【完結】習作断片=魔境現代奇譚   作:豚ゴリラ

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アンケート結果
(9) メス堕ち(病み)ルート
(21) メス堕ち(純愛)ルート
(12) 友愛ルート
(5) 絶望ルート

あ、そっかぁ
じゃあ恋愛描写の練習がてらメス堕ちさせますんで(歓喜)




無我の気付き

『ランディングゾーンに到着。ご武運を』

 

「了解……よし、行くぞ」

 

「おっけーリーダー」

 

「やっぱ美少女の上司とか最高だわ」

 

「わかる」

 

トン。

軽い音を鳴らすブーツの数、16。

爺曰く人類側の最高戦力の8人は敵地――大陸アルファの最南端の海岸に足を踏み入れた。

恐らくは人類としては初なんだろうが……正直こんな機会はいらなかった。

もっと平和に生きたい。一日百本感謝のバナナ突きみたいな。ダメ?ダメですよねぇ。

 

「シーナ、例の『爆薬』はここから200メートル東だ。グーグラ先生が言うんだ間違いない」

 

「よし……じゃあこっそり……いいか、こっそり取りに行くぞ。『魔性母胎』の所に向かうプランはそっから実行だ」

 

「おっ、フリか?」

 

「やめろよ!?絶対にやめろよ!?」

 

「もしやったらケツ穴バナナチャレンジだ……」

 

「やめます(キュッ)」

 

この顔はケツ穴をぐっと引き締めた顔だな。よくわかるぞ。

ケツ穴の彼――初対面で足を舐めたいとほざいた新顔その1のアスターを先頭に、ベン、リチャード、ジョン、俺、ヘラート、新顔その2のカルライ、新顔その3のピエールの順で道なき道を進む。

 

「くっそ、恐ろしく緑豊かだな……」

 

「うわ、何だこの葉っぱ。俺のほっぺたが斬れたぞ」

 

「焼きてぇ……」

 

バサッ、バサッ。

草を掻き分ける音と同僚の愚痴の声が鼓膜を震わせる。

それ以外――敵が居るかも知れない筈の周囲は不気味なほどに静かで、どうしても俺たちの進軍の歩みは恐ろしく目立ってしまう。

 

……どうしようもない。

どうしようもないが嫌でも警戒心が高まってしまう。

 

「リーダー、この辺の植物操って道作れねえか?」

 

「ああ、そういやリーダーは植物操作ができるって言ってたな。しかしこいつらは未知の植生だぞ、大丈夫か?」

 

「あっ、そうだな……とりあえず試してみるか」

 

掌を眼前に向け、軽く丹田に力を込める。

 

「おお、リーダーがエルフっぽい」

 

「舐めたい」

 

うわ、きっも……。

んん!間違えた。お気持ちが悪いですわね。悔い改めて……。

 

「丁寧に言っても罵倒であることに違いないぞ」

 

「ああ、そう。何か問題でも?」

 

「無いな」

 

「そうか、なら黙ってろ」

 

「アイサー」

 

……ふぅ……。

くっそ汚い笑顔のピエールから視線を逸し、改めて意識を集中させる。

何時もと同じように、霊的ラインを「内界」から外部へ伸ばす。

 

白く淡い、肉眼に映らないソレを生い茂る緑に向け、自然(かあさん)にコンタクトを取――

 

 

『―――――?』

 

「な――!?」

 

――バチ!と、両手に衝撃が走る。

弾ける視界に意識が跳ね、思わず両足でたたらを踏んだ。

 

「うお、大丈夫かリーダー?」

 

……何だ今の……?

何時もとは違って、誰かしらない人の声が聞こえた……気がする。

自然(かあさん)じゃない……一体誰が?

