荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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今際の際の記憶 ウルベルトの話

 俺の死因? …小っ恥ずかしいから皆の前で言うのは憚られたが、こういう場ならいいか。

 端的に言えば、反社会的勢力の一人だったから、警察じゃねぇ企業部隊の攻撃で一網打尽って奴さ。慎重に行動してたが、治安は最悪とはいえ曲がりなりにも納税居住者がいる区画を丸ごと包囲して、片っ端から炙り出すやり方でな。

 俺らとしちゃあ何も知らない連中を巻き込んだ罪悪感もあって、抜け道を使って手当り次第に逃した。その過程で同志が次々と倒れてな、企業部隊ってのは警察が駆け付ける前にできるだけ火力をバラ蒔いて、目的が達成されれば後は知らぬ存ぜぬだからな。

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 んで、殆どの同志たちと逸れ、もう助からないと殿を努めた怪我人を置き去りに数名の同志と逃げ隠れだ。

 あと少しで離脱できるって所で、気が緩んだ同志が駆け出した所で、サーチライトが当てられて、無数の電磁速射銃で血を噴き出して踊る血袋が出来上がり。

 俺はまだガキが居る同志を別のルートに押し遣って、腹に計画に使う筈だった爆発物の一部を抱えて、だだっ広いアスファルトを駆けて駆けて…、爆発にぶっ飛ばされた。死亡確認しに来た企業部隊の足音が近くなった所で、爆発物の信管を起動させて意識が途絶えた。

 な? すっげぇ情けないだろ?

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 次に俺が起きた時、マスクで顔ごと覆う生活に慣れ過ぎて、空調で感じた事もない優しい風を感じた。

 企業連の部隊が配備してる偵察ドロイドに違うようで似てる、機械音が混ざった足音に気づいて一気に頭が冷えた。

 着の身着のまま…ってのは何かおかしいが、俺がまともな仕事をしてた時の、馴染みの部屋着のズボンとYシャツしか着てない状態で、少し高い草むらに入って息を殺した。

 そんで、現れたのがパワーアーマー着たトールって訳だ。随分味のあるというか、レガシーなデザインだってのもあって初めて見た時は面食らったよ。企業連御用達のスマートなアーマーと全く違うからな。

 ヘルメットを取って、俺が居る場所に目線をやって、ユグドラシル、プレイヤーと他の面子にも聞いた質問をして、この世界が俺らのリアルとは異なるって事を説明された。

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 先に来てたベルさんと顔合わせするまでは、ユグドラシルじゃやらかしてた自覚もあってすっげぇ警戒したよ。トールはトールで別枠だが、何故か自動で人化してた俺自身の感覚で勝てないって判ったしな。

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 あとはまあ、ベルさんと話し合って、異形種体へ変われる事の秘匿と、トールとは敵対しない事を確認し合った。俺の次にウィッシュさんが来て、教授が来て、もしかしたらギルドの面子が揃うかもとか、モモンガさんにまた会えるかもって期待から、トールにおんぶに抱っこじゃぁなくて半自立の為に傭兵として働く事にした。

 ベルさんは俺より半年前に来てたから、王国のクソっぷりはよく理解してた。冒険者をやるよりはと、帝国と竜王国で慣れる事にしたんだ。馴染みの面子が来る中、戦闘向きじゃない面子とか、特にブルーさんと教授は傭兵稼業には誘わなかったから、トール拠点の入り口が近いカルネ村に俺らの拠点になる家を構えた。

 

 リアルも酷かったが、王国のクソっぷりはまあ報告にもあった通りだよ。トールはその世界の状況に自分が巻き込まれない限りは傍観のスタンスだったし、既に拠点を構えてた。俺らも衣食住は兎も角として王国で必要以上に目立つ訳にも行かなかった。聖王国を警戒してな。手が足りなくて、随分歯痒い思いもした。カルネ村が心の癒しになったもんさ。エモットの所にネムが生まれた時は、皆でお祝いしたっけな。

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 俺が現れてから9年近く、次々と集まる仲間を迎えながらモモンガさんが来るのを待ち続けた。すでに知っての通り、最後に会ったヘロヘロさんは、酒の席の度に泣き上戸でな…。

 この世界に来て、かつての仲間とはいえ、意見がぶつかるのは当たり前だった。全員が社会人でもあったが…、正直な所、大人は少なかった。大人になった気だったんだ、俺はな。たっちの奴とは、人化の状態で存分に殴り合った事もある。やまいこさんにしょっちゅうぶっ飛ばされた。カワサキさんに喧嘩両成敗と、木の棒ての? すりこぎって奴でぶん殴られた事もあるぜ。

 ま、そこはとことん意見をぶつけ合って、譲れない所はあるが、ユグドラシル現役の頃に比べたらお互いを理解した。立場が違うだけでずっと苦しんでたのを理解できた。

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 王国の状況を良しとしないのは俺も同意見だったから、自分らで用意できるリソースで身近な所から変えてく計画を立て始めて、意見のぶつかり合いで少しギスってたのは危なかった…そこに、ナザリックとモモンガさんが来てくれたんだ。

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 デミウルゴスが何かすげぇ俺をキラッキラして見てくるのは、ああいや、たしかに目は宝石だけどさ、そういう意味じゃなくて、尻の座りが微妙に悪いだけだ。

 食堂とかで酒盛りしてるとき、トールが顔を出した時は大抵がナザリックの自慢話とか馬鹿話とかしてさ、覚えてたデミウルゴスの設定とかを話したっけ。

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 うっわ、話がとっ散らかったな、たっちや他の面子を笑えねぇや。

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 他の面子もまあ同じだろうが、俺も改めて言うぜ、ありがとう、モモンガさん。モモンガさんが居たお蔭で、俺らはまたナザリックを見ることができた。

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 ありがとう、それで…まあ、なんだ、もう少しさ、我儘言ったっていいんだぜ? え? 他の連中にも言われてる? はは、やっぱりか。

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