荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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モモンガさん達がのんびりモードだからといって、周辺諸国がのんびりとは限らない。そんなお話です


幕間 各国の現状

>竜王国の女王と宰相

 

 竜王国。竜王と人の間に生まれた、ドラウディロン・オーリウクルスが女王として君臨する人間の国だ。だがここは、人類圏とビーストマンの争う最前線でもある。

 原作においては滅亡一歩手前といった状態なのだが、こちらの世界においてはギルメン勢が傭兵団として都度、現れており、逆に勢力圏を取り戻しつつある。

 

 そして今日も今日とて、女王と宰相は国の方針決定やら何やら、執務室で半ば漫才のような会話をしている。

 

「今年も来てくれるかのう?」

 

 誰がといえば、傭兵団”始まりの九連星”の事だ。少数ながら、その強さは全員がアダマンタイト級に匹敵するとされ、事実、彼らの功績で奪還できた領域は多い。強力なマジックキャスターや隠密能力に長けた斥候役、数キロ単位で命中させる狙撃手、正面切っての戦いでビーストマンの強者を薙ぎ払う騎士など、有名所だけでも英雄級の活躍をしている。

 

 目立たないようにというのは一体どうした、というツッコミが入るかもしれないが、この世界ではLV30の時点で英雄の領域である。抑えて調整してもLV50前後の力が精一杯だった。

 

「参戦申請は頂いております。お陰で戦線も圧していますし、軍事費の膨張も抑えられてきました。今度の謝礼も弾めるかと」

「…寄付した割に、法国は意外と役に立たなかったのう。頑張ってくれたというのは聞いておるが」

「3都市の防衛と長らく頭痛の種だった旧都市の奪還ですからね、比べては流石に可哀想かと」

 

 尚、取り戻したはいいものの、長らくビーストマンの拠点として使われていたその旧都市の内情は酷いものだった。人間は家畜か肉、あるいは玩具と扱われ、食卓には女子供の活造りなどが並ぶなど、たっち・みーやウルベルト達の精神が実際は異形種でなければ、中の惨状に吐いていただろう。人化している最中は異形種の本能は穏やかになるが、精神防衛的な部分では恩恵を受けていることをここに来て知った面々である。

 

「食うのは、百歩譲って許容しよう。だが貴様らは…!」

 

 リアルでは強者が弱者を食い物にしていた。ここではビーストマンが強者で、人間が弱者だ。ただ生きるためではなく、弄ぶように殺して食う姿にそれを強く想起されたウルベルトは、暫くは一切の容赦無くビーストマンを屠ったという。

 

 後にウルベルトは許可を得て、死体の数多くが残る都市の内部を、隅々まで魔法で焼き払った。石材を除いて全てが灰になった。

 

「竜王国も先立つものが必要だろうしな」

 

 ガラクタと化した金属類などの素材は、トールに依頼して回収してもらっている。インゴットにすれば加工も容易だし、場合によっては買い取ってもいい。

 

「あのロリコンが功績で遅れを取って歯噛みしとったのは痛快じゃった!

 …だが張り合って戦績が今まで以上に伸びて戦々恐々としたがの」

「初めてがあれ相手じゃなくてよかったですね。まあ、いつでもかの傭兵団の方に差し出す用意は整っておりますが」

「明日の朝食になる豚を見るような目で私を見るな!」

「ただ、前線で聞かれた異形種の英雄は、ついぞ正体がわからんかったな」

「色とりどりの不思議な鎧で派手な戦いをしていたとか…最初は眉唾物だったんですけどねぇ」

 

 異形種の英雄というのは、これもまたギルメン達である。トールの協力であまのひとつが作り上げたそれは、起動させると某仮面ライダーの変身アイテムになる。後はそれを、アイテムごとの手順で装着して「変身!」とボイスコマンドを入力することで、自身の異形種の意匠を備えた仮面ライダーっぽい姿になれるのだ。

 幻影魔法なので触れば異形種とわかるが、外見上は少し異形を備えた亜人が全身スーツと軽鎧を装着したように見えている。

 

 尚、これの完成に一番喜んだのは、たっち・みーである。他のメンバーが固定の最も変身プロセスが簡単なアイテムを使っているのに対して、たっち・みーは再放送しかされなくなった仮面ライダーシリーズの全話を視聴していた筋金入りだった。

 

 閑話休題。

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「所で女王、さっきの差し出しの件、一応は覚悟をしておいてくださいね。大人形態で持て成す可能性も考慮で」

「形態言うな。…だ、だがまあ、ペロン殿なら、吝かではない。タッチ殿は妻帯者だそうだし、他は妾に興味無さげだし」

 