 

「シーナ、大丈夫か?何かあったのか?」

 

「え、あ……うん」

 

ジョンが隣から顔を覗き込んで来た。

なんとなしに感じる安心感のお蔭か、若干さざ波を立てた心が落ち着いていく。

 

両手が――いや、違う。

霊体?アストラル体?それに準ずるモノが微かに痛む。

手をブラブラと振って僅かな痺れを振り払った。

 

「ん?おお、道が拓けて行くぞ」

 

ザワザワ。

軽く葉が擦れる音を鳴らしながら、繁る草木が揺れ動き道を作る。

不可思議な現象は起こった物の、助力そのものは得られたらしい。

 

「道できたな!さすがリーダー!」

 

嬉しげなベンの声に頷きを返しつつ、一先ず足を動かす。

……今のは何だったんだろう。

 

 

 

「おっし、このケースに入ってんのか……おも!?」

 

「リチャード、一旦離れて……ベン、ジョン、二人で固定具を外してくれ。その間はそれ以外で円陣を組んで警戒しよう」

 

「了解」

 

大きな長方形のブラックケースに取り付けられたパラシュートとビーコン。

それらを繋ぐ鎖を外す作業を、他の6人で囲み警戒する。

 

「うわ、これ大國工業のビーコンか……めっちゃ高えやつじゃねえか」

 

「それだけ今回の作戦は重要ってこった」

 

「これを使い捨てかぁ……もったいねぇな」

 

ぼやきながらも着々と作業を進めること数分。

大きな付属品を取り外した本命のケースが俺のもとに運ばれてくる――かと思えば、断念したのか二人が両手をブラブラ振りながら歩み寄ってくる。

 

「シーナ……これは俺らじゃ運べねえわ。多分お前が持つことを前提にしてるな」

 

「お願いリーダー♡」

 

「うへぇ、まじかよ……。しょうがねぇな――おも!?」

 

……おおぉ………。

両足を強く踏ん張り、腰や背中の力を使うことを強く意識することでようやく姿勢が安定する。

きっと数百キロは在るだろう長方形のケースを、側部に付けられたベルトを利用して背部に固定した。

何でこんなのを用意したんだ……?

これ筋力特化か、相当純度が高い異種じゃなければ待ち上げることすら出来んだろ……。

 

「……それ、背負ったまま戦えそうか?」

 

「う、うーん……ちょっと厳しいかも。普段どおりに跳んだり跳ねたりっていうのは無理だな……」

 

「うーむ、そうか」

 

「リーダーの植物操作とか、あの青い炎での遠距離戦ならいけるんじゃないか?」

 

「むしろあの速すぎる挙動が無い分安心かもな」

 

「わかる。目で追えねえもん」

 

「俺は目で追えるぞ!」

 

「マウントとるな糞が……舐めてると潰すぞ」

 

「ぷぷぷ!(裏声)ざぁあぁぁこ↑↑↑↑!!(高音)」

 

「きれそう」

 

ピエール VS リチャード、ファイ!

いやぁ、始まりましたね!

変態VS変態!どちらがより上の産業廃棄物か!今回の任務で白黒はっきりしそうです!

どちらも異種としての純度はかなり高いそうですが、隠密中であり、重火器を使えない現状でどちらが勝つのか?音は立てるなよクズどもが(素)

 

「いや黙らせろよ。口にバナナ突っ込んどけ」

 

「しょうがないにゃあ……」

 

いいよ♡(猫かぶり)

 

 

 

 

「いやぁ、唐辛子ミント味のバナナは強敵でしたね」

 

「まだ口の中いてえよ……」

 

「おら、黙って動け」

 

「あいさー」

 

カサカサ。

軽い衣擦れの音のみを残し、順調に北方へ歩みを進める。

かなりの速度で進軍しているものの、未だに目的地は遥か彼方。

上空に浮かぶ『魔性母胎』は、最初この大陸に到着したときから変わらぬサイズ感を保っている。

果たして近づけているのか……どうしても不安になってしまう。

 

目的の方角が一目瞭然で分かりやすいのはありがたいが……な。

 

「しっかし暑いな……熱帯雨林かよ」

 

