荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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計画開始前ののんびり話です


閑話 荒野の災厄と金のガチョウ

 時は、黒い絨毯の出撃より少し遡る。

 

 カルネ村の事件より数日後、幾人かのギルメンが、エ・ランテルやトールの拠点からナザリックのロイヤルスイートに引越しを行った。

 色々落ち着き始めた頃、周辺事情の動向を報告する資料を届けたトール。ナザリックの外で寛いでいるトールの下へ、るし★ふぁーを筆頭に複数のギルメン達が現れる。

 

「金の卵を生むガチョウのガチャ?」

「通称です。特定条件を施したランダム傭兵モンスターの召喚雇用スクロールで、ごく低い確率でそのガチョウを雇用できるんです」

「貴重アイテムとかは使わないんだが、とにかくスクロール作成時の金貨消費が半端なくて、その割に成功確率が低い代物だった」

 

 博打にも程があるそれ。トールからの資金融資があるとはいえ、素のナザリックではとてもではないが新たに挑戦できる代物ではない。

 

「へー、面白いものがあるな。装備作成以外の、リアル課金以外でのギャンブル要素か」

「一日一個、金銭的価値にしてユグドラシル金貨1万枚の価値がある卵なんですが、呼び出せるまで消費した金貨がそれに見合わないっていう」

「流れ星の指輪に匹敵する低確率だったっけ、検証サイトの話だと」

 

 課金アイテムの出現率はユーザー任意の報告を集約して実データに近いものがまとめサイトに掲載されていた。金のガチョウに関しては、ゲーム内の資金とアイテムで挑戦できるとあって、無課金者がかなりの人数挑戦し、数多くが闇に飲まれた。(※挨拶ではありません)

 実装から暫くの間、インフレ気味であったゲーム内通貨量を2割ほど消費させたという。

 

「なんでまた、その話になったんで?」

「挑戦しようとゲーム現役時代に20枚位作ったのがあって、途中でバカバカしくなって辞めてお蔵入りしてたのをロイヤルスイートの自室で見つけた」

 

 エ・ランテルにある商会を片手間に切り盛りするのと、トールの拠点でアメリカンな食生活と娯楽でゴロゴロする「るし★ふぁー」が、自室の様子を確認しにきた際に見つけたらしい。

 

「希望者全員で使ってみるとかです?」

「いや…、ここはトールさんの見えている数値的な幸運にかけてみようかと」

 

 周囲の目が、ナザリック・汎用メイドのお茶を堪能するトールに向けられる。

 

「え、なんで俺? アインズ・ウール・ゴウンのラッキーガール、やまいこさんいるじゃん」

「ガール…えへへ」

 

 ネフィリムの姿で乙女仕草である。ウェイストランドでスーパーミュータントに見慣れたトールとしては、それに比べれば声も相まって可愛いものだと判断してたりする。

 

「ナチュラル・ボーン・プレイボーイかっ!」

「Perkのレディキラー、自然さが恐ろしいな…」

「オーケー、皆落ち着け。話を戻すんだ。それでそのスクロールか、使ってみればいいのか?」

 

 トールはユグドラシル産アイテムは解析できた一部を複製、あるいは複製や製造の研究はしているが、本人は慣れないと余り使った事がない。魔法そのものの効果が完全に再現できない為、信頼性が低いとの判断だ。他人のそれは兎も角、自分が使うには心もとないというのが本人の弁である。

 

「ハズレだとランダムに鳥系の傭兵モンスターが呼ばれる。まあ20枚程度で出るならナザリックの維持費の足しになるかもって。トールさんに常におんぶに抱っこってのもな」

「一方的な寄りかかりをよしとしないのは流石だな。よぉし、気合い入れて使ってみようか。装備もLUC重視に変えて、LUC上がる酒とか薬とかバフ盛って使ってみよう」

 

