荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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クロスオーバー詐欺常習犯(殴

ズーラーノーンの残り物のみなさんが使ってるのは、捏造アイテムになりますので原作にはありません。



死の支配者と魂喰らい

 市街地内のアンデッドは概ね駆逐し、同じ様なタイミングでまだ動ける冒険者や衛兵が墓地へ向かう。大抵はベテラン勢で、新人などは倒壊した建物に住人が居ないか探ったり、消火活動に携わる。

 市民たちは、傷つき座り込む冒険者や衛兵を、臨時の救護所として開かれた教会や一部酒場、宿等へ肩を貸したり運んだりしている。

 

 都市長パナソレイは、負傷者多数ながら死人の報告が皆無である事に安堵しつつ、部下達と共に現場指揮に奔走していた。人々に声をかけ、励まし、並行して指示を飛ばす。ちらと視界に、屋敷に立て籠もって出てこない貴族の屋敷が映るが、今は些事と頭から振り払う。

 

「始まりの九連星の方々は?」

「有志の中で、特に腕が立つ者達を集めて墓所へ。御友人が先に切り込んでいったとの事で、その援護だと」

 

 アンデッドの押し寄せる数が少なくなったのは、その友人が切り込みに言って程なくである事を、エ・ランテル冒険者組合長プルトン・アインザックは伝える。

 

「殆どの貴族私兵が役に立たない中、衛兵隊と冒険者達はよくやってくれた。タッチ殿達も支度金すら要らぬと、着の身着のままで活躍したと聞きます」

「貴族相手に辛辣だな。だがエ・ランテルにとって、真に信頼の足る方が判っただけでも、儲け物か」

 

 殆どの貴族が外にも溢れたアンデッドを防ぐため閉じられた門を無理やり開けさせて都市から逃げ出したり、間に合わぬと私兵で過剰に守りを固めて屋敷に閉じこもった。王族派、貴族派、どちらもだ。そんな中にあって、幾人かの気概ある貴族が、私兵と共に武器を手に率先して市街での迎撃戦に奮闘したという。

 

「無事である事を願おう」

「都市長! アインザック!」

「ラケシルとギグナルか。今の状況は?」

「墓地に向かった連中を除いて、救助と消火に当たっている。冒険者の残りが、衛兵隊と共に残存のアンデッドが居ないか、見回り中だ」

「救護所は、バレアレ氏がお孫さんと共にポーションを提供しているのと、モッチ殿の義娘さんが腕の立つ神官で、非常に助かっている。信仰される神は伺っていないが、あれ程の力だ、途轍もない修行をされたのだろう」

 

 モッチ殿、というのは餡ころもっちもちの此方での名である。また義娘さんというのは、人化したペストーニャ・S・ワンコだ。攻勢ビルドが多いナザリック勢の中で、数少ない回復系魔法の使い手である。

 ただ、お嬢様然としながらも快活な彼女に大きな義娘が居たことには、少なからずショックを受けた人間が多数居た。

 

 最悪の状況から抜け出したからか、薬師のバレアレ氏を除いた都市会議連の面々は安堵のため息をつくと同時に、鼻孔を擽る香りがする事に気付いた。

 

「おう、お偉いさん方、腹が減ってるなら少しでも食ってけ!」

 

 この都市で「食堂」とだけ銘打った飲食店を営むカワサキが、他の従業員と共にいくつもの大鍋を並べて、具沢山のスープをかき混ぜている。少し離れた所では、同じ大鍋が湯気を上げていて、幾人もの市民たちに器と共に配っている。皆疲れ切っているが、受け取ったものを食べて、笑顔になっている。

 

「炊き出しですか、カワサキさん」

「まあな、俺の友が切り込んだと聞いた。ならこのバカ騒ぎももうすぐ終わる。俺は腹を空かせて帰ってくるだろうあいつらと、今腹を空かせてる奴等に料理を作るだけだ」

 

 自信たっぷりにそう言って、鍋の一つを味見して「これも出来た、次のだ」と指示を飛ばしている。アインザックは「やはりタッチ殿と同じく、切り込んだモモン殿の友人か」と納得した。

 

「なら、我々も一杯頂こう。向うに並べばいいのかな?」

 

 お偉いさんなのに律儀だな、などとカワサキは笑って従業員に指示を出してパナソレイ一行の人数分を用意させた。

 

「指揮をする人間は、一番頭が回ってないとな。量的に腹八分目になるだろうが、そこはまあ我慢してくれ」

 

 受け取ったスープの味は、酷い状況の中で食べたにも拘らず、途轍もなく美味だったと後の彼らは語ったという。

-

-

 墓地へ向かった、始まりの九連星の団長タッチとその仲間達、それに加えて抜きん出た力を示した無名の強者達が、既に疎らになりかけているアンデッドの群れを蹴散らしながら進んでいく。

 

「ははっ、俺らの取り分がほぼ無いな!」

 

 第三位階魔法<雷撃>を撃ってから横に薙ぎ払うという荒業を披露しつつ、副長ウルことウルベルトが笑う。

 

「モモンの事だ、面倒と言いながら大物を潰して向かったんだろう!」

 

 中位より少し下のアンデッドの群れを薙ぎ払いながら、地下墓所へ向かう。殿に居るチャガマ、ぶくぶく茶釜が不意打ちを仕掛けてくるいくらかの厄介な敵に対処し、砕けた門の上に陣取ったペロンことペロロンチーノが撃ち抜いていく。同行する冒険者たちは、竜王国から伝わる彼らの強さが本物なのだと目の当たりにしている。

