荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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2283年に目を覚ましたトールは2287年に主人公夫妻が目覚めるまで、コモンウェルスの各所に仕込みを行ってる最中です




荒野の災厄の旅路・コモンウェルス その2

>グールの居住地「スロッグ」

 トールが2284年末にパラディン・ブランディス達を送り出し、また何ヶ月かが過ぎた。その間、極力ダイヤモンドシティなどをはじめとした町などには近づかず、主に巡っているのは開発可能な居留地である。

 

 2285年の春前に差し掛かった所で既存住民がいるスロッグを訪れた。ダイヤモンドシティから追放されたグール達の一部が、ここに居住地を構えていたのだ。

 

 ウェイストランドにおけるグールとは死体の事ではなく、放射線と進化変異ウィルスの影響で極めて長命になった元人間たちだ。放射線の浴び過ぎで脳がイカれて野生に帰ってしまった連中は、フェラル・グールと呼ばれ、区別される。外見は共にフィクションで見るゾンビのようだが彼らは血も肉もある生物である。

 

「君は、我々が恐ろしくは無いのかい?」

「キャピタル…、ワシントンDC跡地にもグールが作ったアンダーグラウンドという町があってね、慣れてるのさ」

 

 旅の同行者に気のいいグールも居たし、戦前の話も聞けるから偏見は無いと伝えた。特に、戦前の食については戦前を知るグールだけが頼りだとも。ワイズマンは笑って、トールが差し出した手を握り返した。

 

 彼らのアイディアに従って公共プールをタールベリー栽培地にする。トールが訪れた際に、ゲーム中の記憶よりも多いグールの姿があった。主人公が訪れる頃までに、ここの開拓の間に去ってしまったか、あるいは小競り合いで亡くなってしまったのだろう。だが彼らは今、そこに居る。

 

「君のお陰で、我々が自立できる目処が立ったよ、ありがとう」

「貴方達の努力が実を結んだのさワイズマン。後はレイダーや緑の間抜けがちょっかいをかけて来ないよう、準備を進めよう」

「任せときな、アンタが色々作業台を用意してくれたお陰で、素材次第で何でも用意できるぜ」

 

 ゲーム中ではみかけなかった一人、頭に迷彩のバンダナを巻いた元米国陸軍兵士の「バンチ」が気さくに笑っている。戦前の階級は伍長だそうだ。

 

「アンカレッジの戦線にも参加した事があるんだぜ」

 

 砲台一つが破壊された時の押せ押せで戦果を上げたようなもんだけどな、とは本人の弁。Fallout4の主人公であるネイト(ゲーム中ではデフォルト名)の事を聞くと、

 

「おおっ、アンタあの人の事を知ってんのか!? 戦後生まれだってのに資料でも読んだか? え、あのちょっと地味なシミュレーションをやってみた事がある?

 ありゃヒーロー願望の死にたがりを増やすだけで、実際より嘘っぽすぎてな。

 おおっと、ネイト中尉殿の話しだな。あの人はすげぇぜ、パワーアーマー無しで潜入して砲台一つを爆破、押せ押せムードになった所でさらにもう一基、最後は他の誰かがやったみたいだが、生身であれだけやるとか、退役も惜しまれたもんさ」

 

 後の仕事は国内の治安維持とか多かったから、退役しておいて正解だったけどなと遠い目をするバンチ。トールは主人公が退役軍人である事は知っていたが、アンカレッジでの戦果が中国軍の砲台爆破だったとはと驚いた。

 

「終わってこれまで酷いもんだったが、俺にとってはあの人が居た戦線の経験と、今の生活が宝物さ。あの人と撮った集合写真は、今もお守りだよ」

 

 トールは「占いで、驚く再会がある。ここを離れない方がいい」などと言って、彼が何かの原因で出ていかないようにした。後に現れるであろう、主人公夫妻との再会でどんな顔をするかというちょっとした悪戯心である。

 

 暫く滞在し、スロッグに哨戒ロボットと見張り台兼レーザータレットが張り付いた防衛タワーを設置。周囲を壁で囲む。公園跡は一応残した。

 

 プールの更衣室が皆の寝る場所だったため、敷居でプライベートに少し配慮しつつ、複数の立派なベッドを設置。あとはリラックスルームを作った。

 

「なんだか、ダイヤモンドシティに居た頃より広くて快適ね」

「その分、もしもの時は武器を全員が持つ必要がある」

「その程度は許容範囲さ。マクドナウ市長が歯噛みする程、我々はゆったりと優雅な生活をしようじゃないか」

 

