荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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今作ではまだフラグの弱いイビルアイ


死の支配者と黄金の姫と青の薔薇

 計画遂行上のイレギュラーの一つ、青の薔薇との邂逅。リーダーのラキュースがラナー王女の友人なのだが、信用できるとラナーが言っているので、二度目の接触はラナー王女に加えて彼女たちが居る所での話し合いとなった。同伴はたっち・みーである。

 

(えっと一人、男性いません?)

(あー彼女はガガーラン。胸が大胸筋だが、ちゃんと女性だ。困った性癖があるが)

(困った性癖って…)

(童貞大好きみたいでな…。以前、一緒に仕事をしたとき、ペロさんが誘われて本気で悩んでたよ)

(うわぁ)

 

 短距離念話で会話しつつ、できる限り言葉静かに挨拶をする。尚、ペロロンチーノが本気で悩んだのは、ナンパも苦手な彼としては、活躍に比べて(気後れして)自分に迫ってくれる女性が当時は皆無だった訳で、童貞捨てるならいつでも来いよなんて男らしく(女だが)言われての事である。

 

「はじめまして、青の薔薇の皆さん。私はモモンガ・アインズ・ウール・ゴウン・ナザリック。気軽にアインズか、偽名のモモンと呼んでくれればいい」

 

 既にたっち・みーは「聖騎士タッチ」として面識があるので頷く程度。

 

「はじめまして、私はラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ。ラナーの友人で、冒険者チーム、青の薔薇のリーダーです」

「頼りになる」「鬼ボス」「鬼リーダー」「あと処女な」

「貴方達っ!」

 

 緊張を解す積りだったのか、補足のようなそうでないセリフが続いて、思わずアインズさんは微笑む。ガガーラン、ティア、ティナとそれぞれ自己紹介が続いて、最後にイビルアイの挨拶になったのだが。

 

「お前達は、ぷれいやー、なのか?」

 

 アインズさんは営業職で培ったポーカーフェイスを、人化した状態で維持した。たっちが軽く頷く。

 

「どこで知ったかは聞かないが、その通り。私達はプレイヤーだ」

 

 ステ隠蔽に用いていた指輪を揃って外す。絶望のオーラ程ではないが、圧倒的な気配が漏れ、ラナー王女を除き青の薔薇の面々が息を飲む。すぐさま指輪を付けると安堵のため息だ。ふと見れば、部屋の端で臨戦態勢になったティア、ティナの二人が居る。双方、恐怖が目に宿っている。

 

「二人共、戻りなさい。アインズさん、仲間が大変失礼を…」

「いや、問題ない。怖がらせてしまったようだな」

「怖かった」「怖がってない」「漏らした?」「…漏らしてない」

 

 武器を収めて戻ってくるが、こころなしか椅子の位置は離れている。

 

「凄まじいもんだな。おいタッチ、アンタも実力全部って訳じゃあなかったのかい?」

「プレイヤーの件をイビルアイ嬢に聞いているなら、自重と制限をしておかないと法国などをはじめとして、面倒が転がり込んでくるのは自明だからな」

「…そう。八欲王のように世を悪戯に乱そうとするなら、竜王が出てくる可能性がある。対話の結果次第では、滅ぼしにかかるだろう」

「評議国の?」

「そうだ。だがツアーが今まで気付かなかったのは不思議だった。先程のマジックアイテムの力で隠蔽していたなら、納得は行く」

 

 アインズさんとたっちさん、ちょっと動揺。隠蔽の指輪が無いと竜王が出張ってくるとは思いもよらなんだ。だがまあ、既にカルネ村で全員フィーバーした後なので、後の祭りである。

 

(違うアピールしておきましょう!)

