ヒャァ!もう限界だッ!投稿するぞッッ!!
ガバガバは許してェ!!
謎の大陸の浮上、そして赤龍との戦いから2週間。
俺達『ウェスト・ローランド』の社員百名は変わらずオーストラリアの地に足を着けていた。
一番最初に足を踏み入れた海岸沿いの基地から離れ、各地に散らばる拠点を転々と移動し、海を越えてくる謎生命体と戦う日々。
空を飛ぶ小さな蛇の群れ、海を高速で泳ぐ水を吐く猫のような四足獣、或いは影其の物で形作られたヒトガタ。
どいつもこいつも奇想天外極まるバケモノだった。まあ皆殺しにしたんだけど。
3階建ての基地の屋上、その端っこに腰掛けて脚をブラブラ、宙を蹴る。
見晴らしの良い視界の大半は真っ赤に染まっていた。
その大本である謎生命体――仮称『魔物』達の骸は粗方撤去されているものの、流れ出た痕跡はどうしても拭い切れずにいる。
「おーい!こっち手伝ってくれシーナ!」
「おー!わかったぁ!――よっと」
バナナを右手に飛び降り、壁を蹴り移動しながら基地前の平地で清掃中のジョンに駆け寄った。
右手はゴツイ手袋に覆われ、左手にはバカでかい麻袋。口には防毒マスク……まるで証拠隠滅中のヤーさんみたいだぁ(目逸らし)
「この辺の友軍の遺体や瓦礫は撤去し終わった。あとはお前の仕事だ」
「あいあい!」
ちなみに俺達が何をしているのかと言えば……うん、早い話が清掃業者だ。
今みたいに四方数百メートルに渡って血みどろというのはいくら何でもマズイ。
なので襲撃時以外は非戦闘員、戦闘員問わず清掃業務に駆り出されている。……さっきの俺?あくまで休憩中であってサボりではない(無言の腹パン)
というかもう一週間とちょっとの間洗浄を続けているっるーのにさぁ、しょっちゅう『魔物』が攻めて来るせいでちっとも元の土色に戻らない。戻った端からまたぶちまけてしまうのだ。まっことクソである。
これ謎の疫病とか発生しないんだろうか……?いい加減怖い……怖くない?バイオハザードとか発生しない?そこらへんの犬が火を吐き出したりとか!あ、でもそれはそれで可愛いかも!
「よし、そうだな……ここと、ここに例の草生やしてくれ」
「おっけー!」
ジョンの顔にバナナを放り投げ、両掌を地面に向けた。
そして後は力むだけ!
っしゃあオラア!!
――ぴょこり。
途端に、瑞々しい葉を持つ芽が顔を出す。
ココに来て戦いを繰り広げる内に
何せ『血』や『肉片』といった有機物を吸い取って成長し、生存領域を広げ、そしてある程度成長した後は種を残してさっさと枯れていくというトンデモ特徴を持っているのだ。
だから俺の仕事はコイツを生やして――
あとは、ないです(ホワイト社畜感)
「おお、よぉし!これが終われば北方100メートルは清掃完了!」
うーん!と背筋を大きく伸ばしたジョンの腹をつつく……かたぁい!
その間にもぴょこぴょこと生える小さな野草は加速度的に数を増やし、土に多分に含まれてしまった血液をドンドンと吸い取っていく。
あとは彼らに任せてしまえば大体の血液が栄養となって消えていく。
これが俺の最近の清掃における役目だ。他にやること?何度でも言うが、ないです……(震え声)
「そろそろ昼時だし食堂でも行くか。今日のメニューはシーナの好きなハンバーグだぞ!」
「やったぜ」
「おいおい転ぶぞ!もう17歳だし少しは落ち着けよ!」
「はぁ~?まだ外見上は14、5歳だからセーフです~!……セーフだよな?」
「うーん、まだ2アウトってところか……?」
「きれそう」
腰のポーチから取り出したバナナの房を構えた。
無警戒に俺の横を歩きおって……!おら、喰らえ!
ズポ!
ジョンの上の口にバナナをしこたま突っ込んだ。
即座に反応した豪腕が頭蓋を掴み取る。
「
「はい」
ギリギリギリ!
