【完結】習作断片=魔境現代奇譚   作:豚ゴリラ

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練習三回目なので初投稿です
評価バーが赤に染まって困惑しました
胃がイタイ……とりあえずかき揚げ……じゃなくて書き上げました
困ったら乳首占いで書いたのでガバってるかもしれません ゆるして


ポンコツ社畜兵士エルフ

カチ、カチ、カチ。

広い室内に秒針の音が固く響き、赤い絨毯に吸い込まれて消えていく。

全体的に黒と白に統一された高級感あふれる執務室で、俺は静かに正座していた。

そんな俺をもはやお馴染み、そこはかとなくゴリラっぽい雰囲気を出すローランド社長が見下ろしている。

 

「さて、417番……いや、シーナと名付けられたんだったか。何故こうなっているのかわかるかい?」

 

「俺のエルフ力が高すぎるからかなぁ」

 

「……はぁ」

 

「おっと、それはマズイ」

 

事あるごとにアイアンクローで俺を鎮めようとするのは良くないぞ!

この可愛いお顔に跡がついたらどうしてくれるんだ!ぷんすか!シーナ怒っちゃうぞ!

 

「チッ」

 

「あのさぁ!舌打ちするのは良くないですよ!そんな事するから社長みんなに嫌われ――」

 

――アイアンクローされた。

 

 

 

「さて、力しか無いシーナくんには分からないようだから、今回の問題点を教えてあげよう」

 

「はい」

 

「……やりすぎなんだよ、キミ」

 

「えぇ~?やれって行ったのは上司くんですよ?俺は命令に従っただけ――」

 

「依頼内容、『各PMCには反政府レジスタンスの支援に努めてもらう』。主に市街地を占領する政府軍を撃破し、政府の持つ兵力を削っていく、というのが今回のミッションだった」

 

東南アジアにある『アルヘス国』は長年の独裁政治を執り行い、高度に発展はしたものの人民達は常に搾取され続けていた。

あの市街地の発展とてハリボテの栄光だ。

だからこそ、自然的な流れとして人々は武装蜂起した。

彼らに依頼された複数社のPMCは、レジスタンスが首都にある大統領を拘束するまでの露払いをする――はず、だった。

 

「そこで何を思ったのかキミは単独で、まだまだ兵力を削れていないにもかかわらず首都中心部へ突貫し、なぜか護衛隊ごと大統領を潰してしまった」

 

「わぁ、俺つよぉい」

 

「……明らかな越権行為、契約違反だ」

 

社長は重々しく呟いた。

しかめっ面は更に影を濃く落とし、目元は昏さのあまり闇に飲まれて見えなくなった。

 

ホラーかな?社長こわ……今度バナナ投げようと思ったけどやめるわ……。

 

いや、でも俺もちょっとまずいかなって思ったんですよ。

流石に一傭兵が完全に仕事内容から逸脱して動いてもいいのかなって。

けど仕事内容を遵守する場合じゃ明らかにレジスタンスや傭兵の命が無為に落とされる。

だから俺がまるっと潰してみんなの命を……ね?ほら、この言い訳じゃあダメですか?

 

「ダメだ」

 

「あっ、そっかぁ」

 

「……はぁ」

 

社長は静かに椅子へ向かい、ギシリ、と軋む音を立てて腰掛けた。

頭が痛い、と言わんばかりに目頭を揉む姿をみて、若干申し訳なくなった。

 

「……今回は、向こう方は悪い印象を受けなかったようだ。むしろ報酬はかなり多くに支払われた」

 

「マジ?俺がやったの正解じゃないですか」

 

「今回はたまたまだ。偶然、相手が『子供が悪の首魁を打ち倒す』という事実を手に入れたから良かった。分かりやすい宣伝文句にも使える。『アイツは無垢な子供でさえ殺意を覚える悪魔だ』とな」

 

「ははーぁ、それで周辺国から印象を操作するんですねー。賢い」

 

思いがけず彼等への助力を為せたからこそのお咎めなしで報酬アップ、と。

……そう考えると今回はかなりのレアケースになるのか。

うーん。やっぱり命令に従ったほうが角は立たないし丸く収まりやすのかなぁ……残念。

エルフ無双とか楽しかったんだがなぁ。

 