「まあ地理的には可笑しくない。それにもう十三時だ、太陽もガンガンノってる頃だろうさ……北風さん頑張ってくんねえかな」

 

小銃を構える左手首にチラリと視線を送る。

この大陸に到着したのは午前八時。未だ日が昇り始めた頃だったが、それから約五時間経っている。

 

……そして、その間敵性生命体との遭遇は一切ない。

存在さえ、確認できていない。

 

――不気味だ。

 

「おい、シーナ……」

 

「ん?」

 

「こいつを見ろ」

 

前に立つジョンが直ぐ側の木の幹を指差す。

 

「うわぁ……」

 

ツンと鼻を突く刺激臭と、その発生源である――腐り続ける赤黒い粘液がこびり着いている。

些か鼻に対するダメージが大きいが……仕方なく、本当に仕方なく確認のために歩み寄る。

 

「うぐっ……これは……うん、分かりやすい魔物の痕跡だな……くっさ……!」

 

こうして見ている間にもドンドン磨り減っていく木の幹は、明らかに既存の動物達の法則を無視した酸性を有している。

そして地面には三本指の足跡……しかしこれは……。

 

「うわ、何だこの足跡……1メートル近くはありそうだ」

 

「ううむ……この粘液の降りかかり方からして上方から垂れてきた、といった様相だな……あれだ、ちょっと飛び散っただけのヨダレだろうな」

 

「ゾッとしねえな……」

 

足跡は俺達の進路――『魔性母胎』の方向へ続いている。

この木の腐り方からして、おそらく通り掛かったのはついさっきだろう。

……このまま進んでしまえば鉢合わせになる可能性があるな……。

 

「同感だ。一旦時間を置くか、迂回するのが良いだろうな」

 

「ああ……しかし迂回となるとだいぶ時間を食いそうだな」

 

「まあ元々それなりの日数を掛けて進軍する予定だったんだ。多少は変わるまい」

 

「……やっぱり距離が、なぁ……」

 

「1000キロメートル……途中でリチャードのアレを使うにしても遠いな」

 

「やだ……俺の責任重すぎ……?」

 

「おー、たしかにリチャードがしくじればそれだけ作戦遂行が遅れるなぁ」

 

「胃が痛い」

 

右手を腐りかけの木に向ける。

流石に見て見ぬ振りというのも目覚めが悪い……。

 

ぬるり、と足元から這い出た『湿った炎』で腐食性の粘液のみを焼き、その上でパスを通して気合っぽいなにかを注ぎ込んだ。おら!頑張れ!負けるな!もっと熱くなれお前ならやれるやれるどうしてそこで諦めるんだまだまだまだまだもっと頑張れ!never give up!(ネイティブ)

 

メキメキメキ、と死にかけだった木が震える。

 

「……よし、治ったな」

 

数秒の時間を掛け失った部位を再生した幹に、申し訳程度の獣避けの香りを付けておく。無いよりはマシだろ……マシだよな?

 

「……進むぞ。十時の方向に行こう」

 

「オーケイ。ちなみに途中で遭遇したらどうする?」

 

「迅速に仕留めることが出来そうなら殺るぞ。そうでないなら……まあ他のバケモノ共に見つからないことを祈っといて」

 

「じゃあ世界中の美少女達のおててに祈るわ……おお、我らを救い給え……そしてそのおててを舐めさせたまえ……」

 

「じゃあ俺は世界中の美少女達のおみ足に祈る」

 

「きっも」

 

「なんだこいつら」

 

「こわ」

 

「リーダーに近寄るなよ?」

 

「うるせえ舐めるぞ」

 

「「「「「ヒェッ……」」」」」

 

とりあえずジョンを傍に置くことにした。

何かあったらジョン投げるからな!覚悟しとけよ!

 

 

 

 

 

午後17時。

変わらず茂りに茂った深すぎる森の中。

あまりにも景色が代わり映えしないが、衛星先生曰くきちんと移動できているらしい……。ほんとか?

