荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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ユグドラシルならぬ、ゆるドラシル。言い得て妙だw

多少はずらした表現ですが、お下品回かもしれません。
トイレの話です、ご注意を。

修正:
日本の発明✖ 日本の魔改造品○


閑話 至高なる御方々とお手洗いのアレ

 ピクニック等、王国での計画終了後の行事も終わり、そろそろ各所へ冒険者や傭兵団として活動を再開しようかなという矢先、合議での議題採決が終わった後の円卓の間での出来事である。

 色々と雑談をしていたのだが、トールが居ない中での会話にて、トールの拠点における生活についての話が話題に上がった。既に見学会をしていたモモンガさんだったが、そこでの生活については内心、興味があった。

 

「最初、トールさん所の拠点が出来始めて、寝る時位はワイルドなファンタジー世界での生活とも少し距離置けるな、と喜んだんです」

「実際、設備とかはワンパッケージだそうだけど、一人向けワンルームはリアルで暮らしてたより良かった人が殆どでした」

 

 リアルでは下層でもアーコロジーにギリギリ入れれば、不幸な事故で死ぬ事は殆ど無い。だがアーコロジー外での住居の生活では、空調や電気などのインフラが少し途絶えただけで死活問題というか、死ねるというスリル満載の住居が殆どである。

 そして、そんな住居はもう大抵が老朽化している訳で、必ずどれかが故障か調子の悪いのが当たり前、薄汚れてるのは普通、気密と空調だけはなんとか無事という住まいに居たのが、殆どのギルメン達である。

 閑話休題。

 

「ふむ、何か不満とかあったんです? 見学の際、標準のマンション型を案内されましたが、テレビや娯楽目的のPCが無い他は、殆ど揃ってる印象でしたけど」

 

 案内の際のエインズワースの語りは、まるで新築マンションのモデルルームを案内する感じで、モモンガさんとアルベドに「別荘などに如何でしょうか」と新婚夫婦に説明するがごとくだった。

 アルベドが「たまの、二人きりの空間…」とちょっと夢見心地だったので、グレードが一番高いマンションタイプかつ、見晴らしが良いものをこっそり注文してしまったのは仕方無いかもしれない。

 

「ラジオは色々、洋楽が充実してたな。なんか、データでG○Aシリーズのラジオ放送ホロテープが多数見つかったとかで、録音だったけどDJの案内するのは聞いてて楽しかったよ」

「だけど、重要な設備が足りなかったんだ。参ったよ正直」

「重要な設備てwww

 トールさんにその事を話したら、笑いながら「あれは日本の魔改造品だからなぁ」と言ってました。ナザリックのお手洗いには全部完備してますね」

「えー、なんか言い辛い設備なんです?」

「お手洗いのアレ…ウォシュレット付きトイレです」

 

 ウォシュレット。トールの生きていた21世紀前半では、TOTO社の登録商標である。他社の同目的製品はシャワートイレだ。

 ユグドラシルプレイヤー達のリアルでも、TOTO社の資産を受け継いだ大手メガコーポが商標登録を継続しており、世界中で販売されている。

 閑話休題。

 

「実は、黄金の輝き亭には輸入品の魔道具でウォシュレット付きトイレがありました。久し振りに使った時の感動は言い表わせません…」

「口先だけの賢者よありがとう!」

 

 黄金の輝き亭の魔道具のそれは、着座時のセンサーは無いし、設定温度は固定である。それでも使い心地に愛好家が多い。

 

「他の宿だと、わざわざ魔道具で綺麗にしてた。でも実際あると無いとじゃ気分が違うんだ…」

「俺ら稼ぎは確かに余裕あったけど、黄金の輝き亭に女性陣が固執してたのってそれが理由かよ!」

「あれ? 俺が見た時は確か、トールさんの拠点の居住区だと公共トイレも全部、設置してあったような?」

 

 理由は色々あるが、アルベドの手を取って歩く機会とかはできる限り温度を感じていたいとなんだか初な青少年みたいな事も考えて、できる限り人化しているモモンガさんであるのだが、弊害としてトイレの問題があった。

 幸い、ナザリックのロイヤルスイートは全室高級型シャワートイレ完備であり、階層内にも複数設置してある。異形種化すれば解消・消滅する(再度人化すると消えている)のだが、気分の問題である。

 

「要望を受けて、トールさんが開発した。なんでも、ウォシュレット付きトイレの開発ドキュメント番組を見た事があって、前世の記憶を呼び起こす為にトランキルレーンまで駆使して機能を追加して作った」

「なんかえらく頑張ってますねトールさん」

「それな、俺らが急かしたんだわ…」

 

