荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~ 作:マガミ
人化した状態でレベル外スキルを取得する感じなので、職業レベルや総合レベルには影響が出ません。
追記:ナザリックギアの変身モードに種類を追加
「高級機」異形種体、異形種幻影体(人化の上に異形種の幻影を被る)、人化幻影体(異形種の上に人化した幻影を被る)、人化偽装体(人化に見せかけた異形種体)、人化体
「簡易機」異形種体、人化幻影体、人化偽装体
アルベドを伴って闘技場に来たモモンガさん。ちょっと上機嫌なのは、最近の日課になっているパワーアーマーの自主訓練のためだったりする。
-
パワーアーマー。Falloutの世界において、武力=パワーアーマーと言っても差し支えのない、纏うパワードスーツである。戦前の世界において陸戦でアメリカが共産中国を圧倒し続けた結果、中国軍をゲリラ・奇襲作戦に傾倒させた要因になったとも考えられている。
戦後、二百年の間も劣化しなかったアーマーフレームに、頭部、胴部、腕部、脚部の六部位へパーツを取り付け、あるいは交換して運用される。動力源は明かりだけなら百軒単位で賄える発電機に用いられるフュージョンコアを、贅沢に使い潰す高価な装備である。
-
ただ、パワーアーマーを身体能力に優れるユグドラシルプレイヤーが装着する意味は少し薄い。標準的な人間を超えるSTRの固定値は前衛職構成では容易に凌駕できるし、全体的な動きが制限されるのでDPSが稼げなくなる。かといって中衛や後衛でも、STRの固定値は無駄になるし、これまた動きが制限される。
防御に至っては物理攻撃と一部特殊攻撃(放射線、毒)のみ聖遺物級以上、神器級未満だ。魔法は基本的に装甲値で一律減衰するが、聖遺物級のユグドラシル装備に劣る。
ビルド次第ではあるが、総合戦力的な意味においてはレベル六十が分水嶺だろう。その後も被弾覚悟であれば、ユグドラシル装備構成の上に装着する追加装甲として活かせるかな、と言った所だろうか。
「これで魔法的効果とかデータクリスタルが一切入ってないんだからびっくりだわ」
「耐久値は遜色なし。あと修理が容易ってのがいいよな」
「素材に困ってた時は、メンテに結構希少な奴を使いますので常用はしてないんですよ」
そんな会話をしてたなとモモンガさん。だが、そんな事は些事だ。
モモンガさんや一部の男性ギルメン達を魅了したのは、これがパワードスーツだからだ。人化した状態でトールの拠点でパワーアーマー訓練を終えるとレベル外スキルが習得でき装着可能になるこれは、着るロボットという感じで装着のワクワク感は表現できない感動だったりする。
-
今日もまた、闘技場の貴賓席で観覧がてらお茶を嗜むアルベドを控え、取り出した変身ベルトこと「ナザリックギア」(実はMk-2)を腰に装着する。お骨様の姿でウキウキしながらライダーベルトみたいなそれを装着する姿はちょっとシュールである。
スイッチを入れると「ナザリックギア起動」と音声ガイダンス。変身待機セレクターを特定位置へ「承認。ナウ・ローディング!」。綺羅びやかなのかチープなのかわからない電子音が繰り返し流れる。
変身するぞ、という意思を強く持ってベルトの変身レバーを引く。
「変身!」
シャキーン的な音が鳴って、モモンガさんの体が光に包まれ、黒を基調としたヘルメットと戦闘スーツを纏ったモモンガさんが現れる。プロセス的には、体にスーツ装着後、ヘルメットが複雑なバイザーを上下から閉じて完成する。
体を軽く動かす。拳、蹴り、空気を震わせる音が鳴る。人化した状態では困難な速度だ。
『トールから提供を受けたスキンシステムは、新型ナザリックギアの組み込みでも良好のようだな』
ナザリックギア。元はあまのひとつ氏制作の、外観に設定した幻影を被せるだけの魔道具だ。基本的な形は、かつて二十一世紀前半まで制作されていた、変身ヒーローの使う変身ベルトをモデルにしている。
以下はとある夫婦の会話である。