さっきから『魔性母胎』のサイズも変わってないように見えるんだけど?あ、もう50キロは移動してんのか……はえーすごいよくわからん(無知)

 

「よし……ここをキャンプ地とする」

 

「了解。工事は任せろ」

 

「俺も工事する」

 

「俺は警戒しとく」

 

「俺は見守ってる」

 

「俺はリーダー見てる」

 

「リチャード、ピエール、ベン。お前らはこっちで警戒組だ。ちゃんと働けよ……さもなくばキンタマ潰す」

 

「はい……」

 

ジョンが二人を連れて警戒に赴くのを見送りつつ、肩に背負ったケースを地面に下ろす。

あ゛ー……すっげえ疲れた。軽く伸びをするだけでボキボキいってら……おおー、あああー……。

 

ボギ、ゴリュ、ベギ!

あっ、なんかマズそうな音……まあいっか!(重労働後特有の思考停止)

 

「リーダーはそこで休んでてくれ。すぐに終わる」

 

「おおおー……頼んだ」

 

ポスリ、とすぐ後ろに倒れ込む。

空は軽く赤みがかっており、もうじき日が落ちることが見て取れる。

 

……そう、夜だ。

既存の知識が有効でない未知の領域で夜を明かす。

これが如何に危険な行為か、さほど知識のない素人でも分かるだろう。

 

……しかしどうしようもない。

この超長距離を徒歩で移動し、日が昇っている内に全てを終わらせ帰路につく……そんなの不可能だ。

だからこそ野営というのは避けられない。

 

今日は結局一度も魔物に遭遇することはなかった。些か……いや、完全に異常事態だ。しかしその異常事態が今夜中も続くことを祈る他ないだろう。

 

「リーダー、とりあえず人数分のテントは用意できた。一応周囲にも簡易的な罠も仕掛けた……が。効果があるとは思えんな」

 

「消音性のあるトラップだしな……まあしょうがないよ」

 

「ジョン達を呼ぼう。軽く飯を食って……そっから明日のことを考えればいいさ」

 

「ああ、そうだな。そうと決まれば俺が飯の用意を――」

 

uhdiugeuyg

 

ぽたり。

足の直ぐ側に、赤黒い雫が滴る。

ジュウウウ、と空気の抜ける音が響き――

 

「敵襲――!!」

 

シュルシュルシュル。

四方八方から飛び出す幾百の枝がその()()を縛り付ける。

 

三本指の四足。

六本腕を生やす人体によく似た上半身。

その頭部には全方位に大小の口が有り、その全身からは甘い、脳髄が震えるような瘴気が漂っている。

8メートルはあろうかという灰色の巨体を細かく震わせ、そいつは意味不明な()を撒き散らした。

 

uhdthoieig――!』

 

――つまり、この大陸に着いて初の接敵だった。

 

「リーダー!」

 

アスターの焦った声が響く。

 

六腕が撓る。

灰色の鈍く地面を強打し――そして周囲の樹木ごと地面が捲くりあげられる。

 

「――!」

 

生やす。

生やす。

より速く、より多く、より強く!

枝ではすぐに溶かされ、容易く振りほどかれる。

ならば幹をもって拘束してしまえ――!

 

「うお!?やっば……!いつの間に此処に来たんだこのデカブツ!?燃やさなきゃ!(使命感)」

 

メキメキメキ!

とぐろを巻くように幾重にも重ねられた拘束に重ね、更に上から直径3メートルの大樹を覆いかぶせる。

……そしてこいつらは既存のモノではなく、『燃えやすさ』を念頭に置いて作られた新種である。

 

ポーン。とヘラートとアスター、カルライの三人が円筒を投げつける。

それらは缶のようであるが――人類の造った偉大なる思想『燃やせばなんとかなる』を体現した正真正銘の兵器である。

 

「いっけぇ!大國工業製105式焼夷手榴弾12万円(自腹)!」

 

豪、業、轟!!