 デスクローですら、居住地の門に辿り着くまでに灰になるレーザー弾幕。近くの製鉄所を拠点とするレイダーの一派「フォージ」の連中は、燃える前に灰にされると言うことで恐れて近づかなくなった。スーパーミュータントは相変わらずであったが、ワイズマン達が銃を持って構える前に大抵が灰になって幾ばくかの武器や資材を提供する事となった。

 

 また、タールベリー栽培の成功を聞きつけて、交易にくるキャラバンも増えた。体制が整ったと判断したトールは惜しまれつつもスロッグを後にした。当然、後に現れる夫婦の事を頼んで。

 

 後に訪れた主人公夫婦は、戦前を知る彼らと語らい、友好関係を結んだ。特に元軍人のバンチは、自分の事を覚えていた主人公に感激していたという。

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>アトムキャッツ

 海側の半島にあるレッドロケット・トラックストップに拠点を構える小規模なギャング集団だ。ギャングとはいっても、ポエムの朗読会を開いたり、農場の困りごとを請け負ったりと気のいい不良集団みたいな連中である。

 

 彼らの特異な点として、綺麗に整備したパワーアーマーを運用している事だ。専用のファイアパターンのパワーアーマー塗装を施し、自分のクールを示すために活動している。パワーアーマーを所有しているだけに、レイダーやガンナーといった連中に常に狙われているが、少人数であるにも関わらず撃退している。

 

 ゲーム中、不死属性の無い彼らの為に骨を折ったプレイヤーも多かったなとトールは思い出しながら、彼らの拠点に向かった。

 

「なんだ、一張羅も無くウェイストランドを歩いてるのか?」

「整備中でね。資材を集めてるから、幾らかのキャップで取引できないか?」

 

 当初は警戒していたが、景気よく取り扱いのパーツ類を盛大に購入した事で気に入られたらしい。勧誘はされたが断った。

 

「後で俺よりクールな人が、一人か二人来る」

「本当かよ? まあ、景気のいいお前さんの事だ、何か確証があるのかもな」

 

 物の序でと、クインシーに不穏な感じがすると告げておく。彼らもその辺りは気になっていたという。ただ、請われるまでは協力しないそうだ。事情があって移動する連中が居たら手助けしてほしいとはお願いしておいたが。

 

「頼み事ねぇ? キャッツじゃない以上、対価は必要だぞ」

「んじゃまぁ…。この辺りでどうだ?」

 

 トールは格納していた爆破済み廃車を敷地の外に重ねてタワーを作り、その上にいつものタレットを複数台設置した。単に廃車を重ねただけではハヴォック神の神威が怖い為、空間をMODで固定してある。奥に追加の核融合ジェネレーターを設置して繋ぎ、稼働させた。周囲のフェンスは弾丸を(何故か外からは)通さない物に入れ替え、裏手で破れているフェンス周辺も補強した。

 

「お、おいおい…」

 

 流石のアトムキャッツ達も驚いてポカーンである。あると便利だろうと、ガレージ内にはワークショップも設置した。

 

「面倒な連中は、これで大概お帰り頂ける筈だ。クールだろ?」

 

 ドヤ顔したトールに対し、暫くの間、キャッツ達は顔を見るたび防衛用の廃車タワーと見比べたという。

 

 その後、クインシーを襲撃したガンナー達から逃れた難民達に、アトムキャッツの面々は手を貸した。事前に伝えられていたサンクチュアリヒルズの事も伝えて。

 

「ありがとう。だが何故、手を貸してくれた?」

「友達が居たのも理由だが、心の兄弟が困ってる奴が居たら助けてやってくれってな」

「心の兄弟?」

「お人好しさ。どこかで会うかもしれない。お前らも辛い旅路かもしれないが、頑張れよ?」

 

 全員に行き渡る武器と温かい丈夫な服。一ヶ月分の食料と十分な医薬品。何も持ち出せず着の身着のまま逃げ出したクインシーの住人達は、殺伐としたウェイストランドで受けた予想だにしなかった援助に、繰り返し感謝を述べながら旅立った。

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>ピーボティ夫妻とビリー少年

 クインシーのすぐ外に暮らすグールの夫妻が居る。家は戦前から住んでいた自宅だ。二人はかつて核爆発から息子を失った。以降、厭世的に自宅で暮らし続けている。

 