「あなた、また違う形のを作ってもらったんですって?」
「…はい」
「まったくもう。ギルドの皆さんも甘いんだから」
「い、いいじゃないか、子供の頃買えなかったし、こういうの憧れてたんだぞ」
「だからと言って、戻ってきたら毎回屋上で一人遊んでるとか、ご飯に呼んでもなかなか来ないし、家長の自覚をきちんと持って下さい!」
「瞳、お前だって、リメイク版のセーラー○ーンの変身アイテム型、戦士全員分持ってるじゃないか!」
「う、気付いてたんですか!?」
「未来(みく)…きゃっちがな「なーんだ、お母さんと一緒だね」って」
「…」「…」
「…う、迂闊です」
「ほんとにな…」
『おやこんな所で家族会議でしょうか?』
「お、おお、エインズワースか。今日も家事手伝いありがとう」
『いえいえ、家庭用ロボット冥利に尽きます。私めの役割ですので。
所でお二方、お嬢様の依頼でお二人の変身シーンを全て、録画編集されております。ご覧になられましたか?』
「全て?」「はい」「全種類?」「余す所無く」
「…屋上で遊ぶのは、程々にしよう」
「…ええ、そうね」
『そう言えば先程、お嬢様のご希望で、トール様が録画したホロテープと大型投影機を持って、地下墳墓に向かわれました。上映会だそうです』
「「何してくれてんだ荒野の災厄!?」」
ベルト型以外に、ブレスレット型、ペンダント型なども作ったらしい。
閑話休題。
-
後に、ナザリックギアはトールの協力で魔改造される。簡易版のPip-Boyを組み込み、内蔵及び設定していたスキンと装備を同時装着させる機能を搭載したMk-2が完成した。
ここで言うスキンは、人化すると無効化される異形種の種族レベルをどうにかしようと「異形種の上に幻影を被せられるならMODのスキンを被せてみようか」という思いつきで実験をしたのが始まりである。
単にガワを被せただけでは、比較的人体というか人骨なモモンガさんでも、カスタムしたアバターの形状が尖ってたりして、厳つい目にロングなアゴと長すぎる指を持ったちょっとキモい姿になってしまう。
当初はほぼ人間型の異形種しか装着できなかったが、実験を聞きつけたエントマが自ら志願して開発に参加。源次郎も巻き込んでのテストの末に完成した。
エントマが何故志願したかといえば、少し過保護な源次郎により外での命令が無く、出てもナザリック都市部かカルネ村、または人化してカワサキの食堂かル・シファー商会と限定されていた為で、もっと役に立ちたいという健気な心意気からである。
「うちの子は可愛いな!」
「はぁ、エントマちゃんかわゆ…」「異形種の姿も奇跡の造形よな」
「よ、嫁には出さんぞぅ!?」
「源次郎さん、エントマがガーンとかショック受けてます」
「え、ええ!? 誰か好きな奴できたのか!?」
「源次郎様のお嫁さん、駄目、ですか…?」
実に、その場に居た約半数以上のギルメン達がキュン死しかけた。
-
悩んだ末に、無限の背負い袋の解析データを元に改造したら、異形種すぎたり大きすぎたりしなければ、どう収めてるか一切不明ながら、人化したような姿に変われるようになった。コキュートスも、副腕が一時的に消える。
「副腕、どうなってるんだ?」
「ある感覚はありますが、動かせませぬ」
「解除すると普通に出てくるし、謎だ」
そんな会話があったが、有用性は確認できた。
-
先行試作型、正規生産型では人化の腕輪を含めて高価な部品や素材が用いられていたが、後に開発された機能限定版はPip-Boyの大部分の機能を非搭載の上、変身も固定の姿と装備に限定させることで大幅なコストダウンに成功。正規生産型が配布された守護者やプレアデスを除いた、一部の配置型のシモベに配られ、人化する事で制限されていた能力を維持したまま、外部で活動できるようになった。現在は主に偽装都市部である首都ナザリックにおいて、魔導皇国国民として、各種作業に従事している。
(食べるのが少し制限されるのは仕方無いよなぁ。色々食べるなら人化の腕輪を使わせるか、カワサキさんに頼むしかないから)