三段重ねの科学の炎は忽ち木々を燃やし、巨大過ぎるキャンプファイアーを作り上げた。

俺の避難誘導が間に合わなければこの周囲一体は火の海になっていたかもしれない。

 

「すまん遅れた――ってなんだこりゃ!?」

 

「アツゥイ!」

 

「アッツゥイ!!」

 

「なんかいつの間にかデカイのに襲撃されてた。今はそいつを縛って燃やしてるところ」

 

「……これでくたばりそうか?」

 

「それは――ダメみたいですね」

 

「ま、そうなるわな」

 

腐る。

その体を縛り付ける樹木が。

その体を乗せる大地が。

その体を蝕む炎が!

取り巻く全てを腐らせ、呑み込み、蝕んで、その灰色の巨体を再び表す。

 

ソレは僅かな手傷を負ったようだが……変わらず屹立している。

 

tudystwdfytsfsvxuvsuytxguqywg!!!』

 

腐食の風が吹き荒んだ。

大気が目に見えて変色して――なんだあれ!気持ち悪!

つぶつぶとした赤くて丸い球体が敵性生命体の口から飛び出し風に乗っている……きもい……。

 

「舐めんな!馬鹿野郎俺は勝つぞお前!行け、我が風!」

 

ベンが掌底を放つ。

 

――パァン、と破裂音が鼓膜を叩き――

 

 

――そして、空気が裂けた。

 

文字通り、赤黒いヤツの領域を縦断し、明確にただの空気と腐食の風が領域を分ける。

ベンの後方にいる俺達の周囲、清浄な空気を避け腐食の風が通り過ぎる。

 

瘴気に触れてしまった周囲に立つ木々は、途端に腐り落ちてしまった。

 

「いいぞベン!そのまま連打してくれ!」

 

「俺達を腐らせないでくれ!」

 

「その間に作戦会議だ!」

 

「おおおおお!急いでくれええええぇ!!」

 

大急ぎでベンを除いた七人で円陣を組む。

……議題、どうやってあの灰の巨人をぶちのめすか。

 

「どうする?」

 

「まあ逃げられんだろうし……倒すしか無いな」

 

「どうやってだ……?」

 

「それがわかれば苦労しない」

 

「俺の槍をぶん投げるのは?」

 

「駄目だ。そいつが腐ったら後で困る」

 

「鉛玉ぶっ放すのは?」

 

「俺達警戒組が帰ってきた瞬間、ぶち込んでないと思ったか?」

 

「効果の程は……って、まあ効いてないんだよな……」

 

「おう。やっこさんの身体、かなり硬いらしい。大体弾かれた」

 

あーだこーだと案を出し合うも、会議は踊るばかりで何も実を結ばない。

背後では掌底の連射音と空気の裂ける音が響くが、ベンの体力と比例して明らかに速度が落ちている。

 

――マズイ。

 

何がマズイって、時間という値千金ともいえる貴重品をただ浪費している現状だ。

 

……いっそ、腐ってしまっても仕方がない。先々を見据えても、今を生き延びることさえ出来なければ意味がない。

こうなったらこの相棒()を突っ込むしか……。

 

「……一つ。突破口になり得るものが在る」

 

「ジョン?」

 

「俺の異能は知っているか?ハイ、リチャードくん」

 

「絶倫」

 

「ぶっぶー。正解は『物質化』です。お前どつき回したろうか」

 

初めて聞いたジョンの異能。

物質化……物質化?気体を固体に的な?

