荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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死亡キャラ救済となればお約束になる帝国でのお話。



帝国観光
死の支配者と帝国へのおでかけ準備とジル帝


「モモンガさん、帝国行こうぜ!」

「どうしたんですかペロロンチーノさん、藪から棒に?」

 

 午後の昼下り、首都ナザリックの繁華街でウルベルトやベルリバー、アルベドやデミウルゴスなどを交えてカフェでまったりお茶を楽しんでいたモモンガさんに、空から降りてきてスーパーヒーロー着地をキメたペロロンチーノが開口一番、そう言った。

 

「なんでまた帝国に? あっちは傭兵団の仕事も少ないだろ」

 

 鮮血帝の統治では、武力の行使は正規軍が大部分を担っており、傭兵どころか冒険者も仕事が少ない。例外はワーカーだが、汚れ仕事や後ろ暗い仕事もあるので、事前に情報を精査する能力や勘が働かないと続かないというか野垂れ死ぬ。

 ただ、ウルベルトとしては別の意味で遠慮したい国だ。理由はフールーダ・パラダイン翁。帝国の重鎮である魔法キチの爺様にストーカーされたのだ。人化状態と隠蔽の指輪で真の力は探られなかったが、カッツェ平原での仕事で面倒になって第五位階の魔法をぶっぱしたのが原因である。

 

「闘技場だよ闘技場、レベルは低いって言っても、技周りは参考になるかもしれないからさ、モモンガさん連れて行ってみたいんだ」

「ふむ、ついでに栄えているという帝国の様子も見たいですね。試験的に外部との貿易をする先としても、参考になるやもしれない」

 

 掃除が終わってより、生き残った貴族達は王都での行政体制を急いで整理、構築し終えると、精力的に王国内の整備を始めた。彼らは「王が借り受けたというゴーレムの群れ」を用いて、レエブン侯の領地を参考に王国全土の道の整備、村の整理や拡張、荒れ地の耕作などを一斉に開始した。来年の収穫は以前の数倍になるだろうと予測されている。

 

 ゴーレムを貸し付けたル・シファー商会はうっはうはである。仲の良い商会や以前から目をつけていた中小商人などにもガンガン流通などで話を回しているので、金の流れが太くなり、王都にあった腐敗貴族べったりの商会が軒並み「居なくなる」中、かつての流通を更地にして再構築した結果、以前より物価が下がったにも関わらず、生き残りの商会は売っても運んでも儲かる状態となったらしい。

 

 また、元腐敗貴族の私兵や腰巾着などでエ・ランテルに向かっていなかった連中が野盗になってたりするが、景気の良い商人が冒険者や傭兵をいい値段でガンガン雇うので手を出せず、街道の人の流れが多くなって広がる目により発見されては、王国戦士団に捕縛か討伐されるようになった。

 

「お金ってものはね、一枚より二枚、二枚より十枚の方が、一枚一枚個別で使うより総合力で勝るし、どこかで溜め込んで止めたら淀む。その原則を理解して、必要な需要を喚起し、無意味な淀みを壊し、あとは流れを操作する側に回ればいいのさ。儲けはその後についてくる」

 

 というのが、るし★ふぁーの持論だそうである。悪戯を考えたり実行する合間に、片手間で商会を回しているのだから恐ろしい。

 閑話休題。

 

「俺はパスかな。都市部の送電網、暫くの間、埋め込み型に移行させる場所の選定と、工事の割り振りをデミウルゴスと詰めるからな」

「すっかり所長が板について…」「うるせぇ、きっちりやらんと気分が悪いんだ」「流石ですウルベルト様」

「私は一応付いていきます。傭兵団の馬車で行けば、他の誰かが来たい時に転移門使う事で馬車の中で入れ替われます」

 

 ベルリバーの提案である。今の所、ペロロンチーノとモモンガはほぼ確定、あとのメンバーは用事次第だろうか。

 

「傭兵団の馬車か。アルベドはどうする?」

「残念ではありますが、他の雑務を片付けつつ、ナザリックにてお帰りをお待ちしています。夜はお戻りになられるのでしょう?」

「ああ、そのつもりだ。少し遅いだろうが、夕食は共にしよう」

「まだシャルティアもお外は慣れてないからなー。補講続いてるし。

 守護者とかで同行できるの、セバスや一部のプレアデスだけか」

「確か、ナーベラルとルプスレギナも補講中だったか…」

 

 補講というのは、外部での人間の国の出歩き方、そのテストに落ちた者が受けるちょっと厳しい指導のある授業だ。やまいことユリが主に担当している。間違ったら、二度目から鉄拳制裁(ダメージ低武装)である。

 

「まあ、公然の秘密のお忍び冒険者モモンの従者二人って事で名も売れちゃったし、今回は魔術師でいきませんか?」

「成程、傭兵団の新人という訳ですか。それでいきましょう!」

 

 貴様、モモンさーんに! → まて、私はただの冒険者だぞ → はっ、申し訳ございません

 

 王国内では様式美と広まったやりとりは、王国内での冒険者活動中、何度繰り返しただろうか。あんまり無礼だとガチでぶっ殺す系の従者二人が居る状態だった訳で、それを思い出して少し遠い目になるモモンガさんである。正直、身軽な設定は外部で活動するなら有り難い。

 

「新人というよりはむしろ、本来の長か主が戻ってきた扱いだな。ロールとしては、同格ながら尊重されてる感じで」

「ボロが出ないように気をつけないといけませんね」

 

 モモンガさんは、えー、という感じである。が、活躍が有名で新人の入団がほぼ無い「始まりの九連星」のニューフェイスとなれば、仕方無いのだろう。

 