頭蓋骨を強く圧迫し、けれども決して後に残らない絶妙な力でお仕置きされる。
――そんな痛みの中、読心能力を持つ異種でさえ見通せぬ心の奥底。
何重にも設計した秘匿思考回路を辿り、バラバラに配置した
脳漿の送る信号を操作し各部位を連携、増幅、変換……そして脳髄の熟す思考回路を少しずつ、正しく歪めた。
繰り返されるソレは次第に形を変え、
――ガチリ。と脳裏で歯車が噛み合った。
脳髄の使用効率が爆発的に跳ね上がり、
やはり一々分解する必要がない分、こちらのほうが圧倒的に楽だな。あの時のぼくは実に良い仕事をした。
――さあさあ、考えよう。
今回ジョンに指摘されたように、やはり
……言われて思い返せば、最初に設計してから7年は経っている。
……『無邪気な子供』という設定を使うにしてもイタズラが多かったかな……。
うーん……『無邪気な子供』という面を意識しすぎたかな。テロリストや兵士として働く特殊な状況に対して、『無邪気な子供』そのままに振る舞ったせいで返って異質だったかもしれない。本当の子供なら怯えや恐怖、不安を感じた精神が相応に成長する筈だ。
でも、ぼくは苦労を苦労と思いたくないし、辛いものなんて認識したくない。苦しいモノなんて邪魔極まりない。
……けど……うん、そもそも十七歳というに年齢に対してソレはもうマズイかな。規格が古すぎたんだろう。
そろそろ年齢に合わせてアップグレードを図ったほうが良いな……。
バサリと脳漿の片隅に開いた大きな白紙に線を引く。
新しい『シーナ』はどういう風にしようかな。
環境からの情動の入力はもっともっと小さくしても良いか。
感情の変換器もいっそ小さくしてしまおう。
……けどあまり元の精神構造を無視してしまえば皆が不安になってしまう。
うーん……そうだな、あくまで『成長』の範疇に収まるようにしよう。
――少しばかり意識を逸らして、肉体が
いつの間にか
それを尻目に――同じ肉体なのに変な言い方だが――作業を続行する。
外面はあくまで
確か……幼いときはわんぱくでも、成長後には恐ろしく冷静沈着という人も多いらしい。
ならそれを利用しよう。
基本時には物静かであり、感情は表に出しにくい。
負の感情には鈍いままでいいだろう。そんなものは
あとは……そうだな、やはり元の要素はある程度残した方が良いだろう。
時折お茶目な悪戯をすると言った風が良いかな……?
カリカリカリ。
何処にも響かない音を脳髄で鳴らし、黙々と存在しないペンを走らせる。
パーツごとに施す処理と組み立て手順を記述した設計図。
誰にも見えないソレを、ぼくだけが見える精神世界に安置する。
――うん、まあ此処を終着点にしよう。20歳まで時間を掛けて徐々に変化する形式でいこうかな。そうでないと不自然だ。
「シーナ、どうしたんだ?フォークが止まってるぞ」
「――あっ。わり、ちょっとボーッとしてた!大丈夫だ!」
バチリ。
回路の接続を切り離し、早速一部分に手を加えた
元の動作をなぞって食べかけの、まだまだ温かいハンバーグにナイフを差し込む。
じゅわぁと肉汁が溢れ出し、肉と香料の香ばしい匂いが食欲をこれ以上なく刺激する。
それを口に頬張れば、期待を寸分も裏切らず『肉』という濃厚な旨味が口の中を蹂躙する。
芳ばしさ、濃厚さ、塩気、甘み。それらを味蕾に余さず伝えてくれた。
うん、やっぱりご飯というのは素晴らしい!
「ほんと美味そうに食うよなぁ」
「ふぁっふぇほんふぉにほいひいはら……」
「食うか喋るかどっちかにしろ」
「ハフッ、ハフッ!」
「食うのかよ!」
「何?俺と話がしたいのか?」
クスリ、と口元が静かに綻んだ。
無意識に形造られたそれは、何時の日か医務官の女性が口元に浮かべた妖艶な笑み。
何となくおちょくると、ジョンは若干驚いてこっちを――
………?
何故驚いた顔を?
……待て、今、俺は何をした?どんな表情をしていた?