 

「アスター、まだ焼夷手榴弾は残ってるな?」

 

「おう、まだあるぞ……って、ああ!なるほど!」

 

「まずはクソ火力の手榴弾の火を凝縮して固体にする。そんで、それをシーナの拳銃――何だったか、とにかく出番のないアレに装填してぶっ放す」

 

なるほど……。

腰部のホルスターからその出番のない拳銃こと『ソリッド・ソリッド』くんをクルリと取り出す。

俺が白兵戦を好むせいで滅多に出番がないが――こいつは事『頑丈さ』に置いて右に出る者がいない。

コイツを造った『意義ある痛み(Meaningful pain)』所有の銃器の中でも随一の特殊性を誇っていた。

 

集弾性――普通。

反動――並。

携行性――そこそこ。

弾薬互換性――微妙。

頑丈さ――天下一品。

 

「よし。シーナ、簡易的にでも良いから篝火を造ってくれ。そんであの青い炎を灯せ。そんでその他はそこに105式と手持ちの可燃物をバラ撒け」

 

「了解!」

 

「ガッテン!」

 

「おっけー!」

 

右足で地面を叩きつける。

より濃く、より強く。植物操作の純度を深め、その意思を衝撃に乗せて送り込む。

 

――メキ、メキメキメキメキ!ゴキ、ボキ!

超高速の成長を果たしたが故の異音が響き、再び木の幹が顔を出す。

ウネウネとくねりながら絡み合い、通気性を確保したオブジェが出来上がった。

次いで、足元を這い回る『湿った炎』を薪に焚べる。

 

じわり、と。新鮮な樹木を這い回り、湿り気を帯びた青い火を灯す。

 

「燃えろぉ!」

 

ピンを跳ね飛ばす甲高い音に続き、極大の爆音が耳を揺さぶる。

青い火に重ね、赤い科学の炎が合わさった。

 

それの鳴らす音は腹の底から頭頂まで響き渡り、否応なく全身を乱打してくる。

 

そして、俺はエルフであるが故に長く伸びた耳は鋭い聴力を有している……そう、耳が良いのだ。

――つまりめっちゃ耳が痛い!

 

それを見たジョンは、その灼熱の光に両手を翳した。

 

「概念固定……!」

 

――バクリ。

 

ジョンから発せられる()()()()()()()が炎を呑み込む。

ギチチチチチ、と空間ごと圧し潰し、物理法則を無視した超常の摂理が顔を覗かせ――

 

 

―――青い炎が、結晶化した。

 

 

「概念構成補強……事象誘導完了……物質界指向性決定……!」

 

赫灼の炎が渦を巻き、中空の力場一点に収束し圧縮される。

……眩しい。

あまりにも光量が多すぎて、一体何が起きているのか視界に映らない……が、しかし。

僅かに見えた断片から、その炎は大口径の銃弾らしき形状へ固定化されている……ように見える。

 

「よし、よし……!出来るぞ!シーナ!準備しろ!」

 

「分かった!」

 

パァン!ぱぁん!パアン!と背後で響く空気の破裂する音をBGMに『ソリッド・ソリッド』略してソリソリを構える。

()()()()()()力で構成された弾薬を受け入れるため、重厚な薬室を開いた。

さほど使う機会に恵まれずとも、丹精込めて整備を続けたお陰で不具合なく、スムーズに受け入れの体制への移行を完了させる。

 

「これを装填し――――!?」

 

「――危ねえ!!」

 

ベンの怒声が響く。

――危ない?

 

咄嗟に振り向く。

 

「……あ」

 

巨人が、目の前に立っていた。

何処にも目が無いのに、たしかにソイツは俺を凝視している。

 

じぃっと、まるで俺の奥深くを検分しているように。

 

――ギシリ、と身体が固まる。

手足の神経伝達が停止し、指の一つすら動かせない。

瞬きさえ封じられた視界で、ソイツの顔に在る無数の口が開口するのを黙って見つめた。

 

『aaaAAAAaaaAaaa……』

 

「あ、ぁ?」

 

大樹の如き強靭な腕がこちらへ向けられる。

大きな大きな掌を広げ、まるで俺を掴むかのように――

 

「シーナァ!」

 

「ぇ」

 

ドン!

