血を吐き出しまくって、死にそうな試練を踏破し、絶望を乗り越えてこその主人公だと思うんだ。
決してTS美少女の瞳を曇らせたいからではない 作者の性癖ではないです
ババババババ、と超高速回転するプロペラが吐き出した風切り音が鼓膜を乱打する。
連射速度が早すぎるあまり、もはや間延びした一つの破裂音にも聞こえた。
ガタガタと鋼の揺らす音も相まって一種の音楽のように――聞こえる訳ねえな。
空飛ぶ大鳥、最新鋭輸送機の座席の一角――と言うには中心部に過ぎるかもしれないが、ともかく輸送機の中の一席に座っているのは――そう、俺!
時代が望んだサイカワエルフ!古今東西天下無双のスーパーウーマン!
……。
………。
手鏡を取り出す。
真を映し出す銀色には、これっぽっちも笑いの浮かばない少女の
「……はぁ」
駄目だ……これじゃ元気でねえわ。馬力が足らん。
いつも見たく勝手に燃料作って、自分で点火するって真似が出来ない。
文字通りの意味で運ばれていく
「どうした、シーナ。随分と落ち着かねえじゃんか」
「あ……ジョン」
「不安か?」
「そりゃそうでしょ。今からドラゴンハントだぞ……?それに…………いや……何でもない」
……駄目だ。咄嗟に口を閉じる。
不満や怯えを漏らすのは簡単だが、ここに居るのは俺だけじゃない。
多くの同僚達の中で恐怖に震えたところで、ただ皆の士気を低下させるだけ。百害あって一利なしと言う奴だ。
キュッと口端を結び、指遊びの一環でバナナを取り出す――と、そこで普段使うポーチがないことに気付く。そういえば完全に戦闘用フル装備で来たせいで余剰パーツ――早い話が遊び要素が欠片もない。
……仕方なく、指遊びの代わりとしてミントを宙で踊らせる。
……そうだ、思えば一切余裕が無い戦場は初めてかもしれない。
これまではただあるがままに振る舞うだけで自ずと勝利がやってきた。全てが勝利への布石となり、どんな強力な敵だろうと
……でも、今回ばかりはそうじゃない。
流石に火を吐き空を飛ぶ化け物に
それが、それこそが。
負ける事ではなく、命を失うことでもなく。
『
「……震えてるな。大丈夫か?大胸筋が歩くの見るか?」
「ぷふっ……懐かしいな。久しぶりに見たいかも」
「よぉし!そら!大胸筋歩行マラソン耐久レースだ!」
ピクピクピクピクピクピクピクピクピクピク!
コンバットスーツの上からでもわかる程隆起した胸板が超高速で痙攣する。
やっべぇ、懐かしい……そして安心する。
思わず、無意識のままにジョンの震える胸板に掌を乗せた。
ビクンビクンという筋肉の震えと、ドクンドクンという心臓の打ち鳴らす脈動の音が掌を叩きつける。
それらはジョンはそこにいるという事実を、より深みを持った実感として理解させてくれた。
筋肉……あぁ、筋肉に触れ、筋肉の存在を感じる程に心が安らぐ。
なんでだろうか?とにかく不安がほぐれる事を実感できる。
「よーし!お兄さん頑張っちゃうぞ!」
「お?筋肉祭りか!」
「ええ!?輸送機の中で筋肉コンテストを!?」
「できらぁ!」
「むん!ダブルバイセップス!!」
「なんの!サイドチェストォ!」
いつの間にか、周囲が筋肉に溢れていた。
大男達は嬉しそうに、そして不安を振り切るかの様に必死で筋肉を収縮させる。
どいつも必死な顔をして、けれど俺を元気付ける為にか頑張ってくれている。
……懐かしい。そして安心する。まるであの時みたいに―――
……あの時?あの時って、何だ?
待って。
そんなのは今関係ないだろう?今考えることじゃない。
だから無視して、あの時のことなんて思い出す必要――
――待って。
脳髄が震える。
ニコニコと固定された表情の下で心がグネグネとのたうち回る。
――あの時なんて知らない。
知らない人たちが脳裏に浮かぶ。
誰?誰が俺を――
笑っているあなたは誰なんだ?
――あなたは、あの時
――あの時。
あの時、あの時、あの時?
