荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~ 作:マガミ
>縮退炉の製造
縮退炉の研究と作成については、核融合炉作成に協力したウルベルトとデミウルゴスに加え、モモンガさんが参加した。
「学の無い私が参加していいのか?」
「判断力と対応力は随一だからこその要請だよ。俺じゃあカバーできない系統もあるからな」
様々な魔法を使って貰いデータを測定。最大火力を誇る世界災厄の悪魔と無数の魔法に知悉する死の支配者の協力で、魔法的要素の検知が可能になっている事も併せ、とても早い速度で理論構築が完了した。そして、製造にあたっても魔法によって様々な技術的問題をすっ飛ばして完成する。こんなんチートやチーターや!と、トールの生前やリアルの科学者が助走つけて殴るレベルのズルと言えなくもない。
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完成直後、教授に聞いていたリアルでの日本全土の必要量と比較した発電量をトールが伝えると、モモンガさんとウルベルトは口をぱかーんぽかーんと開けて、続けて肩を震わせて笑い始めた。
「素晴らしい! 我らが力に喝采せよ!」
「次元の根底たる原初の力! ついに手に入れたぞ!」
「御目出度う御座います!」
(ノリノリですねー)
完成した縮退炉はそれぞれの名の一部を拝借して「ウルデモン型縮退炉」と名付けられた。デミウルゴスは中間に名が来る事に恐縮して辞退を伝えたが、字面と音の繋がり、何より友の子との共同作業の成果と、モモンガさんはウルベルトと共に上機嫌なまま押し切った。
「…! …!」
(よっぽど嬉しかったんだなデミウルゴス)
デミウルゴスは、涙を流しながらトールの両手を掴んでブンブンと握手を繰り返した。
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ウルデモン型縮退炉はマザーシップ搭載の縮退炉と比較して非常にコンパクトで、最小構成であれば12m級兵器で半外付けか背部、15m級兵器や航宙船舶なら内部搭載可能なサイズだ。
最小出力状態の維持に専用にパッケージされた自己消滅安全装置を兼ねた選別元素投入機と動力抽出変換機が必要なものの、それらを大型化すればそのまま出力を増大可能だ。
そして最小構成ですらマザーシップの総出力とほぼ同等であり、理論上は一基でウルベルト=デミウルゴス型核融合炉の数百倍の出力を誇る。
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問題点としては、変換機から熱量あるいは電磁波に変換して出力されるエネルギーが膨大過ぎて、現時点ではそれを受け止め切れる発電機が作成できていない点だ。そのため最小構成で設置した上で、核融合炉の数十倍程度に変換出力を落として運用される事になった。
既存の核融合炉は、トール拠点の物はいくつかを予備動力炉として残し、残りは縮退炉周辺で出る放射線を遮断する障壁発生機の動力源として複数を周囲に配置。緊急時は縮退炉への質量投入を最大出力で阻止し、ワークショップへの格納と分解まで封じ込めを行う。
首都ナザリックの核融合炉は、同じく予備を残して残りを縮退炉の安全装置として配置した。発電量はトールの拠点、首都ナザリック共に既に過剰である。
「生産予定数の出力合計したら、二一世紀前半のエネルギー需要、世界規模でも余裕でカバーできる発電量ですね」
「そんなに!?」「かがくのちからってすげー!」
「くくく、リアルに転移できたなら電力会社を立ち上げるのも楽しそうだなぁ」
「うわぁ、ウルベルトさんがすげぇ楽しそう」
平常時の余剰エネルギーをどう消費するかについては、トールの持つ技術から反物質の生成とその格納パッケージ生産を開始し、対消滅炉の設置に併せて備蓄を始める事になった。緊急時にはそのエネルギーも加算する。
また、大きさとしては砂粒以下の反物質を封入した砲弾を打ち出す火器の準備も開始。
以前訪れた軍艦無双な世界の20mmガトリングガン採用型をベースにサイズアップを行った近接防御火器機構が、首都ナザリックの外壁上に512基設置された。有効射程は3km前後である。
それに加えて、内部壁の上にも長射程の152mmAGSを合計16基設置した。こちらは有効射程が100km以上である。
多分、冷戦を継続して双方全盛期そのままで最終戦争に突入したような世界の戦力が二国一斉に来襲しようと、鎧袖一触にできる過剰火力である。だが、トールの想定する仮想敵は、基準がAOGの面子のような100レベルの上級プレイヤー千人以上なので、それらはあくまで補助だと思いこんでいる。
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>次元転移装置の改良
次に、クロスゲート技術こと次元転移装置は、座標の捜索は既存の方式ではあるが、転移先に持ち込める物資の量が格段に増えた。
トールはPerkとMODにより運搬重量制限は解除されているのだが、次元転移の際は元の運搬重量が基準となっていて、超過分は主に素材を中心に置いてくる羽目になった。トールの拠点地下で最初の転移実験をした際には、行った先では物資が最低限で苦労し、帰ってきた途端、素材の山に埋もれて身動きが取れなくなった。
