荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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2万字近いですが、
「ヌカワールドが襲われる前にトレーダー達を保護、レイダーを迎え撃ち撃退しました」
ということだけですので、飛ばして戴いて問題ありません。



荒野の災厄の旅路・ヌカワールド

>ヌカ・ワールド

 Fallout4の大型DLCであり、レイダーに支配された元巨大テーマパークを題材にした追加コンテンツだ。

 

 戦前のヌカ・ワールドは、表向きは楽しい夢の国…というか、某ランドの設定を、マイナスに裏返した感じである。裏では軍の研究も含め様々な実験が繰り広げられた場所でもあるので、単なる娯楽施設とは性質が正反対であろう。現実の某出銭氏の構想は従業員と来訪者に夢を与えたが、ヌカ・ワールドは裏に悪夢しか湛えてない。

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 核戦争後は集まってきた人々が交易所として発展させてきた。だが3つのレイダー集団が合同で襲い、交易所を運営していたトレーダーたちを奴隷として使役、売上を総取りしている。利益は多いが、3つのレイダー集団は仲が良い訳ではなく、お互いの隙の探り合いで仮初の均衡が保たれている。

 また、レイダーの中に入り込むという事で、コモンウェルスに不利益をもたらすクエストがあり、ミニッツメンのブレストン・ガービーと決別する羽目になるため、バグの件も含めて大層評価が別れる。

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 2286年に入った所で、マスフュージョンビルの原子炉と原子炉内の各種機材を回収し、該当勢力が見えていないのに問答無用でクエスト等が発生する理不尽は存在してない事を確認していたトールは、回収物の一部をハードウェア・タウンのトレーダー達に売却し終えると、癖になっていたPip-BoyのMAP情報の確認をしていた。

 

 余談ではあるが、ゲーム開始時にはレイダーに襲撃されてトレーダーが全滅しているハードウェア・タウンだが、トールは友好を結んで複数のプロテクトロンとMrガッツィーを配備している。建物の出入り口は、裏口も含めてヘビーレーザータレットがバリケードと共ににらみを利かせているので、本編中のように殺される可能性は低いだろう。

 

 さてトールであるが、MOD追加のロケーションが捕捉・追加されていないか、Pip-Boyの地図を眺めていたのだが、それに気付くと頭を抱えた。確認したのはヌカ・ワールド交通センターだ。ここから別マップであるヌカ・ワールドへ移動できる。

 

「なんで今まで忘れていた! くそっ、間に合うか!?」

 

 レイダー達の襲撃は、主人公夫妻が起きる大体一年ほど前だとされている。急いで身支度を整えると、トールは交通センターへ向かった。

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 到着してみれば拍子抜け、だったろうか。交通センターの周囲にはヌカ・ワールドへ向かうトレーダー達や、戻ってきたであろう連中がたむろしていた。彼ら相手に商売をしている面々もいて、ちょっとした村のようになっている。

 

「ガンナーにでも奪われたら面倒か」

 

 周囲の建物を使えるように瓦礫を撤去すると、崩れた瓦礫で入れなかった建物にワークショップと核融合ジェネレーターを設置。外の目立たない所にヘビーレーザータレットと複数のプロテクトロンを配置する。その建物の扉にはロックをかけた。もう一つの建物内が広く使えるので、元雑貨倉庫っぽい方にはあまり興味が湧かないよう考慮している。

 

「さあて、ここが無事でもあっちが駄目なら困るからなぁ…」

 

 独り言を言いながら、他のトレーダーやバラモンと共にモノレールに乗り込み、ヌカ・ワールドへの到着を待った。

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 コモンウェルスからヌカ・ワールド駅へは高速モノレールの速度で数十分程度である。途中にいくつかの駅があり、そこで乗降する者がいくらか居た。飾りが無い事から、元はメンテナンス等に携わる作業員用の駅だったようだ。暗い通路がそのまま外に通じているようだ。ただ乗降客のその中に、ポーター・ゲイジの姿を確認する。

 

 ポーター・ゲイジとは、オーバーボスあるいは総支配人という形で誰かを立ててレイダー達を取りまとめさせ、自身は献策する立場で状況を操ろうとする男だ。コンパニオンとして連れて行く事もできる。

 

 だが今は、普通に交易所として賑わう中に居るのは下調べの積りなのだろう。始末するのは容易いが、3グループのレイダー達は健在のままで周辺地域へ被害を齎す可能性が高い。

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 ならば、引き込んで全て潰す。

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 襲撃はいつになるか不明だが、そう遠くは無いだろう。ただ、ウェイストランドを行くトレーダー達とはいえ、練度も高い訳でなく、集団での戦闘は不向きだ。ここは瓦礫などを中心に接収し、資材を用意して防御を固めるほうが楽だろう。また、猜疑心の強いのがウェイストランド流のため、トレーダー達の代表者に話を通した所で何も決まらない間に襲われる可能性も高い。

 

「くっそ、面倒だなこれ…」

 

 戦力自体は、手持ちと集めた資材でいくらでもロボットを製造して配置すればいいだろう。だが、そのまま脅威と映ってしまえば、関係としてはいびつになってしまう。

 

 ふと、ベンチに座ってモハビを思い出す荒野を眺めていると、視界にギャラクティックゾーンが入った。

 ゲームでは、取り外したスターコアという制御板の影響で、レイダー襲撃時に起動した防衛システムが暴走、レイダー諸共居住していたトレイダー達は全滅の憂き目に遭う。その後は暴走ロボットのひしめく危険地帯になる。

 

「ヌカ・ワールド内の戦力なら、交渉の余地はあるかな?」

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>ギャラクティック・ゾーン

 ロボとかメカとか宇宙とか、戦前の男の子達のハート鷲掴みのエリアである。トールにとってはレトロフューチャーな未来技術の塊だ。ここはスターコアコントロールという先進的に制御システムにより多数のヌカトロンやタレットなどが制御されて運営されており、戦後も200年近くに渡って当時の面影とアトラクションを守り続けてきた。

 

