょくいるらしい。人間やばくね?

教官からはお前一人でも要塞を潰せるだろうとお墨付きをもらった。でも首に取り付けられた制御装置のせいで、この訓練施設とは名ばかりの要塞からは逃げられないんだよなぁ……。

 

 

■■

 

『』

 

今日、110番が死んだ

 

■■

 

『o月a日』

 

最近はあまり日記を書けていない。

立て続けに友人達が戦地へと『出荷』されたこともあって、気分が落ち込んでいたせいだ。

 

この前も書いたが、110番が耐久訓練で死んだらしい。

《らしい》というのは、耐久訓練は他とは違い教官との一対一で行われ、ほか訓練生の視界の外で行われるためだ。

……ほんとに、耐久訓練で死んだのか?

それにしては……彼の遺体からは変な感じがした。

……言葉としては書けないな。あれは何なのだろうか。

 

■■

 

『o月d日』

 

最近、やけに胸騒ぎがする。

原因はわからない。俺の『出荷』はまだしばらく先の事だし、後輩達にも異変はない。

かといって、創作にありがちな奴隷の大量処分というには違和感がなさすぎる。

……違和感がないのが問題なのか?いや……うーん。それも何か違う気がする。

とりあえず注意しておこう。

 

■■

 

『o月g日』

 

やたらと大人達が騒がしい。

ああ、物理的にじゃなくて感覚的な意味で。

表面はいつもと何ら変わらない無愛想の極みだが、どこかピリピリしているようだ。

警戒心がとてつもなく強まっているように感じた。

何なんだろう?ついに治安組織のガサ入れかな?

でも、胸騒ぎが収まらない。

 

■■

 

『』

 

くそ、クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ。

 

クソったれ。なんで皆を殺しやがった。

教官を名乗るのなら、子供を導いてくれよ。

なんであの子達が戦わなくちゃ行けなかったんだ。

どうして俺を戦わせてくれなかったんだ。

俺が、俺なら―――

 

 

■■

 

 

『417番、出ろ』

 

「――はい」

 

ギシリと重苦しい音を鳴らし、鈍重な鋼のドアを押し退ける。

三年前とは違う、清潔な印象を受ける個室を一瞥した。

いい成績を残した者は、質の良い待遇を受けることができる。

己は人外。故に、最も優れた兵士となるのは当然であり、必然待遇も最も良い。

 

……だからどうした、という話だが。

 

 

 

 

 

 

 

この独白かっこ良くない?

やっべ!なんかクールキャラっぽい!

エルフさんこれからクールキャラでやってくわ!

可愛い女の子達から「417さんかっこいい!」「素敵!」「抱いて!」って言われること間違いないですね!

 

「おい、顔が緩んでるぞ」

 

「やば!」

 

「……ハァ」

 

おっと!その間抜けなゴリラを見るような瞳はやめてもらおうか!ゴリラはお前だぞばーかばーか!

 

「締めるぞ」

 

「やばたにえん」

 

チッ、チュ!

教官の舌打ちに合わせてリップ音を鳴らす。

 

 

――アイアンクローをされた。

 

 

 

 

 

ヒリヒリと痛む頭を抑えながら、俺を先導するゴリラの背中を追いかける。

気分はさながら母ゴリラを追いかける子ゴリラのようだ。

 

「……………。」

 

無防備な背中……。

 

 

……一瞬。

ほんの少しだけ脳裏を掠めた怨念を無理やり抑え込み、少しばかり小さく見える背を追いかける。

 

――足元にバナナの皮を放り投げたい。だめ?だめですよねぇ……。

 

 

 

コツリ、コツリ。

ただ硬質な音が廊下に反響し、己と教官の口が開かれることは無かった。

 

――そのまま、目標地点――外部、地上へ繋がる巨大なリフトの目前に至るまで鉛のような空気は変わらず。

 

リフトに乗り、『出荷』の時を待つ。

気分は荷馬車に載せられた牛のよう。

とりあえずつぶらな瞳で教官を見つめた。

 

目を逸らされた。

つらたん。

 

「……本日、7月21日をもって『417番』の教育を修了する。今後の扱いについては地上に居る担当者に聞け。以上」

 

「お世話になりゴリラ」

 

「―――んんっ!では、達者でな。417番。長生きすることを祈っている」

 

そう言ったきり、さっさとこちらに背を向けて歩いていってしまった。

うーん……何だかんだ言っていい人だよなぁ……。

こんな口聞いても変わらず接してくれるし、結構気を遣ってくれる。

そんな人間だからこそ俺も、他の子供達も彼を慕うのだ。

 