 バツが悪いと言った感じで頭を掻くチグリス・ユーフラテス。

 

「急かしたんですか? なんでまた」

 

 全員の視線が、るし★ふぁーに向く。

 

「俺、で★す!」

 

 モモンガさんを除いた全員がイラっとした。嫌な予感しかしない。

 

「黄金の輝き亭の魔道具を参考にシャワートイレ型ゴーレムをこいつが作った。トラップ動作も組み込んで、かなり高機能な奴。リアル時代に使ってたっていう、高級タイプで性能が非常に高いタイプでな…」

 

 AOG内でトラップ並びゴーレム作成において右に出るものは居ないのが、るし★ふぁーだが、サービス中のユグドラシルにおいて色々やらかした数でも右に出る者はいないのがるし★ふぁーである。

 

「それ皆さんどうしたんです?」

「できたと聞いた時は喜んでカルネ村の俺らの屋敷とか、トールさんに用意して貰ってた居住区の自室に付けた」

「使い勝手もリアルの奴と遜色無かったし、首振りとか上下とか自動調整とか定期自動洗浄とか、色々便利だったんです。ですが…」

「ふむふむ?」

「変な条件に合致すると、勢いが微弱から最強まで一気に上がる」

 

 遠い目をする獣王メコン川。

 

「大惨事じゃねーか!」

「ピンポイントで水流が後ろにダイレクトヒットするよう自動追尾してきました」

 

 エルダー・ブラック・ウーズの姿で尻を擦るヘロヘロ。

 

「なにそれやだ」「悪くないとか一度でも思った自分を殴りたい」

「両方一緒に来たりとか、他にも罠はあるが言いたくない。もう一週間後には全員被害に遭ってな…」

 

 最初にあたりというか「全部載せ」を引いたのはウルベルトである。次が食堂に設置されたそれを使用したアケミだった。

 

「てへっ★」

「「「後でしばいたのに凝りてねぇなお前!?」」」

「俺はトラップマスターだぜぇ? ま、既にナザリックにもトールさんの拠点にも無いよ、これは本当」

「そして、トールさんに泣きついて、新型を作って貰った訳だ」

 

 開発自体は、トランキルレーンの脳内情報サルベージを含めてたった3日である。基礎概念はあるため、設計にスパコンも使用した。目に隈を作って完成品と共に出てきた時、ギルメン達はトールを拝み倒したそうな。

 

「既に作られたシャワートイレ型ゴーレムは、格安で商会経由して王国内に売りました。リスク込みだけど、あれの正常動作に慣れると戻れませんので」

 

 何人ものギルメンがうんうんと頷く。

 

「音改さんはちゃんと、リスク込みで売ったからクレームは今の所きてないな。黄金の輝き亭でも、一番高い部屋に設置してあるはず」

「まじですか」

 

 モモンガさんは、冒険者モモンとして活動する際、外観は黒い戦士姿で人化と異形種状態を切り替えている。常宿としている黄金の輝き亭でたまにトイレを使う事があるが、運良く罠をひいたことは無かった。

 

「…外で活動するときは気をつけないと。てかなんで安らぎシーンで警戒しなきゃなんないの!?」

「無防備な時こそ、緊張感を忘れないで欲しいという親切心?」

「親切心とか無いわー」「悪戯心の塊だろ」

「商会でもゴーレムやトラップの技術を使った商品があるけど、他に勧める時は気をつけよう、うん」

 

 そんな感じでナザリック円卓の間での雑談は他にずれていき、いつものように解散となった。

-

-

 とある日、黄金の輝き亭の一室にて。友人との秘密の再会も終え、アダマンタイト級冒険者として活動を再開した青の薔薇の面々は、仕事を終えた打ち上げにそこそこの量の酒を飲んだ。

 黄金の輝き亭の料理長が、恥を忍んで食堂のカワサキに教えを請うたという新作の酒のツマミが思った以上にハマり、そのせいでワインを飲みすぎたとラキュースがお手洗いに入る。

 

「ぴゃううううっ!?」

 

 食事を終えた後でのゆったり飲みモードに入っていたガガーランは、笑いながら声をかける。

 

「まーた当たりをひいたのかラキュース。これで一ヶ月、二回目だぞ?」

「今回は前?」「いやまた後ろだと思う」

 

 暫くして顔を赤くしたラキュースが戻ってくる。

 

「とても便利なのはいいけれど、不具合が出るのは勘弁して欲しいのよね、あれ」

 

 王国内に存在する3つのアダマンタイト級冒険者チーム、青の薔薇がここ黄金の輝き亭で常宿にしているのが、3つだけある最高級グレードの部屋だ。下グレードにもお手洗いに同じ様な物があるが、最高級グレードの部屋だけに設置された高級モデルは、良さの意味で他と比べる事ができない。たまに、謎の誤動作を起こす事がなければ。