 トールの素のS.P.E.C.I.A.L、能力値のLUC、幸運値は最大値の10だ。そこにインプラントによる補正がかかっている。この世界での運命的なものに影響を与えるのか、運要素が絡むものに盛大な補正がかかる事が判明している。

 

 そこに装備でLUCを複数上昇させ、能力値バフのある各種消耗品を使用して、最終的に20超の値になる。腕のPip-boyで数値を確認すると、手渡された傭兵雇用スクロールを使用した。

-

 どうなったかというと…。

 

「…20枚中、18枚で召喚されるとか。しかも3枚なんて、グループだよグループ!?」

「てか最後の一匹、金じゃなくて虹色なんだけど!?」

「確率とは一体」

「まとめサイトにも乗ってないぞ虹色ガチョウなんて!?」

 

 結果、目の前にはギャワギャワと鳴くガチョウの集団が居る。

-

 最初の二枚では「やっぱりかー」と諦めムードだったが、単体で連続召喚されると引きつって乾いた笑いに変わり、途中で複数が召喚された所で呆然とし始め、また連続で召喚が続くと誰も声を発しなくなり、グループが召喚されてから最後、虹色のガチョウが召喚された所で全員が地面に崩れ落ちた。

 

「単純計算で15プラス5かける5で総勢40匹、一日あたり40万金貨!?」

「やったねモモンガさん! ナザリックの維持費、ギミック全部が完全稼働でも受動トラップ連続発動しなけりゃ完全に賄えて尚余るよこれ!?」

「え、召喚したのトールさんでしょ?」

 

 こういう所は素直過ぎると、視線がモモンガさんからトールに向かう。トールは縋るような視線に苦笑い。

 

「一匹譲ってくれれば、後は引き取ってくれればいいよ。虹色も要らない」

「まじすか! ああ、助かるなぁ…」

「これエコノミーなら余りが出るから、消耗品の費用が追加で捻出できるな…」

「出る一方でしたもんね。カワサキさんもあれ、あんまり使いたがらないし。神話級とかは億単位で無理でも、消耗品や修理用の消費がカバーできるのは嬉しい」

 

 カワサキさんのあれとは、食料適性のあるアイテムや生物、モンスターをどんなものでも吸い込んで別のユグドラシルアイテムを生成する闇鍋スキルだ。装備や装飾品アイテムも生成するのだが、無意識にカワサキさんの好みも反映した物が生み出されるため、本人は性癖の暴露をするような気分になるのであまり使いたがらない。

 

 あれを用意しようとかこれを用意しようとかガヤガヤしてる中、トールにスクロールを渡した本人は、遠い目をしていた。ペロロンチーノは気になって声をかけた。

 

「どしたの、るし★ふぁーさん?」

「俺さ、途中でバカバカしくなったとか強がったけど、実際、500枚以上使った残りなんだよあれ…」

「戦績は?」

「お察しください…」

「うわぁ」

 

 その後、虹色のガチョウが金の卵を生む際に希少度ランダムでデータクリスタルを生み出す事が判明したそうな。




「闇に飲まれた」※挨拶ではありません
・熊本弁(違


「金のガチョウ」
「ナザリックの維持費」
・今回の捏造設定

 ナザリックの一日の最低維持費は1万枚程度を想定。ユグドラシル内では80Lvそこそこの狩場で一時間ほどやれば稼げる感じ。ただフル稼働させるとなると5万枚は必要。

 また本編でシャルティアの復帰費用が億単位だったので、神話級装備の作成もその位はかかるだろうと推定。そうなれば新規装備については、2桁万枚があってもそう簡単には作れないんでないかなと。ルーン武器の出番にワンチャンあるかな?

 尚、金のガチョウの雇用スクロールは、1枚辺りの作成費用が金貨50万枚です。ただし作成コストだけの価格なので、他の材料自体はスクロールだけ。これをトラッシュボックスに入れてもスクロール代にもなりません。

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