 ロボット達や施設に強い被害を与えない限りは安全な為、ここを住処とするトレーダー達はジャンク漁りをして生計を立てているのだが、ゲーム中ではスターコアコントロールに使われているスターコアという基板を取り外してしまった事で悲劇が起きる。

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 結果的に、ここを訪れたトールはギャラクティックゾーンに居住するトレーダー達を説得する事ができた。スターコア自体は売り払ったり他に流用されていたが、トールの手持ちにあるスターコア…という名目の、複製と言うか本物…を返しに来た設定だ。

 

「防衛システムの起動で虐殺か…」

「これ自体はとても優秀なシステムみたいなんだが、制御下のロボットの敵味方識別装置もシステム依存みたいでな」

「スターコアが少なければ、ヌカトロン達は識別能力が低下するという事か。わかった、ありがとう、もしもの時に使って自爆する所だった」

 

 トールはトレーダー達のスターコアの手持ちと合わせてシステムを修復し終えた。また戦前に望まれていたサブシステムも構築する事で、より柔軟で安定したロボットの運用ができるようになった事を感謝される。

 

「幾ばくかのキャップで手を打ってもいいんだが、一つ、頼み事がある」

 

 こちらに来る際に有名なレイダーの構成員を見かけたと伝え、防衛の際にヌカトロン達を率いて欲しいと頼み込む。戦前の技術や情報の収集をしているため、物の価値観が違うレイダー達に占拠されれば、それらを失いかねないからと。

 

「ふむ、BOSの偵察兵かね?」

 

 先程からやりとりしている相手…ケンダル・アルストンは中々鋭い。ゲームでは訪れた時点でスターコアコントロール内で死亡している。

 本部と西海岸BOSはハイテクレイダーの為、評判が悪い。ただボストンは東海岸BOSとシカゴ方面の中央BOSと勢力圏が近いため、かつて程は評価は悪くなかった。

 

「構成員ではないが、東海岸BOSには友人が多い。ここは宝の山なんだ。俺の解析さえ済めば彼らも余計な手出しはしないし、させないよ」

「わかった、君の言う通り、レイダー達の襲撃に備えるよう中央市場会議で提案する」

 

 お互い握手した所で、トレーダー達が寝泊まりしているバックヤードにワークショップを設置した。ゴミ類を一通り片付け終えて、居住スペースを整理。スターコアシステムとは切り離した防衛ラインや設備を整える。

 

「…ワークショップを設置できるとは」

 

 トレーダー達が驚きと呆れ顔。もう慣れた。

 

「空間保存されてたんだが、容量を圧迫してね。中古品だから安くしとくよ」

「ははっ、何でもありだな。よし、展示のあのパワーアーマーは君の物だ。持っていきたまえ」

 

 現れたケンダル氏がそういうと、娘のティアナが反対する。

 

「ちょ、父さん! あれはあたしが狙ってた獲物なのに!」

「とはいえ、対価が無いんだ。ティアナ、彼の所に嫁に行くか?」

「ストップ、親父さん、娘さんが爆発しない間に冷静になってくれ。さっきも言った通り、ここのテクノロジーの情報収集許可と、レイダーへの備えをしてくれれば他には要らない。パワーアーマーも塗装のデータが調べられればいいよ」

「とは言ってもなぁ…」

「なら、定期補充されるヌカ・コーラを集めて、来た時に安値で取引してくれないか?」

 

 ヌカ・ワールドの自動販売機は、取り出した後にロボットが補充するのか短い時間でリスポンというか補充される。自動販売機の機構が大抵は故障して冷えてないし、空瓶が収まっている事もあるがそこはご愛嬌だ。

 

「わかった。それで手を打とう」

「商談成立だ。他のエリアを回ってくるから、また後で」

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>ドライロック・ガルチ

 ゲームでは、レイダーが襲ってきた際に「マッド・マリガンのトロッコ・コースター」という、岩山をくり抜いて作ったローラーコースターのアトラクション内に住人が避難するのだが、ブラッドワームが実は巣食っており、騒ぎに刺激されたかアトラクション内を皮切りに、ドライロック・ガルチ全体を占拠してしまった。

 結構な住人が居住していたようなのだが、作中、確認できる死体は数体程度である。まあ、ウェイストランド的な犠牲になったのだろう。

 

 トールはまだブラッドワームが湧き出ていない事を確認し、ゲート前で暇そうに周囲を警戒していた男に挨拶して、中に入る。

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 雑多な格好のウェイストランド人が行き交う通りの中、商品を取引したり酒場でヌカ・コーラを飲んだりして一通り巡り終えると、トールはトロッコ・コースター前でぶらついていたテリー・タナカ氏(ゲーム中では既に死亡)に、

 

「なんか、ブラッドワームに襲われる前に足元で聞いた音が、岩山からするんだが」

 

 と伝える。近くで聞いていたリッキー(こちらもゲーム中では死体だ)は「砂地はともかく、岩だぜ?」と半信半疑だった。ドライロック・ガルチもこれまでブラッドワームの侵入を許した事が無かった事も疑念に繋がっている。

 

「そういやサムの奴も言っていたな。変な音がするって」

「おいおい、こんな流れ者の事を信用すんのか?」

「杞憂に終わればそれでいいさ。なあ旅人さん、少しばかりキャップを弾むから、腰のそれを持って一緒に調べてくれないか?」

 

 トールは「そろそろキャップが必要だったんだ」と快諾。テリー氏はリッキーへ「サムへ伝えておいてくれ」と伝言を頼んで、共にアトラクションの洞窟内に入った。

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 トールは外の喧騒が遠ざかっていく中、自分の居る近辺を調べるふりをしながら次々と岩から建材用セラミックに置換していく。外を回っていた際も、一通り回った所で人通りのある15センチ下は全て、50cm程のセラミック製建材に置換してある。トールのチートとも呼べる能力、MODによるPip-Boy内蔵ワークショップによる荒業だ。このエリアに入る前も、周囲をぐるっと一周した際に囲いや壁代わりの岩、その下を全て置換していた。

 

 その際、やはりコースターのある岩山から、外に向かってブラッドワームの通り道が確認されている。コースターのある中も、壁を隔てて数センチ脇をブラッドワームが徘徊するための穴が通っている。