隠蔽の為、カワサキの食堂に行く手段が転移門持ち頼みだった所、人化偽装体の姿が取れるようになったお陰で訪れるシモベの数が増えた。
王国民を襲ったり必要以上に怪しまれたりしないよう事前教育をテストと共にパスした者から、来店にも多すぎると迷惑がかかるだろうと、月の初めに盛大な順番決めのくじ引き会が開かれるようになっている。
尚、配置型のシモベ以外で外出テストにひっかかったのは、シャルティアとナーベラルは想定通りとして、意外な所でルプスレギナが落ちた。アルベドとユリによる追試指導は壮絶を極めたそうな。
閑話休題。
-
最終的に、高級モデルは異形種体、異形種幻影体(人化の上に異形種の幻影を被る)、人化幻影体(異形種の上に人化した幻影を被る)、人化偽装体(人化に見せかけた異形種体)、人化体、これらの形態を切り替えられる仕様となった。簡易モデルは、異形種体、人化幻影体、人化偽装体を切り替えられる代物となった。また高級モデルはナザリックギアそのものの外装も記録してある中から選べるようになっており、コア部分を装着用アイテムにセットする事で、個別に作成する必要は無くなった。どこぞの夫婦はちょっと残念がったらしい。
『アップデート後も違和感無し。さて』
とはいえ、ナザリックギアは本命ではない。すぐにベルトのセレクターを操作、組み込まれた人化の腕輪の効果でモモンガさんは外見変わらず人化する。スーツのメットを解放解除、人化した顔が現れる。左腕に装着されたPip-Boyを操作。網膜投影されたターゲット表示に円形のパワーアーマーステーションとセットになった、T-60fパワーアーマーが見えるので位置を決めて設置。目の前に出現、配置された。
後部の固定バルブを回し、ロックを解除。排気音が鳴る。背面装甲が開いた所で入り込むとPip-Boyと連動、網膜投影情報がパワーアーマーのそれに切り替わる。各部位に装着者の体を検知し、背部装甲が閉じて自動でロックされる。各部のロックが解除され、若干猫背気味の姿勢から真っ直ぐに立つ。
『まずは慣らしから』
パワーアーマーを装着し終えたモモンガさん。腕や足、体の違和感が無いか確認。少し飛び上がると、組み込まれているレジェンダリ効果で2m近く飛び上がれた。標準のパワーアーマーではオプションを組み込まなければ不可能な高さだが、一定レベル以上のユグドラシルアバターなら素で可能である。
『歩く装甲車両とはいえ、この性能ではな…』
常識的な人間レベルであれば装着しただけで、人間程度の移動性能を保ったまま殆どの近接攻撃や銃弾、爆風を防げるという破格の性能だ。この世界の一般兵レベルの人間種による攻撃、特に弓矢は完全に防げるだろう。ただ、あくまでも一般レベルに置いてである。攻撃が通るのはレベル五十以降として、この世界でのレベル四十後半の強さなら追随は可能だ。
-
だが今日は、トールから教えられた機能を初めて使える日だ。これまでの訓練はパワーアーマーの動作に慣れるためのもので、今回が本番とも言える。
視覚操作でパワーアーマーの動作設定をPA表示からASへ切り替える。
『パワーモード、巡航から戦闘へ』
新たに表示された巡航の表示が戦闘へ切り替える。背部のヒュージョンコア近辺の冷却装置が唸りを上げ、容量境界を広げたキャパシタにエネルギーを送り込む。
-
踏み込んだ。
-
傍目には一瞬で吹っ飛んだようにも見えただろう。高い総合レベルが無ければ対応できなかった速度だ。止まるため、土煙を上げて速度を殺そうと地面を削る脚部。停止すると、引っ張られた風が後追いで土煙を吹き散らす。
『成程、確かにマシになった』
正式名称は色々候補があるが「主従追随型倍力装甲機モード」が一番長い呼称か。あるフィクション作品を参考にした、ウェイストランドでは無かった仕様である。確かにこの反応速度と性能では普通の人間では反応できない。本人は平気で使っていたが、彼は普通のカテゴリからは外れているので参考から除外する。