「分かって貰えたようで何よりだよ。……そして、命令違反の社員に対してこのままお咎めなしというわけにも行かない」

 

「ヴェ!?」

 

「お仕置きだ」

 

椅子に座る社長の姿がブレたと思えば――すぐ目の前に社長の顔がある。

え!?ウッソだろ!お仕置きってマジ!?まさか俺に酷いことをするのか!?エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!いやん!俺まだ16さ――

 

「うん?」

 

カチャリ。

一瞬で身体の重みが変わる。

何事かと思えば普段の戦闘用スーツの上にいくつかのベルトが巻かれ、背には大きなバッグが鎮座していた。

そして両手には手錠。

 

「連れて行け」

 

「了解!」

 

「うん?」

 

知り合いの屈強な男兵士――確か名前はジョンだったか。彼に俵担ぎで抱えられ、スタコラサッサと通路を小走りで駆けていく。

右に左にと幾つかの角を曲がっていき、一分足らずで大きな飛行場に連れて行かれた。

早すぎる流れに唖然としていると、ジョンは俺をポーン!と放り投げ、輸送ヘリにスタイリッシュ運搬を果たした。

俺は荷物だった……?

 

「おう!シーナ!こっからは時間勝負だ!しっかり捕まっとけよ!」

 

「ヘ!?」

 

キュイイイイイン!

ヘリコプターのローターが命令を受け超高速で回転し、少しずつ機体が持ち上がっていく。

 

「ちょっと待って!お仕置きってなんなんだ!?」

 

「クーデターで死にそうな王国にささっと助けに行って!反乱分子をぶっ潰せ!頑張れよ!」

 

「待てジョン!俺の武器は!?」

 

「後でAmozonで送る!グッドラック!」

 

阿呆か!?

いくら何でも通販で送るとか無理があるだろ!?

え?それもお仕置きの内?

社長キレすぎだろ……こわ……。

 

 

『そろそろ目的地のヘステル王国だ。準備しておけ!』

 

「はぁい。ていっても着の身着のままだからすることねぇぞ……あっ、そういえばこの手錠っていつになったら外れるんだ?ていうか何故手錠?」

 

『ヘリから降下した勝手に外れるぞ。あと何故手錠なのかといえば……社長の趣味だ』

 

社長こわ……(ガチ)。

変態だったのかあの人……もう不用意に近づくのやめとくわ。

 

『ドアオープン!』

 

ヘリの外――先程までは海色一色だった視界に、いつの間にか広大な陸地が写っていた。

『ヘステル王国』は海に面する国だったのか……食料も現地調達らしいし、途中でカニでも食おうかな……へへ。

 

『さあ!到着だ!行って来い!』

 

「シーナ、いっきまーす!」

 

 

 

 

 

「それがどうしてこうなったんだ?」

 

右を見る。銃弾の雨を曲剣一振りで切り抜ける細マッチョの変態。

左を見る。何故か服を纏わず、両手に持った二丁の固定機銃(・・・・)をぶん回す巨漢の変態。

 

上空から降下し、パラシュートによる補助を受けて降り立ったのはのどかな草原だった。

王室から指定された地点であることを確認し、一先ず今回共にミッションを熟す向こう側の人員を待っている――筈だった。

 

数分もせずに現れた二人の男は何故か此方に見向きもせず、お互いを見つめ合ったかと思えば唐突に殺し合いを繰り広げた。血気盛んという次元ではない。

 

「アラスウウゥゥ!ナンで裏切り者のテメェがいやがンだァ!」

 

「黙れ、セイジ。大局も見れぬ愚か者が」

 

「……うーん」

 

何だろうか、この。

俺、どうしようもなくアウェーだ。

でもな、そもそもクーデターを収めることが仕事のはず……。

とりあえず落ち着かせる(物理)か。

 

「そぉい!」

 

「グム!?」

 

一歩、足音を立てぬよう靭やかに跳び立ち、巨漢の背後から首を狙う。

そう、伝統の『首トン』である。

一瞬で意識を落とし、崩れ落ちる巨体をそのままに次の相手――未だ呆然としている黒スーツを着た青年に飛びかかった。

 

「何――!?」

 

「おるぁ!」

 

鳩尾一閃。

滑らかな体重移動によって放たれる熟練の正拳突きで、血気盛んなあなたを安らかな夢の旅路へご案内いたします!