 

「何かわかるか?」

「壁の少し向うに不自然に空間があるな」

 

 コンコンと壁を叩いて、軽い音が出ることを教える。テリーは顔を青ざめさせた。

 

「それが本当なら、ブラッドワームの巣の脇で俺達は生活してる事になる。おまけに、緊急時に逃げ込むのがここだ、俺達は自分から巣穴に飛び込む羽目になるのか?」

「そうなるな。だが今なら何か対処ができるかもしれない」

 

 そう言って、トールは奥に置換し終えたセラミックプレートがある岩盤に軽くツルハシを入れる。奥にあるプレートを見せるためだ。素知らぬ顔でテリーに見せる。

 

「壁面から少しの所は硬いものが貼ってあるみたいだから、完全に全部が岩盤という訳ではないようだ。ブラッドワームが抜けてきそうな隙間だけでも塞いで、あとは一番高い所から奴等の巣穴に、何かきつい虫除けか殺虫剤でも流し込むのはどうだ?」

「高い所というと、エントリー区画だな。緊急避難場所に使う予定の」

「急ごう。そこがブラッドワームの巣とかだったら面倒だ」

 

 トールとテリーが広い場所に近づいた所で、後ろからリッキーとサムが現れた。

 

「最初は何の冗談だと思ったが、途中、砕いた岩の奥を見たら、ブラッドワームの通り道を見つけた。やばいなこれは」

「殺虫剤って、何かあるのか、そんな便利なものは?」

「ブラッドワームのみ効く、忌避剤兼殺虫剤だ。成分配合は戦前にヒルやミミズが嫌いな研究者が作ったらしいが、俺が中央市場に行く前にぶらついてた際、みかけたブラッドワームにこいつを投げて振りかけてやったら効いた」

 

 実証済みという事で、先住民3人は感心している。実際、MODで作り出されたこの煙幕グレネードは、ブラッドワームのみならず昆虫系、節足系に効く。動物系には効かないか効きが非常に悪い。

 

「煙幕グレネードに似てるな。催涙ガスの代わりに殺虫剤を吹き出すのか」

「吹き出す方向をコントロールして、全部の煙を穴に流し込むのはどうだ?」

「そうだな。あとは余計な穴は塞いで、1つ程度は逃げ道を作って追い出せたらいいが」

「外周にこれっぽい穴が開いていた。その先は空の貯水プールだ。コンクリで固めてある」

 

 消火用の貯水槽だったのだろうが、今は空だ。誘導するよう両側に鉄製の柵を置き、空いた先が空の貯水槽になるよう配置してある。

 

「この煙幕は軽いのか?」

「空気より重いから、暫く滞留する。換気は必須だな」

 

 イメージはバルサ○である。トール達はブラッドワームが出ていない事を確認すると、煙幕グレネードのピンに細い丈夫なワイヤーを引っ掛ける。空いている穴にピンを付けたままの煙幕グレネードを放り込み、上に岩を載せた。トールは作業する傍ら、エントリー区画の岩盤を全てセラミック製プレートを仕込んだものに変える。後で岩山ごと、コンクリで内部を固める作業をしようと考えた。

 

「準備できたぞ」「こっちもだ」「俺も」

 

 ピンにワイヤーが繋がっていて、トロッコの端に引っ掛けられている。トロッコを人力でもいいので動かせば、ブラッドワームの穴にある煙幕グレネードが一斉に煙を吹き出す算段だ。

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 ピンを引っ張り終えてくぐもった破裂音が響く。暫くすると、岩盤内を苦しそうに暴れまわる音が聞こえる。数にして40個前後を一斉に使った訳で、結構な量の煙が生成されて穴の中を駆け巡っているのだろう。

 

 確認しようとアトラクションを後にして外に出ると、岩山の各所から煙が吹き出ていた。住人や他の旅人も何事かと指を指したりしている。

 

「他の連中に教えるのは後だ。トールさん、下で見つけたっていう穴と貯水槽の所へ行こう」

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 ドライロック・ガルチの外周で目的の場所へついた。

 

「「「うわぁ…」」」

 

 見たら居るわ居るわ。苦しそうにもがく大小のブラッドワームが居る。小型の幼生もいるようだが、毒の周りが速いのか殆ど動かないか、暴れる成体のワームに潰されている。

 そんな地獄絵図の、ブラッドワームのプールがそこにあった。そんな所に入らされるのは御免被りたい。

 

「おえっぷ…、暫くワーム料理、やめとくわ」

「そんなん食うの、あんたとテリーだけだぜ、ゲテモノだろあれ」

「金が無い時に食うだけだ、好きなワケじゃない」

 

 銃を構えながらも軽口を叩く三人。

 

「貯水槽のコンクリは頑丈そうだ、破片グレネードを投げてみる」

 

 放り込んで急いで待避。上空に向かって死んだというか破砕されたブラッドワームの破片が飛び散る。近くに居たら体液とか頭から丸かぶりだったろう。

 貯水槽の中のブラッドワームは全滅している。地面から襲いかかって来なければ、奴等自身は柔らかいので倒すのには苦労しない。奇襲する能力と外見が厄介なのだ。実際キモい。

 

「結構な量が出てきたが、まだ居そうなのが嫌だな」

「なあ、キャップは追加で弾むから、さっきのグレネード、追加できないか?」

「ふむ。追加でいい方法がある」

 

 ドライロック・ガルチの吹き出していた煙はもう殆どが収まっている。トールはインベントリからバッテリーと大型のスポット送風機を取り出した。最後に先程まで使っていた薬物の瓶を取り出して、送風機の液体投入口に入れる。推奨されない使い方である。

 

 勢い良く致命の煙がブラッドワームの巣の中を駆け巡る。たまに威力を落とした時限式煙幕グレネードも追加する。端で届かなかったり、先に死んだ同族のお陰で難を逃れていた個体も、人間一人をよろめかせる程の吐気圧を出せる送風機の力と、時折追加される煙幕グレネードの爆圧で、隅々まで煙が行き渡って苦しみもがく。

