荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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時期的には、反乱軍壊滅後、王国内が落ち着き初めた頃です。


閑話 とある護衛の冒険者達

 なんだかカルネ村方面の専属になりつつあるなと、冒険者チーム漆黒の剣のリーダーことペテル・モークは苦笑する。今回の仕事は合同での指名依頼だ。村へ移住するという一団と行商人を護衛する。帰りは行商人の護衛のみだ。

 

「おう、お前がペテルか。今回はよろしくな」

「は、はい、宜しくおねがいしますイグヴァルジさん」

 

 鉄級のブリタに加え、ミスリル級のベテランであるイグヴァルジ達が今回の同僚だ。ただ、仕事の額からすると彼らの実力に見合っているとは言い難い。

 

「…考えてる事はわかる。だがまあ、お前らと顧客を失望はさせんさ、何かあったら声をかけてくれ」

 

 ひらひらと手を振って、仲間達との打ち合わせに戻るイグヴァルジ。あのような気安い人だったろうかと首をひねる。

 

「護衛対象の方々が来たのである。移動用の馬車を用意戴いたとの事で、乗る順番を決めておいて欲しいとの事である」

 

 仲間のダインが伝えてきた。まずはベテラン勢に乗って貰い、必要に応じて交代するのが戦力温存的に良いだろうと考え、ブリタやイグヴァルジに伝える。

 

「私はなんか、向うの馬車で専属で付いて欲しいみたい。イグヴァルジさんは?」

「俺はペテルの案に乗る。すまんな、最初は休ませてもらうぜ」

 

 ブリタは移住者の馬車で移動する話を持ちかけられた。最初は困惑したが、移住者が全て女性だった事で納得した。

 

「彼女達は違法娼館の被害者のようでね、男性が怖いそうなんだ」

「そう、ですか…」

 

 王都で戦士団に救出され、気丈にも貴族や官司などの所業を訴えた女性達の話は吟遊詩人や楽団の物語にもなっている。彼女達はその中の誰かだったのかもしれないなとペテルは思った。

 相当、ひどい扱いを受けていただろうという話は、抑え気味の表現の物語であっても最初は衝撃に倒れた良家の女性も居たらしい。事実ともなれば余計に悲惨な環境だっただろう。

 行商人は悲しそうな顔をしつつ、できる限り男性は近づかないようにイグヴァルジ達にも伝えている。

 

「貢いでる女が居るんだ、怖がってる相手に無理矢理なんざ、そいつに嫌われちまうよ」

「んで、金は毎度払うのな」

「当たり前だ。まだ俺の女じゃねえんだ」

「なんだリーダー、まだ諦めてなかったのかよ」

「うるせぇ、立ちの歳食い娼婦だからって断られて引き下がれるか。金はあるんだよ。女一人とガキ一人、面倒見るなんざ余裕だっつーの」

 

 少々内容は下世話だが、なんか男気のある話である。悪い噂の絶えなかったクラルグラも変わったなとブリタと漆黒の剣の面々は感心していた。実際、誠実になり面倒見が良くなってから割のいい仕事が増え、以前の選り好みしていた頃より金回りが良くなってたりする。

 

「そういえば漆黒の剣の面子はあのモモンさん達と仕事をした事があったんだよね?」

「ええ、一度だけカルネ村に護衛で。凄かったですよ皆さんは。殆どこちらの出番がありませんでした」

「想像も容易よね。雷で薙ぎ払ったり、オーガも片手で一撃だったとか聞くし、アダマンタイト級に最短で到達する人達だし、当然かしら」

「だがよ、アインザックの野郎、死の螺旋事件でミスリル級の昇級だとかほざいたんだぜ、俺は問答無用でアダマンタイト級って言ってやったのによ!」

「まあまあ、前例が無いんだ、仕方無いって」

 

 追い越す後輩に嫉妬をよくぶつけていたイグヴァルジがなんともまあ。仕事の長いブリタが呆気に取られている。

 

「あ、あの…ブリタさん、彼女達にツアレニーニャという人を知らないか、機会があったら聞いて貰えませんか?」

 

 そんな会話の最中、仲間の一人、魔法を使うニニャが問う。

 彼…のふりした彼女は、男装をして冒険者をする傍ら、違法娼館に売られたという姉を探している。それが悲しい結果になる可能性は高いが、漆黒の剣のメンバーは陰ながら応援している。尚、本人は男装をしてバレてない積りだが、着替えや花摘み等でバレバレである事は皆、黙っている。

 

「お姉さんね…わかった。結果が何であろうと教えるけど、いい?」

「…覚悟は、してますから」

「そう。わかった」

 

 表向きは男性冒険者として活動しているニニャの代わりにブリタが休憩時間に聞き、元娼婦達のリーダーになっている娘がツアレニーニャだと名乗った。

 姉妹は思っても見なかった場所で再会を果たした。ついでに、ニニャが女だと知ってて黙っていた漆黒の剣の気遣いもバレた。恥ずかしさに真っ赤になった彼女の姿に、姉はいつまでも微笑んでいた。

 

 もし詳しい経緯を聞けば、幸運と奇跡の連続であった事を知るだろう。今ここにいる誰かが一人でも幸運や奇跡に出会わなければ、今の景色は見れなかっただろうから。

 

「…生きてりゃ、良いことあるもんだな」

 

 戻ったら、カワサキの店でちょっと豪華な打ち上げにしよう。あとは馴染みの酒場であの奇跡の光景を祝い、酒の肴にして。そう決めたイグヴァルジだった。




創作的に、イグヴァルジ達って使い勝手いいなと思います。

本編敵ではない話で見てみたい話はありますでしょうか。書けるかは未知数

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