(あと話を戻さないと、ラナー王女ほったらかしです)

 

 態度にはおくびにも出さない。

 

「さて、プレイヤー関連の話はともかく、今回はラナー王女の協力を持って、八本指関連の人員、施設、全てを制圧する件についての相談だ。よろしいか?」

「…続きは後でという事か、いいだろう」

 

 笑みを浮かべて一人紅茶を飲んでいたラナー王女に軽く謝罪し、詳細を詰める。戦力的には全く問題は無いが、捕縛後の監視や護送などで青の薔薇の助力を得るという話に落ち着いた。青の薔薇と一緒に突入するのは、八本指関連の貴族が集い、残酷なショーなどを楽しむ「宴」という集まりだ。

 

「本当にいいのか、んな少人数でよ? 他も同時に制圧なんだろ?」

「傭兵団の仲間が事に当たる。それに王国戦士団の面々程度しか、信用に足る他の兵力が無い」

 

 最も重要な場所の制圧に、戦士モモンと聖騎士タッチ、後は青の薔薇と続く。時間は概ね、予定した日程内だ。最後にアインズさんがラキュースと握手をして会合は終わる。

 

「所であんた、童貞だろ?」

 

 場に沈黙が降りる。アインズさんは一歩、後ずさった。

 

(何故解る!?)

(え、アルベドと未だなの!?)

(気後れして、手も繋いでませんよ!)

(そこから!?)

 

 ラキュースは顔を赤くしながら呆気に取られている。イビルアイは仮面で表情不明だがラキュースとガガーランの顔を交互に見ていた。ティアは「…初々しさは合格。年齢だけが問題」とか言っている。

 

「慣れとくのに一発どうよ? ぷれいやーの初物なんてレアだしな!」

 

 どうにかこうにか婚約者が居ると断って、そそくさと場を辞す二人であった。

 

(…まじで食われるかと思った。そろそろアルベドに話をして、覚悟を決めよう)

 

 バーでペロロンチーノの「お互いを思う相手同士のエッチって超気持ちいいですから!」という言葉を何故か思い出し、嫉妬マスク同盟も解散かなぁなどと思うモモンガさんであった。

-

-

 王都内の八本指関連施設の制圧は、後は幹部や関連貴族が集合する「宴」のみとなっていた。多少は逃した連中の配下が、防御を固めさせている。逃した破落戸は初期の状態で「ガサ入れ」の情報を伝えさせており、ガゼフと少人数だけが事にあたっている様子を見せている。王国戦士団全部の投入とバレると、逃走の恐れがある為だ。

-

 それでタイミングがいいのか悪いのか、「宴」の制圧要員にエ・ランテルに居る筈のカワサキさんが来ていた。

 到着した際、一言だけ、

 

「来たぞ。俺も行く」

 

 と言い残して佇んでいる。たっち・みーも静かだ。

-

 二人から伝わる緊張感というか威圧感というか、物理的に圧でもあるんじゃないかという迫力に、兜の奥で素で泣きそうになっているのが戦士モモンことモモンガさんである。

 違法娼館の状況はそれは酷いものだったので、二人共、怒りゲージがあるなら天元突破ムカ着火インフェルノレイジバーストだろう。

 青の薔薇の面々は、彼らの気迫を前に「八本指ごとき、これなら負ける気がしないな!」とか能天気にテンション上げて言ってたりする。

 

(セバスからたっちさんに娼婦達の状況が伝わったのはホウレンソウを徹底させたし仕方無いとして、誰だよカワサキさんに被害者の状況を教えたのは!? 止められないぞこれー!?)

 

 実際、状況開始の合図と共にカワサキ達が鋼鉄の門を殴り壊した時点で「あ、無理だこれ」と止められなかった。モモンガさんは中庭を駆け抜けて強そうな連中(新生六腕)を一足飛びに打ち倒し(死なせなかったのは奇跡に近い)、八本指を魔法で拘束した。貴族達も同様である。

-

 外では、非現実的で凄惨な光景が繰り広げられている。最後の理性か、二人の鬼神は倒れたり吹き飛ばされた連中に対し、スティムパックをぶっ刺して命を長らえさせていた。回復はしているが痙攣して泡を吹いてるので、それが余計に恐怖を煽っている。