 

「…ブラッドワームの噴火とか、気持ち悪い」

「あれ火山じゃねぇよ」

 

 勢い良く煙から逃げて、逃げる速度が早すぎたか、風や爆圧に押される力が合さって岩山の頂上付近の穴からすぽーんと飛び出したブラッドワームが、勢いそのままに岩山の様々な場所に落ちて死んでいく。辛うじて生きていた個体も、毒の影響でそのまま死ぬ。

 

 一晩中、トールは定期的に殺虫剤というか殺ワーム剤を送り出し続けた。横で先住民の三人は交替で見張りをしていたが、朝方には揃って居眠りである。それでいいのかウェイストランド人。

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 様子を見に来たらしい先住民代表が、寝ている三人を叩き起こしつつトールに頭を下げた。

 

「貴方が気付いていなかったら、私達は奴等の餌食だったでしょう。ありがとう」

「気付けて幸いだ。奴等は死体に卵を生むそうだから、より多くの住民が犠牲にならずよかった。

 殺虫剤自体は、レシピさえ知ればゴミみたいな値段で作れる。ワーム退治とレシピ、いい値段で買い取ってくれるか?」

 

 先方は安値で申し訳ないと繰り返し謝っていたが、トールにとっては悪くない価格だったので商談成立。こちらでもレイダーに備える事と、自販機のヌカ・コーラを集めて貰うよう依頼した。

 

 去り際までに、トールはドライロック・ガルチ内の地面や周辺の少し下へ、セラミックプレートとコンクリートで置換する。ついでに、武装を少し強化して、人語応対が可能な追いプロテクトロンを設置。アトラクションに敬意を払って、帽子やカツラを被せた。メンテナンスポッドも勿論設置した。

 

「これで2箇所、協力は取り付けられた。さぁて、コルター、ゲイジ、他のレイダー共、いつでもきやがれ」

 

 ゲーム中では、脅威が残るアトラクションエリアを探索して問題を除去し、レイダーのグループへ下賜する。忠誠を金とモノで釣るのだ。

 

 トールは問題を先に食い止め、友好を交わし、周辺を探索しながらレイダーたちを待つ事にした。

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>サファリアドベンチャーと禁断のコンソールコマンド

 トールは集めた資材を使ってステルスフィールド装備のアイボット達による監視網を作り上げながら、戦力としては考慮していなかった、サファリアドベンチャーに居る「シートー」との接触を思い立つ。

 

 シートーは、スカベンジャーであった両親がスーパーミュータントに殺され、彷徨った果てにサファリアドベンチャーに辿り着き、そこでグール化したゴリラ「グールリラ」達に育てられた。多分ターザンのオマージュである。

 

 彼の居るサファリアドベンチャーには、現在、ゲータークローと呼ばれる二足歩行するアリゲーターのようなアボミネーションが徘徊している。

 

 ゲータークローはここにかつて居た科学者、Drマクダーモットによって生み出された代物で、元々はサファリアドベンチャーのガーディアンとして生成された。だが素材が最悪だった為に制御不能であり、マクダーモットも襲われて命からがら逃れ、シートーに保護された。だが怪我が原因でそのまま息を引き取った。

 

 マクダーモットは戦前から生きのびたグールであり、サファリアドベンチャー地下に設置されたヌカ発生再現装置なる、戦前の超科学の産物の責任者であった。これは、遺伝子データを基に生物を生成するシステムで、エネルギーさえ供給されれば止めるまで延々と設定された生物を生み出し続ける。核戦争勃発後、地球環境再生の為に保全が必要と研究を続けていたのだった。

 

「接収すれば、どこかに保存されている戦前の遺伝子データを使って昔の生き物を再現できる、か?」

 

 ゲーム中ではゲータークローかガゼル(ただし二つ頭)だけだが、現実となったこの世界では、別のアプローチができるかもしれない。

 

 だが一手足りない。専門の研究者が居ないからだ。既存のインスティチュートは別の用途かあるいはシステムの解析に躍起になる可能性が高いし、BOSも論外である。

 

「…コンソールコマンド、試してみるか」

 

 トールはMODによるチートを超えたコンソールコマンドの中でも、この世界においては禁断かつ禁忌となるであろう技の使用を決断した。

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 シートーはあの厄介なゲータークローが徘徊し始めてから、家族と共に避難生活を続けている。安全なルートを通り、自分用の食料を探し、たまにゲータクローを殴りつけて昏倒させて、住処へ逃げ帰る。そんな生活だ。

 あのシワクチャの人間が謝っていたが、死んでしまった彼を恨む積りは無い。無いのだが、面倒な事は確かだ。家族は共に行こうか?と聞いてくるが、シートーには家族が傷つくことは耐えられなかった。あのシワクチャの人間のように、死んでしまう事は何よりも怖い。

 

「? あいつらの声?」

 

 金網や壁、藪を抜けて地響きと咆哮の響く方へ行く。

 

「はん、気分はどうだ直立ワニ? 動けず殴れず、一方的に鉛玉食らう気分は?」

 

 シートーの見た先に、一人の人間が立っている。たまに来ては逃げ帰る他の人間のように筒を持っていて、それをゲータークローに向けている。向けているだけでなく、筒の先から煙も何度か出る。その度に、倒れた哀れな生き物は、苦悶の叫びを上げてのたうつ。

 

「あの時は集団とかスクリプト湧きで厄介と思ったがまあ、出てくると覚悟してりゃこんなもんか。んじゃな、あばよ」

 

 重い、乾いた音が響くと、ゲータークローは数度痙攣してから動きを止めた。

 

「よっこい、せっ!」

 

 いつの間に持っていたのか、人間は手に持った大きな鉄で死体を殴りつけた。棘と刃が付いている。死体は粉々に爆ぜた。

 

「こんだけやりゃ、もう動かないだろ」

 

 シートーは思った。この人間、なんかやばいと。気付かれないようにしないとと思った所で、人間が振り返った。気付かれていた。まさか、ゲータークローのようにバラバラにする積りだろうか。

 

