荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~ 作:マガミ
大体の人は滅ぼしてる、コベナント
>アバナシーファーム
雑貨を扱うキャラバンのカーラに同伴して、戦前の高圧電線塔跡地を中心に広げられた農場、アバナシーファームを訪れた。
何度か取引をして顔見知りになったカーラに礼を言って、また雑貨類を引き取ると伝えて別れる。
「なんだ、旅人さん?」
「居留地に猫が居ると聞いてね、落ち着いても居られず見に来た」
「変わってるなあんた」
銃を持って油断なく近づいてきたブレイク・アバナシーは、この農場を戦後間もない頃から代々受け継いできた。家族は奥さんの他に、娘が二人、猫が一匹である。ただ、ゲーム中は娘の一人がレイダーの襲撃で命を落としており、その悲しみの最中に主人公が訪れる事になる。クエストは、奪われた娘さんの形見をレイダーのアジトから奪還するというものだ。
「色々巡って来たんでしょ、ダイヤモンドシティとか行ったの?」
「いや、大きな所は後の楽しみにしようと思っててね、主に周辺地域を歩いてる」
「ルーシーったら、以前訪ねてきた冒険家だっていうホーソンの事が気になっててね。彼はダイヤモンドシティの人だから」
「いいじゃない、夢見る位はいいでしょメアリー」
ゲーム中、犠牲になるのはメアリーだ。二人共、両親には微妙に似ておらず、意外な位の美人姉妹である。
「ほらお前達、今日の分の仕事がまだだろう。旅人さんに話を聞くのはその後にしなさい」
トールは農作業を手伝うと買って出て、手伝いつつもブレイクから口伝での先祖の苦労話等を聞く。核攻撃後の混乱期、略奪の横行する都市部から離れて早い段階で比較的放射線被害が少ない場所を見つけた初代アバナシーは、鉄塔の下に住居を作って農業を始めた。それを代々受け継いで200年近くである。
「人に歴史ありだ。いい話を聞けた。このウェイストランドで誰からも奪わず生きていけるのは、とても少ないから」
休憩時、ワークショップが粗雑に置かれた木のテラスの上で猫と戯れながら、素直に称賛する。
「礼を言っておくよ。今日はもう遅い。休んでいくかね? 明日になれば別のキャラバンがまた来るだろうから、手伝い分のキャップを渡そう」
「お世話になるよ」
トールはフェンスを補修してくると言って、暗くなり始めたファームの周辺を回る。ワークショップとのPip-Boyリンクが確認された。ロックダウンしていたのは、必要以外にブレイクが稼働させていないからだろう。
襲撃者が来やすい方向に十字砲火が可能なタレットを設置したタワーの配置を考える。代々のアバナシー氏が眠る墓の方面も含め、四隅に設置して火力集中側に追加すればいいだろう。
防御を考えるなら鉄塔内の建物上にジェネレータを配置すればいいが、安眠を考えると高い位置に囲って配置するのが丁度いいだろうか。
フェンスはできるだけジグザグに、近づく距離を稼がせる。もたついている間に、設置したタレットの集中砲火を長く浴びせるのだ。
フェンスはささっと設定し、ヘビーレーザータレットを複数配置したタワーは予約配置して素材のみワークショップに放り込む。ケーブルも予約配置だ。建物の上に核融合ジェネレータを配置したら接続しよう。
「食事の準備ができ…。フェンスの材料、こんなにあったか?」
「あったが、使い過ぎたか?」
「いや…。一通り囲ってあるし、ゲートもある。それにこれならレイダー達が近づいて来るまでの時間が稼げるな」
夜、見張りとして屋上に出た際、ジェネレータを設置した。貨物列車のコンテナを配置し、その中に置いたのだ。後はケーブルを繋げばファーム内に近づく不届き者を迎撃してくれる。
「ふぁぁ、交代ですよ…」
寝ぼけ眼で交代に来たコニー夫人に後を任せ、トールはラウンジに敷いた寝袋に潜り込んだ。
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トール眠りは、叫び声とドタドタと走る音で妨げられた。朝日も射しているのでまあ、許容範囲である。
「あ、あなた、あなたっ!」
「落ち着けコニー、一体どうしたんだ?」
「屋上と外、いいえ、外と屋上、見てよ!」
どうしたんだと外を見れば、昨晩、トールが設置したタレットタワーと複数の街灯が農場の周囲に設置されている。外に出て屋上を見れば、貨物車のコンテナが配置されていてそこからケーブルが伸びていた。
「…旅人さん」
「ん、バレたか。俺の経営する居留地に、ここで世話になったという女性と赤子が居てね、とても親切にして貰ったそうだから、お礼の代わりさ」
「ああ、あの…」
「ねぇ、とてもじゃないけど、それじゃ見合わないわよこれ?」
トールは含み笑いをして、
「ミニッツメン”だった”奴が知り合いに居てな、人手が足らないのに派閥争いで助けられない事を嘆いてた。そのお詫びもある」