「トールは来ると思うか?」

「微妙なラインだけど、参考になる魔道具とかは大抵が帝国産だから、それを伝えれば来るかな?」

「偽装人化した御者のシモベとゴーレム騎兵で出立しますから、帝国領に近づいたら声をかけますね。その間に旅先の準備をしておきましょう」

「あ、たまに馬車に乗るのは?」

「旅情緒を楽しみたいならいいですよ。飽きたら戻ればいいですから」

 

 王国内と首都ナザリックだけというのも飽きはしないが確かに少し慣れてしまった感があるので、モモンガさんとしては新たな土地の光景に胸を踊らせていた。

-

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 帝都アーウィンタール。バハルス帝国の首都であり、その苛烈な手腕から鮮血帝とも呼ばれるジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスが居を構える皇城が威容を示す都市だ。

 様々な改革により内外にその手腕を知らしめてきたジルクニフであったが、先日王国内の調査員から齎された報告書に執務室で頭を悩ませている。

 

「カルネ村を襲撃した法国戦力を、謎のマジックキャスターと始まりの九連星が王国戦士団と共に撃退、捕縛したか。…報告が遅い」

「言ってやりますな。王国が混乱しておらねばバレかねない速度で早馬を飛ばしてきた件、こちらの方が重要ですぞ」

 

 知恵袋といえるフールーダの弁に、今日何度目かもわからないため息を吐くジルクニフ。

 

「…わかっている。これまでの王国併呑の策がほぼ全て無意味になったのだからな」

 

 内通していたブルムラシューなどは既に処刑というか、腐敗貴族共と同じく処分が下されている。

 

「だが、なんだこの、転移してきたというアインズ・ウール・ゴウン魔導皇国と首都ナザリックとは!? 神話の軍勢でバカ王子と阿呆貴族を薙ぎ払っただと!? 神の船って何だ!? お伽噺か何かかこれは!?」

 

 今はフールーダ以外に執務室には誰も居ない。音が漏れないよう魔道具で防護しているが、そうでなければ廊下まで叫び混じりの声が響いていただろう。

 

「落ち着いて下され! …これで王国自体の脅威が復活すれば問題でしたが、例の薬の供給源と組織は壊滅したとの事。こちらに何かをする余裕は王国には無いでしょうが、平原と王国の間にその首都ナザリックが出現しておりますれば、今の状態で宣戦布告を行えば、王国に手を貸したという魔導皇国が不快感を示すでしょう」

「…業腹だが、対王国戦略は根本から見直しだ。例の薬の件とあの女が死んだ事がせめてもの良い知らせか」

 

 実際は死んでなくて、魔導皇国の王国外交官として一年後に出てくる事をまだ二人は知らない。

 

「ただ調査の為、使い魔や魔法によりトブの大森林と都市があるという場所を幾度も探っておりますが、弾かれ続けております。調査に成果がでておりませなんだ、報告もできない状況です」

「爺の能力をもしかしたら超えているかもしれないという、ウルベルトの仕業だろうか?」

「帝国にはほぼ寄り付きませなんだ。聞き及ぶその才、できれば魔法の深奥について語り明かしたかったものを…」

 

 なんだか恋する乙女みたいな感じで宙を仰ぐフールーダ翁。首都ナザリックでウルベルトを謎の悪寒が襲う。

 

「戻ってこい爺」

「はっ、申し訳ございませぬ。件の国には、早急に使節団を派遣すべきでしょうな。…此方から」

 

 帝国としては、皇国に対して下手に出るというメッセージである。

 

「本気か爺?」

「確証があると言い切れませぬが、法国に伝わる六大神もまた、拠点と共に現れたという伝承がございます」

「…首都ナザリックは、その神のおわす座だとでも?」

 

 少なくとも帝国においては伝説、伝承、お伽噺。その類に分類される話だ。だがかの国が派遣したという戦力は、光る空飛ぶ船、神話の軍勢だという。バカバカしい話と一蹴するには、同じ報告が複数の別系統から来ているので無視はできない。帝国としては必要以上に謙る訳にも流石に行かないが、高圧的に接触するのはとても宜しくない事態になるだろう。

 

「兆候はございました。帝都問わず、各所で何年も前から球体の金属の塊を見た等、あの森林近辺には何かが潜んでいるのは確かです。移動先が全てトブの大森林ともなれば、関連を疑いたくなるというもの」

「様子見も悪手か。こちらの状況が丸裸の可能性もあるな」

「誠に遺憾ながら」

 

 可能性どころか、アイボット・影の悪魔諜報網と同レベルで黒い絨毯&影の悪魔諜報網が帝国をカバーしている訳で、食害などは出ていないが色々な情報が既に丸裸である。

 

「わかった。ここは面倒だが、王国へ密使を出し、あの女へのお悔やみの言葉と共に今年の侵攻を行わない旨を伝える。魔導皇国へ使節団を派遣するが、他には任せられん。私が直接出向く」

「私も同行して構いませんかな? 村に現れたというマジックキャスターが、もしかしたら魔導皇国の重鎮やもしれませぬ」

「…頼むから、迷惑だけはかけんでくれよ」

 

 少しウキウキしているフールーダを、胡乱げな目で見るジルクニフ。

 

「…努力します」

「約束しろ!?」

 

 こうして魔導皇国への使節団派遣準備が行われたのだが、予定は未定。出発の数日前にモモンガさん達が到着し、帝都にて一騒動起きる事となる。




さて、どういう方向で料理…ゲフンゲフン、お助けするべきか。
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