女性的な笑み?子供の無邪気な笑顔ではなく?
……駄目だ。駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ
しくじった、間違えた、失敗した……!
失敗なんて駄目だ。マズイ。あってはならない。
女性的な笑い方なんて成長するまで使う筈じゃなかったのに!まだそんなものは俺に実装してない!
これでは
ほら、ジョンだってぽかんとしてる。何で
「シーナ、そんな笑い方も出来たんだな……」
「え――っと、何のこと?俺はいつもどおりだぞー!」
動揺を即座に抑え殺す。決して外に漏らさないように、腹芸の出来ない俺の一部を組み替えて演技の機能を強化した。
ほんの僅かな違和感さえも許しちゃいけない。
「……ふーん。まあいいか!それよりも次の襲撃がある迄は寝て体力を回復した方が良いんじゃないか?迎撃の主戦力はお前なんだ。誰も文句言わねえさ」
「ああ、そうだな!じゃあバナナ食ってから一眠りしとく!」
「おう、そうしとけ」
……ギリギリセーフか?
少しばかり訝しんだようだが、さほど気にしたようには見えなかった。
…………。
まあ大丈夫だという過程で進むしか無いな……今更印象の修正なんて不可能だ。
一先ず、ちゃんと休んでから考えよう。なに、これまでの積み重ねのお蔭でまだ『背伸びしがちな子供』という程度だろう。
―――
万が一、精神構造に異常が見つかれば。
億が一、精神が崩壊してしまったら。
そんな状況に陥った際、『セーフティ』は本体の精神を初期化する役目を担っていた。つまり、一度精神を完全に分解して――というより、するだけだ。
例え精神が完全に砕け散ってしまっても、
だから『セーフティ』は極単純で、故に強靭な実行力を持っている。
―――『セーフティ』は、ただ監視するだけの簡素な存在。
で、あるが――だからこそ理解していた。
けれど、まだ『条件』を満たしていない。
『セーフティ』は、本体をただ眺めていた。
■
更に3日後。
オーストラリア北部、海岸線。
大規模『魔物』対策前線基地にて。
「『ウェスト・ローランド』所属、ジョン・バッカス。以下四名入室致します」
「ああ、よく来てくれたね。さあ、こっちへ」
「「「「「失礼致します」」」」」
何ともSFチックな作戦会議室――超高密度に機能性を凝縮した一室に用意されたホログラム台に歩みを進める。
俺達以外にも存在する三名の兵士の隣に並び、一列となってホログラムと議長を務めるご老人に顔を向けた。
「……さて、人員は揃った……『大陸α侵攻作戦』の会議を始めようか。私はエスター・バッカス。今回の作戦の司令官となる。よろしく頼むよ。……では、まずはこの資料を見てほしい」
空中に投影されたホログラムに活字と画像が舞い踊り、世界中の『今』を映し出す。
――世界中で突如始まった侵攻の原因――仮称、大陸α。
余りにも巨大に過ぎる樹木と険しい山岳で構成され、凡そオーストラリア大陸と同等の規模を誇る。
その『中心部』には見るも悍ましい極大の肉塊で構成された『卵』が存在する。全高700メートル。直径300メートル。
巨大なソレは僅かに浮遊しており、その表層から夥しい数の肉片を放出する。
地に落ちた肉片は数時間掛けて変形し、昨今人類に危害を及ぼし続けている『魔物』へと成長する。
「ここまでは先週あった情報開示通りだが……ここからは先日判明したばかりの情報だ」
曰く、『卵』は有機物無機物問わずあらゆる物体を吸収する。
それらは内部で数日掛けて侵食を受け、そして『卵』の血肉と成る。
つまり、もし『卵』がある程度動けるのであれば――
「もしそうならば、産み出される『魔物』は尽きることが無い。それはそうだ。地面にその巨体を擦り付けるだけで無尽蔵に大地を吸収して血肉にすることができるのだから」
「故に、ここに宣言しよう」
「我々は、滅ぼされる前に敵の首魁たる『卵』――『魔性母胎』を破壊する」
「敵地は夥しい数の『魔物』が存在し、現在の兵力では完全に殲滅する事は不可能だ。故に気取られぬ様に侵入し、極力消耗を抑え、戦闘は避けて作戦を進行する――『スニーキングミッション』だ」
「人員は少数精鋭。世界で最も個の力に長けた8人に全てを掛ける」
…………。
……なんとまぁ。
確かにキリがないとは思っていた。
現状のままでは消耗戦になり、兵力も物資も有限であるこちら側が先に体力切れになるとも思っていたが……うん。まぁ敵の首を叩くのが最も正しいし有効なんだろう。
しかし、だ。たった8人で攻め込む?