 以前、前線の鼓舞の際に同行したのがペロロンチーノであった。

 彼は「いえすろりーた、たっちみー!」など意味不明な事を遠くで叫んでいたが、ビーストマンの接近を察知したと言うが早いか、手に持った弓で次々と射撃、都合50を超える数のそれを尽く仕留めた。速射での最も遠くの標的は、500m先だったという。

 他の護衛達が騒然とする中、何でも無いと言いたげな態度で女王に向かってニカっと笑った彼の姿は、枯れた筈の女王の乙女心を十分に刺激した。だがそこに宰相は爆弾を落とす。

 

「かの傭兵団の御仁は、趣味の範囲が幅広いと聞いてますが」

 

 数少ないが優秀な諜報部の情報である。女王は手の書類をぽてっと落とした。

 

「そんな情報、聞きとう無かった!?」

「セラブレイトからライバル視されてますが、酒の席での女王の可愛さ談義は盛り上がるそうです」

「だからそんな情報、聞きとう無かった!?」

「最新情報では、女王が構えずにちょこんと立った時の、股下の空間の尊さについて語り合っていたらしいです」

「まじでそんな情報、聞きとう無かった!!」

 

 確かに足の見える衣装は何かくる物があるのは確かだ。だがペロンことペロロンチーノのフェチズム溢れた性癖語りに、女王は床に崩折れた。だが女王はそういった所も受け入れる覚悟を持とうと、拳を握りしめたという。

 

 意外な所でフラグを立ててたペロロンチーノ。だが女王よ、彼に辿り着く前に最大の障害たる娘兼嫁がいるぞ。

 

「可変型合法のじゃロリババアとか、神か!?」

 

 後に、竜女王との交際を打診してきた竜王国に対し、ペロロンチーノは姉とシャルティアの説得にジャンピング土下座を敢行したという。

 

 

 

 

>評議国の竜王

 

 アーグランド評議国にある洞窟。永久評議員の一体にして最強の竜王であるツァインドルクス=ヴァイシオン(ツアー)は、突如知覚された複数の気配に、己が棲まいの中にあって、八欲王との戦いでも感じることの無かった明確な死の恐怖を感じた。

 

 どのような能力を得ているかは不明ながら、個々が単純に保有する力の量で言えば八欲王に匹敵していた。また都合2人に至っては死闘を繰り広げた八欲王と同等と言っていい。

 

「100年の揺り戻し、なのか」

 

 前回は強者といえる存在は確認されていない。いくつかの場所でプレイヤーらしき影はあったようだが、それも50年もしない内に聞かれなくなっている。

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 だが、これはなんというか、あんまりではなかろうか?

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 強いプレイヤーが一人でも厄介なのに、数が二桁代である。あの時は始原の魔法も駆使して葬ったが、数が数だ。一斉にかかられれば、為す術もないままに敗北するだろう。確認位置が固まっている事から、下手したらあの忌々しい空中都市などと同じく、拠点ごと現れているかもしれない。

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 ただこれ、いきなり現れたのはアインズさんだけである。

 

 他のメンバーは、来た状況が特殊だったのか人間の姿で現れた(人化能力を得た状態で実情は異形種)。またアインズさんは基本装備に能力を隠蔽するアイテムを装備していた。

 人化していたギルメン達は、異形種の種族LV分だけ実質LVが低下しており、各々が変身(異形種になる)能力というか戻る事を自覚した頃には、自身の情報隠蔽手段を施した後だったのである。

 

 ツアーに何故、今になって知覚されたかと言うと、カルネ村での食事会での着替えが原因である。ギルメン達に至っては、我が子に異形種の姿をちらっと見せるために、隠蔽も含めて一時的に解除した為だ。やっちゃったZE!

 

 トールに至っては出現が10年前ながら、今の身体があくまでも物理的な生物として存在しているため、知覚されていない。

 

 一応、この世界に最適化された職業レベルは得ているが、FalloutでのS.P.E.C.I.A.L.こと基本能力値と特殊能力であるPerkをユグドラシル系の職業レベルで表記したものになっていて、鑑定系魔法で確認された総合レベルは精々30程度である。種族は辛うじて人間扱いだった。

 