-

 青の薔薇の面々は、人が普通に吹き飛ばされる光景を目の当たりにしつつ、地面で再生の痛みにのたうつ連中を拘束していく。たまに襲いかかってくる奴等も居るが、アダマンタイト級は伊達ではない。

 ティア、ティナの二人は、こはーとかぷしゅーとか人間がおおよそ出すことは無い音を立てて怒気を吹き上げる鬼神二人に完全に怯えて、轟音がする度に涙目で抱き合っている。

 

「漏らした?」「…漏らしてない」「漏れた」「漏れたの!?」

「仕事しなさいよ貴女達…。

 それにしても、これで一応、加減はしているのね…」

「そうだ。ぷれいやーが本気になれば、本来ならあの屋敷諸共更地になっている」

 

 訳知り顔で言うが、イビルアイもまた恐ろしさに耐えていた。だが同時に、犠牲になった誰かの為にここまで怒る二人のプレイヤーに、安堵もしている。これならばツアーとの対話も酷いことにはなり難いだろうと。

-

-

 建物のテラスから、全身甲冑姿であるにも関わらずスタっと舞い降りる戦士モモン。マントがふわっと追随する所はとても画になる。

 

「中の制圧、終わったぞ。戦士団に突入の合図を」

「ああ、わかった」

 

 八本指も新生六腕も涼しい顔で難なく下して現れたモモンに従い、発煙筒を使って戦士団の部隊を呼ぶ。鬼神二人はクールダウンしたのか、中庭の制圧が終わった所で背を向け、空を仰いで佇んでいた。今の酷い顔をモモンガさんに見せたくないのだろう。

 

「し、死ねぇ!」

 

 藪から小型のクロスボウを持った男が現れ、イビルアイに向かって射撃。その程度では死ぬ事も無いのだが、モモンガさんはすっと腕を伸ばして射線を遮る。鏃には毒が塗ってあったが、人化しているとはいえモモンガさんの耐性・無効化装備を突破できるものではない。

-

 庇われた事に驚き、大丈夫か? という優しい問いに言葉が出ずコクコクと頷くだけになるイビルアイ。件の男は、ラキュースに峰打ちされて昏倒した。

 

「茂みに隠れていたか。だがもう、近隣に気配は無いな」

「毒は大丈夫なのか!?」

「無効化の装備がある、心配は要らない」

 

 自然とイビルアイの頭を撫でる戦士モモン。

 

「す、すまない、私はこれでも年齢を重ねている、止めて欲しい…」

「これは失礼した。同じ程度の背の子が仲間に居てな、気分を悪くしたなら謝罪しよう」

 

 アウラとマーレが、成果をだした時によく撫でているため、同じような背の高さのイビルアイの頭に、自然とやってしまっていた。

 

「嫌では無かった、のだが…その、恥ずかしいのでな」

 

 大人びてはいるが、体躯も合わさり幼い女の子のように恥ずかしげに言うイビルアイ。

 

「なんとイビルアイに春が」「これは所謂玉の輿?」

「婚約者が居るのに隅に置けないねぇ」

「…違いますからね?」

 

 モモンガさんが兜の奥からジト目で見るも、圧が足りない。

 

「イビルアイに先越されたか」「頑張れ頑張れ」

「私の事を言ってるなら、いいわよ、喧嘩なら買うわよそこの二人!」

「きゃー鬼リーダーが怒った」「うわー鬼ボスが処女こじらせた」

 

 モモンガさんは青の薔薇の様子に苦笑しながら、計画の大まかな行程がほぼ終了したことに安堵している。ようやく落ち着いたたっち・みー、カワサキの両名も戻ってきた。

 

(さってと、後はラナー王女の細やかな提案、それをデミウルゴスから聞いて決行すれば、皆と遊びにいけるぞ!)

 

 その提案とやらが結構な大騒ぎになる事を今のモモンガさんは知らない。




二人の鬼神乱舞とか、生きてるのが奇跡よな(震え声
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