荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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単語とかでバレバレよな。


幕間・カルネ村と秘密の監視者たち

 孤児院。元王国領カルネ村、現AOG領カルネ自治区でそう言われる建物は、始まりの九連星ことAOGの至高なる御方々、至高神の方々の屋敷と比べて質素ではあるものの、自治区最大の建物だ。

 王国各地でニグン達に保護された孤児が集められ、十分な食事、清潔で温かい寝床、簡素ながら綺麗な衣服を纏い、院長のニグレド以下、慈愛と厳しさを併せ持つ教師が揃い、自立した一人として子供達が歩めるよう教育を施している。

 

 教授、やまいこ、そしてデータベースも兼ねるエインズワースが纏めた高度ながらも洗練された教育カリキュラムは、十代前半に入った頃には殆どの子供(一部は成人)が、王国の高級官僚も唸る知性と知識を得る。

 

 画一化された教育の中、どうしても逸脱した子供は居る。だがそんな子供達も避けられたり見捨てられる事は一切無く、発現している才能を大事に育てるように見守られて育っている。またAOGとしては半ば実験的だが、才能が無い子供でも職業を取得させた上でEXP薬(+5程度)を与えて底上げする事で、最低限の前提を整えさせて、子供が望む分野に就けるようにしていた。

 

「取得職業一つで大分変わるのすげぇな」

「トップにはなれんでも、アベレージには問題ないってのはいいな」

「ぶっちゃけ、一部除いてリアルの俺らより優秀?」

「「「いわんでくれ!」」」

「雑ビルドだと言っても俺ら視点だし、何よりロマン追い求めたのがうちのギルド長だし」

「健康にのびのびと育てばいいんです。ボクはそれだけで満足」

 

 効率を考えるとビルドとしては大いに問題あるが、生きていくための力を与えることを第一として、本人が望むようにしていた。

 またニグレドには、必要以上にAOGへの忠義を強制しないよう指示している。しているのだが、院長先生が忠義を尽くす方々である上、たまに様子を見に来ては勉強や作業、または遊びに付き合ってくれるので、子供達はAOGの面々が意図せずとも帰属意識を持っている。

 

「今日のお仕事分は終わりました」

「あら今日は君が班長さんなのね、いつもありがとう」

「いいえ、至高神の皆様とカルネ自治区の皆さんには、私達は返し切れない恩がありますので」

「…いいのよ、私達も、あの方々に数え切れない恩を受けているの。貴方達は私達よりあの方々に報いれるよう、今は食べて遊んで学んで、恩返しできるようにね」

「はい、ありがとうございます!」

 

 孤児院の子供達は、授業の他はカルネ自治区のそこかしこで元村民たちの手伝いをしている。取り決めをした訳でも無いが、元カルネ村の住人たちはある程度手伝わせたら、なるべく遊ぶように子供達を促す。かつて、労働力を補う為に子供を働かせていたが、このカルネにおいてはそれは必須では無くなったからだ。

 孤児院の教育施設には、カルネの子供達も通える。最初は衝突もあったらしいが、今は孤児達も子供達もお互い切磋琢磨している。

 

「俺らみたいに、恩を返すって言ってきかねぇんだよ」

「もっと遊べって言ってるんだがな」

「うちの娘もそうだ。あの子達に負けたくないってよ」

「オラ達のできる事は限られてるからなぁ」

 

 カルネの人々は、AOGに多大なる恩がある。彼らは気にしないでいいと言うが、衣食住からして王国の下手な貴族は膝を折るような暮らしをさせてもらっている訳で、せめてもの恩返しと、委託されている養蚕や牧畜など、これまで手をつけられなかった分野の仕事に積極的に従事していた。

 真摯で勤勉なカルネの人々に対し、シモベの評価はナザリック基準ではあるが、高い。カルネの人々からの好意については、モモンガさん達は意図した訳では無いぞと言っておいたが、ナザリック宰相ズの評価が爆上がりである。

 

 農地も人口に増加に伴い広げており、死霊術師のカジットが預かるアンデッドとゴブリン軍団による数の暴力は、元より開拓さえできれば豊かな土地を、広大な農地として広げ続けている。アインズ様のアンデッドは怖い見た目ではあるが、信頼からカルネの人々にはすっかり馴染みである。

 

「おーい、バーゲストの遺骸、解体所に収めたよ」

「ああブリタちゃん、いつもありがとうね。おっかあ達に伝えてくるわ」

「お願いしまーす。さぁ飯いこ飯!」

「「おう」」「「はーい」」

 

 元冒険者にして、カルネの守備隊に所属するブリタは、移民者として来てから訓練を受け、少し前に分隊を任されるようになった。自身でも才能は無いと思っていたが、冒険者時代よりも腕が上がったので鍛え方が足りなかったのかと遠い目になった事がある。

-

 トブの大森林は賢王ハムスケの領域ではあるが、全てが従っている訳でも無く、森から出てくるモンスターの駆除は必要だ。AOGの面々に同行してハムスケは縄張りを留守にする事も多く、ゴブリン軍団と共同で定期的に狩りをする。

 得られた獲物は、AOGから派遣されている解体を担当する傭兵モンスター「じゃっくちゃん」が丁寧に解体し、得られた素材がカルネとゴブリン軍団に提供される。

 解体作業後、素材を掲げていい笑顔で血塗れ状態な「じゃっくちゃん」に悲鳴を上げた新規住人も多かったが、先住の村民達に可愛がられているので、気にならなくなっていった。慣れって怖い。

