荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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こんなメアリー・スー的オリ主とのクロスオーバー詐欺の続く話を毎度ご覧戴き、ありがとうございます。
王国編はまあ目処がつきました。駆け足気味でしたが読んでくださる方々のお陰でやる気が持ってます。


首都ナザリック建造
死の支配者と破滅の竜王


 王国における計画実行は成った。後始末が大変な所なのだが、そこはナザリックが誇る宰相ズ(特別な呼称は現在、討議中)に任せ、実働部隊であった面々はナザリック内の居室や自己の領域、またはトールの許可の上で拠点の居住・娯楽エリアで、創造主と共にそれぞれの時間を楽しんでいる。

 

「ふむ、グレータードッペルゲンガー達に些細な儀礼的外交は任せられるのは僥倖だ。皆との時間を大きく取れる」

「偽装都市部…いいえ、首都ナザリックの施設や地理把握も順調です。匿っていた王国民も移送が完了次第、残る施設の建造を終えるとトール殿から連絡がありました」

 

 モモンガさんは他の面子が少し羨ましいなと思いつつも、一人で遊んで来るよりは執務であってもアルベドとの時間を増やそうと思い、こうして執務室で仕事に励んでいる。

 仕事と言ってもリアルのそれに比べたら、書類を確認し、疑問点をアルベドに聞いて、問題無さそうだったら決済を下ろすだけの、とても簡単な内容だ。

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 その最中、法国の漆黒聖典からの使者を名乗る者が偽装都市の門の前に現れた。カルネ村とエ・ランテルを行き来しているニグンと偶然会い、こちらを案内されたのだという。

 

「成程、陽光聖典の。それで、法国からの親書は?」

「トブの大森林奥に封印された、破滅の竜王の復活が予言されており、その対処に漆黒聖典を向かわせたいとの事です」

「漆黒聖典の装備等は確認しているか?」

「はい、恐怖公情報網によりますと、見窄らしい槍を持つ青年、白地に竜の紋様が入ったドレスを着た老婆を確認しております」

 

 丁度、偽装都市上部の散策から戻ってきていたペロロンチーノ、フラットフット、獣王メコン川が、恐怖公がクリスタルモニターに映し出した漆黒聖典の面々を確認している。恐らく世界級アイテムの「ロンギヌスの槍」と「傾城傾国」だろう。因みに、ペロロンチーノは老婆を見るなり「そのエロエグいスリットでばーちゃんが着るとか!」と地面に失意体前屈の姿勢になった。

 閑話休題。

 

「実際の所、破滅の竜王なる存在は確認されているのか?」

「接近すると眷属が捕食される場所があり、恐らくはその空白地帯に潜んでいるものと考えられます」

「レベル等は探れたか?」

「高レベルの守護者では徒に刺激する可能性がございましたので、ソリュシャンにステルスボーイを使用させて接近、八十程だそうです。ただ、膨大な体力量が確認されています」

「レイドボスの可能性が高いな…」

 

 このまま漆黒聖典に任せた場合、レベル帯がどこかは不明だが、同レベルであれば通常攻撃で倒せる可能性は低い。それ以下では絶望的だ。

 傾城傾国での支配は可能だろうが、生態的に出現時や移動で周辺に膨大な被害が出るだろう。かといってあの程度の相手にロンギヌスの槍を使わせるのは余りにも勿体ない。

 

(ぷにっと萌えさん、以上のような状況なんですが…)

(いくつか手段はあります。一番、利益の出る手段でいきませんか?)

 

 ぷにっと萌えは一人、偽装都市にある商業区画で、ロボットが用意する飲み物や食べ物をゆったり楽しんでいた。セントラルキッチンも今やカワサキ監修の為、アメリカンな味付けでは無くなっている。ギルメン間+αで思考内会話ができるアイテムを準備していたので、たまにこうやってギルド長から相談を受けている。

 

(二つのアイテムを媒介に撃破する魔法を使うとか言えばいいんですよ。超位魔法とかがいいかもしれませんね)

(あー、その破滅の竜王とやら、特殊能力とか無いみたいですもんね。ありがとうございます)

(まずはこの話を伝えて、乗り気だったら皆でタコ殴りというか久し振りのレイドボス戦かな?)