 

「ぐっ……」

 

ドサリ、と鈍い音を立てて倒れ込む青年を咄嗟に抱えあげ、申し訳程度に頭を庇う。

その間5秒足らずである。

とりあえず『異種』と思われる二人を鎮圧した俺は彼等を日陰に運び、暴れないように亀甲縛りを施した。

 

 

『a月p日 天気 バナナ』

今日の訓練では『異種』同士での格闘を行った。

とはいえ『異種』とは何なのだろう、よくわからなかった。

教官(ゴリラ)曰く『人類の突然変異種』らしい。

途轍もなく強靭な肉体を持っていたり、超能力を持ってるスーパーマン。

ケモミミ美少女も実在するのだろうか?むしろ教官はゴリラっぽい『異種』ではないのか?

そう聞いたらアイアンクローされた。

 

 

「ここ、は?」

 

「ぐ……俺、は……一体……?」

 

「おお、起きたのか」

 

午後12時ジャスト。

よほど正確な腹時計を持っているのか、二人同時に起き上がった彼等の前に川魚の串焼きを持って近寄る。

 

「オマエは……ああ、PMCから派遣された『異種』か」

 

「ふん。こんな子供にさえ頼らねばならんとは……我が国も落ちたものだ」

 

「その子供に負けたんだぞゴリラ」

 

「ぐぅ……!」

 

「はッハァ!ザマアねえなアラスゥ!」

 

「煽るなボケ」

 

「がは!?」

 

仰け反り突き出された腹を軽く蹴る。

亀甲縛りの効果で碌な防御姿勢も取れず、ゲホゲホと咳き込んだ。

それを見た巨漢は「クク、愚か者め……」とご満悦。何だコイツら……。

あほくさ。一先ず二人の亀さんを引き摺って、この1時間で作った急造の野営地の焚き火付近へ運搬する。

地面との摩擦?知りませんねぇ……。

 

「待て、まずはこの奇っ怪な縛り方の縄を解け」

 

「このハゲと同意見だ。もう暴れねえから開放しろ」

 

「しょうがねぇな……」

 

渋々二人を開放し、キャンプファイアでじっくり弱火で焼き上げていた川魚を放り投げる。

 

「うおっと、サンキュー」

 

「頂こう」

 

「あと、食べながらでいいから俺に説明してほしい。なんでお前ら俺そっちのけで殺し合ってたんだ」

 

「む、そういえば細かい事は此方が伝えねばならんのだったな」

 

「そうだよ(半ギレ)」

 

「ふむ……とは言え、そう複雑な事情があるわけでもない。我が国は君主制であり、間違いなく善政を敷く王の下で平和に暮らしていた、が……戦争を飯の種とするとある武器商人が民衆を扇動し、クーデターを起こそうとしている。今回、我ら三人の『異種』の仕事は旗印に立つある男を処理する事だ。」

 

「正規の軍人はどうしたんだ?」

 

「反乱した連中の装備が強すぎてな……型遅れの中古品しか持っていない我が国の軍では相手にならんのだ」

 

「えぇ……」

 

腹が減っていたのか、ムシャムシャと魚を頭からまるごと食らった男達は揃って伸びをし、さも今思い出したと言わんばかりに同時に声を上げた。

 

「「そう言えば自己紹介がまだだった――何だ、オマエ」」

 

「君等ホントは仲いいでしょ」

 

「ありえねェ!こんな裏切り者――!」

 

「大馬鹿者めが……!」

 

「ハイハイハイ!ストップ!ストップ!!それ以上やるんならケツにバナナ三本突っ込むぞ!」

 

「「えぇ……」」

 

何だお前ら!またそうやって同時に困惑しやがって!ホントは仲いいだろ!