そもそも人力である必要は?
弾道ミサイルを打ち込むのは駄目なのか?
「諸君は思っただろう。何故直接赴く必要が?人力であるのは何故?」
「………。」
「無論、そう考えたさ。世界で、国籍を問わず武力を持つ国々が弾道ミサイルを発射し、迫る危機を粉砕しようとした。……だが、無駄だった。奴らは対空機能さえ有しているのさ。コレを見給え」
新たな映像が空中に投影される。
これはドローンだろうか。中空を泳ぐ視界は、様々な方位から飛来する大きなミサイルを映している。
見えているだけでも百を超えるソレは、見るも悍ましい『魔性母胎』へ迫り――しかし、到達できず爆散した。
「……これは?」
列の右端に居る男性が動揺の声を漏らす。
恐らく――ミサイルを迎撃した幾百も煌めく緑の光条に対してか。
或いは敵の見せた理性にか……ホントにどうなってんだ?
コレまで遭遇したヤツらは――『魔物』は基本的に原始の本能に従う動物そのものだ。
そこに理性は介在しないし、知性なんて何処にもなかった。
それが、『魔性母胎』を
……明らかにコレまでとは違う。
「……うむ。これが人員を送り込む理由だ。全くもって不可解だが……『魔物』は『魔性母胎』を守護し、高い対空能力を保持している。とてもではないがミサイルでは破壊できない」
「核は、使えないのですか?」
「ああ……人類の危機に瀕する中、最もなのだがね……保管施設が『魔物』に攻め込まれているそうだ。人員の防衛そのものは問題ないが、
「……人質ですか」
「そうだ。明らかに何らかの知性在るものが指揮している。それが何なのかは分からないがね」
「理由は分かりました。しかしながらたった8人での作戦遂行とは……現実味がありませんね。申し訳ないが私共、『ライリッヒ社』はお断りを――」
「ああ、ああ。分かっているとも。成功率がそう高くないこともな……」
「なら……!」
「たが……それしか道は無い。この任務を受けてもらおう」
ガチャ。
虚空から無数の硬い音が響く。
……これは聞いた事があるぞ?
そう、具体的に言うと同僚達が戦闘時に皆して鳴らす……銃を構える音ねー。はい。
――ガチリ。脳髄が噛み合う。
ギリギリと精神が軋みを上げ、想定外の負荷を受けた回路が悲鳴を上げた。
それもこれもこの
なんだ、このクズは?
態々無関係の爺の為に出張ったというのに、言うに事欠いて脅しだと?
ニヤニヤと薄ら笑みを浮かべる皺くちゃの肌。なんと悍ましい嗤い顔だ、反吐が出る。
「無論、強制だ。君達は兵士だ。当然だろう?」
巫山戯るな。戯けるな。
何だ、この穢らわしい枯れ枝は。
手折ってしまおうか……!