(えーと、守護者達に頑張って貰いませんか? 皆さんのんびりしてますし、観戦ポジで最後の〆だけ、超位魔法で)

(なんだか授業参観みたいですね、皆のお父さんですかギルド長)

(誰がお父さんですか)

 

 そう決まるが速いか、速やかに準備を整え(リザードマンの集落を制圧するためのシフトの流用)、やってきましたのが破滅の竜王戦である。

 

「…観戦席まで作ったんですね、トールさん」

「高さも十分だし、フォトニック・レゾナンス・バリアーで覆ってあるから、防御も十分だし、向う数キロ先までちゃんと見えるぞ?」

 

 言いたいことはそうじゃねぇよ! とツッコミを入れたいのを我慢するモモンガさんである。

 ギルメン達は、荒野と化しつつある森林の端に設けられた段組みの観戦席でそれぞれのマークをあしらった旗を手に持っている。少し離れたところにも同じく観戦席が設けられており、緊張と困惑の表情の漆黒聖典の面々と、ニグンと副官ともう二人の陽光聖典と元の面子、あとはクレマンティーヌが不機嫌そうな顔で座っている。

 尚、エインズワース達が箱を下げてポップコーンや冷えたヌカ・コーラ(放射能抜き)を配っている。最初はプレアデスをお世話係にと考えたが、法国とはそこまで仲良くしたいとか思ってなかったモモンガさんは、トールに丸投げした。トールは「ああまあ、しゃーないな」と承諾した。

 

「さて、本日は法国の危惧する破滅の竜王、その討伐を観戦する席を設けた。我が自慢の配下、法国では従属神と言ったかな? 彼と彼女らが存分に力を振るう所を見てほしい。また、提供を受けた神器2つを力に変換し、破滅の竜王の完全撃破が為、最大の魔法を振るおう」

 

 魔王ロールここに極まれり、ローブバサーがここまで似合うお骨様はこの世界ではアインズさんが頂点だろう。

 

「我が名は、モモンガ・アインズ・ウール・ゴウン・ナザリック!

 守護者達よ、我が名の下、ナザリックが為に忠義を尽くせ!」

「「「アインズ様の御心のままに!」」」

 

 そして、戦いが始まる。攻撃地点は、この近くで破滅の竜王について小煩く訴えていたピニスンというドライアードからのものだ。余波に巻き込む可能性が高いため、観戦席近くに移殖した上でバリアーで囲ってある。

 

 尚、冒険者としての依頼で破滅の竜王の頭部(?)というか埋まっている上の部分に貴重な薬草が生えているとの事で、まず最初にコキュートスがスキルによる斬撃で切り飛ばしてからだ。空間が切り裂かれるような悲鳴を上げる。セバスが一気に近づき、薬草が生えている部分を予定の戦闘領域外へ投げ飛ばした。

 

(どうです、量産できそうですか?)

(魔法系の奴だ。薬草自体のコピーは無理。だけど小型化して盆栽みたいにしたらいけるかも?)

 

 切り落とされた部分に所々、青々とした葉が生えている。トールは事前の依頼の通り成分分析。魔法の領域の代物ということで、葉そのものをコピーする事は不可能と結論。ただし、それが生える下は培養ができるようなので、暴れないよう小型化というか盆栽で、隔離空間での栽培を行う事にした。ドルイドのマーレの協力があれば、より簡単に成果が上がるかもしれない。

 

 そんなやり取りはつゆ知らず、漆黒聖典の面々は目の前で繰り広げられる戦いを固唾を呑んで見守っている。コキュートスの防御を許さぬ斬撃、セバスの休み無い打撃、シャルティアの高速の連続攻撃、アウラの魔獣による包囲攻撃、アルベドの容赦ない攻撃、マーレの魔法による防御と一体の攻撃、パンドラズ・アクターの変幻自在なサポート、そしてデミウルゴスの強大な魔法…目の前のそれは神話と伝承に語られるような非現実的光景だ。

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 それとは対照的に、偉大なる御方々は頑張りには声援を贈り続けているが、戦闘ガチ勢による戦闘内容の批評についてはやや辛口である。

 