 実際には息子ことビリー少年は冷蔵庫に閉じ込められた状態でグール化して生きていた。冷蔵庫のノブを壊して出てきたビリー少年の処遇をどうするかというクエストがあり、クインシー側の両親の元へ送り届けるか、ガンナーの一人に奴隷として売っ払うかという選択肢が存在する。

 

 ただ送り届けたはいいが、ゲーム中はガンナーに占拠されたクインシー近くに居住しているため、危ないから引越しさせたいプレイヤーは多かったようである。

 

 トールはまず、グールの夫妻の所へ挨拶に行った。戦前の話を集めている好事家だと言い、またグールの集まるスロッグの紹介もする。それとなく移住を勧めるためだ。食料があまり必要ないグールとはいえ、生活でクインシーとの取引がほぼ必須の関係上、将来的にガンナー共に滅ぼされると生活が成り立たなくなるか困窮する可能性がある。

 

「…移住か。すまないがそれはできない。息子が、帰ってくるかもしれないから」

「あなた、あの子はもう…二百年前なのですよ?」

「すまない、私の我儘なんだ、忘れてくれ」

 

 トールはスカベンジングもするというマット氏の為に、弾薬共通のより状態のいい武器を渡した。色々な話が聞けた対価に、これからまた訪れた際に戦前の話を聞く為の前金だと伝えて。

 

「こんな年寄り二人の話でよければ、いつでも来るといい」

「紅茶と珈琲、ありがとう。代替合成品って言ってたけど、久しぶりに堪能する事にするわ」

 

 寂しげにトールを送り出したピーボディ夫妻に手を振り、トールはネポンセット公園に向かう。ここから既に壊滅したユニバーシティポイントに向かう途中に、ビリー少年が閉じ込められた冷蔵庫があるのだ。

 

 途中、トールの姿を見るなり襲いかかってくるマイアラーク共を丁寧に解体しながら歩いていく。襲いかかってくるレイダーやガンナー、アボミネーションはトールにとって「資材」か「キャップ」が自分で歩いてくるお小遣い扱いである。

 

「誰か、誰か居ませんか…!」

 

 一切の気配がしなかったが、トールが近づいた所で気付いたのか、冷蔵庫の中に居るビリー少年が声をかけてきた。グールは代謝を最低限に落とし込む事でエネルギー消費を抑え、放射能の影響でエネルギーの補填が行える。ビリー少年は誰かが通りかかるまでは休眠状態になる事で、二百年以上もの間を精神崩壊せず耐えたのだ。

 

「誰だ? どこに居る?」

 

 お約束だが警戒されるのもよろしくない。

 

「ここ、ここです、冷蔵庫の中」

「待ってろ…」

 

 素手でゴツンと一発。拳はまったく痛くない。冷蔵庫の中から、一人のグール化した子供ことビリー少年が出てきて、各部の凝りを解そうと伸びをしている。

 

「君は誰だ? グールの少年というのは、稀有な話だが」

 

 知らないフリをしつつ、CHAとINT頼りの演技でごまかす。また簡単にここ二百年の状況も伝えた。少々わざとらしいが、一通り話した所でお互いの自己紹介。

 

「ピーボディさんの息子さんか?」

「パパとママを知ってるの!?」

 

 鏡を渡して「同じ様な姿になってるが、健在だよ。君をずっと諦めきれずに待っていた」と言うと、泣きづらい筈のグールであるにも関わらず、一筋の涙を流した。

 

「これから色々大変だろう。かつての大人も友達も居ない、常識だって違う。まあまずはご両親の所に行こうか」

「ありがとうおじさん!」

「…年齢だけなら君の方はおじいさんだぞ?」

「実感ないなー。先生が言ってた、心構えが大人なんだよおじさん」

「…無邪気な少年の心遣いが痛い」

 

 途中、ネポンセット公園で「カニ男だ!?」とか「エビ男だ!」とかわーきゃーやりながら、クインシー脇を通り過ぎてピーボディ家に到着。ビリー少年を送り出す。家の中からは、驚きと喜びの声が聞こえた。

 

「…クインシーが壊滅前だから、買取を言ってくるゲスも襲撃してくるガンナーも居なかったな」

 

 タバコを数本、根本近くまで吸い終わった所で、マット氏が現れた。

 

「ありがとう、本当にありがとう。これで踏ん切りがついた。時々差別も受けて限界だったし、スロッグという場所に移住するよ」

「あっちのワイズマンには許可を貰ってる。引越しの用意ができたら、俺が護衛して送り届けよう」

 

 まだビリー少年と語りきってないだろうと、一晩と丸一日は家族団欒を過ごすべきだと伝える。

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 引越しの日、ピーボディ一家が数少ない家財道具を持って集まった。

