荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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おまたせしすぎて気分が初投稿です(震え声


荒野の災厄と襲撃

 

 油断していた。端的に言えばそれに尽きる。

 後方支援という名の復興作業中、ゴーレムとそれに似せたロボット達に指示を出していたトールは、意識した瞬間に各種の緊急防護措置を実行するも、かなりの数のそれらを抜いて飛んできた弾丸が、自分だけではなく周囲に被害を齎すと理解するや否や、身代わりの能力を持ったアイテムを起動する。

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 ウルベルトの目には、少し遠くなったリアルでの記憶を呼び覚ますような光景だった。トールの身体が無数の弾丸で踊るように動き、遅れて右腕と右肩から血が舞う。

 

「トール!?」

 

 倒れたトールにこれでもかと銃弾が注がれる。遅れて独特の銃撃音。ウルベルトが聞いたことのある、そしてこの世界では初めての音だ。

 倒れ伏したトールに畳み掛けるように銃弾が降り注ぐ。アイテムの効果で、周辺の竜王国の国民や兵士、傭兵を穿つ筈だった弾を一身に受けているせいで、それぞれは単発のようだが、まるで機関銃で撃たれているかのようだった。

 

「油断した…大丈夫、すぐ治る!」

 

 トールは腕立て伏せの状態から血を飛び散らせつつ連続でバク転。小さなデコイ人形が残され、トールが居た場所に次々と着弾して土埃。離れた所で膝立ちで留まった。

 

「<矢避け>で周囲を固めてくれ!」

 

 既にスティムパックが自動投与され、同時に魔法アイテムが効果を発揮して再生が進んでいる。トールの視線は攻撃が来た方向を見ている。ウルベルトは防御系の各種支援魔法を広域に展開。ついでに手持ちから<矢避け>の効果が籠もったアイテムを急いで取り出すと起動。

 

「敵を探る、大まかな距離はわかるか!?」

「4km先、高台の中腹、他にも複数!」

 

 ウルベルトは<飛行>で飛び上がると、ナザリックギアのセレクタを<偽装人化>に切り替えた。だが攻撃は銃撃だけではなかった。

 

 膝立ちになったトールの索敵範囲に反応。急速に接近してくるものは…。

 

「ミサイル!」

 

 高次特性の反応は無い。あのヨイヤミと関わる勢力が居ると分析はしていたが、科学兵器を運用する連中だとは考えていなかった。

 トールはVATSを起動、ほぼ停止した時間の中で飛来するミサイルの分析を開始。かなり高度化してはいるが、恐らくはトールの生前に米軍が運用していたターボジェットを使った巡航ミサイルの系譜だ。先頭にカメラシーカーが見える。

 撃墜も考えたが、広範囲にナパームや化学兵器を撒き散らすタイプの可能性もある。時間停止状態の中、魔法により時間停止状態へシフトしたウルベルトが目配せ。トールは懐から「デコイ」の効果が入ったアイテムを取り出し、少し加減してぶん投げた。手を離れた所で停止。あとは時間停止状態が解除されれば上空へ飛ぶ。

 ウルベルトは<暗黒孔>の詠唱準備。トールの投げる軌道を読んで、デコイに誘われたミサイルが突っ込むよう座標を感覚で調整。

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 時間停止状態が解除。思惑通りミサイルがデコイに向かって飛ぶ。丁度のタイミングで<暗黒孔>が効果を発揮、ミサイルは突如現れた無反応の空間に為す術もないまま突っ込んで消滅。

 

「スタンドオフか、クソッタレ!」

 

 トールは射手を探るが、そこにあったのはカメラとトリガーをドロイドらしき腕で操作する即席のオートガンと信号受信機だけ。ステルス化したロボットを派遣するが、周辺には足跡すらない。500m半径には同じようなオートガンのセット。囲うように設置されているのは、狙撃の限界距離を超えた場所からの攻撃を数でカバーする為だろう。

 

『緊急連絡、トールが何者かに攻撃を受けた。皆は無事か!?』

 

 前線で大まかに3部隊に分かれている、コキュートスとリザードマン組、はじまりの九連星の組、スケリトルパワーアーマー組、それぞれから攻撃なしの連絡。

 ウルベルトやカワサキ等、後方支援組は胸を撫で下ろしたが、すぐに竜王国全土の再調査をテラーシーカー(恐怖公の眷属+アイボット+シャドウデーモンの偵察ユニット)に命令、お互いが目視できる距離で山狩りを行うと、何らかの効果で監視網を掻い潜った痕跡と、そこにあった科学技術の機材、その設置痕を確認した。

 

『一度集まって報告と相談を!』

 

 幸い、竜王国での戦いはほぼ最終局面。計画ではビーストマンの群れを過去の竜王国国境外に追い遣り、長城と砦を一気に築く。かつて築かれていた長城跡を再利用して塞ぐのだが、既にビーストマンは士気も壊滅状態なので、現地戦力に加え、コキュートス達とスケリトルパワーアーマー部隊で十分だとし、アインズさんがギルメンたちに招集を呼びかけた。

-

 トールはユグドラシル製ポーションで傷を治し終えるとT-51fパワーアーマーを出現させて装着。様々な防護手段を行っていたが、極限までパワーを注ぎ込んだ電磁速射銃の物理攻撃で来るとは想定していなかったので、ダメージはほんの少しではあったものの、

 

「…すまん、油断していた」

 

 と言う他無かった。残されていたオートガンは銃身もバッテリーも焼き付いていた。証拠隠滅の破壊とも取れるが、どちらかといえばダメージ重視の使い捨てに近い。

 ウルベルトは無事ならいいと首を振る。トール達の周囲では、いきなりの高度な魔法の行使と飛来した物体の轟音に腰を抜かす者達が居る。色々がいきなり過ぎて、理解が追いついていない。

 

「先程、竜王国とも我々とも、そしてビーストマンとも異なる何者かの攻撃を受けた! 魔法で呼び出した下僕に周辺を探らせている。安全確認が終わるまでは、俺達の近くで防御を固めてくれ、魔法で守護を続ける!」

 

 不思議と通る言葉でウルベルトが伝えると、作業員や兵士に理解の色が広がる。続けて伝令に、竜王国の上に襲撃の件と安全確認で作業が少し遅れる件を伝えてくれと頼む。

 

 まあ、予想もできない速度で後方から復興という名の絨毯爆撃を食らっているので、これが少し遅れようが全く構わないというのが竜王国の意見ではあるが。

 

「…敵対プレイヤーと別か、それともその背後なのか。だがまあ、トールが相手だっただけに予想外だろうな」

 

 ウルベルトはトールの無事を確認し終えると、底冷えのする声でせせら笑う。

 回収されてきたオートガンの残骸と信号受信機は、トールには見覚えは無かったが、ウルベルトには忌々しくも見覚えのある構成だ。どこのグループかは解らないようにされているが、追跡防止の為の遣り口は嫌というほど知っている。

 

「来ていやがったのか、企業連!」




多分、予想通りな人が多いかと
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