「…………。」

 

甲高い電子音が響く。

視界の端にはリフト起動を表す緑のランプ。

急速に浮上してゆく視界。

 

「ばいばい。おとうさん」

 

 

 

 

 

 

「……生き残れよ、バカ娘」

 

 

 

そうして、俺は世界各地の戦地を渡り歩く事となる。

争いを彩る――というよりも、争いを生み出す兵士の一人として戦い始めた。

 

所属する組織の名は『意義ある痛み(Meaningful pain)』。

世界中に数え切れない程存在する『汚れ』を、強制的に人間社会から排除する『掃除屋』である。

ここで言う『汚れ』とは、早い話が悪人的な存在を指す。

意味が広すぎる?それはその通り。ぶっちゃけかなり曖昧だ。

 

例えば、独裁政治によって人民を虐げる政府の役人。

例えば、麻薬によって善人も悪人も食い物にして私腹を肥やす商人達。

 

時には善なる目的のために悪行を積み重ねる存在も対象になることがある。

例として挙げれば、二つに別れた国を統合するために、敵対勢力を根切りにしてしまった革命家。

他にも決して治らぬ病を癒やす為、人道的観点からは『外道』と称されるであろう実験を行う科学者も対象となった。

 

そうそう、この科学者に関しては実にホットな話題だ。

今この瞬間、俺がナメクジのように這い蹲っている元凶さ!クソッタレ!

 

この腐れ科学者の実験のせいで何処もかしこも意思を持った植物まみれ!右を見れば同士たる上官殿が蔓に首を絞め上げられ、左を向けば敵対勢力である科学者が雇った用心棒が茨に抱擁され真紅に染まった愛の噴水を撒き散らす。

はっはー!地獄だなぁ!

 

……んん、話を戻そう。

 

そんなこんなで『殺し』を生業とする血腥い正義の味方のようにも見えるが、取る手段は一律して『殺害』のみ。

そんな組織が国際社会で受け入れられるはずもなく、当然のように『違法組織』の一角に名を連ねている。

まあ自身から犯罪の種を生み出すわけではないので、俺の精神衛生上はまだ優しいもんだ。

 

はい!回想(現実逃避)終わり!

 

「おわったぁあaaあ?」

 

「もう帰ってもいいかな?」

 

「daあめ」

 

うにょうにょと触腕の撓らせバツ印を作る怪物。

……そう、怪物。

比喩でもなんでも無い。この現代で、明らかに物理法則に喧嘩を売っている正真正銘のファンタジックなモンスターだ。

恐らく5メートルは在ると思われる高い背丈に、茨や樹木を束ね撚り合わせ形作られた緑の巨人。

顔があると思わしき場所にはただ空虚な虚が佇んでいる。

ちなみに自我を有している。

 

「ながiyoー?」

 

「帰らせてくれたらやめる」

 

「eえ?yaだなa」

 

驚くことに会話さえも成立するコイツはさっき話した科学者が造り上げた生物兵器……らしい。

コイツを、量産実験が行われる明日の朝までに処理するというのが今回の任務。

 

しかし……これが科学によって作られた兵器?それにしてはやたらとファンタジーすぎないか?

こいつ明らかに物理法則を無視した成りをしてるし自我あるし、しかも植物操作できるし。

 

「きmiもできるでsyo?」

 

「できるけどさぁ……俺は特殊だからなぁ」

 

「ワタsiも特殊daよ?」

 

「ああ、確かに」

 

ははは、と二人?して笑う。

互いの間に漂う空気は弛緩しており、先程までこの土地――『研究所』内部の中庭を埋め尽くしていた剣呑さは何処かへと旅立っていた。そのまま帰ってこないでほしい。

 

「じゃa、殺しあoっか!」

 

帰ってきたわ。旅終わるの早くない?もうしばらくゆっくりしてて?むしろ帰ってこないで?あ、無理?そうですよね!