あの時?あの時?過去?いつ?俺の?あの時?そんなの知らないよ?記憶にない、覚えてない!知らない、知らない、知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない!なのにあの時?あの時、あの時、あの時、あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時あの時ってあの時あの時あの時あの時あの時って
――あの時って、いつだ?
……
『どうしたんだ坊主!なんで泣いてんだ!?』
――ぼくは、いつもの様に家の外で蹲っていた。
おかあさんは何故かぼくを叱りつけて、新しいおとうさんと裸で絡まりながらベットに寝っ転がっていた。それが何だか怖くて、それから逃れるように、目を逸らすように着の身着のまま飛び出した。
家の近所にある、閑散とした公園のベンチに座り込んで道路を眺めてた。
『おーい!大丈夫か!?』
うるさいな。そしてしつこい。
騒音の元凶に首を向けると、そこには冬だと言うにも関わらずタンクトップ姿の大男がこちらを見つめていた。
何だろうか?知らない人だ。おとうさんやおかあさんの知り合いかな?
ただ首を傾げる。
『冬だっつうのにそんな薄着でどうしたんだ!?なあ坊主!お母さんやお父さんはどうした?』
『……おかあさん、ぼくが家にいると怒って叩いてくるから……だから、いつもここに居るの』
『なんと……それは、いつもか?お父さんは?』
『……おとうさんは、ぼくを助けてくれなかった……。なんだか……ぼくの体のいろんな所を触ってくるけど、おかあさんには何も言ってくれないの』
大きな力こぶをピクピクと震えさせ、大男――おにいさんは口をパクパクと振動させた。
どうしてそんな顔をしているのだろう?なんだろう、その目は。
……はじめて見るな。
おかあさんは、いつもぼくのことをモノを見るみたいに無機質な目を向けてくる。
前のおとうさんは、そもそもぼくを見なかった。
今のおとうさんは、なんだかドロドロとしている。ぼくとおかあさんを見るときと同じ色で、なんだか怖くて、嫌いな色だった。
おにいさんの目は不思議だ。
暖かくて、柔らかい。
『……誰か、家族にお父さんとお母さん以外の大人はいないのか?』
『……うん、見たことない』
『そっか……』
おにいさんは片膝をついて、視線を合わせてくれた。
……うん、やっぱりきれいな目だ。すごいなぁ。
『明日もここにいるのか?』
『うん』
『……分かった。明日もここに来るからな』
そう言うと、おにいさんは温かい小袋をぼくに押し付けて去っていった。
近所の同い年で――ぼくは通う事ができなかった小学校の服を着た子供が持っているのを見たことがある。たしかカイロだったっけ。こんなのもあるんだ、不思議だなぁ。
――それから、おにいさんは毎日同じ時間にやって来た。
毎日温かいご飯を持って来てくれて、かっこいい大きな体を使ったショーを開いてくれた。
演者は一人、観客も一人。だけど、ぼくにとって何物にも代えがたい、世界一のショーだった。
この時から、ぼくにとっておにいさんは――筋肉や男らしさと言うものは、優しさの象徴になっていた。
『■■!おら!サイドチェストォ!』
『すごい!』
『バックラットスプレッドォ!』
『ええっと……き、きれてるよー!』
『バックダブルバイセップス!』
『背中に鬼神がやどってるー!』
辛かったけど、苦しかったけど。
おにいさんと過ごす時間だけは幸せだった。
『急がなきゃ……おにいさんが待ってる』
何だかいつもよりおかあさんが怒ってたから、普段とは少しズレた時間になってしまった。
おにいさんが待ってるって、そう思って急いでいつもの公園に走っていく。
けど、そこには赤い何かに塗れた、大きな人が倒れていただけ。周囲には少しの人集りと、青い服を着た――ぼくを助けてくれなかった人達。
大きな人に近づく。
冬なのにタンクトップを着ている。おにいさんみたいだ。
筋肉がすごく盛り上がっている。おにいさんみたいに。
……顔が優しげで、とてもかっこいい。おにいさんと同じ顔だ。
……その人は――おにいさんは、公園のど真ん中で寝っ転がっていた。