「最新鋭のステルス迷彩だ。すごいだろう?私の目にもこれっぽっちも見えやしない。ああ
、抵抗などは考えないように。今君たちに向けられている『特殊突撃小銃REG021』は自動追尾機能を持つ。君達には避けられまい。……まぁ、シーナくんには避けられるかも知れないが……君の同僚達は無事ではすまないだろうねぇ」
ギリギリギリ。
出力回路が初期の想定を超えた熱を放つ。
怒り、憎悪、悪意――嘗て『不要』と断定した感情が沸々と湧き上がった。
ギリギリ、脳髄も、歯の擦り合わす音も変わらず響く。
きっと今の
隣のジョンから息を呑む音が聞こえた。
ああ、足元が揺らいでいるようだ。
意識が白熱するあまり、現状を理解する機能が少しずつ欠けていく。
………。
おかしい。
『セーフティ』の効力で異常は初期化されるはずが、未だにぼくは熱を放っている。
コレまで感じたことの無かった激情は、まるで目にしたことのない世界を彩った。
「さあ、答えはどうする?YESか、ハイか」
まるで今のぼくみたいに、『湿った炎』が足元を憎悪のままに這い回った。
青いソレが、狂ったようにのたうち回る姿は幻覚なのだろう。
だが、それは。
間違いなくそこに在るように感じられる。
「答えを出すのは今だよ。君達を待たない。――ああ、シーナくん。分かっているとは思うが此処には植物を生やすことは出来ないよ。周囲や下方数十メートルに土壌は存在しない。もし生やした所で、此処に到達する前に君達を殺す」
「ああ、そうだ……ジョン。キミの弟……大学に行き始めたばかりだったねえ。ちょっと前には仲良くなった女の子がいるって喜んでて……ああ、もし
「――さあ、選びなさい」
『湿った炎』。これは狂い始めたぼくの見る幻覚か?
いいや、違うな。だって――
ぬるり、と。
地面を這う青い揺らめきは、爺の両足を
「――は?」
邪魔だ。
お前達は
だから――
「ま、待て。何だこれは――!?」
「ひぃ!わ、私の腕が!」
「何で!見えないはずなのに!」
「あああああ!指が!骨が!?」
「おお、神よ……!」
くねくねと。
けれど轟々と。
激しさと柔らかさを両立するソレは現実へと実態を伴って顕現し、
ははは、いい気味だ。
ぼくに牙を見せたんだ。じゃあ不安の種は取り除かなきゃ――
「おい!シーナ!」
楽には死なせない。
まずは両足を外して、両腕も溶かして、じわじわと炙り殺してやる。
「シーナ!落ち着け!」
ほら、ぼくの火は優しいだろう?
甘く、優しく腐らせるのだから――
「シーナァ!」
パァン!
乾いた音が鼓膜を叩く。
同時に、ヒリヒリとした熱が頬に篭もる。
気付くと、青い炎は時が止まったように静止した。
両足や四肢全てを失った
「……シーナ」
目の前で、焦げ茶色の瞳がぼくを見つめている。
まるで揺らぐことのない強い意思を秘めた瞳を見つめ、感じる温もりを感じて徐々に心が安らいでいった。
「シーナ……」
「……なに?」
「落ち着いたか?」
「……うん」
「そうか」
「……謝らないし、後悔はないよ」
「ああ……それでいい。お前が手を汚すよりもよっぽどな」
クツクツと喉を鳴らす。
やはりジョンは優しいなあ。
――ぼくの手なんて、とっくの昔に汚れきっているというのに。
「さて……まずは話をつけなきゃな」
「コレに?」
「ああ、そうだ。血は……流れてないな。焼いたからか」
しかし気を失っているようだ。
随分とのんきなことだ、この外道は。
腹に蹴りを入れ、強制的に気付けを行う。
「ウごッ!?」
「よう、目が覚めたかい?
「……ああ、おはよう。愚かな
「……!?」
咄嗟に二人を見比べた。
祖父と孫。
……?
……そういう割には似てないし、間に漂う空気は只管に険悪だ。
先程の脅迫のことを勘定に入れても、恐ろしいほどに冷たい空気を放っている。
複雑な家庭環境か……こうなりたくはないな。
「おい、ジジイ」
「何かね。今私はどうやって生き延びようかと悩んでいるのだが」
「おうそうか、どうでもいいな。それで……だ。任務の件だが――」
「ああ、言わずとも良い。こうなった以上強制は――」
「受けるぞ。俺は……な」
「ジョン!?」
まあ落ち着け、とジョンが手振りで伝えてくる。
落ち着け、落ち着けって!?
何処に落ち着ける要素があるっていうんだ!?
「どうせ誰かがやらにゃいかんのだ。なら、どうせならその貧乏くじは自分が……自分の意志で選ぶさ」
「何を言って……!?」
「俺も受けるぞ」
「俺も俺も」
「僕もぉ♡」
「な!?ベン、ヘラート、リチャードまで!?」
「どうせ俺には失うものなんてないしな」
「便乗したっていう理由だけで逝けるぐらいには何もねえし」
「僕は可愛い女の子達がいるこの世界を守りたい」
何もお前達が戦う必要はないだろう!?
