荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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オリ守護者は作る予定に無かったのですが、クロスオーバー詐欺が続いてるので閑話がてら。


幕間 荒野の災厄とメイドロボ

 計画が開始される前、特別な用事が無い限り、トールはナザリックのすぐ側に建てられたログハウスで最近過ごしている。夜は拠点の転送装置で移動し、寝る。

 

 ギルメン達がトールの拠点に長く居た為、現代的(とはいえ、Fallout世界の代物なのでレトロフューチャー)な生活や道具に慣れきってしまった関係上、ナザリック内のロイヤルスイートへの引越しに際して持ち込まれた道具類の使い方や手入れを、ナザリック内のホムンクルスメイド達がちょくちょく聞いてくる為だ。至高なる御方の貴重なお時間を取る訳には…という事である。

 

 必然的に電化製品も持ち込まれてはいるが、安全確保の関係上、核融合バッテリーやニュークリアリアクターは、ナザリック内に持ち込ませて居ない。緊急時の対処をトールしか行えない為だ。

 

 また豪華なロイヤルスイート内に配線を這わせる訳には行かず、必要とする各部屋ごとに充電式バッテリーが入った「電池箱」を設置している。宝物殿の端に転がっていた飾りのある豪華な箱を外装にして部屋の雰囲気を壊さないよう配慮、複数のセルユニットを格納したそれのコンセント数は十個前後である。

 

「トール様、交換目安は如何ほどなのでしょう?」

「電池箱に入っているセルユニット一つにつき電化製品1つをフル稼働させて一ヶ月持つ。部屋にある製品数で異なるが、電池箱に残量表示機能を付けておいた。箱全体の蓄電量が半分に減った時点で交換依頼を出してくれ」

「畏まりました。雷のからくりで動く、というのは凄いですね。一部の道具に至っては、魔法の道具にも思えます」

「俺にとっては、魔法の道具の方が凄まじいと思うがな」

 

 一応、トールの道具や装備類は全て、あの世界における物理学に則って生産され、稼働している。チートで得た能力値と現地で長年収集した知識と技術は、身一つで荒野に放り出されても、ゼロから現代的な拠点を再作成する事が可能だ。時間はかなりかかるが。

 

「所でヘロヘロさん、ク・ドゥ・グラースさん、ホワイトブリムさん、何のご用事で?」

 

 メイドが驚いて向けた視線の先には、そっと様子を窺うよう建物の影から覗き込む3体の異形の姿があった。彼らは大事な話があるからとメイドを下がらせる。

 

「えーと、拠点に預って戴いてるあの子について相談が…」

 

 へにょんとなりながら、手らしき所を所在無さげに動かすヘロヘロ。

 

「ああ、あの子か。メイドロボが作りたいとノリノリで作ったはいいが、ナザリックが出現して本来のメイド達が居て、新たに所属させる訳にも行かず存在意義が宙に浮いてしまったプロトタイプ」

 

 ヘロヘロ達はべちょりと潰れた。人間で言えば、失意体前屈の姿である。

 

「それ言われると辛い」

「リファインしたナザリックメイド服をメイドロボに着せたかっただけなんだ…」

「ロボ反応ぱっつん前髪銀髪ツインテ巨乳とか、所々プレアデス達と属性が被るし、なんだか後ろめたくてナザリックに置く訳にも行かなかったのです」

 

 外装作成の際、属性詰め込み過ぎだろ! というツッコミはメイド関連愛好家の三人の中に誰も居なかった。尚、設定予定の情動パラメータは、感情値は最低限の一歩手前、忠誠心や愛情、外部への優しさといった値は高めの予定であった。

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 メイドロボのプロトタイプ。その話はナザリック出現の少し前に遡る。

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 ナザリック出現前、メイドスキーとメイド狂いとメイド服キチガイが募る思いを拗らせていた所、拠点内で追加運用するガイノイドのデザインをトールが相談した事が発端である。

 

 トールの拠点内データベースには、未生産の様々な設計図が溢れかえっており、本人すら把握できていないのだが、その数少ない把握情報の中にインスティチュート第二世代人造人間の製造データがあった。

 

 そのままの作成しては、不気味の谷の男性ドロイドが完成するだけだが、MODの中には女性骨格のデータがあった。外装も様々なコンパニオン用(ゲーム中の同行者、仲間の事)データが揃っており、また組み合わせての運用が可能だったのである。