体躯の芯まで衝撃が奔る。

視界が一気に吹き飛び、硬い何かに身体をぶつけてようやく停止した。

大きくて硬いそれは、ヘラートの身体だった。

俺を受け止めたままの体勢で怒声を発する。

 

「ジョン!大丈夫か!?」

 

「ぐ…ぅ……!だ、大丈夫だ……それより――!」

 

「お前……腕が……!」

 

巨腕の巻き上げた土埃が晴れる。

ジョンは細かい切り傷を全身に負いながら、片腕を庇っていた。

必死に左腕を抑えて――?

……左腕じゃ、ない?まるで肘までしか無いように、短い腕の先を掴んでいる。

 

………腕が、腕は?何処にあるんだ?

左腕が見当たらない。

 

右腕はある、じゃあもう片方は?

どこに行ったんだ?

 

「ピエール!ジョンを運ぶの手伝え!リチャード!ヘラートに結晶をぶん投げろ!それ以外!頑張ってコイツを抑えるぞ!」

 

「おう!ヘラート!ちゃんとリーダーに渡せよ!」

 

「急いでくれ!もう腕が限界だ!イきそう!」

 

連続する乾いた発砲音とベンの放つ掌底空気砲。

それらが空間を遠慮なく蹂躙する中、鈍い火を灯す銃弾が軽い弧を描いて放られた。

それを目の前でヘラートがキャッチする。

 

「っし!受け取った!」

 

「ジョン……ジョンの、腕は?」

 

……………。

 

なあ、なんで黙るんだ?

おい、ヘラート……?

 

「リーダー……いや、シーナ。今はとにかくヤツを斃す事だけ考えろ。どうしても気になるなら――ジョンの腕の借りは、ヤツの死で贖わせろ」

 

 

…………。

 

……ああ。

 

 

……うん。そっか――

 

 

――ああ、ああ。いいとも。

 

ジョンに、()()を導いてくれた人に傷をつけたんだ。

()()の大切なものに手を出したんだ。それぐらいは当然だよね?

うん、そうだ。決して変なことじゃない。

 

だから、殺す。

 

ぐちゃぐちゃに、バラバラに引き裂いて殺してやる。

必ず殺す。何をしてでも殺す。何処まででも追い詰めて、殺す。

 

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

殺す。

 

必ず、殺す。

 

「ヘラート。それ貸して」

 

「お、おう……なんか間違えた?(小声)」

 

受け取った結晶弾を薬室に叩き込む。

ガチャリ、と。甲高い鋼の音を立ててその姿を隠した。

それまで温度の無かったソレは密閉された途端に強すぎる熱を放ち、握ったグリップに伝わる熱が掌を軽く焼く。

 

……けど、それがなんだっていうんだ。

ジョンはもっと痛いに違いない。だからこの程度どうでもいい。

 

ベンが放つ掌打の連撃に抑え込まれていた巨人がこちらに向いた。

 

ytgfeyudtfywtf――!?

 

顔中にある口をパクパクと開閉させ、聞くに堪えない悲鳴じみた雑音を高らかに叫ぶ。

気持ち悪い。

唾を飛ばすなよ、空気が腐る。

 

中指を突き立てた。

 

utfswytfdsytewfwytftdreftrdfweqtfsudxuerygufy!!

 

走る。

 

奔る。

 

その巨体を雨あられと乱打する攻撃に目もくれず、ただ此方を目掛けて疾走する。

黒い銃身に込められた『殺意』が自分を害しうると気付いたのか、六腕を振り回しながらがむしゃらに、無様に。

ソイツは体中から撒き散らす瘴気を更に増やし、周囲をこれまで以上に腐らせ、宙空を漂う赤い果実が破裂し撒き散らす瘴気がその腐れを加速させる。

 

 

 

――だが、もう遅い。

 

引き金を引く指にあらん限りの憎悪を乗せる。

 

「死ね」

 

小さな小さな青い太陽が、愚かな灰の巨人を灼き殺した。

 

 




堕ちろぉ!
あ、今はヤンに見えても純愛になると思うんで……多分
ガバっても許して?
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