「ふ、人類と証明されたぜ。鑑定結果の偽装はできないはずだ」

「俺は納得いかねぇwwwトールさんが人間とか嘘だろwwwww」

「武器持ったたっちさんと正面から素手で殴り合える時点でおかしい」

「魔法にはてんで弱いじゃんか! 痛いんだぞ結構!」

「装備で一律軽減されるじゃん? いやウェイストランドの装備がおかしいのか」

「ダメージはもろに食らってるのは知ってるが…防具無しのテストだっけ」

「ちょっとまて、防具無しであのリストの魔法食らったのかよ!」

「<分解>とか<核撃>とか、うっとかおうっとか唸って済む時点でおかしいwww」

「小型核爆弾、タッチダウンされるウェイストランドの日常」

「核砲弾ランチャーが平気で飛び交うウェイストランド怖い。怖くない?」

「超位魔法で、パワーアーマーのパーツが剥がれ切らない件について」

「ちゃんと吹っ飛んだわ! T-60fの4桁の耐久値が二桁台になったっつーの!」

「苦労して重ねた状態異常が、効かないか効いても数秒で回復する人類wwwww」

「怪我とかも、致命傷すら時間で再生してくしな…人類の定義とは一体」

 

 この世界での強さの調査の為、またはトールが確認できるLVとギルメン達の見るLVに差異があると発覚したため、色々と実験をしたときに確認された事実は、ギルメン達を大いに悩ませたという。

 調査内容の過酷さは、大概の事に慣れっこのトールをして「悪ノリしすぎだこの大人共!」と暫くへそを曲げ、拠点謹製のTVディナーの提供を拒否する程だったという。

 

「ハンバーグ食いたきゃ、カワサキさんの所でもっと美味いの食えるだろ」

「遠征先とかだと、繊細さもある料理は楽しみきれないの!」

「あのTVディナーの味の大雑把さが何故かやたら美味いんです…」

「たまにお裾分けとか期待されるんですよ」

 

 閑話休題。

 

 

 ツアーは各所の情報収集の為に複数動かしていた端末を呼び戻す。これから会うであろうプレイヤー達…複数なのが確定している事実に気が重い…の事を考えると、複数体を派遣した所で役に立たないだろう。

 

「スルシャーナ。願わくば、この世界を好きだと言ってくれた君のような者達である事を祈るよ」

 

 強靭な筈のドラゴンの胃が痛い。だがやらねばならない。この世界の秩序の為、困難と絶望が待ち受けるだろう旅へ、己の分身となるそれを派遣するのだった。

 

 頑張れツアー。負けるなツアー。のんびりと湖畔でピクニック中のアインズさん達に出会って膝から崩折れるまで(ネタバレ)。

 

 

 

 

>法国最高会議

 

 その日、王国から戻ってきた陽光聖典の部隊員から齎された内容は、法国の上層部会議において、絶望の一歩手前といった雰囲気を齎した。

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 曰く、異形種のプレイヤーが現れた。

 曰く、一人どころか複数人のプレイヤーが存在した。

 曰く、お一人はかのスルシャーナ様と同じ種族だった。

 曰く、王国への対処方法が不愉快だと言われた。

 曰く、王国の病巣は近い内に抹殺すると宣言された。

 曰く、今の人類勢力圏は維持できるようにするから亜人迫害やめれ。

 曰く、我らは人類を導きはしない、独り立ちの時だ。

 曰く、我々の邪魔をするな。

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 ニグンと副官とあと一人が、最後の繋ぎとして残る事を許された事は、か細い希望として受け止められた。ただ、能力的にも優秀だった陽光聖典の隊長であるニグンを欠く事となるため、竜王国での対ビーストマン戦線において今から頭が痛い事になる。

 

 ただそれについては、神人やそれに類する可能性が指摘されていたかの傭兵団が、力を隠していたプレイヤー達であった事が伝えられている為、良い方向に行くかもしれないと判断されている。

 彼らはビーストマンの大規模侵攻の開始を察知すると必ず現れ、戦線の維持や都市の防御や奪還等に、常に関わってきたからだ。彼らが現れるようになった10年前から、竜王国は勢力を大幅に盛り返し、犠牲者は殊更少なくなった。

 

「ニグン達がお側に仕える事が許されたのは数少ない良き知らせだが、こちらから拝謁をしようにも拒絶されたも同義か…」

「土の神殿での出来事は、覗き見をしていた事に対する懲罰だったか」

 

 原作においては、アインズさんの対抗魔法が発動。軽い挨拶と称して大爆発が起きて、儀式の間は大惨事になった。こちらではウルベルトの<手癖の悪い小悪魔>による盗難程度で済んでいる。ただし、指輪やらネックレスやらの宝飾品、はたまた一部の神官たちは下着を服の上から盗まれた。

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-

「なんで俺が他人の履いてたパンツとか回収しにゃならんのだ…チョイス失敗したなぁ」

「ウルベルト様、残りはマスターの命によりMrハンディ隊で集めておきます。どうか、お気を鎮め下さい」

「悪いな、エインズワース。後は頼むわ」

 