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 尚、じゃっくちゃんはとある他作品のコラボガチャ産である。雇用後、アイテムの姿で所有者に同行し、戦闘リザルトでアイテムの出現率を少しだけ増加させてくれる。拠点に配置する場合は、農園(酪農)やギルドダンジョンがある場合に限り、素材の量を増やしてくれる。

 出現率は所謂「SSR」なのだが戦闘能力は低いし、効果も微妙ながら某エロゲバードマンが限定イベントに血道を上げてガチャ用ポイントを集めて一体だけ雇用できた。そこで燃え尽きたのか、この世界で過ごした時間が長すぎたか、地下大墳墓出現の後も暫くは本人も忘れていたそうな。

 

「隊長、今日はカワサキさんが仕込みをしてたんすよ!」

「ほんと!? うわぁ楽しみ! それじゃ駆けあ…って、置いてかないで!?」

「ヴァ!」

「何かデスナイトさんまで笑ってない!?」

 

 ポンコツ系分隊長ブリタさん、今日もカルネの人々に微笑まれながら見送られる。今日もいい天気。

 昔の、日々不安を抱えていた生活。それを忘れず、カルネの人々は明日も良い日にしようと各々の役目に邁進する。

 カルネ村(?)は今日も平和です。

-

 

-

 さて、平和なカルネ村(「地下を除いても」既にエ・ランテルを超える城塞都市。村って邑の意味なの?)はさておき、情報収集をしようとする国から組織から個人にとっては、カルネ=帰れない地獄、という認識である。

 

 既に方針転換をした帝国や、そんな暇は無い王国、神のお膝元と認識する法国以外は、どうにかカルネ村に侵入や浸透をしようとするも、ハードな計画では不可能というか辿り着く前に行方不明、ソフトな計画でも短期滞在が精々であり、工作しようにも取っ掛かりすら見えない。魔導皇国なんてのは外壁やランドマークタワーを見物するのが関の山である。

 

 侵入? 企てた現地担当者ごと行方不明です。何故か、指示した側まではダメージが無い? 既に逆監視対象です、残念でした。

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 裏では阿鼻叫喚地獄。それを情報収集で事前に識ったとある組織は、慌てて調査体制を再構築。カルネ村と魔導皇国に対しては遠距離での監視に留めている。

 

 彼らは「この惑星上では何故か電波通信が阻害される」事を確認したため、危急の動きを除いて定期的に特別機材で報告する形を取っていた。

 持ち込める機材も資材も足りない中、他に潜む組織の暗躍が確認できたため、大規模な行動は失敗に繋がると慎重に慎重を重ねている。初期の戦力確保でコントロールが十分ではないものを抱えてしまった以上、足掛かりを失いたく無いからだった。

 

「班長、飛行船が飛んだ後の指示は?」

「我々はいつも通りだ。下手に動いて暴露するわけにはいかないという事だな」

 

 監視用機材の人工知能は、変化があるまでは提示しない。回りの数名いる面々の役割は、変化があった場合の報告と、記録映像を定期的に移動調査員に渡す事だ。

 

「情報収集なんだから、もう少し人員割いてほしいですな。調査隊が現地人の版図外で行方不明になったのもわかりますけど」

「従来の手法が使えたあの国に掛り切りなんだろうさ。別アプローチで来た奴らの痕跡が追えなくなった以上、これまで以上に警戒してる」

「派閥争いかぁ…。別天地来てまで飽きないもんだ」

 

 因みに恐怖公の眷属による調査網は、元々がローラー作戦の派生であったため、落ち着いたといえる王国以外では徐々に範囲を広げて網目のように展開しているのだが、今ナザリックとカルネ村を監視している彼らの位置はそこから漏れてしまっている。彼ら自身も知る由も無い幸運である。

 

「別天地といえば、近距離でも既存の通信が使えないのは痛いです。この魔法の道具って奴はどうもノイズ混じりで使い勝手が悪いし」

「そんなのでも、DISAが苦労して用意したお高い機材だ。大事に扱えよ?」

「無論ですとも。…とはいえ、出資元の事を考えると何してんでしょうね俺ら」

 

 既に彼らの組織が、台頭し力を持った連中の影響で国という体制からバラバラに分解され、逸脱して等しい。彼らと彼らの組織は、指示する上の利益を追求する為の道具にして尖兵であった。待遇は悪くない程度でコストも安いが、任務は卒なくこなすもののやる気という面では殊更、低い。

 

「…言うな。我慢しろ。戻れば年金だって付くんだ」

「了解です。ああ、昼はどうします? 規定通り持ってきた奴で?」

「ポークビーンズで頼む。此方に居る間、誰が好き好んで新しい在庫を食うものかよ」

「今や古いほうが人気ですからね、了解です。がっちり煮沸消毒してからですが」

 

 班長のリクエストに苦笑しながら、炊事担当にジェスチャー。今日の当番も苦笑しながら、偽装している保管庫から現地調達した食材が入っているそれを取り出した。

 今日は平和だ。

 彼らはそう思いながら、元の場所では一生浴びる事のない木漏れ日の光を存分に楽しみつつ、食事の準備を開始した。

 

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