ややあって、おにいさんが身に纏う赤色は、おにいさんの命そのものである事にようやく気付いた。
そして、仰向けに倒れたおにいさんは微動だにせず、いつも大きく動いていた胸さえ完全に静止している。
『ああ――』
おにいさん。
……おにいさんは。
ぼくのヒーローは、死んでしまっていた。
それからの事は、ぼんやりとしか覚えていない。
おにいさんを殺したのはおとうさん。理由はよく覚えていないけど……すごく気持ち悪かった記憶がある。
それからの日々は地獄だった。
おかあさんは来る日も来る日もぼくを叩いて、縛って、禄にご飯を食べることもできず。
……そして、おにいさんに会えなくなって。
苦しくて、苦しくて、苦しくて、苦しくて、苦しくて、苦しくて、苦しくて、苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて――
――だから、ぼくは自分を造り変えた。めちゃくちゃに分解して、削って付け足して、辛くないように、苦しくないように組み立てた。
――そして
「よぉし!どうだシーナ!仕上がってるかぁ!?」
「――うん、かっこいい」
ほにゃり、と顔がにやけた。
いつの間にか忘れてしまっていた笑い方だけど、おにいさんみたいなジョン達相手だからかとても自然に笑えたと思う。
ぼくは優しい人達に会えて幸せだ。
前のおかあさんとおとうさんはどうしようもなく怖かったけど、今のこの瞬間に続いたと思えば感謝したくなる。
「バックラットスプレッド!」
「サイドトライセップスゥ!」
「モストマスキュラーッ!!」
何故「ぼく」に戻ったんだろう――ああ、いいや。原因は分かった。多分、「シーナ」としてのぼくの中のイメージで、おにいさんと完全に重なってしまったジョン達の影響かな。
そのせいで本来無くなった筈の、忘れていた元々の形に戻ってしまったのだ。
おバカで間抜け、苦しみや辛さ、憎悪や恐怖に極度に鈍く、しかし底抜けに無邪気。そんなもっとも子供らしいというコンセプトで設計した「シーナ」だったが――きっと、その精神のおかげでここに居られるんだろうな。
ぼくは、造り変わった精神に気付かれないように振る舞いながら、いつかの懐かしい優しさを噛み締めた。
『おいお前ら!マッスルショーはその辺にしとけ!もうすぐ到着だ!』
「なにぃ!?まだ俺の筋肉様は物足りないと叫んでいるぞ!」
「俺の大臀筋を見ろォ!!」
「三角筋ッ!」
「俺の腹斜筋で大根擦り下ろせェ!」
「ドラゴンにその筋肉パワーを打ち付けるといいんじゃない?」
「おお!それもそうだな!」
「マッスル!!」
助言とも呼べぬ助言を投げ掛けるだけで際限なく盛り上がった。
もう数分で戦地に着くが、モチベーションは言うまでもなく極まっている。
これなら「シーナ」として怯えることも無さそうだ。……安心した。
「ふふっ」
恐怖なんて必要ない。苦しみも、殺意も、憎悪も、全部「シーナ」には不要な物だ。
――造り変える。
精神を端からドンドンとバラバラに取り外し、その一つ一つに不調や損耗が無いか検分する。
今回、精神が不調をきたした事でセーフティが作動してしまった。
やはり、おにいさんの事を忘却して負の感情を薄めるという試みは良くなかった。今度はキチンと稼働するように調整しておこう。
バラバラバラ。ココロの中に散らばったパーツを一つ一つ手に取って改造を施す。
少しでもへこみや歪みがあるのなら付け足して、飛び出した部分はヤスリにかけて削っていく。時には出力や入力の回路を組み換え、より洗練させていく。
そうして調整したパーツを「シーナ」の設計図通りに組み立て、接合部を『思い出』という接着剤で固定した。
――そうすると、ほら。元通りの無邪気な
「頑張ろうな!ジョン!」
「おう!」
しししっ、と笑いかける。
不安や怯えはもうどこにもない。
だって、俺は「シーナ」だから。
大気が目に見えて振動した。
前線基地に着地した輸送機を降りた俺達を出迎えたのは、基地の建物のすぐ目の前で極大の咆哮を上げる赤龍だった。
恐ろしく巨大な――おそらく全長60メートルを超えるだろう四足歩行の爬虫類。
しかし背には巨大な翼があり、見れば見るほどファンタジーの世界から飛び出してきたドラゴンだった。
