荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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前回のあらすじ

主人公夫婦を起こしたけど、スターライト・ドライブインの居留地から緊急放送。
二人を残して急ぎ居留地へ向かうトール。そうしたら、沢山生き残ったクインシーからの難民が来ていた。

ガービーとスタージェスとママ・マーフィーが「サイト(不思議な力)」に従うと言うので、彼らを連れて一路、サンクチュアリへ。



荒野の災厄の旅路・コモンウェルス その7

 コンコード。ホットスタートのFallout4において、ロケットエンジンに点火するかの如く、様々な出会いと戦いが待ち受ける場所だ。

 

 トールが現れたコモンウェルスにおいては、主だった街道をロボブレインが爆走する為、弱小のレイダーの内、堅気にもう戻れない連中がある程度平穏かつ襲えるキャラバンやウェイストランド人を求めて来てはレイダー同士で罵りぶつかり合い、死ぬか吸収されるかを繰り返すある意味でホットな場所である。結局、レベルにして20にも満たない訳で、プレイヤーにとってはいいカモが定期的に復活するポイントだが。

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 トールはスターライト・ドライブインからガービー達を案内する傍ら、コンコードの事を伝える。元は居留地であったようだが、利便性の悪さから程度の悪い連中が増えて、今は弱小レイダーのホットスポットと化した話は有名なようだ。

 

「所で将軍」

「誰が将軍だ誰が。ミニッツメンの立て直しには、俺は加担せんぞ。他に適任を見つけるか、ガービー、あんた自身で頑張れ」

「俺には…荷が重い。再び仲間を募るまではいいが、とてもじゃないが纏め切る自信が無いんだ」

 

 クインシーの虐殺…というか壊滅に、間接的に関与したのがミニッツメンの派閥争いと内部の裏切り者だ。ガービーはその事を引きずっていて、当時を知った上で何もできなかった自分を恥じている。

 

「まあ、今は名乗らずとも活動をしてる同志は居るだろ。外から適任者を見つけると良い。俺は旅人だからな、支援はともかく役職は無理だと言っておく」

「そうか、とても残念だ。所でしょ…じゃなかった、トール、本当にここを突っ切って行くのか?」

 

 コンコードに近付くと、断続的な銃声が響いている。主にメインストリートと自由博物館の所だろう。コンコードにある自由博物館は、原作ではガービーがクインシーからの難民を保護し、立て籠もった場所だ。

 原作メインクエストにおいて、扉前にはガービーを除く最後のミニッツメンが死体で転がっていた。その傍らには、ミニッツメンを象徴する武器「レーザーマスケット」がある。

 

「キャラバンかウェイストランド人狙いにしては妙だな?」

 

 銃声はメインストリートの方だ。レイダーの罵声が聞こえる。

 近くの空き家の扉を塞ぐ板を外して中を確認。裏口と玄関の扉が動くことをさらに確認し、両方に覗き窓を作る。ゲームでは考えられない柔軟な自由度だ。現実バンザイと半ばヤケ気味に呟くトール。

 

「ここで待っていてくれ。様子を見てくる」

「わかった。時間がかかるようなら俺達も行くが?」

「銃声がまあ派手になったら来てくれ。俺も派手にぶっ放す」

 

 護身用に武器弾薬といくつかの医薬品を渡したスタージェス達が入ったのを確認すると、トールは身を屈めながら武器を取り出して自由博物館の前へ。扉は半開きだったので中へ転がり込むと、銃を構えたネイト、Fallout4の主人公が立っていた。

 

「トール、ここに居たのか」

 

 Vaultスーツを着たままのネイトは、銃口をトールから外すと少し開いたままの扉に再び銃を向けた。隙間からはレイダーの姿は確認できない。

 

「あー、すまん、二人の行動力を侮ってた。

 サンクチュアリからこちらに来て、レイダーのバカどもに遭遇、お祭りの開始に、転がり込んで応戦中って所だな?」

「正解だ。ノーラは上のベルチバードに何か使える物が無いか見に行ってる。俺は建物を見てあの…レイダーの幾人かを倒した。

 しかし…こんな状態なんだな、どこもかしこも」

 

 戦前を知るネイトとしては、幾度か訪れた事がある自由博物館の今の惨状に何かこみあげて来るものがあるようだ。

 

「ねぇ! 荷物にフュージョンコアあったでしょ! 投げて頂戴!」

「投げるけど、なんで要るんだ!?」

 

 上からノーラの声がする。本来では夫婦のどちらかが死ぬのだが、彼女はトールの介入で生きていて、元気に探索をしていたようだ。

 

「屋上にT-45パワーアーマーが一式あったのよ! 型は古いけど、コアがあれば動くし、ベルチバードからミニガンをもぎ取れるわ!