 

 大幅な体格変更は内蔵する主要部品の関係上できなかったが、それでも三人の愛好家達は一週間の不眠不休の激論と時に殴り合いの混ざる会議の末、データを完成させたのである。文字通りマジックアイテムの力で不眠不休であったため、トールはユグドラシルアイテムの非常識さと彼らの狂気にドン引きした。どっちもどっちであるが。

 

「言語パッケージどころか、電子頭脳もまだ搭載する前だから本人は意識すら無いし、そんな気にする必要はないと思うが」

「今できる発想で完成しただけに、お蔵入りさせるのも勿体ないなと。マスター権はお渡ししますので、起動できませんか?」

 

 経緯はどうあれ、ナザリック全てのメイド達の妹である。どうしても諦めきれなかったらしい。

 

「構わないが、先に運用と配置を決めたらどうだ?」

「配置ですか…、量産して運用する事を前提としてましたから、単体だと…」

 

 高級な統率個体一体に、他の量産型ユニットを個体間の専用ネットワーク上で接続。群れで一つの運用をされる予定だった。最初に作ったのは高級機体ではなく、ベースであり量産を前提としたプロトタイプである。

 

「すまん、いつか言ってくると思って、お蔵入りした際、拠点運用の為にこっちの独断で量産してある。後は起動するだけだ」

 

 アメリカンな体格ではなくアジア人に近い骨格に調整してデザインされたので、惜しいと思ったらしい。

 トールが腕のPip-Boyを操作すると、初号機と量産機の二体がそれぞれ収まったメンテナンスポッドが現れた。

 

「「「何してくれてんだ荒野の災厄!」」」

 

 思わず叫ぶ面々である。ただ元々はトールの拠点内用のガイノイドのデザイン依頼だ。突っ込まれる理由は実は無い。

 

「あ、量産機のメイド服は俺んとこのレトロビクトリアンタイプ。流石にあれ程のデザインは、勝手にコピー生産するのも憚られたし」

 

 初号機はそのまま、内蔵部品を高級機にして完成させた。電子頭脳は幾度か生産を繰り返して自我に目覚めた物を組み込んである。衣装はホワイトブリムのデザインそのままに、バリスティックウィーブ最終段階のものだ。

 量産型は自我に目覚めなかった電子頭脳が大量にあるので、それを流用してある。衣装はMODデザイン群にあった、レトロビクトリアンメイドと記載のある古式ゆかしいタイプをアレンジした物で、頭部のホワイトブリムと共に此方もバリスティックウィーブで強化済みだ。

 

「…何ダース位、ナザリックへ配置できます?」

「ダースて、いくら何でもそんなに量産してる訳が…え、まじで?」

「この高級機プラス量産機が四ダースかな。メンテナンスポッドとセット生産だから、今は倉庫に空きが無くてその程度だ。ナザリックへの所属手続きと、メンテナンスポッド設置場所…、アインズさんに相談が必要じゃないかこれ?」

 

 プロテクトロンより一回り大きいメンテナンスポッドが必要な為、数が多くなるとそれなりに場所を取る。自分の所は、新たなフロアにメイドロボ用メンテナンスエリアを設ける予定である。

 

「値段はその、おいくら万円で?」

「ええと高級機のコストが…」

 

 提示された値段は高い事は高いが、ナザリックに保管してあった幾ばくかの素材と放り込んであった無用アイテム類の譲渡で商談成立となったという。マスター権は最上位がモモンガさん、次にギルメン達となった。プレアデスとナザリックメイド達の妹としてのお披露目とした。

 

 モモンガさんはメイドロボ隊の話に「来る前から三人とも、結構やらかしてるな」と苦笑気味だが、防衛戦力の拡充は賛成である。事前に三人がプレアデスとホムンクルスメイド達に「妹にして後輩が」とか何とか話していたのもあって、押し切られた側面もあるが。

 

「所で、名前はどうするんです? 一体足りないけど、数値の50を元ネタにした名前でも?」

 

 その時、ヘロヘロ、ク・ドゥ・グラース、ホワイトブリムの三人に電撃走る。そういえば決めてなかった! と言わんばかりの衝撃具合である。いや実際、決めていなかったワケだが。

 

「…まてまて、なんで三人とも荒ぶる鷹のポーズを取る!?」

 