「ん? ここに住んでるのか? すまんな、獲物を横取りしたか?」

 

 シートーは首を振った。人間は「そうか」と答えて、肉片を集める。

 

「何、してる?」

「そりゃ、食う為さ」

 

 シートーは驚く。やっぱこいつやばい。

 

「不味ければ殺すだけだな後は」

 

 かかって来なければ殺さないと言う。それについては信じていいと思った。

 

「こいつら、いくらでも、出てくる。大変」

「繁殖してるのか?」

「シワクチャの人間が話していた。機械で生まれる。止めたかったが、止められなかった」

「ふーむ? そのシワクチャの人間に会えるか?」

「会えるが、話せない。それでもいいか?」

「いいぜ」

 

 もしかしたら、この人間に一緒に来てもらえば、頼まれた機械を止められるかもしれない。シートーはそんな事を思いながら、シワクチャの人間を埋葬した墓へ連れて行った。

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 警戒されているな、と苦笑しながら何も知らないフリをして話をする。やはりもうDrマクダーモットは亡くなっている。これから案内されるのはドクターの墓だ。

 

「ここ、シワクチャの人間、眠ってる」

「お墓か」

 

 一応、何か考えるフリをしてインベントリから大きな布を取り出した。墓の盛り土の上にかけ、ヒュージョンセルをいくつか取り出す。

 

「? 何をしてる? シワクチャの人間、もう起きない」

「えーと、そういえばそっちの名前、聞いてなかったな」

「シートー。昔、お母さんに呼ばれてた」

「オーケー、シートーね。俺はトール。トールだ」

「わかったトール。それで、何をしてる?」

 

 傍から見れば、死者を悼む作業にも見えるが、気分的には怪しげな儀式である。

 

「シワクチャの人は、俺やシートーとは違う、すごくすごく昔から生きていた人間だ。少しだけ身体が変わって、長生きだった」

「それわかる。今のシートーの家族、シートーのお母さん、お父さんより長生きだって聞いてる」

「家族の事は気になるが後にしよう。それでな、シワクチャの人は、死ににくいんだ。もしかしたら、起こせるかもしれない」

「本当か? シートー、ゲータークロー要らない。シワクチャの人間に機械、止めて欲しいと頼まれたけど、やり方、わからない」

「んじゃあ、試してみる。失敗しても、一緒に機械を止めに行く手伝いはするよ」

「ありがとう、トール」

 

 トールはコンソールを呼び出してコマンドを叩く。データガイドがあるので目の前に眠る人物の該当IDはすぐに見つかる。状態は死亡だ。これを生存に変更を試す。変更はできたが、効果は現れない。

 失敗したか、はたまた他の要素か。ただ、グールとはいえ死んだ人間をこんなもので生き返らせるなんてのは、命の冒涜なのかもしれないとトールは考えた。

 

「だめなのか?」

「そうみたいだ。仕方無い、機械を止めに…」

「誰か、目が見えないんだ、誰だ土を口に詰めたのは…うわっ、耳に砂が。酷い仕打ちだ。すまない、シートーを知ってる人は居ないか、誰か居ないか、身体が痛むんだ…!」

 

 トールは慌てて布を取り去ると、手袋を確認して手で地面を掘り起こす。ドクターの肌が見えた所でスティムパックをぶっ刺す。確か、ドクターは死に至る怪我をしていた筈だ。

 

「あいたたた! …身体が楽になった? すまない、顔の上の土をどけてくれないだろうか」

 

 ある程度掘った所で、腕を掴んで立たせる。そこには土埃で酷い状態の白衣を着た、Drマクダーモットが立っている。頭も顔も土だらけで酷い状態だ。

 

「おお、シワクチャの人間、起きた。家族はもう起きないと言ってたのに、トールはすごい」

「シートーか? …私は死んだ筈だが、これは何かの夢か?」

 

 自分の身体を見て、目の前のシートーを見て、頬の皮の無い頬を自分でつつくドクター。

 

「やあドクター、起きたな、はじめまして。バッチリ死んでたのは確かだよ。ちなみに俺はトール、さっきシートーと知り合った」

「そうか、やはり死んで居たのか私は。だがどうやって蘇生を?」

 

 疑う訳じゃないが探るような言葉。トールは高いCHAとINTで答える。

 

「調査上、FEVウィルスに適合した人間、グールは極限まで代謝を落として休眠状態になれる。放射線をエネルギーに活動できるから、食事も少なくて済んだ筈だ。ここまで、身に覚えがあるはずだ」

 

 ドクターは頷いて先を促す。シートーは専門用語が多いせいか、首を傾げている。

 

「ただ身体全体の維持バランスが崩れると脳に費やすエネルギーを失ってほぼ死んだ状態になる。身体をバラバラにされたのと同じ様に。こうなるとエネルギーサイクルが狂って維持できなくなり、本当に停止というか死んでしまう。だが、死んで間もないグールなら特定の放射線を浴びせる事で、運が良ければエネルギー供給サイクルが治る…という仮説だ」

「成程、死んだばかりの私は丁度いいサンプルか」

「仮説も仮説で成功率は途轍もなく低かったが、成功してよかった。気分はまだ悪いだろうが、他に痛む所はあるか?」

「先程投与されたスティムパックを刺した痕が一番痛いかな。だがありがとう」

「トール、シワクチャの人間起きたなら、家族の所へ一度、案内したい」

「そうだな。ゲータークローの発生を止めるにせよ、流石にドクターは戦い向きじゃなさそうだ。いいかなドクター?」

「ああ、再び世話になるよ、シートー」

 

 シートーの住居は、ゴリラなどの類人猿が展示されていたスペースだ。いくつかの金網が小さく破れていて、そこを行き来する。ゲータークローはその恵まれた体躯が故に、隙間を通れない。

 シートーの家族、とても頭の良いグールのゴリラ達ことグールリラ達は、最初はドクターを見て首を傾げていた。中に人間が入っててもおかしくない仕草だ。次に俺を見て、逆側に首を傾げている。何故だ。

 

「みんな、ええとシワクチャの人間、ドクターだ。寝てたけど、起きれたからびっくり」

「また会えたね、暫く厄介になる」

「そしてこっちがトール。ゲータークロー、いじめる位強い、怖い。増えるのを止める手伝い、してくれる」

「怖いって何だ怖いって?