 実際には誤動作ではなく正常動作であるが、それを知るものは至高なる御方々だけである。

 

「所で前だった?」「後ろだった?」

「聞くんじゃないわよ貴女達!?」

「私は使った事がないが、そんなに厄介なのか?」

 

 イビルアイは不死者だ。異形種の姿では飲食不要であるため、かつての人間時代はともかく今はお手洗いに用事がほぼ無い。

 

「厄介この上ないわ。不覚にも目覚めそ…! いいえ、なんでもない…」

「目覚める!? そんなに危険なのか!?」

 

 ガタっと立ち上がるイビルアイだが、ラキュースはぽろりと言ってしまった事に顔が真っ赤である。ガガーランはもう、笑いすぎて引き攣れを起こしかけている。

 

「鬼ボスが覚醒?」「鬼リーダーが変態に?」

「忘れなさい、というか聞かないで! 大丈夫だから! てかガガーラン笑いすぎよ!」

 

 大声で叫ぶラキュース。一度も食らったことの無いというか気にしてないガガーランは落ち着いたかと思ったら再度、大爆笑である。ただイビルアイとしては、魔剣の件もあり純粋にラキュースを心配している。

 

(今度、食堂で始まりの九連星の面々やモモン様に会ったら、相談してみよう…)

 

 

 

 後日、偶然というか定期というか、食堂でツアー(の鎧)とリグリットがモモンガと同席している中、黄金の輝き亭であったラキュースの件をイビルアイが相談した。

 

「彼女は友人なのです、モモン様、何か手立てはないでしょうか…」

 

 泣きそうな声音のイビルアイにモモンガが複雑な顔をし、ツアーが首を傾げ、メンバーだったリグリットが大爆笑して、イビルアイが困惑する。

 

「あーそのな、彼女の言う呪い諸々については、言っているよりは余裕があるはずだ。私が保証しよう、大丈夫だ(っていうか彼女、中二病全開なの!?)」

 

 自分も魔王ロールとかするが、その手のロールで天元突破する男が身内にいるので気付いてしまった。気付きたく無かったが後の祭りである。

 

「その、目覚めとかどうとか…私は不死者なので黄金の輝き亭のお手洗い等も含め、使った事は無いんですが…」

「あのな、イビルアイ。お手洗いの話を、男の前でするものではないぞ」

「は、はい、それは重々承知です。ラキュースが言う不具合、私も遭遇すれば何かわかるかもしれなくて」

「むしろ、解らないというか遭遇しない方がいいぞ。…不愉快な気分になる」

「そ、そうなのですか?」

「ああ」

 

 運が悪かったか仕込まれたか、つい先日、食堂でお手洗いを使った際、コンボ攻撃を食らったモモンガさんであった。不愉快な気分になったのは、罠のコンボに翻弄される最中、脳内でるし★ふぁーの高笑いを聞いたような気がしたせいである。

 

「まあその件については…イジャニーヤの二人と、ガガーランを同席して相談してはどうだろうか? ただし、ラキュース嬢には内密でな(中二病な上に特殊性癖目覚めるとか、俺にどうしろと!?)」

「わ、わかりました。ありがとうございます、モモン様」

 

 尚、魔導皇国皇帝モモンガ・アインズ・ウール・ゴウン・ナザリック=冒険者モモンは公然の秘密として色々な所に伝わっているが、イビルアイはそこを弁えているのか、どのような場所でもモモン様、と呼ぶ。なんで懐かれたかは不明ながら、素はこんな子なんだなーと頭を撫でるが、すぐ止めた

 

「…あ、嫌だったはずだな。すまない」

 

 凄く残念そうなイビルアイに、リグリットは食後の緑茶を啜りつつ、内心を覆い隠して無表情を決め込む。

 

「なんだろ、不死者でも恋の季節はあるものなのか?」

「ツアー、こういうのは黙って楽しm…見守るもんだよ」

「そういうモノなのか? ふむ、興味深い」

 

 端でコソコソ会話する。特別客用の二階であるため、他に聞くものは居なかった。

 

 更に後日、イビルアイは相談の場を設ける前に自分で確認をと、意を決して黄金の輝き亭でお手洗いに行き…。

 

「ぴゃああああああ!?」

 

 水流最強と自動追尾の当たりを引いて、未知の感覚に遭遇し涙目になり、その事を誰にも相談できず半日ほど部屋に引きこもったそうな。

 




ラキュースとイビルアイの性癖はちゃんとノーマルのままです。

…今の所は。

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