荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~ 作:マガミ
>オートマトン
ロボット関連を戦力とする新たなレイダー勢力「ラスト・デビル」と、メカニストと名乗る存在によって解き放たれたロボット軍団がコモンウェルスに現れるDLCだ。様々な追加要素があるが、一番大きなものは、自作ロボットの作成要素だ。
トールは事前に、隠されていたメカニストの拠点とラスト・デビルの拠点、またクエストが開始されるポイントを調査している。
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ラスト・デビルの拠点はまだ無人であり、多少はスカベンジャー等に荒らされた形跡はあったものの、内部に侵入はされていなかった。ただ、ラスト・デビルは他地域より使用技術水準の高いコモンウェルスのレイダーより、更に技術への関心が強いため、パスワードが解析されて拠点とされたのだろうと踏んでいる。
「元は軍事拠点だろうから、物資も豊富か」
侵入後、セキュリティを黙らせると各所に山積みになっている物資や装備、はたまた赤錆だらけの米軍主力戦車などを回収する。出来上がったのはがらんどうのバンカーである。ターミナルとセキュリティを配置し直し、侵入者には警告し、それでも入ってくる輩には適当な反撃を行うよう仕立て直す。一応、何もご褒美が無いというのは可哀想な気もしたので、いくらかの保存食料と手持ちの中からT-45dパワーアーマーと、ロボット製作ハンガーは設置した。
「これでもまあ奴等は来るだろうが、装備の質は著しく下がってくれると助かるな」
実際、ラスト・デビルがここを攻略して拠点とした際は、苦労の割には実入りが少なく、ゲーム中のような装備の充実度は見る影も無かった。安全度の面ではバンカー内は良好であったが、余りにも広く何もない空間を終始持て余していたという。
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次に手を付けたのは、ゲーム中ではキャラバン救難信号を受信し、向かう予定のポイントだ。ここでは、全滅してしまったキャラバンと彼らに同行していたエイダと呼ばれるロボット、そして彼らを襲う謎のロボット軍団と遭遇する。
だが当然、主人公夫妻はまだ眠っているので、そこには何も無い。トールは少し考えて、先にメカニストの拠点を探る事にした。
「居ればまあ、交渉かな」
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メカニストの拠点は、ゲーム中では特定部品やら口の悪いロボブレインやらを回収してようやく発見できる、戦前の秘密バンカーだ。そこでは犯罪者の脳を素材として、ロボブレインの制御頭脳を作成、ロボブレインを量産する基地になっている。
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メカニスト自身は、ロボット軍団によってコモンウェルスの安全確保を目的としていたが、ロボブレイン達は元々犯罪者の脳だったせいか、その命令を最大限に捻くれて判断、救済活動=人々が苦しまない事=速やかなコモンウェルスの人々の死、と結論付けてウェイストランドを荒らし回る事となる。
襲われるキャラバンも、その救済活動の一環で全滅させられるのだ。技術周りには甘いトールであるが、ロボブレイン関連技術については高度判断は一切させない、単純労働のみが相応しいと考える。
「プラントごと叩き壊すのが理想だが、面倒だからなぁ」
できればメカニストは到着していなければいいが、と思いながら秘密のバンカーに向かう。
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外観は単なるロボット整備会社の建物だが、地下に複数の原子炉と巨大な製鋼設備、生産設備と中枢指令センターを有している。
「セキュリティはロックダウンか。動いた形跡も無いな」
ジャンク類から製鉄を続ける炉も動作していない。放射能漏れも酷い原子炉も最低限の反応のみだ。これは恐らく、メカニストがこのバンカーに到着してから修復、稼働させていくのだろう。
「さて…、このクソ脳みそ共だが、どうしてくれたもんかな」
人間の脳を素材として演算中枢にするロボブレインは、戦前の狂気の産物の一つである。それがまああるわあるわ。稼働していないまま特殊ゲルで保存されている脳が無数にある。
「胸くそ悪い施設だよなぁ」
引き起こす結果は、確かにメカニストが発端かもしれないが、あの腐れ保存脳みそ共は人の司令を曲解する事に長けている。特に、ゲーム中に関わる事になるジェゼベルは、ロボブレインの捻くれを体現している。クエストを進める中、居留地の住人になるがいつも皮肉全開、用済みになった後は流れ弾を装ってぶち壊したプレイヤーも多いだろう。
『おい、そこの…!』
キャタピラ未接合のまま放置されているロボブレインの脇、スピーカーと外部電源のみ接続されたロボブレインが話しかけてきたので、その脇をトールは撃った。咄嗟のことだったのでハズレである。
「おっと、外したか。なんだ脳みそ、哀れなその姿のお前は、俺に何か用か?」
『野蛮な事この上ないな。だが哀れな姿であることは否定しない。一つ、この哀れな状態の私に、慈悲を与える栄誉をやろう』
この物言いは、ゲーム中でも屈指の皮肉屋、ロボブレイン頭脳のジュゼベルである。
「ん? 動けない上に人様の命令を曲解するだけの腐れ脳みそが、栄誉だとかバカかな? そもそも神経接合部、B20野に自己解決不可能な欠陥があるのに、偉そうな口を聞くな、バカめ」