「うーん、単騎攻撃が続いてるだけで、連携がなー」

「防御をこじ開けた隙きに叩き込まないと手数が無駄」

「アルベドのスキルだと逆に強すぎて鎧が勿体ないか」

「マーレの負担はデミデミがカバーしてて、DPS稼げてないな」

「その点、パンドラは頑張ってるねー」

 

 コーラを飲み、ポップコーンを食いながら威厳なんてまるで無い格好である。それでいいのか至高神達。異形種の姿だと飲食できない組は、人化した上でわざわざ変身ベルトの機能で異形種の姿に偽装中である。

 

「これだと発狂モード入ったら防御にリソース食われるね」

「回復役がマーレだけで他も自分用だったり補助程度だからきついか?」

「具体的な指示ができないのはもどかしいなぁ」

 

 呑気な観戦席の空気とは裏腹に、破滅の竜王と呼ばれる巨樹、ザイトルクワエは眠りにつく前に食らった忌々しい攻撃を超越する、複数の攻撃に悲鳴を上げていた。実際は口も無いので枝や幹が軋むような音ではあるが。

 しかも最初に丸ごと切り飛ばされた部位が、溜め込んでいた魔力や生命力といったものが集まっている部位だったため、修復や回復が行えない。体力に余裕はまだあるがこのままでは確実に滅ぼされるだろう。

 移動の為に根を引き抜き、撚り合わせて踏み潰そうと振り下ろす。防がれる。巨木の幹に匹敵する太さの枝や蔦を振るう。防がれる。攻撃の為に巨大化させた実を投射する。防がれる。打つ手が無い。

 

「お、もう奥の手とか無い感じ?」

「単なる体力おばけか。ただ耐久補助系が居ないときついよねあれ」

「DPS稼げるのが居ないとな」

 

 守護者達はまだ余裕は残っているが、思い通りに攻撃を叩き込めない事に焦りを感じていた。殆どを防いではいるが、持久戦となると不利なのは守護者達の方である。

 アルベド、デミウルゴス、パンドラズ・アクターの三名は短距離で連絡をする魔道具を起動。その高速の会議で連携の重要性を再確認し、他の守護者達に作戦を伝える。

 

 アルベドとシャルティアによりタゲを移し、コキュートスとセバスで余計な攻撃を打ち返し、マーレとアウラが動きを止め、デミウルゴスとウルベルトに変身したパンドラズ・アクターで致命の一撃を狙う。作戦は承諾され、いつもは反発するシャルティアも素直に従う。

 

 果たして、作戦の通りにザイトルクワエは致命の一撃というか強力な魔法で動きを止めた。このまま殴り勝つこともできるが、アインズさんとウルベルトが出てきた。時間切れである。

 

「守護者達よ、よく働いてくれた!」

「後は任せろ、世界の災厄と死の支配者の力、この次元に刻みつけてやる」

 

 空中に浮かぶ世界最高峰のマジックキャスター二人。

 

(ウルベルトさんノリノリ! モモンガさんがひいてる!)

(でも腕振るってローブばさーとかノリノリじゃね?)

 

 ボロが出ると恥ずかしいので、モモンガさんとウルベルトは事前に唱えていた超位魔法を、魔法発動の隠蔽を解除して見せつけた。姿が必然的に隠される。

 

(あー! 動いたらボロ出るからって隠れたなー!?)

(発動時のノリノリのセリフ、見たかったのに!)

(ふっふっふ、映像記録は多角的に行ってますので)

(あ、望遠とか大丈夫でしたね!)

((何してくれてんだ荒野の災厄!?))

 

 そんなワチャワチャとしたギルメン達+1の会話はつゆ知らず、法国の面々は繰り広げられた神々しい戦いと、展開された余りにも巨大な魔法陣の姿に、目は戦いを見つめながらも腕を組んで祈りを捧げている。

 

「「超位魔法<失墜する天空>!!」」

 

 守護者達が退避した所で、奇跡的に声も揃って超位魔法が発動。ザイトルクワエを中心に超高熱源体による膨大な熱量が効果範囲内を焼き尽くす。

 魔法が終結した時、そこには巨大なクレーターが熱を湛えて残るのみだった。

 




時間切れの為、守護者達の反省会はお通夜ムードです

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