 

「あははhaは!」

 

巨人の右腕が大きく振り上げーー次の瞬間、大地が砕けた。

 

「なん、とぉ!?」

 

轟く雷鳴の如く、甲高く鼓膜を乱打する。

ドォン、ドォン、ドォン!右腕左腕、数秒の隙間に幾十度も交互に地を鳴らし周囲の建造物は微塵と成る。

 

「がんばeー!」

 

左にステップ、右にジャンプ。

微かに残った瓦礫を足場に反転し、中を舞う瓦礫共を踏み台に中空を駆け上がる。

地上は正しく地獄の入り口と化していた。

左右前後、何処を見渡しても人の痕跡は破壊され、代わりか大小様々多種多様な植物が狂った様にのた打ち回る。

 

「まずっ!」

 

体の下、周囲数十メートルの土壌が盛り上がる。

その光景には見覚えがある。何故なら俺自身もやる事があるからだ。

それはつまり、面制圧――一気に腐るほど大量の木を生やせばこうなるのだ。

 

「―――!」

 

次の瞬間、視界の隅々をゴツゴツとした茶色が埋め尽くす。

 

メキメキメキ!

物理法則を無視した異常な急成長。

鈍く軋む音を響かせながら、多様な木々が小柄な肉体を追って縦横無尽に駆け巡る。

 

「やるしか無いかぁ……!」

 

背部の固定具をスイッチ一つで取り外し、鋼鉄の短槍と――長大極まる銃身を誇る黒塗りの拳銃に視線を向けたが、すぐにホルスターに戻した。――今回は不要だろう(・・・・・・・・)

機械仕掛けの槍を構える。

テロリストとして戦い続けて早5年!

この程度の修羅場なぞ幾らでも乗り越えて来たのだ、「戦うの怖いですぅ」なんて漏らしてたクソ雑魚ムーブをキメてたのは昔も昔。

そんなクソみたいな心構えはとうに投げ捨てている!

 

「ああaあ■■■■あ■……」

 

不規則かつ意味不明な軌跡を追って幾百条の枝が殺到する。

そのどれもが人を殺すのに十二分な威力と速度を有しているが、しかしエルフを殺すには力不足!

 

一つ一つの先端に右手に握る短槍を重ね、反らし、砕く。

秒間百突。

全方位へ向け只管に連射を繰り返す。

 

「そぉい!」

 

枝の一つを蹴り飛ばし、その反動で巨体を串刺しにせんと跳躍した。

一瞬の空の旅を超高速で楽しみ、槍を構え、思いっきり身体を引き絞る。

ギチチチ、と身体が軋み――その圧を全て槍へ込め、渾身の一撃を『巨人』へと食らわせた。

 

「aAaaaA!?」

 

「もういっちょぉ!」

 

身体の半ばまで突き刺さった短槍から手を離して、空中で脚を振りかぶり――

 

パァン!

 

――短槍の石突を強烈に蹴り付けた。

切っ先から一尺は体内に侵入していると言うのに、そんな事をされて無事なはずも無い。

抉られていた彼の脇腹は綺麗に消し飛び、緑色の肉無き断面を見せつけていた。

 

すぐさま背部へ移動し、地面に刺さった獲物を回収し再び構えた。

 

すぐに間を置かず、幾千の枝葉が切っ先をこちらに向ける。

 

「この程度!今更効かんぞ!」

 

鋼が煌めく。

あらゆる災禍を、己の牙を持って尽くを払い除ける。

一秒、百突き。

二秒に三百の風を払う。

五秒、千の銀閃を持って結界を張り巡らせた。

 

突き、払い、薙ぎ、斬る!

ただ其れのみ。其れだけを考えれば勝てるのだ!

 

「AaaAaaaa■■■aA■■■■ッッッ!!!」

 

ごぽり。

 

「……は?」

 

百を超え、千に迫る枝葉の隙間から届いた妙な音。

まるで泡が破裂する様に、或いは過分な栄養を与えられた有機物が腐って発酵するかのように。

 

「下か……!」

 

大地が沸騰した。

そして裂けた。

咄嗟に近場の枝を蹴り抜き、一足に30メートルを跳躍する。

数瞬の間を開けて、元いた場所が大きな大きな樹木に削り取られていった。

 

「な、なんつーデタラメ……俺にもできねえぞ……」

 

それは成長するという過程を省き、生まれた瞬間から巨木という異常存在。

樹高百メートルという巨体を表すまで掛かる時間は数秒か。

まさに異常。

 

……けれど、そんな異常現象を現代の科学で産み出された被造物が引き起こせる筈もなく。

よしんば執念と偶然が掛け合わされ奇跡が起きて、それが連続したとしても、何の代償もなしに引き起こせるほど世界は優しいものではない。

 

「やっぱりか」

 

「AaaaAh……あ……あは……!」

 

「……惨い、な」

 