っていうかなんでそんなに喧嘩腰なんだ!ほら、お姉さんに話してみ?

 

「何いってんだこの貧乳」

 

――この後めちゃくちゃアイアンクローした。

 

 

 

 

「なるほど。アラスおじさんとセイジな」

 

「ああ……俺はまだ二十代なのだが……」

 

「はっはっは!良かったじゃねえか!アラスお・じ・さ・ん!」

 

「いい加減喧嘩腰やめろやぁ!」

 

懲りずに煽るセイジ。ああ!もうダメだ!悪い子にはお仕置きの時間だ!

先が摩擦で丸くなった木の枝(制作時間30秒)を持ってセイジの後ろに回り込む。

反応すら出来ず、さっきまで俺が居たところへ視線を送るセイジ……すまないが、いい加減我慢の限界なんだ……!ひゃあ!辛抱できねえ!

 

両足のバネを使って目標めがけて抉りこむように突き刺した。

 

菊の門(ケツのアナ)に。

 

「――――あ――が!」

 

ビクリ、と身体が強く痙攣する。

ガクガクと震える両足の振動は次第に腰から上半身へ登っていき、ついには地面に崩れ落ちた。

 

「ミッション、コンプリート」

 

「なんと……」

 

申し訳程度にエルフ力を使った治癒の力を送り込みながら棒を引き抜く。

セイジは白目を剥きながらビクンビクンを身体を跳ねさせていた。

 

「アラスおじさんも、次はないから」

 

「了解」

 

アラスは、ケツの穴がぐっと引き締まることを感じた。

これからはセイジにも広い心で対応しよう……きっと、事の原因たるあの少年(・・・・)もそう願っている。

 

――ヘンリー、これからも軍人として恥じないように清く生きようと思う。

 

 

『8月21日 天気 晴れ』

Amozonの空輸便から複合弓(コンパウンドボウ)と幾つかの矢。そして食料と、何故か日記帳が届いたので記録しようと思う。

今日はアラスおじさんとセイジと一緒に近くの街へ移動した。

基本的に潜入アンド暗殺の任務になるらしいので、ドンパチ賑やかにやることはダメらしい。残念。

移動中もこの男達は懲りずに騒ぐんじゃないかと危惧して例の棒(・・・)を構えていたのだが、何故か二人とも粛々と会話し、街につく頃には意外と仲良く話せていた。実に不思議だ。

ともかく、このまま一日掛けて町から町へ移動し、今回のターゲットである『パラスト・レーガル』という男の潜伏する街へ向かう。

あとは潜伏拠点を探し出し、サクッと暗殺したら俺のお仕事は完了だ。早く帰ってシェフの料理食いたい。

 

 

「ふぅ……」

 

パタン、と日記帳を閉じる。

記念すべき1ページ目が任務中というのも中々不思議なものだが、このまま書き続けていればそう珍しいものでもなくなるのだろう。うちの職場ブラックだし。

 

「書き終わったか」

 

「そろそろ目的地の街に着くぞ」

 

「おっけー!」

 

荷台からキャリーケースを下ろす。

カモフラージュ用の、『一般的な旅行者の少女』というベールが剥がれないように注意しながら席を立つ。

歩く際にひらひらと舞うワンピースの裾にも慣れたものだ。

最初、着たばかりの頃は落ち着かなかったが、これはこれでいいものだ。

着ているのが可愛い女の子じゃなくて自分というのが難点だが、まあ仕方ない。

 

何故、今更人生初のワンピースデビューをしたのか?きっと気になる人もいるだろう。

正直俺も着る予定はなかった。だって元は男だし。

でも、さ。ほら、バリバリ戦闘しますよ!これ軍事用ですよ!みたいな黒いスーツ着ているガキとか、目立つじゃん?

だから、今回の潜入任務にあたってそこらへんの店で市井に溶け込める服を用意したのだ。

キャリーバックも合わせれば完全に一般市民だな。装備を変えたのは賢かった!

 

しかもほら!俺かわいい!!