喋りながらロボットを組み上げる。残念ながらミニッツメンの話は嘘であるが、最近の動きからしてコモンウェルスの住民は不信感を持っていたようで、信じて貰えた。
寝ぼけ眼で出てきた姉妹が、何事かとおっとり刀で出てきた。
「え、何この、何?」「わぁ、ロボットだよママ!」
「こいつはベースがMrハンディだ。戦闘は得意じゃないが、農作業に関するデータを入れたから、手伝い程度はできるはず」
起動させると、早速畑の手入れをはじめた。コニー夫人が所々指摘すると修正して作業を行う。その間、インベントリに用意してあった強化済みである服を武器と共に渡す。
「何から何まで…」
「一応、ここまではお礼の一貫だよ。あとは一つ、頼みごとがある」
いつも通り、Vaultから出てきた男女が来たら親切にしてやってほしいと伝え、トールはアバナシーファームを後にした。
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>人造人間被害者の町 コベナント
ゲーム中でもとても選択肢に悩む居留地候補である。
人造人間に家族を殺された住民が居住しており境遇には同情するものの、入場時に特有の質問を行い、そのテストにおいて引っかかった人物を誘拐して拷問、人造人間を外部から見分けるテストの完成を目指しているという凶行を繰り返している。無論、捕まった人間は拷問の末、殺害される。これまで何人もの犠牲が出ているようで、テストの精度を上げるためにかなりのウェイストランド人が犠牲になっている。
ぶっちゃけ関わりたく無いが、コモンウェルスで善良か中立の人物は希少であり、得てしてそういう人物のほうが引っかかりやすい悪循環である。ゲーム中も、キャラバンの女性が捕まって彼女の捜索の過程で町の裏側が顕になる。
「Drチェンバースのこれまでと、数多くの犠牲が無駄と化すが…」
手に取り出したのは、MOD由来のハンドレーザースキャナーだ。使うと人造人間の部品を内蔵している人間、必然的に人造人間を見つける事ができる。
現実のこの世界では仕様がゲーム上と少し異なり、後ろからスニーク状態で近づいて拳銃型のスキャナーを照射、相手の情報を読み取る。主に頭部内に人造人間の部品があるため、脊髄から頭部まで照射して調べれば判別が可能だ。
ただ、脳内インプラントなどとの区別はつかないため、うっかり自分が調べられると人造人間扱いで敵対される恐れがある。
子供を探す主人公夫婦が気に病まないように、来た時点で壊滅しているのも仕方無いが、住民も犠牲者であるからして、もっと穏便な手段でどうにかしたい。どうにかしたいが…。
「ここはまあ物理的交渉でいこう、うん」
結局、単純な方を選んだ。
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結果として、通りかかるキャラバンや旅人の拉致は止めさせる事に成功した。交渉(物理)である。ゲーム中は取れなかった手段だけに、ほっとしているトールである。
「旅人やキャラバン参加者にいる奴は、逃げ出した人造人間の可能性がある。積極的に殺そうとしない限り、逆に彼らは人間への手助けを基本的な行動基準に据えている」
「…私の、これまでの実験は?」
「ほぼ無駄だ。脱走した人造人間を殺し、インスの手助けをしているようなもんだな。レイルロード様は激怒してると思うぜ。
それにこの間、俺が正体を見破って倒した最新のモデルは、アップデートが遅々として進まないテストなんか余裕でパスするだろうさ」
スターライトドライブインに潜入しようとした奴が居て、居住を拒否された後に夜侵入を試みて住人を攫おうとした事を話す。事前のテスト自体も、コベナントのそれと同じ様な内容だったが、人造人間はパスしていた。拒否できたのはスキャナのお陰である。
また、実例としてコベナントに入植願いを出して、それでパスをしていた何人かの事も伝える。無論、インスティチュートの支配下の人造人間だ。代表のジェイコブも遠回しで拒否をしているが、増え続けていた申請を断り続けるのも日常茶飯事だったらしい。
「あ、ああ…」
「でだ、あれだけ痛めつけた後でお前らには悪いが、人造人間から距離を置けば俺は殺したりはしない。スキャナで調べて、容姿を記録して報告してくれればいい」
ボッコボコにされて地面に倒れ伏すコンパウンド内の連中。その中にテスト制作の中心人物であるMrチェンバースが居るのだが、これまで生涯を捧げてきた研究の一切が無駄だとわかり、地面に崩折れた。
「お前らの境遇には同情する。だが、命を無駄にするな」
それがウェイストランド人の事を言ったのか、コベナントの人々の事を言ったのか、それとも人造人間の事を言ったのか、彼らには判断できなかった。
ちな、筆者は滅ぼす派です