何故知ってるかと言うと、キャピタルBOSに合流したBOSアウトキャスト達がよく運用していたのがロボブレインで、こちらはアウトキャストのスクライブ達がよく調整していたのか内心は兎も角、表向きはとても従順に任務に就いていた。
トールは関心し、整備方法と共に習得していた。ロボブレインにはいくつも欠陥があるが、脳と機械を接合する基板において、人工培養された接合神経組織に重大な欠陥があり、これはロボブレイン自身では解決できない。
『…よく、我々の事を知っているな』
「パーツの一つに過ぎないお前らが命令をどう曲解しようか裏で考え続けてるなんざ、散々分解して修理して来たんだ、お見通しだよ。あと、お前ら知らないだろうが、15年位は思考と動作ログ、非アクセス領域に保存されているからな?」
『なんだと!? …くそ、確かにメモリに不明領域がある。何なんだお前は、我々以上に我々を知っている。だが、人間は200年を超えて生存することはできない』
ロボブレインは警戒度を最大限に引き上げた。引き上げたがトールには接合されているターミナルの反応からバレバレである。
「はっ、戦前の人間じゃあないよ。だが戦前の技術者だって同じ人間だったんだ、作られた技術とその完成品があるなら、多少は適正があるなら解析も製造も可能だろう?」
『道理だな。しかし困った、戦前の知識を含め私の手札が全て、お前の能力の前では無意味となった。強いて言えばこの施設の案内役だが、特に有効な通過ID等も無くここまで来たとなると無意味だろう。差し出せる物が無い』
「俺としちゃ一切、お前に用事なんて無いがね。施設についても解析は順調で、あと半日もすれば掌握できる」
『…規格外だな。驚愕に値する。貴様、本当に人間か?』
「人聞きの悪い、俺は人間だ、どうしようもなくな。
なあジュゼベル、俺の実験に付き合うなら、まあ自由の身にしてやってもいい」
たっぷり15秒ほどの沈黙。
『…。…実験内容による』
「なぁに、少しいい子になって、荒れたこの世界のためにボランティア活動をして貰えばいいんだ。簡単だろ?」
『…承知した』
ボランティア=義勇軍=敵とみなしたら殺す、そういったロジックで命令を回避すればいいなどと、考えていた。
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だがこの選択、ジュゼベルは自己の消滅を願うほど後悔した。他にいる自我に目覚めているロボブレインも同様だ。
『なぜこの私達が演算機能の一切を役立てられず、このウェイストランド中を走り回って人間共の為に物資を運び、途中で困っている人間の悩みを聞いて奔走し、迷っているやつに道案内をした挙げ句、道中で怪物や無法者共の退治を請け負わねばならんのだ!? しかも休み無くだ!!』
キャピタル、モハビ、そしてコモンウェルスと来て、トールのINTの値は人間の限界突破を成し遂げている。戦前のロボブレインの欠陥なぞ、Mrハウスの手解も手ずから受けたトールにとっては朝飯前である。
思考の自由度は元のままだが、それが許されるのは喋るまで。ハードウェアに焼き付けられた至上命令として、人間の殺害は禁止されている。コモンウェルスの一般的なウェイストランド人へは一切、攻撃ができない。命令曲解も不可能だ。皮肉や嫌味を言いつつ、機械側の本能的な部分が人間を助け続ける。
「元犯罪者だろ。愚痴って無いでお前ら働け。刑期は長いぞ」
『刑期は壊れるまでと判断したからな! …おい、なんで整備をしている、整備設備をアップデートしている!? 私はさっさと破壊されて無に帰りたいのだ、なんで武装を追加している!? やめっ、やめろぉー!!』
こうして、悪は生まれる前に滅びた。後は引きこもり気質のメカニストがここを発見するなり迎え入れ、施設の説明と共にジュゼベル達に施した「人間への催眠術」を利用した、洗脳済みロボブレインの頭脳を使い、コモンウェルスでの居留地間の安全確保を行わせる。
「なんて、やり甲斐のある使命なんだろう! ありがとう」
「こいつらは単純労働以外はさせちゃいけない。元が犯罪者の脳だからな、気を付けろよ」
「うん、わかってる。バンカーも整備されてるもの、私が歳を取って死ぬまでは、連邦を見守り続けるから」
「…恋人ぐらいは見つけて、後継者育てるとかしろよ」
「無理」
「左様で」
新メカニスト=イサベル。彼女はロボット関連技術については独学であったにも関わらず天才の域だ。ゲーム中ではそれが天災というか人災になってしまうのだが、彼女の意図が正しくコモンウェルスで振るわれるなら、安全な地域が広がるだろう。
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主人公夫妻が目覚め、息子を探して旅立つ頃には、主要な道において皮肉を言いながら巡回するロボブレインがそこかしこで見られるようになった。質問すれば道案内を丁寧にやってくれる。
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目覚めた主人公夫妻が出会ったキャラバンは、外部から旅をしてきたといい、珍しくロボットを修理して運用していたので、交渉でロボット作業台(居留地でロボットを作成できるようになる)の設計図を手に入れ、関連する居留地に作業・防衛にと役立てた。
レイダーやガンナー、ラスト・デビルやインスティチュートはルート巡回するロボブレインを幾度も襲撃したが、壊せども壊せども回収され修理され何処からか湧き出てくるロボブレインに攻撃を諦め、目に映らないよう活動する事を強いられたという。
壊しても放置してもアレなので、連邦の為に頑張って貰う方向で。