 盗難品は一応、ウルベルトが責任を持って回収してニグンに無限の背負い袋とセットで渡してある。返却については、法国との連絡員が来たら自由にしていいと指示しておいた。

 

「魔法による監視にすら、準備を怠らないとは…」

「ああ、力は計り知れない。至高神の皆様は異形種の姿を持てど、やはり神なのであ…なんだコレ?」

「…下着ですね。しかも女性の」

 

 預かり品として検分しておこうとニグンが中から取り出した最初のものは、土の巫女の側仕えの少女が身につけていた、一枚のパンツであった。

 

「…」「…」

「…召喚されたという手癖の悪い小悪魔の力か。神殿の者は、服の上から下着、脱げたりするのか?」

「そんな事はありません。巫女を除いて禁欲的にガッチガチです」

「ガッチガチか」

「はい、ガッチガチです」

「…」「…」

「…そうか。怖いな、手癖の悪い小悪魔」

「怖いですね、手癖の悪い小悪魔」

 

 そんな会話がされたとか何とか。

 閑話休題。

-

-

 齎された内容を精査しつつ、介入方針を一新する必要があると長引く会議。

 

 王国に対しては、どのような手段を取るかはわからないが、隔絶した力を示した神々がひっくり返すとお約束された。後顧の憂いは絶たれるだろう。

 

 竜王国については前述の通り、今のペースであれば以前の勢力圏まで回復するだろうと判断されている。力を隠されているとはいえ、神が介入しているのだから間違いなく達成される。

 

 エルフ国に対しては、亜人迫害は控えるにせよ戦線は現状維持が精々だろうか。ただ開戦理由が理由だけに、はいそうですかと停戦するのは難しい。

 

「かの神々が居れば、評議国のあれもどうとでもなるのだろうか」

「だが幽閉しているあれの扱いはどうする? 本来は条約で存在してはならない存在だ」

 

 幽閉されているあれとは、かのエルフ王が法国の神人を孕ませて生まれる事になった、番外席次ちゃんの事である。また別の脅威の復活、その問題も残っていた。

 

「神々へお伺いを立てるべきだ。竜王に差し出せば死は確実。我らも制裁を免れぬだろう」

「だがどうする? 我らは既に距離を置かれてしまった」

「伝令として陽光聖典の一人を出せ。我が国の現状をお伝えしよう」

「漆黒聖典の、破滅の竜王の調査に同行させるか?」

「使い勝手の良かった疾風走破の消息不明が痛いな。足の速い者が居ない」

 

 予言と伝承の遺されていた、破滅の竜王の復活が間近に近づいていた。番外席次を除けば法国の最大最強の戦力である漆黒聖典の派遣を持って、これに当たる予定であったが、復活場所がトブの大森林だ。

 大森林の王国側に位置するカルネ村に何故か神々は滞在している。極秘とはいえ漆黒聖典を派遣したのが露見すれば、翻意ありと見られる可能性がある。

 

「対話を優先されていたのだ。丁寧にお伝えすれば、光明はあるのでは」

「一理ある。そうだな、親書も用意して事情の説明を致そう」

 

 陽光聖典の一人を派遣して事情を説明させる事と、破滅の竜王の対処について、漆黒聖典が近くを通る事の承諾嘆願と決まった。また、エルフ王との争いについて開戦理由を説明し、今すぐは停戦が難しい旨も、国家機密である番外席次の存在も含めて説明する親書を用意する事になった。

 

 その他、重要事項の確認と方針決定。通常の国なら利害関係の調整なども発生するのだが、法国においてはそのような思考は異端であった。重要なのは人類圏の存続なのだから、他の足を引っ張る個人の欲望を優先する者など居ない。

 

「では会議を終了とする。人類守護の為に」

「「「人類守護の為に」」」

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 その会議を盗み見る影の悪魔が居た。隠れ家となる空き家の屋根裏部屋に移り、聞き取った内容をステルスフィールドで隠れていたアイボットに伝える。アイボットは中継ポイントの同型機へ伝達、リレー形式で情報を伝える。最終的に、情報を受け取った情報担当ロボットが悪魔の言葉を翻訳。

 

「色々動いたな。さて、明日はアインズさん達に伝えて相談しようか」

 

 国家、個人、各々の思惑を胸に、大きな変化が起きようとしている。

 

 だがこの世界において穏やかに過ごしたいナザリック勢の為、トールは以前からギルメン達と準備していた計画の実行を決断した。

 

 




王国と帝国、少勢力についてはまた別の機会に。
いくつかの話を挟んだら、エ・ランテルとカジっちゃんのお話かな
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