 

「俺ら、要らないんじゃ?」

「手数だけは必要なんだ、愚痴らず打て打て!」

 

 そんな事を続けていると、地下墓所の出入り口前で両手にグレートソードを持つ戦士、モモンの姿が見えた。彼の目の前には、ローブを来た何者かが立っている。周囲には魔法かなにかで黒焦げになった死体と、中央に何やら邪悪な色に染まった祭壇がある。

 

「居たぞ!」

 

 誰かが叫ぶ。モモンは油断なく剣を構えると、淡い光がグレートソードを覆う。おそらく、周囲の死体は剣に込められた魔法で倒したのだろうと冒険者たちは考えた。

 実際は魔法の杖で、倒したのはモモンことモモンガさん本人の魔法である。

 

「想定外だが、依代と贄、これで揃った!

 我一人生き残らせたのが、汝の運の尽き! 贄を喰らいて現れいでよ、死の先触れ!」

 

 邪悪な色の祭壇が光り、周囲の死体を塵にして取り込んでいく。最後に術者を光が撃ち抜いた。力を吸われたのか、干からびていく。

 

(あー、そういえば使用登録者が倒れると、込められた魔法位階や種類に応じたモンスターが召喚されるんだっけ)

(雰囲気アイテムの面目躍如だな。どの位のが召喚されそう?)

(うーん、ナイトメア位じゃないですかね、精々。あ、何か防御系の魔法張らないとバタバタ死ぬ)

(やっべぇ!?)

 

 慌てて、魔眼類を防ぐ魔法を冒険者たちにかける。最後まで立っていた男は、魔法陣と共に圧倒的な死の気配を感じ…。事切れた。

 モモンが倒したワケでなく、呼び出したモンスターにやられた訳でも無い。実は<龍雷>で他のズーラーノーンの面々が黒焦げになった際、びっくりし過ぎて心臓発作で死んでいたのだ。気力を振り絞って倒れる間際に何やらそれっぽいセリフを言っていたが、意味は無い。

 

(死んでたんかいっ! ある意味すげぇわ!)

(その根性を他に活かせよ…)

(ま、まあ、それっぽくピンチ演出してくれましたから良しとしましょうよ)

 

 目の前に出現したのは、骨の獣の姿をしていた。黒い霧が身や皮の代わりに取り巻き、馬に似たシルエットを形作っている。

 

「魂喰らい…なのか!?」

 

 モンスターに詳しいらしき冒険者が、恐れ慄きながらつぶやいた。

 魂喰らいとは、難度百超のモンスター。一般成人の十倍の身体能力を誇るというビーストマンの都市に現れ、たった三体が十万を超える数を殺し尽くしたと言う。

 及び腰になる冒険者の前へ、始まりの九連星の面々が立つ。

 

(スキル封じ、効いてるよね!?)

(斑模様が明滅してるから連打中だと思われ)

(モモンガさーん、出番ですよー)

 

 ちょっと気の抜ける短距離グループ会話を聞き流しつつ、モモンガさんは両手のグレートソードを掲げた。ガキンと音が鳴るが早いか、剣に青白い閃光が落ちる。

 

(やっべ、あまのまひとつさんのギミックかっけぇ!)

(ねえねえ、俺見れないんだけど遠くて)

(大丈夫、トールさんの所でバッチリ撮影と中継、録画してる)

(いいなー実用性薄いロマン武器、素材と金貨の都合ついたら作ってもらおうかな)

(はいはい、後にしてねー)

 

 グレートソードに宿った雷光が、周囲を照らす。魂喰らいは苛立たしげに地面を蹄でかき、目の前の戦士へ空洞の目を向けた。冒険者たちは固唾を呑んで見守る。

 

「終わりだ!」

 

 モモンの姿がぶれたかと思うと、その姿が魂喰らいの後ろに現れた。伝説級のアンデッドは硬直したように動かない。モモンが残心から立ち上がると、都合二度、連続して雷光が天に昇った。

 

(ほえー、遅延発動すんのか)

(付加状態で攻撃して、その後に遅延発動で追加ダメージって感じ?)

(持続時間中の付与魔法も強制で終わるっぽい。使い所むずいかも)

(ねえってば、盛り上がってるのずるいよ皆)

(そろそろ終わるか? 疲れた胃に優しいスープ作ってるから、戻ってきたら食堂前まで食べに来いよー)

(((いやっほーい!)))

 

 チャットの感覚に近い念話系なのに、なんで音量感じてうるさいんだろうと兜の奥でため息をつくモモンガさんである。グレートソードを背に納めた所でマントを少しばさーとひらめかせる。

 

「…成敗!」

 

 周囲の衛兵隊、冒険者たちから怒号のような歓声が上がった。




ナザリック内では、すっかり慣れっこになった人化のアイテムで人類種の姿になった一部の守護者達が、トールから提供を受けた冷えたヌカ・コーラ(放射能抜き)とポップコーン(放射能抜き)を持って、送り出した至高なる御方々の活躍を観戦してました。
かなり盛り上がってたようです。

情報収集と指示とかで真面目に働いてたのは、デミウルゴスとパンドラズ・アクターだけだったり。

「…アルベド殿は、もう仕方無いですなこれ」
「ええ、その点では諦めています」
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