 あら、トールじゃない、さっきぶり!」

 

 元気だなぁと思いながら、横目にネイトがフュージョンコアを投げるのを確認しつつ、自由博物館の扉から外を見る。レイダー達は一気になだれ込む為に人数を集めようとして、監視を除いて誰も撃たずに息を潜めている。ただ、トールの探知範囲からは逃れられない。

 

「パワーアーマーを動かしたら上から跳び降りてくれ、その音を合図に俺たちも出る!」

「わかったわ! それじゃ後で!」

 

 ネイトは銃の動作を確認し、新しいマガジンに交換する。トールは手持ちから、シドニーのウルトラSMGを取り出した。キャピタルに居た頃に101のアイツから借りたものを更にコピーしたものだ。トールが手に持った事でCND値が消滅、耐久力減少が無くなりFallout4仕様になったのはトールも目が点になった。

 

「珍しいのを持ってるな。カスタマイズもしてあるが、それ以上によく手入れされてる」

「こいつはキャピタル…ワシントンDCに居た頃に仲が良かった奴のを複製した。ご機嫌に弾を吐き出す暴れ馬さ」

「頼りにしてるよ」

 

 複製と言ったが、実際にコピーしたとは思いもよらないネイト。外の様子を伺っていると、上でミニガンの火を吹く音が響く。そしてそれが鳴り止むと扉前で轟音。パワーアーマーで地面に着地した音だ。

 

「出るぞ、カウント2!」

「1!」

「「ゴー・ゴー・ゴー!」」

 

 外に出るとパワーアーマーでミニガンを構えたノーラが、盛大に弾をばらまいている。泡を食ったレイダーが物陰に身を隠すが、バリケードごと破壊して蜂の巣にしている。

 トールは奥から湧いてくるレイダーを横薙ぎに撃ち抜き、漏れた分をネイトが正確な射撃でとどめを刺す。

 

「畜生、パワーアーマーだとぉ!」

 

 屋上へ通じる道は鍵がかかっているので、ここのレイダー達には開けられなかったらしい。悔しがる連中に弾をプレゼント。

 相手の方が圧倒的に多数であるが、いかんせん貧弱な近接武器と、手製のパイプピストルやパイプライフルでは抗し切れる訳もなく、徐々に押し返す。

 

「援護する!」

 

 後方からガービーとスタージェスが現れた。足を少し引き摺るママ・マーフィーも銃を手に現れる。

 

「この人達は!?」

「サンクチュアリへの移住希望者!」

「新たなご近所さんね! お手伝い感謝するわ!」

 

 レーザーマスケットの光が特有の音を立ててレイダーを襲う。火炎瓶が投げられようとしたが、ママ・マーフィーが撃ち込んだ弾で炸裂、投げようとしたレイダーとその前に居たレイダーが揃って火達磨である。

 

「…なんだ?」

 

 耳がいいのか、ネイトが銃声響く中で気付く。原作のメインクエストにおいて、レイダーとの交戦中に地下から現れる強力なアボミネーション…デスクローが、音に反応して地下と隔てる鉄板を弾き飛ばし、地上に出てくる音だ。スプリクト湧きとは言ってはいけない。

 

「怒りだ、怒りが現れる!」

 

 ママ・マーフィーの警告。轟音にトールやネイト、双方から銃声が止み、ミニガンが熱された銃身から出された音が響く。ひときわ大きな音が響き、レイダーの後方からデスクローの姿が現れた。巨体に似合わぬ俊敏な動きで近くのレイダーに飛びつき、名の由来ともなった爪で突き刺すと、バラバラにする。

 

 レイダーは当然浮足立つ。応戦しようとするが、次々に屠られる。

 

「おいおい、やばいんじゃないのか!?」

 

 スタージェスが慌てる。最後のレイダーが肉片になると、爪をひと研ぎして自由博物館の方…つまりはトールやネイト達に向かって走ってくる。

 ノーラがミニガンの弾を撃つが、左右に跳ぶように動いて射線を固定させない。ネイト達も撃つが、当たらないか当たっても気にしない素振りで走ってくる。

 

「口が臭いんだよ、野生動物」

 

 先程から抑制的にコントロールして正確な射撃を心掛けていたトールが、手に持ったウルトラSMGをV.A.T.Sを起動して弾丸を胴体へ集中。手持ちの武器とは思えない勢いでウルトラSMGが10mmの拳銃弾を吐き出す。1マガジンを使い終える頃には、デスクローは柔らかい胴体から盛大に血を流して倒れた。

 油断せず、トールは一定距離に近づいた所でデスクローの頭部に弾を撃ち込む。頭だけが「ブラッディ・メス」の効果で弾けたので、完全に死を確認できた。ガービーとスタージェスは空いた片手で勝利を祝って手を打ち鳴らす。ネイトとノーラは、軽く拳をコツンとぶつけた。旧式とはいえパワーアーマーの力だと、手を打ち鳴らすにはオーバーだった為である。

 

「さて、終わった所で悪いが、戦利品を確認したら一度、サンクチュアリへ行こう。ネイト、ノーラ、来たばかりで逆戻りになるようで悪いが…」

「構わない。息子の件もあるが、君を探しに来たんだ。それにサンクチュアリには新しい仲間をコズワースにあずけているからな、紹介するよ」

 

 恐らくはサンクチュアリ近くの「レッドロケット・トラックストップ」に居た「ドッグミート」だろう。

 

「あ…大丈夫、だよな? 大きな犬だったか?」

「普通の、まあ大きい犬ではあったけど? なんで知ってるの?」

「あの近くを走って行く時に犬の鳴き声がしたんだ。ああそうか、普通の犬だったか…」

 

 トールは安心しつつも冷や汗をかいていた。導入MODの中に、ドッグミートとは別に巨大な犬のコンパニオン(同行NPC)を追加するものを導入していたからだ。本来はドッグミートを巨大にするMODでそれをカスタムして別枠のコンパニオンにしたのだが、追加コンパニオンとドッグミート両方が巨大化するバグを発生させてしまい、ドッグミートのサイズが戻るよう修正が終わるまで、MOD導入者達からバグ報告を聞いては凹んでいた。

 

「戦利品を集め終わったら、道すがら自己紹介をしようか」

 




「所で将軍」

ガービーの有名な台詞。修正前は、幾度もこれを繰り返してクエストが発注されるバグがありました。

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