 声も無くスッとポーズを決めた後、モモンガさんが止める間もなく武器や魔法、スキルを使わないポコポコとした叩き合いを開始した三人を、暫く誰も止められなかったという。

 結局、叩き合いは「そんな事してると、俺が付けますよ!」というモモンガさんの声に停止。仮名として「イマジナリ・ニュー」の名前が付けられた。その後も変更はされていない。

 

「因みにモモンガさんの候補は?」

「ロボ子」

 

 配備先はイマジナリ・ニューが外のログハウス。量産型「ナンバーズ」はローテーションでナザリック周辺の哨戒任務である。整備設備は、以前マーレが魔法で造成した丘の中をぐるりとくり抜き、一周する形で設置された。

 

 ナザリック所属の設定を終えての起動後、プレアデスへの紹介が行われたのだが、どちらが姉か妹か競い合ってるシズとエントマにとっては、共通の妹である。二人してお姉さんぶりながら、背の高い妹を連れて居住区内を案内するという微笑ましい光景が見られたそうな。

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 余談として、支払い費用の受け取りの際にトールは新たに拠点用に製造した高級機を連れてきていたのだが、

 

「「「金髪ポニテ眼鏡巨乳だとぉ!?」」」

 

 基本属性の過積載でも、現実になるとそれはそれで心に来ると、後にヘロヘロは述懐したという。ソリュシャン・イプシロンには、ちょっとでも心が揺れてしまった自分を許してくれと抱きついて慰めて貰ったそうな。

 

(ぐ、偶然とはいえ、ヘロヘロ様に甘えられるなんてっ!)

 

 協力者であり現地での至高なる御方々の友人ながら、一応は多分人間種のため、ソリュシャンは内心トールを警戒というかイマジナリの件も含めて敵視していたのだが、この日以降、対応が柔らかくなった。

 

(あのトールさん、ちょっといいですか?)

(どしました、ペロロンチーノさん?)

(…エッチな事できる高級機って、作れます?)

(あんたもかい! 何人目だよ!)

(えっ)

(えっ?)

(…)(…)

(作れはしますし後改造もやれますが、女性型NPC作成経験者というか娘持ちの面子は諦めました。他のメンバーも冷静に考えて「泣かれる」と)

(まじか)

(まじです。それにナザリックメイド達は兎も角、お姉さんと娘兼嫁に何て言う積りですかペロさん? あとロリ体型は無理ですよ?)

(のっ、望みが絶たれたー!?)

 




…実は最後のペロロンチーノのセリフを言わせる為の閑話だったりします。

そういう訳で、プレアデス番外、イマジナリ・ニューです。出番はそんなにありませんが、装備の能力と集団の暴力でナザリックの防衛、時間稼ぎを担います。名前の元ネタはフロン○ミッショ○のイマジナリナンバーと某なのはStSです。

FalloutのMOD環境次第では、魅力的な女性型コンパニオンを追加で用意できたりしますので。セクシー装備のMODやエロMODも多数あったりします。
…PC版のみですが。


>名前
「イマジナリ・ニュー」並び「ナンバーズ」
※ナンバーズは、ナンバーズの後ろに数字で呼称されます。

>総合レベル
「1」
職業レベル・メイド1
※ユグドラシル基準。

>Fallout基準レベル
戦闘モード起動で240(ユグドラシル換算で80レベル相当)
※通常時は知覚、耐久力のみ。

>S.P.E.C.I.A.L.
STR 10 PER 9 END 6 CHR 4 INT 9 AGI 11 LUC 4
※量産機「ナンバーズ」も同等の性能だが、文字通り機械的反応の為、CHRは1として扱われる。

>装備
ヘッドドレス:PER+1 CHR+2 バリスティックウィーブMk.V
メイド服改:END+1 CHR+2 バリスティックウィーブMk.V
「膝砕きの」「無尽蔵」拡散連射レーザー銃 ※MOD製
※量産機の装備も同一です。

>備考
独自プロトコルの機体間ネットワークにより常時情報収集や分散演算が可能。
ハッキングには、個体ごと設定の公開暗号鍵を複数解析する必要がある。
また独自プロトコルは公開暗号鍵をベースに個体ごと暗号化されている。
蓄積データはメンテナンス時にイマジナリが収集、全機体が平均化される。
反応は所謂ロボ娘。口調がシズ・デルタと似通っている。

シズ「お揃い」
エントマ「わ、私だってお姉ちゃんなんだからー!」

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