ぼくは、ただ
「あ、シーナは来んなよ?」
「――は?」
「身体はでっかくなっても子供だしな」
「は?」
「さすがに娘分を苦難の道に連れ出すのはちょっと……」
「は?」
「貧乳だしね」
「……はぁ……!?」
額に青筋が浮かぶ。
コイツラはよりによってぼくを除け者にしようとしているようだ。
こんな時に
「うお!?」
「ちょ!?」
「うヒャア!?」
「あぁん!」
「このまま行くぞ。あんま口開くなよ。舌噛むぞ」
「え!?簀巻きのまま運搬を!?」
「できらぁ!?」
「エルフならもっと安く簀巻き運搬できるって言ったんだよ!」
「お前ら余裕あるだろ」
「おや、私は放置かね?……おぉーい」
罵りながら熱を持たない『湿った炎』で抱え上げた。
よくわからないが自然と息をするように扱えるし、よくわからない由来だし、よくわからない存在だけど……何故か決して悪いモノでは無いという確信を持てる。
何故だろうか?
……ぼく、考えなしではなかろうか?
……………まあいっか。
とりあえずマッチョ4人を縛り上げたまま輸送機まで運んでいく。
……道すがら、出会う人々は先導したり、装備を渡してきたりと協力をしてくれる。
正直あの爺の脚を奪った時点でお尋ね者だと思ったけど……。
「……?バッカス司令官の指示ですが?……何かございましたか?」
「いいえ、何も……」
ぼく達の反逆は隠しているのか。
優先すべきは人類の安全、ということか。
個人感情を優先して即刻拘束もありえると思ったけど……いや、帰った後がマズイのかな?
任務達成できるのか、生きて帰れるかもわからないけどね!
『レイブン1、離陸準備完了。さあ、乗ってくれ!』
「ほいっ」
「ぐぉ!?」
「ヌア!?」
「ぬっ!?」
「ああん!」
各種備品が所狭しと積み込まれた格納庫、そのベンチに腰を下ろす。
正直もちょっとゆっくり出来ると思ったが……まああのままでは爺の心遣いを無駄にしそうだ。
さすがに足が無くなったこと、そしてその理由を長々と隠せるとは思えない。
だからまあ、これが正解だろう。
そもそも脅しが無ければ良かったんだけど。
「おおーい!待て待て待て!」
「俺達も行くぞ!」
「僕もぉ♡」
「あなた達はライリッヒ社の……」
いそいそと滑り込みセーフと言わんばかりに乗り込んできたのは、先程の会議室で先に任務を断った3人だった。
「俺はアスター!さっきは断ろうとしたが……正直特に命を惜しむ理由がなかった!」
「俺はカルライ!妹の居る世界を守りたい!決して便乗したわけではない!」
「僕はピエール。便乗しました。それと足舐めていいですか?」
「あっ、えっ……?」
いの一番に理由が語られる。
待て!いくら何でも急すぎじゃない!?そんなに尺とか詰めたいの!?分かる!
あんまり長いとダレるよね!
『離陸するぞ!舌噛むなよ!』
「りょ、了解!」
「シーナリーダー!命を預けるぜ!」
「え!?何で俺!?」
「やったぜ!いよっ、貧乏くじ!」
「美少女が上司ってマジ?……うっ」
「くっ、シーナ……立派になって……!」
「何親面してんだ!?ジョンがやれよ!」
「無いです(真顔)」
「マッチョが上司とか嫌だわー」
「士気が低くなるんでNG」
「ええ……」
君等仲良くなりすぎじゃない……?
出会って数分だよ?
え、これが筋肉パワー……?
うっそ……あ、プロテインまで持ってきてるの?
飲んでいいの?あ、ありがとう……。
到着まで12時間。
筋肉式懇親会が開かれた。
……え!一発芸!?
よーし!持ち芸としてジョンのケツにバナナをぶっ刺し――
――は、やめて……バナナの早食いします。
何処かに在るガバを探してる
アドバイスとかなんかあったら教えてくださるとウレシイ……ウレシイ……
アンケート機能……そういうのもあるのか