 

「この家も、あの日ローンの半分まで払い終えたのだがなぁ」

「仕方ありませんよ。周囲が酷いことになる中、囲える寝床になっただけでも幸運ですよあなた」

「怖い怪物が一杯だから、あんまり持っていけないね」

「あー、家と別れを惜しんでる所申し訳ないが…」

 

 トールは家を丸ごと格納した。一度確かめる為に再設置。傾いていた家が直立して正常に立っている。ピーボディ一家はあんぐりと口を開けている。

 

「ま、こういう訳だ。引越し先で慣れるのは新しい隣人に新しい仕事だけ。気楽に行こう」

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>スロッグ発展中

 スロッグは善寄りのグール達が少しずつ発展させている。シンプルで頑丈な周囲の囲いと、大きな防御タワーが目印だ。レイダーは大抵、略奪者として現れて灰になっていくのだが、何度か撃退している内、一部のレイダーが幾らかの物資と引き換えにタールベリーをこっそり取引するようになったらしい。

 

「面識ができたとしても油断はせんよ。奴等は所詮、レイダーだ。ま、手癖の悪い若造共の浅はかな考えは、この年寄にはお見通しだがね」

 

 ワイズマンはそんな事より、グールの居留地の噂を聞きつけたグールが少しずつ増えて、寝床が不足気味な事を嘆いていた。

 

 トールはこっそり地下に小規模Vaultというかシェルターを設置した。ベースは、政府高官が作らせた設定のバンカーMODである。掘り進む工期で四苦八苦していたVault-tec涙目の高速掘削・建造だ。児童遊具のあるスペースの脇に、隠れた感じでマンホールを設置した。上にベニヤ板と枯れた芝生のおまけ付きで、丁度隠れてました的な扱いである。

 

「木は見えるが森は見えない(灯台下暗しに近い英語の言葉)か」

「小規模集団用のシェルターだったのかもしれないな。データが無いからなんとも言えんが」

(彼らの為とはいえちょっとやりすぎた感…! 黙ってよう)

 

 お披露目したはいいが、自由度は少ないし何より天井が息苦しいと、日中は殆どのグールが外に出ている。夜間のみ、見張りの面子を除いて寝る場所には活用されている。これは意図通りだ。

 

 ピーボディ一家の家は、シェルター内の運動場に他のグールの家と一緒に並んでいる。これからは日中は畑、夜は穏やかな隣人たちと同じく静かな寝床で寝られる生活である。

 

「…君は、何を見ているんだ?」

「少しだけマシな未来」

 

 スロッグからの別れ際、何か気付いている様子のワイズマンの問いにトールは真顔でそう答えた。いつも通り、Vaultから来たという夫婦が来たらよくしてやってくれと告げて再び旅立った。交易用のタールベリーを山程持たされたという。

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>ケンブリッジ警察署の片付けと準備

 正史であれば、2287年にBOSから派遣されたグラディウス偵察隊が拠点を構える場所だ。パラディン・ダンス達は襲撃により人員を失い、襲いかかってくるフェラル・グールの対処中に、通りがかった主人公と邂逅する事になる。

 

「ブランディスの件で、油断はしてないと思うが…」

 

 まだ現時点では廃墟となった建物があるだけで、中はジャンクと壊れた家具が転がっている。とりあえずトールは中の掃除を一通り終え、窓にはガンポートを作り、屋上に通信設備の整備用品を取り揃えた。

 壊れているターミナルを全て稼働品に替え、データモジュールやホロテープを調べてデータを入れ直しておく。

 

 警察署内倉庫は荒らされていたので何も無かったが、戦前の警察装備を中心に複数を設置、弾薬もそれなりに置く。あとはターミナルを設置してBOS隊員だけが判る質問でロックをかけた。それなりのハッキング能力が無ければ、端末のロックは解除できないだろう。

 

 元は会議室だったと思われる場所にマットレスを敷く。それぞれ、寝転べば限定されたプライベートが守れるよう衝立も置いた。ゲーム中では何ら効果は無い行動だが、この世界を現実として生きる者の事を考えての行為である。

 

 あとは核融合ジェネレーターを配置の上、屋上の四隅に偽装レーザータレットを配置した。以前と同じく、BOSのパワーアーマーが通りがかった時に稼働を開始する仕様である。

 

「友好的ではあるが、離れて久しいBOSがどう出るか、だなぁ」

 