トン。

軽い音を立てて、枯れた枝に埋め尽くされた地上に着地した。

最初と同じ構図だ。

しかし、特に怪我をしたわけでもない俺とは違い、巨人の姿は見るも無惨なナリへ変わり果ててしまった。

その巨躯は萎み枯れ果て、所々腐り落ちてしまっている。

 

「あ、あ……mo…う、オシmaい……かぁ」

 

「最初から、分かってたのか?」

 

「u、ん。元々、明日の朝には苗床に……なって死んでる筈だった、から。だから、まだ動ける今のうちに出し尽くそうと、思って」

 

拙かった言葉が、徐々に滑らかに紡がれ出した。

枯れ果て萎んだ肉体となって、なぜ今なのか。

……きっと、全部を出し尽くして、疲れ果てて、余分な力が抜けたのだろうか。

 

俺にも経験があるぞ。

 

嘗てのクソ上司に対して、この口調じゃまずいから無理矢理敬語を使ってた時期があってな。

とはいえ、ぶっちゃけ基本的に殺意を抱きまくってるせいで言葉にもソレが現れてて……まあ、コロシアイになったわけですよ。

なんやかんやで全力の殴り合い(12歳幼女対35歳男)をして、殺意を抱くのも億劫になるぐらい疲れたら普通に会話ができたのさ。

 

「へ、ぇ……そうなん、だ」

 

でもその出し切った後の虚脱感も、余分な血や力が抜け落ちたからこその身軽な感覚も、とても気持ちがいいものだろう?

 

「うん。確かに」

 

気付けば、言葉に混じっていた筈のノイズさえも消えていた。

ほぼ人と変わらないほどに流暢になった言葉と、幼気な少年のような声音。

しかし対象的に急速に劣化していくその巨躯は、止まることなく迫る終わりを示唆しているようだ。

 

「ねぇ」

 

「……なんだ?」

 

「楽しかったよ」

 

「そっか……」

 

「あり、が――とう――」

 

サラサラ、と。

炭のように水分の抜けきった身体の端から砂へ還り、数秒の時間を掛けて完全に宙へ溶けた。

 

懐から取り出した携帯端末を操作し、任務達成を知らせる電文を本部へ発信する。

 

『植物兵器EB-417、排除完了』

 

 

 

 

ほぼ毎回、こんなノリで殺し合って、ゴミのように死んでいく同士(大体クソ)と敵(殆どクズ)の死体を踏み越えながら生を掴んでいる。

なんせ、任務失敗=死or捕虜だ。そりゃあ必死にもなる。

仮に捕虜になったとして、基本的にはクズしかいない敵の元で普通に生きることが出来るとは思えない。

 

そんな生活ももう五年。

今年で(多分)16歳になる。

 

この年にもなれば、やることも大体パターンが決まっている。

 

1、小さな国の紛争地帯で争いを止める(物理)。

2、平和な大国にテロリストとして参戦。

3、汚職に塗れた政治家共を暗殺。

4、治安部隊に追い掛けられる。

 

楽しいな!(白目)

こんな日常だが、コレはコレで趣深く……は無いですね。うんこかな?

本部や支部で待機する時以外、大体衣食住はクソの化身。

くっそまずいレーションと寝袋とテントで野宿!

 

日本食が恋しい……中華料理の辛味も味わいたい、甘味を口いっぱい頬張りたい……ああ!クソ!

 

本部にある自室の備え付けのベッドの上でビタンビタンと跳ね回る。

 

「エルフ、16歳の秋。故郷の食事に()焦がれて()になる……ふふっ」

 

あ!まって!石を投げないで!

だってほら!三食クソマズ軍用レーションなんだよ!?ちょっとぐらい茶化してもいいでしょ?ね?

 

「くっ……暴れたらお腹すいた」

 

くてー、と身体を投げ出す。

以前、前世では当たり前のものとして当たり前に食していたが、今となってはその当たり前が恋しくてたまらない。

肉じゃが、カレー、フライドポテト、ハンバーガー……どれも素晴らしい食事だった。

 

「……報酬として要求したらダメかな……」

 

担当者であるアイルという無骨な男の顔を思い出し、即座に無理を悟る。

だってあいつ、超合理主義だもん。

軍用レーションとサプリメントさえあれば一切問題ないしそれこそが理想という変人だ。

きっと、ジャンクフードを要求した所でまともに取り合ってはくれまい。

 

「ああ、でも……あの粗雑でジャンクな油っこさを味わいたい……」

 

……言うだけならタダか。

一先ず言うだけ言ってみよう。

ジャンクの魅力には勝てない。

 