 

「はいはい。降りるぞ」

 

「なんて適当な……まあいいや」

 

駅のホームを通り抜け、かなり高度に発展した町並みを眺める。

背の高いビルが密集し、その足元を多くの人々が行き交う。

何処を見ても活気に満ちた姿は、とてもクーデターの最中とは思えなかった。

 

「極一部の武装勢力以外は普段どおりの生活を送っている……ね。王様や軍隊は今にも死にそうなのに、まるで対岸の火事みたいな面してんな」

 

「それもそうだろう。未だ何処かで戦闘が起きているわけでもない。我等とてただ最新鋭の装備を身に纏った、必ず勝てない(・・・・・・)兵士がクーデターをすることが分かっているだけ。其の事すら民衆は知らんのだ」

 

「ま、いざ事が始まれば話は別だがなァ」

 

「ふーん……じゃあ殺られる前に殺らなきゃな」

 

とは言えその件の首魁の居場所すらわからない。

まずは情報収集をして、攻め込むべき場所を探さなければ。

そこら辺にいる人に聞いたら教えてくれないだろうか?おじさんどう思う?え?無駄?

そもそもクーデターがあることすら知らんって言っただろうこのサルゥ?は、きれそう(全ギレ)。

 

「あん?クーデターの首謀者の場所?そりゃあアレだな。レーガル家のお屋敷だろ。最近ずっと宣伝しまくってたからなぁ」

 

「…………。」

 

「おじさーん?無駄?無駄って言ったよねぇ?でも見つかりましたけどぉ?あれれ~?おっかしいぞぉ!」

 

「ザマアねぇなあアラスゥ!所詮俺の()の求婚すら受け入れられねぇ情けないおっさんだァ!」

 

セイジと二人でアラスを囲み、衛星のようにグルグル回る。

気分はさながらレスバトルに勝利したネット掲示板の住人だ。んん!!!!ギモジイイイイイ!!!!!

 

「…………。」

 

「ん?どうしたおじさん!急に顔が怖く……お、おい。待て待て待て、どうした。急に何で俺を抱えたんだ。何で走り出した!おい!そっちは屋台の『激辛!真紅の漢飯』しか無いぞ!まって!やめろ!俺は辛いもの食えないんだ!やめろ!やめ――」

 

「あっ……」

 

 

 

 

時は変わって、深夜。

月が空高く登り、淡い光で照らされる家屋の隙間に三人の人影があった。

俺達潜入チームである。何故か自然な流れでリーダーとなった俺は、ついさっきメンバーに反撃食らいました。

 

「こ、これより潜入しましゅ……く、くちがいひゃい……」

 

「口は災いの元だ」

 

「これ終わったら甘いもんおごってやンよ……」

 

「敵いっぱいコロすぅ♡」

 

先手必勝。甘いものこそ優先すべき至高の存在。間にある無駄な作戦なんぞ邪魔なのだ。

大きな鋼鉄の正門を守る、二人の強化外骨格を纏った兵士の首をへし折った。

閑散とした住宅街に僅かにも音を漏らさないように注意しつつ、二人の亡骸をエルフパワーで作った穴に埋める。

『異種』としての機能は不足なく稼働し、常人では叶わぬ植物操作の能力が発揮され――そのタンパク質の塊は無駄なく、丹念に分解されて大地の栄養となる。

 

「うわ、こわ……」

 

「……うむ、まあいい。このまま制圧しよう」

 

「りょうかい!」

 

中庭を誰にも見られないように注意しながら通過し、各個撃破できそうな孤立した存在はドンドン締めて装備を剥ぎ、見つからないように影に転がす。

合間にある監視カメラなどの機械は壁からはやした木の葉っぱでレンズを塞ぎ、どうしても植物が届かないものは複合弓の一撃で物理的に排除する。

 

「ん……?なんだ、あのデカイのは……?グッ!?」

 

「セーフ……」

 

「アラス、役に立たねェな。縮めよ」

 

「くっ……無念」

 

時折アラスの巨体が仇となって見つかりそうになるが、その度に一瞬で生やした樹木で締め上げ強制的に眠らせ難を逃れる。

 

「ん?なんだ、あれ……グハ!?」

 

「お?あそこにあるのは……ぬぁ!?」

 

「うわ、クマかありゃ……おぅ!?」

 

「すまん……」

 

「し、仕方ないね……」

 

繰り返すこと70人。

幾度となく繰り返された工程は回を追うごとに効率化されていき、60人を数える頃には一秒を切る!