重量制限についてはどうやらサバイバルモードが基準になっていたようでもあり、バニラでは重量0換算だった弾薬や一部薬物類もカウントされていた。
そのため、今回入手した次元転移装置の成果として、依然重量制限はあるが、サバイバルモード基準では無くなったのは大きな進歩である。
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最後に、錬金学についてだが、これまでの物理法則基準による科学アプローチの発展型であり、高次元やアストラル界と言った、観測が困難だった領域の観測を可能にし、そこに影響を受け、あるいは影響を及ぼせる素材の生成や形成が行えるようになった。
これにより、ユグドラシル由来の魔法的素材について、以前の力技に等しい加工から、素材に適した方法による加工にシフトしただけでなく、研究段階だった七色鉱の機械加工が可能になった。未だ膨大なエネルギーの消費が必要ではあるが、加工機械では全く歯が立たなかった以前と比べれば格段の進歩である。
また、科学技術的にありえない特性の素材を扱える事を活かし、拠点限定ではあるが様々な道具や機械類の構成部品の置換を開始している。上手く行けば、格段の軽量化や小型化が進むだろう。
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以上、トール曰くこの世界での備えと転移した先での備えを兼ねているとの事だが、この男、自覚無しでシンカの果てにでも至りかねない危険物になりつつある。今更だが。
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>後始末
トールが隔離、切除して封印していた侵食領域は、AOGの円卓会議の承認を得て首都ナザリックとトール拠点のエネルギーを総動員して魔力に変換、膨大な量を送り込んで対消滅させる事に成功。かつて無い膨大な魔力の反応と即座の消失に、ツアーが飲み物を盛大に吹き出した。
「おいアインズ、いい加減にしてくれないかな!?」
『ん?ツアーか。我らも危惧する、世界を消滅させかねない危険物を消し去る算段がついたのでな。それに今回の件は友が準備したもので、私では無いぞ』
「全く…、確かに始原魔法に似た背中がチリチリする力が消えたのは感じたけど、毎度毎度、驚かさないでくれ…」
大事を取って、何も無くなった空間も収束したマイクロブラックホールにより事象の地平の彼方へ葬り去った。ツアーは口には何も含んでいなかったが、会話の途中にいきなりだったので、びっくりしすぎてブレスが出た。もうやだあの連中とツアーはふて寝した。
「安全措置で打ち込んだマイクロブラックホール試作収束砲が、射出準備から工程完了まで10分か。エネルギーロスも大きいし、安定には程遠い。あれの再現には程遠いな…」
ともあれ、懸念材料だったロンギブレス(仮称)の侵食領域は完全消滅した。
トール的には足りない所もあるが、当面確認されている脅威はプレイヤーのヨイヤミと表に出てこない勢力に絞られたので、今後の情報を注視、経過観察となった。
だが、問題が置きた。MBH試作収束砲を作ったせいで、トールのトラウマが再発したのだ。
「…縮退炉と対消滅炉の作業をしてるとき、トールは偶に死んだ目に『2mの相手にグランワームソードはやめろぉ!?』…てか突然叫ぶんだが」
「よっぽどトラウマになる出来事があったんだな」
『開幕ワームスマッシャーで展開戦力一万のほぼ7割撃破とかチートだチートぉ!?』
「なんか叫んでるぞオイ」
「ペロさん、何か聞いてたりする?」
「技術を入手するのに転移した先で、ニグンに似た声のマッドな感じの研究者にこき使われたり、そいつの所有する機動兵器がすげぇやばかったみたい」
「あー、俺も兵器テストとか随分強制的につきあわされたって聞きました」
27m大のラスボス系人型機動兵器に対して、チートマシマシで魔法金属とか錬金合金等を使ったとはいえ2m位のパワーアーマーで挑まされたのだが、それは流石に想像の埒外だろう。
「成程、それを思い出し『事象の地平に近づけば、相対時間が遅くなります…じゃねぇえええ! 個人にぶっぱするとかふざくんな!?』…大丈夫なのか?」
「余程やばいときはエインズワースが鎮静剤ぶっ刺すってさ」「トールに効くのがあるのか」「コンマ二秒効けば落ち着くんだって」「それ意味あるの?」
尚、数度だけ行われた模擬戦の名を騙る公開処刑に対し、トールは雇い主に呪いの言葉を吐きつつ一万を超える戦闘用ドローンを一気に展開した。ドローンを尽く撃破されながら肉薄し、必死こいて避けたり往なしたり、ボロボロになって生き残って反撃までしたトールが少し、いや大分おかしい。
「魔装機ですらない機体というか鎧モドキであんだけ食らい付くとかどうなってんの?」とは、とある迷子の弁。
「トールがトラウマとPTSD抱えてやべぇと言うとか、インドラの時よりやばいんじゃないの?」
「良く生きて戻ってきたな…」
「トールが全力で挑んで勝てないとか怖え」
「いったい、何ンゾンなんだ…」
縮退炉と対消滅炉の製造は重要事項だったので、トールはトラウマを克服しようと躍起になり、叫びだす度に周囲に心配された。暫くして収まったが、時折悪夢にうなされていた模様。
AOGの面々は、SSサイズのスーパー系ユニットだと思います。
トールは近接に限れば、まだガンダムファイターレベル(ただし東方先生クラス)