スクールデイズはラノベ式で!   作:もちもちスイカ

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ノベ校とは一体どんな学校なのか。徐々に明らかになっていきます...!





第3話 救世主(前編)

 

 

 私たちは危機的状況にあった。

 

 学校内で使う事の出来る専用ポイントは既に底を尽き、クラスメイトの大半が支給される昼食で何とか空腹をしのぐ毎日。食料はおろか、自身の寝床さえまともに確保できないほどに私たちは追い込まれていた。

 

 それでも全員が退学にならなかったのは、私たちの()()()()である、叢雨朔の存在だろう。彼女がいなければ、とっくに私たちは終わっていた。

 

 そんな、そんな我らが救世主となった叢雨朔から、私はとある任務を言いつけられていたのだった。

 

 

 あれは、1年生最後の登校日のことだった。

 

 放課後、誰もいない教室で一人読書に耽っていた私の元に彼女がやって来たのだ。

 

「ねぇ、永崎(ながさき)さん。そろそろ私たちのクラスにも主人公が必要だと思わない?」

「....まさか私なんかに叢雨さんみたいな人が話しかけてくるなんてね。でも、その考えには賛成。もうこのクラスは崩壊寸前だもの」

 

 本を読む手を止め、賛同の意志を示すと叢雨朔はその可愛らしい顔に微笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、よかった。それでお願いの話なんだけど...永崎さんにはクラスに来る主人公くんのサポートをして欲しいんだっ」

「私がサポート? ....いったいどうして?」

 

 私はただのモブキャラ。ライトノベルでは挿絵にすら登場しない、セリフを吐くわけでも、物語に関わるでもないただの数合わせのモブだというのに。

 不思議そうに首を傾げる私に叢雨朔は今までにみたこともないような何処か冷たさを感じる笑みを見せた。

 

「ほら、永崎さんっていい具合にキャラ付けが出来てるでしょ? 読書家でクラス内でもちょっと浮いてる女の子、なんて主人公と最初に深く接するクラスメイトにピッタリの人選じゃない?」

「......そう、かしら」

 

 自分が根暗なボッチだと貶されたのか、はたまたモブなどではないと存在を認められたのか。そのどちらなのかが分からなくて。私はどんな顔をしていいか分からなかった。 

 

「それじゃあ、また時期が近づいたら連絡するわ。よろしくね、根暗でボッチな永崎英里(ながさきえり)ちゃん.....なんてね?」

「..........」

 

 まるで自身の心が見透かされているかのような感覚を覚え、永崎はただただ踵を返した彼女の背中を見つめるのであった。

 

 

 __________________________________

 

 

「てことで、今日からこのクラスの一員となることになりました。物語ヒロです。この学校に来たのが今日で初めてなんで、いろいろ迷惑かけるかもしれないけど、よろしく」

 

 叢雨から渡された制服はサイズぴったりで。初登校を果たした俺はそんなことに感心しながら、例の如く転校生紹介を行っていた。

 

このイカれた学校に来るにあたって、いろいろな非常識を受け止める覚悟をしてきたのだが。実際に訪れてみると、その規模こそ大きいものの教室や学校などはいたって普通であった。

同じクラスメイトとなる生徒たちも見た目は全くもって普通。強いて珍しい点をあげるなら、やけに髪の色が派手な奴がいるくらいだ。

 

「それじゃあ物語くん。あそこの空いている席に座ってもらってもいいかな?」

「わ、分かりました.....」

 

 生徒に教えを説く立場であるというのに、やけに胸元の開かれた服を着る女教師はたった一つの空席を指してそう言った。俺はそびえ立つ双丘に視線を奪われながらも割り当てられた席へと向かった。

 

「よろしくっ、物語!」「物語くんよろしくね!」

 

 席へと向かう途中でかけれる声の数々に手を振る。彼女によって黒板に書かれた名前は相変わらずしっくりこないが、大半のクラスメイトには受け入れられたようだった。

 

これならうまくやっていけそうだ。はてさて、問題は....

 

「「......」」

 

 席に腰かけると、隣座席に座る少女との間に深い沈黙が訪れた。そのあまりの静けさから朝のHRに取り掛かる教師の声がハッキリと耳に入ってくる。

 

 何か話さなくては。咄嗟にそう思った。俺の席は教室端、主に交流を深めることになるであろう隣人はたった一人だけ。

 しかし、その隣人は朝のホームルーム中だというのに読書に勤しむ如何にもな文学少女。気難しそうな、話しかけずらい雰囲気を纏っているのだ。

 

「お、オホン....」

 

 取りあえず、自己紹介でももう一度してみるか...