 …まあいい、こんにちはシートーの家族達。俺はトール、旅人だ。ついでで、増えるのを止めてくるから、よろしくな」

 

 グールリラは軽くドラミングして歓迎した。だが、食事の後、腹ごなしの暇潰しにとアームレスリングしてトールが勝ったりするので、

 

「トール、家族より強い。細いのに。人間の姿して窮屈?」

「人間だからな? 純粋な目で言われると何も言い返せないが」

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 その後、トールはヌカ・ワールドの現在の状況と、ボストンの現状、他地域の大まかな情勢についてドクターに伝える。ウェイストランドと呼ばれる今のアメリカ大陸に嘆きつつも、ニューベガス方面なども含め、ある程度は以前のままの自然が残っていることにドクターは喜んでいた。

 

「近くのボストン、ワシントンDCにシカゴ、ラスベガス、カリフォルニア…。すっかり様変わりしてしまったな」

「他の地域には足を踏み入れていないのでなんとも言えないが、無法地帯になって二百年だ、人の心もまあそれに慣れるもんさ」

「私の自然環境復活計画は、どうしたらいいのだろうか。有効な遺伝子サンプルが少ないとなると、とてもではないが進められない」

 

 汚染サンプルでゲータークローを作り出してしまったため、ドクターはもう遺伝子の操作は諦めるようだ。できる限り純粋なサンプルを用いて実験しないと、まともな生物の生成は不可能だろう。

 

「期待薄だが、ボストンに旧時代の遺伝子サンプルが集まった場所があるかもしれない。向うで探してみるか?」

「頼めるかな? 私は流石に、この身体になる前から年寄で、付いていくのは難しいが」

 

 色々学術的な話を終え、ヌカ発生再現装置の休止、あるいは切り替えについてドクターと相談する。

 

「居るのがあのアホワニ…遺伝子的にはカメレオンらしいが、まああれを殴り倒してから、止めればいいのか」

「簡単に言うね。だが君とシートーなら可能なのかもしれない」

「ん? シートーはここに残していく。彼も家族を心配しながらよりはいいだろう」

「本気かね。…もう一度問う、本気かね?」

「なんで二度聞いた。本気だよ。ここの安全が確保され、頭2つでもガゼルが増えれば、飢えに悩む人が、奪うことを選択肢に入れずに済むからな」

 

 住処と食事と衣服、それが奪わずに穏やかに揃えられるなら、争いは少なくなるだろうからとトールは笑う。

 

「無くなるとは言わないのが、君の本質なんだね…」

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 心配げに見つめるシートーとドクターに見送られ、トールは研究施設へ向かう。ゲーム中はスクリプト湧きも含めて厄介この上ない劣化デスクローであるゲータークローも、現実で見ると移動により自由度が増しているとはいえ、所詮は生き物だ。

 

 比較的柔らかい腹に、時には弾丸、時にはレーザー、たまにナイフか拳を叩き込む。死んだ後も油断せずブラッディメスのPerkを有効化して、バラバラの肉片に変えながらだ。

 ゲームとは異なり、急所を刺そうと瀕死になろうと、死なば諸共で襲ってくるのが現実の生き物である。

 

 途中、元熊のヤオ・グアイを仕留める寄り道をしてから目的地へ向かう。わざと立って歩いて行き、襲いかかってくる多数のゲータークローに「地雷を」顔面に投げつけたりして進む。

 

 研究施設の中で、日誌を含む研究ログを保存しながら、目的ポイントに到着。出てくるゲータークローは当然バラバラにしながらだ。

 

「さてと、一応ヌカ発生再現装置も調べてと」

 

 遺伝子サンプルは、戦前の動物と、ガゼルとバラモンを除いてコピーでは全て破棄。施設の中枢へ繋がるターミナルのラインを見つけたので、マップデータを確認。隠れ、生き残っているゲータークローもマークしてこれを破壊。

 

「後は外のか」

 

 スクリプト湧きとは異なるだろうが、色々な場所に居るゲータークローは厄介だ。後でシートーが出てきた時に怪我が無いよう、徹底的に駆除する。

 モハビのカサドレスやナイトストーカーに比べれば気楽だ、なんて思いながら。

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>サファリアドベンチャーのその後

 トールはゲータークローの駆逐完了をシートー達に報告すると、ドクターとシートーを伴い、研究施設へ。

 

「シートー、これ、久しぶりに見た」

「これはロブコ社のロボットかね?」

「多少は高級な電子頭脳を搭載させたから、ルーチンワークはこなせる筈だ。メンテナンスポッドも置いてある。こいつらの面倒を見るMrハンディもそこらで今、清掃中だ」

 

 ヌカ・ワールド内のロボットは大抵がヌカトロン系の為、手伝いはできるかもしれないが自動的に胴部に備わるディスプレイが、キャッピー達のショートアニメを上映し続けるのでうるさい。

 清掃中なのは、盛大にゲータークローを爆散させまくったためだ。そこいら中に肉片が飛び散っているのは精神的によろしくない。Mrハンディなら清掃はお手の物なので任せてある。

 

「グールとはいえ、根を詰めると身体に良くない。世話も頼んであるから適度に休息して研究を続けてくれ。バイオメトリクスシールは無いので戦闘機能類は使えないが、予備のPip-boyも渡しておく、活用してくれ」

「何から何までありがとう。ここで研究を続けながら、気長にサンプルの到着を待つよ」

「バラモンやガゼルなら、トレーダーも取引するだろうから、逐次出荷してもいいが…」

 

 そう聞くなり、変なサンプルをいじるのは止めとくよ、とドクター。思わず二人して笑ってしまう。

 

 トールは二人と別れた後、ギャラクティックゾーンとドライロックガルチのトレーダー達にサファリアドベンチャーの大まかな現状を伝え、そこを管理している体にしたシートーとドクターについて伝える。

 