「撃て!撃て!とにかく撃て!」
そこら中に数え切れない程大量の固定機銃から無数の鉛玉が吐き出され、沢山の兵士が両手に構えるロケットランチャーで乱打する。
空からは多くの戦闘用ヘリコプターや戦闘機がミサイルの雨を降らせるものの、赤龍は未だに大した傷を負っていない。
――バケモノだ。
「シーナ、いっきまぁす!」
けれど――
短槍と超大型の黒い拳銃を両手に構え、銃弾の隙間を潜り抜けて赤龍に肉薄する。
いつかの成長痛のような軋みの代わりに、溢れ出んばかりの力が体の隅々までいき渡っていた。その力に従い、赤龍へ音を立てずに疾走する。
「プランA!作戦通りだ!ベン、リチャード!準備しろ!」
「了解!」
「ジョンも気をつけろよ!」
背後でジョンの鋭い声が空気を裂く。
プランA――何の難しいことはない。唯一の
その間に各々が持つレールガンをチャージ、そしてスキを見て500を超える兵士が持つソレと基地に設置された固定砲台としてのレールガンをぶっ放す。
なんともシンプルで力一辺倒のゴリ押しのようだが、こんな規格外の生命体に既存の作戦が通じるとは誰も思えなかったのだ。むしろこのような作戦とは呼べない作戦こそが最も有効と思われる、なんて言われたらやるしかない。
……大丈夫。もう怖くない。
『AAAAaaAaaA―――!!』
咄嗟にステップを踏む。
左に避けた次の瞬間、元いた場所を豪!と灼熱の火球が呑み込んだ。その後には削り取られた大地が在るだけだった。
『AAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』
ザワリ、と肌が栗立つ。
直感に従い全力で大地を踏み砕き、マッハに迫る速度で宙へ跳んだ!
一瞬後に赤龍の口腔や周囲の大気から生み出される無数の火球が襲い掛かる。どれを見ても3メートル程のサイズであり、熱量と合わせて考えると――ああ、本当に異常生物だな!お前は!
トン、ドン、ダァン!
踏み込む毎に加速を重ねる。
周辺に散らばる瓦礫や、打ち捨てられた軍用車を足場として宙を駆け回った。
雨あられと降り注ぐ火球は虚空を通り過ぎ、虚しく酸素を飲み込み消えていく。
ダァン!ダ!―――!
蹴り抜く時間は限りなく無へ近づけろ。
力の全てを推進力へ変換しろ。
無駄を生むな!使えるモノは全て利用しろ!
『GUuuuUaA……!!』
火球が止んだ。
高速で移り変わる視界の中、赤龍は開いた口腔からプスプスと煙を吐き出している。
「好機!」
遂に音の壁さえぶち抜いた勢いを活かす。
上空に拳銃を放り投げ、短槍を両手に構えて飛行する。
「
白熱した穂先を、渾身の力を持って首の付根に打ち込んだ――
――ガリ!
けれど、与えた損害は数枚の鱗と、僅かな血と肉片を撒き散らすだけ。到底致命傷とは言えない。
「チッ!」
後方に飛び退き、空から落ちてきた拳銃を掴み取った。
どうする、どうする、どうする――。このままではチャージ完了まで周囲を守りきれるか――。
『A...AAaaA....』
そこで赤龍の様子がおかしい事に気付いた。
やけに巨体が震えており、その赤黒い瞳は驚く程血走っている。
…………。
……思い出した。
そう言えば、ドラゴンのアゴの下には一枚だけ逆さに生えている鱗が存在するんだったか。
そして逆鱗に触れた場合激しく激昂し、触れたものを即座に殺す。
「やっば……」
――ガパァ。
そんな気の抜けた音が聞こえてくる。
同時に、顔に吹き付ける生暖かい、そして何とも言えぬ悪臭を含んだ空気。
大きく裂けたソレが何なのか――
「―――づァ!!!」
――理解しようとする前に、俺の意思による命令を受けず反射的に駆動した両脚が瞬時に大地を蹴り上げる。危機一髪、危うく捕食される直前で目の前を抉り取る『口腔』から大きく距離を離した。牽制として狙いを付けずに乱射した銃弾は、チュインチュインと音を立てて弾かれた。
「……おいおい……」
銃弾の打ち鳴らした音でようやく俺が居ないことに気付いたのか、その大きな頭をグルリと回す。
『―――■■』
ソレは俺を見つけたのかその瞳孔を細く開いて、頭の動きを停止した。
先ほどの俺よりも尚早いその速度に余程自信があったのか、血走った目には色濃い憎悪が浮かんでいる。