《緊急事態発生!緊急事態発生!!》

 

「ぬわぁ!?」

 

《我々は襲撃されている!繰り返す!我々は襲撃されている!A区画、B区画は既に制圧された!総員即座に戦闘配置につけ!》

 

「うっそぉ……」

 

今俺が居る本部は徹底的に隠蔽されており、俺達戦闘員が本部に来るのだって目隠しを施し聴力に嗅覚を封じた状態で、尚且徹底的に情報漏洩対策を施された特務隊が移送するしか移動法が存在しない。

それ故に一般所属員は何処の国に存在するのかさえ知りもしない。

 

「装備、オッケー……だけど」

 

まずい。

マズすぎる。

何がマズイってこんな状況から巻き返せるほどの戦力がないのだ。

ぶっちゃけどいつもこいつも此処が見つかる筈がないって高を括ったせいで碌な戦闘員が存在しない。

使い物になるヤツなんて、俺を含めて30人そこら。

そして、こんな違法組織に攻め込んでくる敵が、少ない人数で攻め込むはずがない。

 

……つんだ?

 

《何としてでも食い止めろ!我々はこんな所で止まるわけには――う、何だ貴様!何故此処に――!?》

 

「あっ(察し)」

 

ガガ、ブツン。

僅かな余韻を残して放送が終わった。

……放送室の所在地は本部の中枢に位置する。

つまりアレだ。

組織!制圧完了☆!

 

 

 

 

「逃げなきゃ……!」

 

 

『こちらベータ、組織のトップである『先導者』を確保した。繰り返す、『先導者』を確保した。』

 

『作戦本部より全部隊に次ぐ。監禁されている少年兵たちを保護せよ。』

 

『こちらアルファ、了解した』

 

『こちらデルタ、了解しました』

 

部屋の前の隠し通路、その入口から無線の会話が聞こえる。エルフイヤーの聴力はすごいのだ!他人の受話器越しの会話も聞き取れるぞ!

 

つらたん(絶望)

 

俺がエルフなの知ってる?国家権力には近づきたくないの。実験動物になりそうで!

だからこっち来ないで?部屋スルーして?

 

そろそろ一般人として民衆の中で生きたいの。

見逃して?

 

「おい、こっちから物音がしたぞ!」

 

「この部屋にいるのか?」

 

「鍵が閉まってるな……よし、刺激しないようにそーっと、そーっと開けるぞ。間違っても銃でぶち抜くんじゃあないぞ」

 

オフィスの隠し通路からしか入れない少年兵たちの寮。

その内部から男たちの声が聞こえた。

というか、俺の部屋の前から聞こえる。

 

「………逃げよう」

 

ひとまず何も考えず、床にある隠し脱出口から逃げることにした。

俺の冒険はこれからだ!(絶望)

 

■■

 

 

世界、最も発展したという声高き米国。

成熟した町並みという輝かしい表の光、その対極に位置する暗黒面。

つまり仄暗い裏側には、深く入り組んだ薄汚い路地裏も含まれる。

 

そんな裏側にも下水道は建造されており、必然的に整備工の入り口たるマンホールも無数にある。

 

ズリ、ズリ……ガコン!

 

鈍い音と共に赤錆の浮く落し蓋が開いた。

 

同時に、軽やかな動作で飛び出すのは……そう、俺!

戦争奴隷エルフです!テロリストはやめました!いやぁ、平和が一番!

 

「ふぅ……すごい臭かったぁ……」

 

ぐしぐしと鼻をこする。

 

組織に隠れて造り上げた脱出路は地下に張り巡らせているが、やはり一個人が設計するのは無理がある。

故にすでにあるもの――下水道を利用した。

その御蔭で、衛生環境と引き換えではあるものの安全な旅を提供してくれた。

 

「さて、と……」

 

何処の所属かは知らないが、おそらく正規の兵士に制圧された時点で傭兵としてでも働けないだろう。

特記戦力だった俺の情報なんて向こうに渡ってる。間違いなく。

その上、一般人として生きるにもいくつもの問題が立ちはだかる。

まず国籍不明、身分証明不可、未成年(国に依る)、所持金ゼロ!あと下手したら警察機関にも追われる!

というかココ何処の国だ!

 

……やべぇよ、何もねえよ。リアル家なき子(ハードコア)だよ。

 

 

 

どうしよう。

俺は悲嘆に暮れ、まずは道の端で土下座物乞いをすることにした。

 




続かない。
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