 

「改めてだが...俺は物語ヒロ。よろしくな」

「......変な名前ね。私は永崎英里。永崎でいいわ」

 

 こちらが握手をしようと手を差し出すと、永崎は本を読む手を止め渋々といった様子でそれに答える。分かり切ってはいたが、叢雨と違って取っつきにくいタイプだ。

 

「ようし、永崎さんよ。隣座席のよしみとして、ここだけの話なんだが、俺の好きなことは平穏。嫌いなのはホームレスだ」

「....何それ。もしかして、同族嫌悪ってやつなの?」

「はぁ!? こちとら家有りますけどぉ!?____!!」

 

 突然大きな声を上げるもんだから、周囲の視線が一斉にこちらに向けられた。くそぉ、どうして俺がこんな恥ずかしい目にあわなければならんのだ。

 

「ったく....やってくれたな文学少女。君って結構毒を吐くタイプなのか?」

「....さあね。どうだろ」

 

 永崎はプイと顔を背け、視線を再び本へと落とした。そして発せられる『話しかけてくるな』という無言の圧。

 

(仕方ないな....)

 

 隣人が構ってくれないのであれば、俺に残されたのは校庭を眺めることぐらい。

 教師の口から飛び出す連絡事項は、転校生の俺には見知らぬ呪文のようで。やけにだだっ広い校庭を眺めることで俺の初めてのHRは終わるのであった。

 

 

 

「ほら、行くわよ」

「はいはい...分かってるから少し待ってくれ。こちとら色々荷物が多くてな」

 

 新学期一発目という事もあって学校自体はすぐに終わった。しかし、俺にはまだ果たさなければならないタスクがあるようで。

 

「この学校広いから。急がないと日が暮れるわよ?」

「....永崎サン、今ってまだ11時だよね? 日が落ちるまでには後何時間もあると思うんだけど」

 

 隣人の言葉に嫌な気配を感じつつ、俺は教師から手渡された教材の数々をスクールバックに押し込んだ。

 

 俺のやらねばならない事。それは、この学校について知ることだ。

 今日から始まった学校生活。正式にノベ校の生徒になるにあたって、俺も学校内の規則を守らなければならなくなる。

 例えば、この学校に通う生徒たちは天上院有栖によって定められた専用通貨を使用する必要がある。何でも、あくまでもこの学校は天上院家が所有する一つの施設であるからだとか。

 そして、永崎がいう通り、この学校はかなり広いらしく。その規模は一つの街に相当するらしい。学校内に衣食住、そして娯楽施設まで取り揃えているのだとか。

 

 

「っし、これで全部詰め終わった。待たせたな」

 

 荷造りを終え、永崎と共に教室を後にする。

 時間がまだ正午近くという事もあって、校内には学生たちの姿がちらほら見られた。これから彼らが友人になるかもしれないと思うと、これからの学生生活に自然とほほが緩んでしまう。のだが....

 

「「.......」」

 

 真っ先に親しくなるべき隣人は相変わらずの無口っぷりで。ただただ黙って歩みを進める永崎に、こちらから話しかけるには俺に話題が無かった。

 ちなみに、なぜ俺の学校案内を永崎が担当しているのかというと、彼女が自ら立候補したからだ。てっきり叢雨が行うのかと思っていたので少しばかり意外であった。

 

(....意外に好かれているのか?)

 

 なんてことを考えながら、廊下を歩いていると。沈黙を保っていた永崎がいきなり足を止め、口を開いた。

 

「ところで、物語くんはこの学校についてどれだけ知っているのかしら。学内施設の名称や存在なんかは別として、生徒たちに課せられるルールについての話なのだけど」

「ルールか....俺が知ってるのは、生徒たちにはランク付けがされてるってことぐらいかな? そのランクに応じて学校生活の質が変わってくるんだろ?」

 

 叢雨から聞いていたことをつたえると、永崎はコクリと頷いた。

 

「なら、何を基準にそのランクが定められているかは知ってる?」

「ぐっ....そういえば.....」

 

 格付けなのだから何かの基準に従って割り当てられていることは当たり前のことである。久しぶりの満たされた生活にホームレス時に培った『現状に疑問を持つというハングリー精神』を忘れていた。ゴメン師匠!!