 十中八九、キャピタルBOSこと東海岸BOSの後継者はエルダー・マクソンが選ばれるだろう。正史と比べて苦労は多少減っているだろうが、リオンズ親子が軒並み亡くなったとすれば、相当な労苦が待っている。

 

「頑張れマックス坊や。だがコモンウェルスは俺とネイト達の縄張りだ、でかい顔だけはさせないからな?」

 

 少々意地悪く笑うトール。格闘訓練で何度も転がされ続けて、涙目になりながら気絶するまで挑んできた少年の姿を思い出す。当時は10歳だ。

 

「さあ、今は幾らでも失敗できる。努力したまえ? 君が将来、BOSを背負うに足る人間を目指すなら」

 

 MOD中の様々な格闘動作を自分でも使いこなすために訓練したトールだったが、工夫を凝らして向かってくるマクソン少年に、一度も花を持たせなかったのは大人げないにも程がある。

 

「…恨まれてたらどうするか」

 

 それが判明するのは東海岸BOS本隊がコモンウェルスに到着した時だろう。トールはやらかしたツケの清算が来るよなぁとゲンナリ。

 

「ま、101のアイツも世話をしてるんだ、俺を知ってて嘗めた事を言うような奴が居るなら、マックス坊や含めて片っ端から再訓練だ。俺を知らないで嘗めた事を言うような奴が居たら全力で再訓練だ」

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>一方その頃、アダムス空軍基地跡

 正史では設計に2年、建造に4年以上を費やし、アダムス空軍基地の資材などをつぎ込んで建造されたのが二代目の「プリドゥエン」である。BOSの移動型前線基地であり、ベルチバードの母艦機能を有する硬式飛行船である。

 

 BOSに数多くの支援をしたトールが存在するこの世界では、浮力に劣るヘリウムガスを使用する事を前提としたため、設計に3年弱、建造に4年程度が見込まれていた。

 正史での設計より1.1倍程大きく、水素ガスではなくヘリウムガスが入った小型のセルバルーンをいたる所に配置する事で増加した重量をカバーする。ヘリウムガスは安全性と配置の自由度が高いため、ペイロードに大きな余裕ができている事から、リバティ・プライムの運搬母艦としての運用も想定されている。

 

 Fallout4ではメインクエストの中盤、伴侶の敵(かたき)を討って、全ての手がかりを失い外を出ると、アレンジされたメインテーマと共にプリドゥエンがベルチバードを伴って登場する。歴史の修正力なのか、BOS本隊の登場に重要な役割を持つプリドゥエンの完成は、同じ程度の時期になるようだ。

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 プリドゥエンの現場視察をしていたマクソン。休憩中に作業現場を見下ろしていたら、これまで感じたことの無い悪寒が身体を襲った。一瞬の事だったので気を張り詰めていたせいかと忘れようとしたが、次の日、古株のパラディンの一人が顔を青くしているのを見て質問する。

 

「なんと言いますか、10年前、自分がイニシエイトだった頃のあの人との訓練を思い出したのです」

 

 あの人とは、メガトンに居るあの人かと聞くと「違う」と言う。

 

「4年前の活動を最後に、ニューベガス方面で消息不明になった…、

 荒野の災厄、です」

 

 マクソンは強烈なトラウマが想起されたが、鋼の精神力で抑えきる。だが服の中は冷や汗が流れてびっしょりである。

 

「子供の頃、何度も挑んで転がされたものだ。だが流石のあの方も、目立たないだけでどこかで生活を営んでいるのだろう」

「確かに。交易路とかモハビで色々やらかしたと聞きましたが、ダムの戦い以後、噂一つ聞きませんでしたし」

「一度だけ、あの人の訓練に参加したが、一周で倒れたよ」

「小さいのに無茶をされましたな。私も最初は二周が限度でしたが」

 

 トールによるブートキャンプは、身体全体を満遍なく使い倒して丁度一周する周回式だ。だが、本訓練は一周で終わりではない。倒れても叩き起こされ、完全に体力気力を全部絞り尽くして気絶するまで繰り返させられる。

 

「もう直接指導はできない身なんじゃないか」

「そうですね、それだといいですね、そう願いたいです、そうでないと困る、いやほんと。西海岸方面ではなく、あっさり別の場所で確認されたりしそうですが」

「ははは、そんな馬鹿な」

「ははは、そんなワケないですね」

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「「HAHAHAHAHAHA!」」

 




ブランディス「只今やで。コモンウェルスにおったで、いやあ助かった」
トラウマ組「はわわ」

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