「解せぬ」
今の踏み込みと停止で、ヒュージョンコアは1%消費。自動交換の予備として複数個がPip-Boyのインベントリに収められているものの、長時間の稼働は消耗が激しいだろう。
跳躍力や機動性は、前衛職にしてレベル80程度。その他、空中捻りなどトランポリンを使ったかのようなアクロバットな動きを試して、今日の練習は終了である。モーションアシストもあり、ただ武器を力任せに振り回しているモモンとしての動きよりも戦闘向きかもしれないな、と苦笑する。
解除したパワーアーマーをステーションに収め、Pip-Boyを操作して格納する。ナザリックギアも操作して元の魔王様スタイルに戻り、ユグドラシル側のインベントリにしまう。
「お疲れ様でした、モモンガ様」
「いつもの日課になっているとはいえ、退屈な物を見せてしまってすまないな、アルベド」
「いえ、なんだか楽しそうにされておられますので、見ていて飽きませんでした」
「そう見えるか?」
「いつも側に控えていますので、その位は」
うふふと笑う。モモンガさん精神沈静化。
「側に居てくれると、色々足りない俺も色々気付ける。有難う、アルベド」
周囲に誰も居ないことを確認したモモンガさんは、魔王ロールから一転、素のほわほわ声で感謝を伝える。アルベドと言えば、不意打ち気味だったせいか、いつもの淑女的な笑顔から、なんだか乙女な感じでモジモジする。
「い、イケズです、モモンガ様、不意打ちです…」
伴侶だと自他共に認めてからは、アルベドは初期の肉食系の行動が鳴りを潜め、モモンガさんもドキっとする仕草が増えた。精神沈静化バンザイである。
-
アルベド自身は、ギルメン達に抱いていたわだかまりが解消の後、意中の男性を落とすにはと「スーラータン」からそっとアドバイスを貰い、自分の積極的過ぎる(迂遠な表現)行動が、女性との交際経験が皆無というモモンガさんには退かれると聞いてショックを受けた。
「押して駄目なら退いてみるのも、恋の駆け引きでは重要よ?」
「い、今までの行動は…」
「優しく言ってドン引きよね。まるで適齢期を過ぎて婚期に焦る人か、周囲が見えなくなって、獲物を逃さないよう彷徨く肉食獣?」
「控えめにもドン引きな婚期に焦った肉食獣…っ!?」
「モモちゃん、経験皆無な上に草食系だもの、怯えて当然よねぇ」
「お、お願いしますスーラータン様、私はどうすればっ!」
「いい? まずはね…」
大好きで愛してるのはいいとして、アプローチの方向を変える事になった。創造主のタブラや姉に即時にバレる計算高いあざとい行動も無し。我慢できなくなったらちょっとだけ止めて、モモンガさんを素直に見つめる事から初めた。
そうしたらまあ、上手く行った上に創造主のタブラを筆頭にギルド内でも公認の伴侶と相成った訳で、初期の行動を思い返しては恥ずかしさに悶絶する日々である。
それについ先日、お互いが人化した状態で初めての夜を迎えてからと言うもの、モモンガさんはアンデッドの姿で精神沈静化に頼らなければ、日頃の執務でさえ心臓が早鐘を打って顔が赤くなる状態が続いただろう。
閑話休題。
「偽りも裏も無い心からの言葉だよ。…さて、今日の執務を執り行なおう、行くぞアルベド」
「はい、モモンガ様の御心のままに」
魔王様に口調を戻したモモンガさんに、淑女の顔に戻したアルベドが追随していく。今日もまた、少し刺激的で穏やかな一日が始まる。
動作設定のPAは「パワーアーマー」、ASは「アー○ス○イブ」です。バレバレですね。
あとなんで連続投稿かといえば、先日、垂れ下がってた光ケーブルが切れて一時、ネットが切断されたので書き溜めができてしまった事と、台風でまたネットに影響出るよなと言うことで、投稿してしまえという理由です。
本編敵ではない話で見てみたい話はありますでしょうか。書けるかは未知数
-
ウェイストランドの話
-
ナザリック内での話
-
ナザリック外での話
-
ナザリックに関係した人の話
-
ナザリックに無関係な話