「彼らの住処というか領地だから、漁るなら許された場所だけにしてくれとさ。それと、増えるための巣が無くなったゲータークローは、俺が見かけ次第仕留めておく。今後は増えることも無くなるだろう」

「なんか色々やってるな。安全の向上と商売のタネは嬉しい」

「趣味だからな。お零れに預かる回数が増えるのは願っても無い。

 所で、レイダーの情報は入っているか?」

「ああ、残念な事にな。駅の方面で、遠くに集団の影を見た話が頻発してる。中央市場議会は大荒れだよ、てんで私達の話を信じていなかったのに」

 

 ふむと考え、一つ提案。

 

「…私達と」

「俺らで」

「「レイダーを壊滅させる?」」

「ああ、発言力はあっても、まだまだ中央はキャップ稼ぎが上手い方が強い。それはまあこれから稼げる」

「大きく出ましたね。稼げる件も興味ありますが…」

「俺らでレイダーを? 正直、荒事は苦手だぞ」

 

 集めて欲しい物がある。材料さ、とトールはニっと笑った。

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>準備と迎撃、あと乗っ取り

 トールはマイアラークの変異種ヌカ・ラークが巣食うワールドオブリフレッシュメントを制圧すると、防衛戦力の配備と共にトレーダー達を案内する。

 

「…本当、何でもアリだなトール」

「価値を破綻させない範囲で、ここでヌカ・コーラと各種バリエーション、あとヌカ・コーラクァンタムを製造、流通させればあんたらはここのトップに登れる。俺は施設の維持管理を丸投げして、たまに寄ったら好きなだけこれらを手に入れられる。簡単だろ?」

 

 ヌカ・コーラクァンタムの原液は膨大な量が保管されている。ヌカ・ワールド以外でテスト販売される予定だったキャピタルウェイストランドでは希少品であるが、一部のというか101のアイツとトールは、Perkにより製造できる。RAD値はバカにならないが、効果は半端なく、また素材としても優秀だ。

 RADアウェイを潤沢に用意できる事、味わいを我慢できる事、それらをパスできるなら大量使用により旅はもっと楽にできるだろう。

 

 ただ後日、主人公夫妻が目覚めた日以降はMODが全て有効化され、トールの目論見自体は無意味になる。ヌカ・ワールドを運営するトレーダー達はキャップとの供給バランスを見極めつつ放出しているので、コモンウェルスを中心として「いざという時」「ここ一番」に使う、ポピュラーな飲料のポジションに落ち着く。

 

「さて、エリアの掌握、素材の確保、両方が概ね揃った。あとはまあ、椅子にしがみつく奴等が、ヌカ・ワールドの為であっても真似できない事をやって、ギャラクシーとガルチの面々が中央を掌握するだけだ」

「ここまでの時点で、ほぼ誰も真似できないだろうが…」

「後はフェラル共だらけの発電所を…まさか、行くのか!?」

「おう。その間、レイダー共が来たら来たで、よろしくな」

 

 トールはヌカ・ワールドに電力を供給するべく、発電所に向かう。レイダーと共にエリアの制圧を続けてクエストを進めていくと、最後の最後で待遇が悪いと感じたレイダーの一派がここを乗っ取る。そこを他2勢力のレイダーを伴って制圧するのが最終クエストだ。

 最上部で対決を終え、発電施設の稼働の為にボタンを押した所で、ヌカ・ワールド全体に電源が供給され、花火が上がった所で終了である。

 

 が、悠長にレイダーを待つ必要の無いトールは、内部のフェラル・グールを全滅させて、事も無げに屋上へ辿り着く。建物の扉を開けると、施設の稼働を待つスイッチがあった。

 

「…このタイミングか」

 

 見れば、夜の帳が降り始めたヌカ・ワールドの建物の所々で戦火が見える。ゲイジ達の襲撃だろう。事前の手筈では、中央は一時退去し、避難してくる人々を迎え入れてドライロックガルチ、ギャラクシーゾーンで迎撃する事になっている。

 

『こちらドライロックガルチ、防御は固めた。レイダー共を旅人も一緒に迎え撃ってる! おい弾はあるんだ、慌てるな!』

『こちらギャラクシーゾーン、入り口から顔を出したレイダーをロボット達が灰か粘液に変換してる。怪我人は多いが殆ど無事だ』

『こちらサファリアドヴェンチャー。レイダーという無法者が、勝手に罠に嵌って灰になっている。シートー達も無事だよ』

 

 中央で徹底抗戦を叫んでいたトレーダー達は居たが、一般のトレーダーは他のエリアに逃げ出した。発言力の源泉であった財産を残したまま逃げられなかったキャップ持ち達は、軒並み殺されたか捕まったかもしれないと言うが、今更だ。

 

 トールは発電所の掃除と整備をしつつ、メンテナンスのMrハンディ、防衛用のセントリーボットなどで固め終えると、数百メートル上空を飛べるよう円筒ファンを付けたアイボットを取り出す。現在の状況確認の為だ。この時代、ベルチバードなどの領域である空に対しては、ウェイストランド人は恐ろしいほど無防備だ。

-

-

 発電所の準備を終えると、メンテナンス用のMrハンディに無線で命令次第、主電源を入れるよう指示して中央エリアであるヌカタウンUSAに向かう。

 

「…わかってはいたが、レイダーだからな」

 

 事前に議会へ訴えた影響か、一般のトレーダーや旅人は殆どがドライロックガルチやギャラクシーゾーンに逃げ延びたようだ。だが、目の前でレイダー達に跪かされているトレーダーも居る。肥えた人物が多数を占める、中央市場議会の議員様達だ。足も遅くて逃げ遅れたのも居たのだろうが、大抵は財産を残して他のエリアに逃げることを躊躇った連中である。

 

 奪った物資、キャップの山、双眼鏡の先では幹部と思しきレイダー達が喜色を隠せず上機嫌で居る姿が見える。

 

「さてと、想定より上手く言って怖い位だ。まずはレイダー共、お前らに軽くご挨拶といこうか」

 