 

「いい? 私たち学生にはアナタの言う通りラノベランクが付けられている。ランクは獲得したラノベポイントによって定められ、ポイントは生徒たちがいかにライトノベルの世界に近しい行動を行ったのかによって与えられる。このポイントはこの学校内の専用通貨だから覚えておいて。今の自分のランク、ポイント保有量は配布されたポータブル端末で確認ができるわ。一応長期休みには学外に出ることもできるけど、学外のモノを学内に持ち込むのは禁止だから。付与されるポイントの量を決めるのは、自律型人工知能である『ライト』。ライトは常にステルスドローンを介して私たちを監視して_____」

「ストォォォップ!!! 取りあえず一回息継ぎしようか!?」

 

 全く途切れることのない永崎の言葉を無理やり遮る俺。無口なタイプじゃなかったっけこの子!?

 

「....いきなり異性の口を手でふさぐなんて、物語くんは思い切りが良いのね」

「いやいや! 思い切りとかそういう問題じゃねえ....あのまま放置してたら永崎が酸欠になりそうだったんでな。非常事態における緊急救命措置だ」

「ふーん....中々良い返答だわ。物語くん、今のは個人的に300ラノベポイントよ」

 

 そう言うと永崎はほん少しだけ頬を緩めた。なんで嬉しそうなのか分からないので、俺は首を傾げる。

 

「ちょっと待っててな...永崎の言ったこと今から整理すっから」

 

 何だ何だ...ラノベランク? これは俺の知っているランクの正式名称だろう。んで、次はラノベポイントか。これはこの学校内で使う通貨らしいな。街のような学校で運営も大金持ちという事を踏まえれば....持ち込み禁止もまあ、分からんでもない。

 

 分からないのは、自律型の人工知能によって付与されるポイントが決定される、という部分だ。

 

「なあ、永崎...そのライトってのはどんなAIなんだ?」

「私も詳しいことは知らないのだけど....何でも一般に出版されたライトノベル全てのデータを持っているらしいわ。それをもとにして付与ポイントを算出してる、なんて噂を聞いたことがある」

「全てのラノベを読みつくした人工知能か....技術の無駄遣い感がハンパねえな」

 

『ライトノベルを再現する』という目的の元に生まれた学校には、ライトノベルの帝王がいるってわけだ。見ただけでは分からなかったが、この学校のぶっとび具合は想像以上だ。

 ドローンで生徒たちを監視っていう話も気になりはしたが、今さら一個人のプライバシーに関してどうこう言う気にはならなかった。

 

「....あ、ほらほら。見て」

「ん? なんだ?」

 

 あまりに異常な学校に一周回って感心していると、永崎が制服の袖を引っ張ってくる。促されるままに視線を画面へと向けると。

 

「えーなになに....新たに500ポイントを獲得しました? これってつまり....」

「そう。今に至るまでの私とあなたのやり取りがライトにとっては500ポイントに値するってこと」

「500ポイントってのは高いのか低いのか...感覚が分からないな」

 

 俺も自身の端末を開き、確認をしてみる。

 転入生は初期ランクDの1000ポイントからスタートらしいく、俺の電子生徒証には『物語ヒロ・ランクD・保有ポイント1000』との表記があった。

 

「あれ? 俺は特にポイント獲得してないみたいだぞ?」

「ウソ。そんなはずはない。私の経験則では、ポイントの支給はイベント発生者どちらにも与えられるはず....」

 

 確認させてくれという永崎に端末を渡す。あれこれと操作をするも、どうにも上手くいかなかったようで。

 

「.....なんかよく分かんない」

「そ、そうっすか....」

 

 ムスッとした表情で突き返された端末を受け取る。何でも知っていそうな永崎でも分からないこともあるんだな....

 

「....無駄話もここまで。ほら、時間が無いから学校案内に戻るよ」

「うっす。随分と役立つ無駄話ありがとな」

「...........」

 

 こうして俺たちは、再び廊下を歩き始めるのであった。

 

 

 





クールで孤独なボッチ読書家こと、永崎英里が登場しました!
主人公がクールキャラと行動を共にする。これって結構定番ですよね笑
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