荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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閑話 荒野の災厄による研究・対魔法の手段

 帝国に行く件が出る前のお話。

 

 トールの今現在の研究の一つに、魔法に頼らず魔法に対抗する防御方法の確立がある。ユグドラシルでも上位に入っていた実力者がひしめくアインズ・ウール・ゴウンの面々と模擬戦などで互角以上に戦えているのは、殆どがMOD由来のチート能力、拠点の生産能力、本人のカンスト級の能力と共に、MODのチート装備の山のおかげである。

 

「互角とか冗談言ってるのかな?」

「先手必勝を心掛けられたら詰むわ!」

「その前に数で押しつぶされるでござる」

 

 ただMODのチート装備類があったとしても、結局は魔法ではない。低位の魔法から既に問答無用にダメージを与えてくる。ダメージ類は軽減はできても絶対に無効化はできない。各種、抵抗が必要なデバフ系は本人の素の能力値で抵抗しているだけだ。

 

「うちら換算でパラメータ全て100か。やばいよな」

「装備無しでそれだもんなぁ」

 

 また、魔法は特に電撃系など特定のものは物体類を平気で貫通してくる。トールの装備は殆どが物理法則に則った存在であり、魔法に対しては避けるかいなすか、という手段しか取れない。耐えるのも結局、直撃しているのと大差ない。MOD由来の回避・逸しの動作モーションを習熟した上でシビアなタイミングで適切に使用しなければ、基本的に直撃である。

 

「<連鎖する龍雷>とか、手で掴んで地面に叩きつけてる時点でやばいけどな!」

「電撃なんだから地面に電位をアースすればいいとかどういうことなの…」

「絶望のオーラとか支配の呪言はどうなってます? スキルだけど」

「素のパラメータで気にしてない? …そうですか」

「たっちさんの<次元断切>はやばいって言ってたっけ。でもあれもスキルだからなぁ…」

「先日、たっちさんが太刀筋見切られてPip-Boyで防がれたって言ってた。近接の勝負自体はたっちさんの勝利だったけど」

「何でできてんだよあのコンピュータ!?」

 

 超位魔法の内、攻撃系や火力系は素の耐久能力で耐えているだけである。炎上してようが感電してようが氷結してようが酸まみれだろうが、数秒で復帰できるとはいえ生身でそのままダメージを食らっている訳で、素の魔法抵抗力は皆無と言っていい。つまり痛い。

 

「アメリカンな声で、うっ、とか、おうっ、とか言って耐えられてるんだよな」

「燃えても酸食らっても頭髪も皮膚も影響受けてないとか、ほんと人類なんだろうか」

「ホモ・サピエンス・ディザスタとか分類されてもおかしくない」

「<心臓掌握>は…、ええと、頑丈で潰せなくて押し返される感触?」

「高レベルなら抵抗とかわかるけど、押し返す感触とかなにそれ」

 

 なので、トールとしては一緒に過ごす事となったAOGに心配をかけないよう、魔法に頼らないで魔法に対抗する手段を得ようと、交渉などで手に入れた数々の魔法の道具を調査、研究し、抵抗手段を探し出そうと調査を継続していた。

 

「真なる無とか、どうなるんだろ?」

「効果を聞いた時、装備は全ておしゃかになるだろうとか言ってた」

「使われる瞬間にキロ単位でダッシュ離脱するだろうね」

「そして次の瞬間、トールさんにボコられて終わると思う」

「人体で音速超えるとかもう自称人類というか人類(笑)だな…」

「一応、前衛職なら俺らでも離脱とかはできるか? …あ、できたわ」

 

 研究するその過程で、よくわからない機能や尖りすぎて使い道の無い装備がいくつも誕生してはお蔵入りされている。今日もできた成果物を前に、トールが項垂れていた。

 

-

 

 執務の後、視察という名のアルベドとのデートを終えて、地下墳墓の地上部分にあるログハウスに居るトールを訪ねたモモンガさんは、テーブルの上に載せた小さな機械を前に意気消沈して珈琲を啜っていた彼に、何度目か繰り返した言葉で質問する。

 

「結局、今回はどういう装備ができたか聞いても?」

「瞬間的に時間をさかのぼって攻撃された瞬間だけ能力値を100倍に増幅させて時間停止型V.A.T.S.状態にする装備ができたけど、発動と行動でそれぞれフュージョンコア1つを消費するのに気づいて燃費が悪すぎて改良が必須。

 発動条件の定義が魔法効果を得た瞬間だから、どんな魔法でも発動しかねない。頑張ったんだけどなぁ、魔法には敵わないよ…」

 

 結局、レベルを上げて(先手を打って)物理で殴れが現在の最適解なのだが、物理現象の外である魔法に対抗できる装備の開発は、未だ答えも見つからず模索の日々である。

 

「聞いてる分にはもう魔法の域ですよそれ…」

「これは厳然たる科学技術の結晶なの! …失敗作だけど」

 

 ウェイストランドにそこかしこに転がる科学技術は、リアルと比較して尚、夢の技術の結晶というかもはや魔法レベルだと思われているが、トールは納得行かないらしい。

 

「いい加減、解析も済んでる魔法抵抗力アップのデータクリスタルを研究したらどうなんです? 最上位の奴も生産できたのでは?」

「既にあるものを研究するのは負けた気がする。あと結局、データクリスタルの効果だと、魔法的な力で防いでるんですもの…」

「めんどくさいなこの人!?」

 

 尚、装備の詳細を聞いたたっち・みーの強い要望で魔法発動をトリガーとした条件はオミットの上、任意操作で<時間停止>と同じ状態を維持する別の装備が作成された。また、10秒間限定で時間停止状態に加えて能力値を底上げ(ただしクールダウンに8時間が必要)させる機能の装備も追加作成している。

 これらは後に解析の上で、希望者のナザリックギアに機能が追加された。

 

「どんよりというか、ク○ックアップとファイ○・アクセル?」

「正解! いやぁ、使いこなすのが大変だけど、楽しいなぁ!」

「弾幕レーザーも間隙ついてくるとか、この人センスの塊すぎてやべー、たーのしー!」

 

 感覚が鈍らないようにと守護者も交えて週に一度の模擬戦の傍ら、打ち合いながら呑気な会話をするトールとたっち・みー。

 実験的に機能を起動した状態でのお互い弱装備による寸止め戦で、まるでドラ○ン○ールのZ戦○達のような瞬間移動と衝撃波が発生する。ギルメン達も守護者達もポカーンである。

 

「…あれについていって笑ってるトールっちって」

「それにまた、たっちさんが強くなるんだけど…」

「何してくれてんの荒野の災厄!?」

「タケさんとコキュートスの分も用意してくれてるから、がんばりましょう?」

「くっそ、勝ち越しの差を縮められてきた矢先に!? やってやるぞぉ! 付き合え、コキュートス!」

「ハッ、全力ニテオ相手、努メサセテイタダキマス!(嬉)」

 




Perk「ナードレイジ」が時間停止状態で発動しているような状態です。

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