ギチリ、と鋼が擦れ合う音が聞こえる。
その不快な音が牙が軋む音と気付いた頃には――
『■■■■■■■■』
赤龍は空間を削り取りながら、俺へと飛びかかっていた。
「――の、おおおおぉぉおおぉッ!?」
爆音と共に大地へ強く踏み込み、真後ろへ向けて超高速の回避運動を取った。一歩目にしてマッハ1に相当する速度でありながら、かなりスレスレでの危機回避。
瞬きの時間も掛けず元いた空間が白杭によって削り取られた。
無事避けることが出来たことに安堵するのも束の間。
次の瞬間には強靭極まる前脚が、辺りに転がる障害物ごと磨り潰さんと襲い掛かる。
「ッ……!」
『■■■■!!』
右フック。噛みつき。鎌のように周囲ごと刈り取る尾。土とコンクリートを巻き上げ迫る左前脚。からの巨大過ぎる体躯をそのままに超高速のタックル。
それら全てが数秒という僅かな時間に圧縮され放たれる。
――ザワワ。
当然の事だが後方で待機している兵士達には危害を加え無いよう調整しつつ、即座に最も活動しやすい環境を築き上げた。
――しかし、赤龍の巨体にとっては邪魔にもならない。
変わらず無茶苦茶に暴れ、その強すぎる力を振り回し木々を砕いた。
それらをまるで猿ましらのように飛び跳ね回避する。
数秒先の生存の為力を尽くす。
時には両脚で位置をずらし、それでは不足と両手や大木の幹や枝も使い、果ては砕かれ散らばる大地の破片すら足場へ変える。
僅かな狂いが死へ直結する。
ジワリと冷や汗が額に浮かんだ。
――レールガンはまだか!?
「危なッ!?」
咄嗟に頭を振り下げる。
その勢いのまま体を前方に投げ出す。
バキバキバキィ!
樹木を燃やして溶かし、頭のあった空間をナニカが通り過ぎた。危機の原因たる『ソレ』に砕かれ倒れた大樹を足場に、両の手で安全地帯――後方80メートルまで跳ぶ。
視界の端で、足場だった幹が周囲の土ごと削り取られて消滅するのが認識できた。
俺が危機を脱したことを理解したのだろう、ドラゴンは苛立たしげに喉を鳴らし、再び『ソレ』を放たんと身構える。
「また火……ッ!」
『ソレ』とは、つまり謎のエネルギー――ファンタジーチックに言うのであれば『魔力』の類によって編み込まれた、先程も用いられた大きな火球であった。しかし先程までとは違い、赤い燐光は青や白に変化している。
明らかに強化され、決定的に物理法則を無視したソレが宙を漂った。
「クソッタレ……!」
『■■■――』
ドラゴンが愉快そうに喉を鳴らす。そして機嫌良さげに目を細めたまま、『火球』を周囲の空間へ撒き散らすように展開した。
その数、およそ300。
「Fuck……!」
頬が引きつるのを自覚した。
あの『火球』は途轍もなく高速で飛行する。
音速を超える凶器が、そんな――。
『準備完了!何時でも撃てる!合図をくれ!』
――しかし、天運は俺を見捨てていなかった。
即座に赤龍の足元に大穴を空けた。
咄嗟の事過ぎるが故か、ものの見事に下半身を地中に埋める。
そのまま数千を超える根で巨体や両翼を絡み取って固定し、その上に100メートルというキングサイズのスギを乗せ――即座に後方へ退避した。
『■■■■■■――!?』
藻掻く。
大地がブルブルと振動し、次々と拘束具を引き千切っていく姿は否応なしに規格外の力を見せつけてくれた。
……しかし、それももうお終い。
「撃って!」
『一斉掃射ァ―――!!』
――この日、現生人類は初めて龍に勝利した。
世界12箇所に飛来した龍達。
区域によって大小の差はあれど、いずれにしろ膨大な量の血を流した果ての勝利だった。
ここオーストラリアだって、俺が来る前までに数百の兵士が命を落としている。
……まず間違いなく、このままでは人類は――。
「おいシーナ!無事か!?怪我は!?」
「大丈夫だって!最強無敵のシーナちゃんだぜ!?そらもう完璧よ!」
だけど、今はジョン達の無事を喜びたい。
とりあえず再会と勝利のお祝いとしてバナナを――
よく見たら初めてお仕置きされてねえぞコイツ(驚愕)
唐突にシリアスっぽくなったけど求めてない人ゆるして……ゆるして……!
もっと脳味噌をからっぽにしたかったのに……!どうしてこうなった?
TS美少女のおパンツ被りたい!(強引な締めの挨拶)