 トールはほくそ笑むと、無線機を取り出して事前に取り決めていた周波数で暗号を発信する。各所の安全地帯では、トールの事前計画に従って「問題の無い場所」に全員が移動した。

 

 そして…、ヌカ・ワールドは200年の眠りから目覚めた。花火が盛大に上がり、夜空を照らし出す。アトラクションは故障しているものは動かないが、メンテナンスがされていた物が全て、往年の姿を彷彿とさせるように稼働を開始した。

 トールはゲーム中では遠目でしか花火は見れなかったなと感慨深いが、様々な場所へ電力供給が成され、花火のいきなりの音と光にレイダー達は驚いて逃げ惑う。幹部クラスはすぐに立ち直って周囲を統制しはじめる。

 

 光と爆音の響く中、ヌカタウンUSA周辺にトールがトレーダー達の協力で集めた資材を材料に作り上げた「壁」が立ち上がった。運悪くその場に居たレイダーの一人が、股間をポールにより強かに突き上げられて悶絶している。

 

 花火の光と音に驚いてヌカタウンUSAに逃げ込んだレイダーは、目の前の間抜けの姿に笑い始めたが、次の瞬間、繰り広げられた光景に青ざめる事になった。

 

 壁に電流か何かが流されたのだ。壁と言っても向うが見える。ただ青白く透明なそれは、一瞬で哀れなレイダーの一人を灰にした。

 

「さて次だ」

 

 中央エリアの外周に、複数ダースのヌカトロン系ロボットを出現させる。攻撃をするでもなく、外周を一定速度で歩き、わざわざ同期させてキャッピーのショートアニメ、ヌカ・ワールドのテーマをループして流し始める。電源が供給され、場内にもヌカ・ワールドのテーマがループして流れたり、通りかかったら流れ始める。

-

 そして、一ヶ月が過ぎた。

-

 トールは設置していた一部の洗脳ノイズ発生機を格納して、ヌカタウンUSAに近づく。そこは、正気を失ってまるでフェラル・グールのように彷徨うレイダー達の巣窟となっていた。

 

 最初の一週間は、トールの設置した壁を越えようと躍起になっていた。

 次の一週間は、捕虜になっていた肥えたトレーダー達を拷問していた。

 次の一週間は、死んだトレーダー達を晒して銃を乱射していた。

 最後の一週間は、壁や地面に頭を叩きつけたり、ヌカ・ワールドのテーマを口ずさんだ仲間を撃ち殺し始めた。

 

「テーマを口にするなぁ! やめろ、俺の脳で歌が響くんだ! 寝ても覚めても流れるんだ、ふざけるなよ!」

 

 そして今は、キャッピーのショートアニメのセリフを繰り返したり、ヌカ・ワールドのテーマをタイミングぴったりで唱和し、時間になったら食事をして動物のように寝る、そんな連中だけが彷徨いている。

-

 トールは油断せずPip-Boyからの敵対診断情報を確認し、一人残らず正気を失ったと判断して、一人、ヌカタウンUSAに侵入した。

 

「…流石に幹部、タフだな」

 

 頭に響くBGMを振り払うように頭を振りながら、それぞれ特徴的な姿をしたレイダー達の幹部が姿を表すなり、銃を乱射して来た。

 

「コルターにゲイジも居るか。後でPerkや装備は解析するから、お前らは用済みだ」

「死んだ、皆死んだ。死んで無い奴も心が死んだ!」

「なんで、こんな酷い事をする!」

「なんでってお前ら、レイダーだからだよ。今更被害者面か? おめでたいな」

「死ね、死ね、お前は入念に引き裂いて…!」

「お断りだバカども」

 

 これ以上の問答は不要と、トールはV.A.T.S.を起動。手に持った何の変哲も無いナイフを次々と振るい、幹部たちを一人残らず血の海に沈めた。ゲイジは能力解析してPerkを奪取、主人公夫妻が現れたら付与してやる事にする。コルターは特殊なレイダーパワーアーマーを本来は装備しているのだが、ガントレットなる殺人施設は作られていないため、形状は普通のものだ。

 

「終わったのか?」

 

 武器を構え、ドライロックガルチの自警団の面々を伴ってケンダルが現れた。後ろには慣れないX-01パワーアーマーでついてくる娘さんの姿まである。

 

「合図するまで危ないから来るなと言っただろ。ま、これでしまいだ。あとは魂が抜けたレイダー共を殺して、一応は弔ってやれ」

「…あんたは本当に恐ろしい事を考えたな」

「時間との勝負だったからな、用意できる弾も素材も限られていたせいもある。ま、犠牲者は最小限だった訳だ、ここが滞りなく流通の大規模拠点として発展することを願うよ。後は頼んでいいか?」

「ああ。でもいいのか、防衛の立役者で、キャップの山を生む施設の修理までした奇跡の男だぞ、あんたは?」

「そもそもここは、ずっと守ってきた連中の為の所だ。横から掻っ攫い利益を上げるよりは、これからも人の為に流通を守って貰うほうがいい」

「そうか。ありがとう、トール。…もう行くんだろう?」

「おうさ。じゃあなケンダル、他の皆も。今度来る時までは滅びたりするんじゃないぜ」

「精々頑張らせて貰うよ。頼まれていた夫婦は、来たら歓迎しておく」

 

 トールは軽い挨拶をするかのようにヌカタウンUSAを後にした。キッディキングダムとブラッドバートンの2エリアが未だ残っているが、既に安全地帯がヌカタウンUSAを中心に存在しているためトレーダー達は近づかない。探索する主人公夫妻が来るまでは、スカベンジャーやガンナー達が踏み入れては物資を獲得するか、あるいは死ぬ場所として恐れられる訳だが。

 

「疲れた。コモンウェルスに戻って、あとは時間になるまで扉の近くでのんびりするかな」

 

 仕込みは上々、あとは結果を御覧じろ。シナリオ改変を目論んだ転生者の一手は、コモンウェルスに凶を齎すのか福を齎すのか、この時点ではトール自身ですら予想できない。

 




ファー・ハーバーはどうしよう。主人公夫妻に任せますとか言ったけど、人造人間の穏やかな隔離場所として考えようか。

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