もはやテイクダウンRTAである。動画投稿したら一躍有名人になるのではなかろうか。

え?だめ?すぐ炎上する?知ってた。

 

そんな中でも、完全防備で肌の露出すら存在しないフルアーマー式の外骨格を纏う兵士も存在したが――

 

「圧殺!」

 

「――――!?」

 

地面から蔓を伸ばし、一瞬で拘束。

そのまま地面の中へ引きずり込んで――残念だが、そのまま押し潰す。

この国を混乱に陥れようとした自分を恨め。

 

いくら強力極まりない装備を纏った所で、彼等は所詮人間なのだ。気付けなければどうしようもない。

だから、そう――

 

「な、何だ貴様ら――ぐ!?」

 

「しーっ。静かに……」

 

「ぐ、ぅ……」

 

「よし、運ぶぞ」

 

「俺が先導する」

 

「俺は見てる」

 

彼等のリーダーがいつの間にか眠らされて誘拐されても、どうしようもないのだ。

中肉中背の男をアラスが背負い、俺が先導し、セイジは横で見守る。

フォーメーションを維持しながら行きと同じルートを辿って再び元の住宅街へ。

そのまま変わらず静かな住宅街へと舞い戻った。

作戦時間、十分!

 

少しばかり離れた地点にある回収ポイントで、目立たない私服を着た軍人に身柄を引き渡す。

 

「指導者の居ない反乱組織なんぞ烏合の衆だ。あとは俺達に任せるといい……依頼は完了だ」

 

「俺達居ないほうが良かったんじゃねェか……?」

 

「いや、ほら……保護者枠?」

 

「俺、鍛え直すわ……」

 

セイジはガックリと肩を落とした。

しかし保護者枠も大事だと思うのだ。

今回、少しばかり街を移動したが保護者が居なければこうもスムーズに事が運べなかった。

一人で旅行する白人の美少女(ここ重要)なんて、よからぬ輩に目をつけられてしまう。

そうなったら……おお、恐ろしい。またこの相棒(・・)でそんな彼等の菊の門を突き上げねばならなかった。

 

「まあ、アレだ……世話ンなったな。気いつけて帰れよ」

 

「達者でな」

 

二人共、最初の隔意は何処へ行ったのか仲良く此方へ手を振っている。

今回の任務が二人のすれ違いを無くしたのだろう。

 

……そして忘れてはならない事がある。

 

「甘いもの、奢ってくれるんだったよな?」

 

「お、おう」

 

「じゃあ手始めに十軒ぐらいハシゴしよっか」

 

「えっ」

 

「ああ、でも今は夜か……じゃあ、居酒屋で腹拵えしてからだな。もちろんお前の奢りな」

 

「えっ」

 

「日が昇ったら甘いもん巡りだぞ。逃げるなよ」

 

――その後、途中金が足りないことに気付いたセイジとシーナ。店主に土下座をする中、颯爽と登場したアラスにお金を借りることで乗り切った。しかしアラスは対価を要求する。シーナを庇いすべての責任を負ったセイジに対し、職業軍人アラスが言い渡した示談の条件とは……。

 

 

 

 

 

 

『作戦報告書』

 

今日はヘステル王国にある甘味処を巡りました。

何処のお店も非常に高度な技術を持って作られたお菓子を提供していましたが、中でも『ゴルーザ』という店のショートケーキが美味しかったです。

材料から厳正に拘った店主の作品は、まさに芸術そのもの。中でもクリームのキメ細かさと言えば――

 

 

――ローランド社長はアイアンクローと二度目のお仕置き任務を言い渡した。

 

 




ガバいところは後から修正するかもしれない ゆるして

ちなみにアラスくんは身長195cm、体重126kg、筋肉モリモリマッチョマンの変態です
趣味はお菓子作りと水切り
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